コミックが本格ミュージカルに!「21C: マドモアゼル・モーツァルト」 原作者・福山庸治インタビュー | アニメ!アニメ!

コミックが本格ミュージカルに!「21C: マドモアゼル・モーツァルト」 原作者・福山庸治インタビュー

[取材・構成: 高浩美] アニメ×ステージ&ミュージカル談義 第24回 世界で最も有名な作曲家の謎と生き様を描いたコミックが本格ミュージカルに!『21C: マドモアゼル・モーツァルト』、モーツァルトは女!?だったかも?

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アニメ×ステージ&ミュージカル談義 第24回


世界で最も有名な作曲家の謎と生き様を描いたコミックが本格ミュージカルに!『21C: マドモアゼル・モーツァルト』、モーツァルトは女!?だったかも?

[取材・構成: 高浩美]

■ モーツァルトは女性だった、ということにすると辻褄が合うんです。

天才作曲家、モーツァルト(注1)。映画『アマデウス』が有名だが、もともとはブロードウェイで発表されたピーター・シェーファーの戯曲。それを本人自らが脚本を書いて映画化、世界的にヒット、アカデミー賞8部門に輝いた。
それから、福山庸治が『マドモアゼル・モーツァルト』を『コミック・モーニング』で1989年~1990年にかけて連載、モーツァルトは女だったという大胆な設定で話題になり、NHKでラジオドラマ化もされた。それからモーツァルト没200年という節目の年にミュージカル化。現在は改訂を重ねた「マドモアゼル・モーツァルト」と、脚本も音楽もすべて創り変えた「21C:マドモアゼル モーツァルト」というふたつの作品がある。今年公演するのは、「21C:マドモアゼル モーツァルト」の方だ。

この作品を書いたきっかけについて福山は
「当時、一番好きだったんですよ。もちろん、今でも好きですが。モーツァルト自身にも興味があって『モーツァルトからの手紙』(注2)を読みまして、なんか、書けないかな・・・と。普通に書いちゃうと『アマデウス』とかぶるし(笑)で、違うラインでいこうということでモーツァルトを女性にしてみたら符合が合う、『ドンナ・アンナ』も、あれもこれも全部裏が取れるんですよ、何故か。子供も生まれますが、弟子との関係性も・・・全部辻褄が合ってしまって、“これは面白いな”と。それでやってみようと思いましたね」

■ ミュージカル化はひょんなことから・・・そして生みの苦しみを経て名作ミュージカルに。

この作品を手掛けた音楽座ミュージカルはミュージカル専門のカンパニー。オリジナルにこだわり、浅田次郎原作『メトロに乗って』など、優れた作品を生み出し続けている。この作品に関して音楽座ミュージカル関係者は当時を振り返る。
「実はフジテレビさんがきっかけだったんです。当時は冠公演が流行っていましたので“モーツァルト没後200年だから、これを題材にして新作を作ればスポンサーもつく”と。この『マドモアゼル・モーツァルト』を勧められまして、で、“音楽は小室哲哉さんで”と勧められたんですが、福山先生の原作を読みまして劇団の代表が“面白い!これでいきましょう!”と即答しました。それから動き出したんですよ」しかも福山庸治はミュージカル好きで連載の最中に“ミュージカル化したいな”と著者近況に書いたとか。なにはともあれ、幸せな出会いと言える。

音楽座ミュージカル『マドモアゼル・モーツァルト』初演は1991年、同名のサウンドトラックも発売され話題のミュージカルに。モーツァルトは当時の流行作曲家であったが、小室哲哉も90年代の流行作曲家、これも話題になった要因であろう。もうひとつの『21C:マドモアゼル・モーツァルト』としては楽曲を一新、モーツァルトの楽曲をふんだんに取り入れ、ミュージカルに合うようにアレンジして、より“モーツァルト”に近い印象になっている。
しかし、オリジナル作品につきものの“生みの苦しみ”もあったようだ。福山は、「初演から再演、再演から再々演と公演を重ねるたびに脚本・演出など大幅に改訂し、良くなっていった。迫力のある舞台になってますね」と語る。

