SF作家の円城塔さんの『Self-Reference』が、米国のSF小説の賞であるフィリップ・K・ディック賞(The Philip K. Dick Award)の特別賞(Special citation)を受賞した。 『Self-Reference』は、国内では2007年に発表された円城塔さんのデビュー作にあたる。宇宙や空間、時間といった壮大なテーマに挑んだ野心作だ。米国ではテリー・ギャラハーさんの翻訳で2013年にVIZ Mediaのハイカソル(Haikasoru)レーベルから発売された。
日本は世界的に見ても多くのSF小説が発表されている国だが、海外翻訳版の刊行が少ないことからこれまで海外であまり広く知られることはなかった。そうしたなかで2010年にフィリップ・K・ディック賞に輝いた『ハーモニー』、そして今回の『Self-Reference』が、いずれもVIZ Mediaのハイカソルレーベルであることは注目される。 ハイカソルは2009年に日本の優れたSFを海外に紹介するとのコンセプトでスタートした。日本SFの海外紹介の数少ない窓口になっている。5年間で刊行されたのは20数タイトルに過ぎないが、このなかから2つがフィリップ・K・ディック賞(特別賞)を受賞したほか、『All You Need is Kill』がハリウッド映画化され、『戦闘妖精雪風』で実写映画企画が進むなど大きな成果を残している。こうしたことは日本のSF小説は、言葉の壁で海外に伝わりにくいが、すでに世界レベルのクオリティを持っていることを示しているとも言えるだろう。