■ モーツァルトの生き様が、原作コミックのパワーで紡ぐ“物語力”

『アマデウス』も『マドモワゼル・モーツァルト』も、そしてミュージカル『21C :マドモアゼル・モーツァルト』、近年では『モーツァルト!』『ロックオペラモーツァルト』、とこれだけ“モーツァルトもの”があるのは、モーツァルトの楽曲の素晴らしさのみならず、モーツァルトの生き様や謎の部分がクリエイターの創作意欲をかきたてるのだろう。この先いくらでも“モーツァルトもの”が生まれても不思議ではない“物語力”を持っている。
とはいえ、モーツァルトは女だったという設定は福山庸治のコミックだけといっても差し支えない。近年、コミック・アニメ・ゲームを原作にした舞台化は増加傾向にあるが、そのどれもが原作作品に寄り添っているのに対して『21C:マドモアゼル・モーツァルト』は原作の設定はそのままだが、原作にいる人物がいなかったり、あるいはエピソードがなかったりする。ある意味“2次創作”とも言えよう。

「僕が書いたのはモーツァルトの話、人生なんですね。ミュージカルは違う次元、違う軸で描かれているのかな、と」。それが出来るのはひとえに作品のもつ底力であろう。
「作品が素晴らしいから創作意欲が沸くんですよ。設定が女性っていうところが、ね、逃げられない宿命があって主人公は自分が成長していくしかない、そういう部分、インスパイアーされますね」と音楽座ミュージカルのプロデューサーは語る。今回の公演について福山庸治は
「このミュージカルを楽しみにしているお客様はけっこういらっしゃるので、その方達を裏切らない、期待した以上によかった!となって頂ければ。あと、主演女優はこれがキャリアになっていくといいですね。日本を代表するミュージカル女優となってくれれば嬉しいです」

再演のたびに脚本・演出・振付・美術等の見直しを重ね、常に新しい“再”を提供する姿勢が音楽座ミュージカルのやり方であるが、だからこそ、観客とともに原作者も大いなる期待を寄せる。今回はどんなモーツァルトが出てくるのか、それは初日にならないとわからない。

(ストーリー)
貴族の時代が終わろうとしていた18世紀のヨーロッパ。ザルツブルグの平凡な宮廷楽士レオポルドは、末娘エリーザの並外れた音楽の才能に気づく。しかし、この時代、女は作曲家にはなれなかった。レオポルトは彼女を男として育てようと決心する。ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの誕生である。
軽やかで心浮き立つメロディ。「彼女」は、生きるよろこびに溢れた新曲を次々と発表し、宮廷にセンセーショナルを巻き起こす。宮廷作曲家のサリエリは、モーツァルトの才能に激しく嫉妬しながらも、同時に魅かれていく自分に戸惑っていた。濡れた瞳、輝く頬、柔らかな髪…。「もしかしたらモーツァルトは女?」

(注1)ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)
オーストリアの作曲家・演奏家。古典派音楽の代表であり、ハイドン、ベートーヴェンと並んで3大古典派巨匠の一人。幼少より、父・レオポルトに才能を見いだされ、3歳でチェンバロを弾き、5歳で作曲を始めた。『フィガロの結婚』『ドン・ジョパンニ』などの名作を遺す。作品総数は断片も含めて700以上に及ぶ。35歳の若さで死去。
(注2)『モーツァルトからの手紙』
モーツァルトは人生のうち、10年余を旅に過ごしたと言われているが、その中で実に300通以上の手紙を書いた。日本では講談社学術文庫から出版されている。

音楽座ミュージカル
『21C:マドモアゼル・モーツァルト』
東京公演
6月14日~23日
東京芸術劇場 プレイハウス(中ホール)
大阪公演
6月29日~30日
シアターBRAVA!
愛知公演
7月6日~7日
青少年センター アートピアホール
広島公演
7月12日~13日
上野学園ホール(広島県立文化芸術ホール)
ホームタウン公演
7月20日~21日
町田市民ホール

公式HP /http://www.ongakuza-musical.com/aboutr/
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