手塚治虫の超大作がミュージカルに!ブッダの世界が蘇る! | アニメ!アニメ!

手塚治虫の超大作がミュージカルに!ブッダの世界が蘇る!

[取材・構成: 高浩美] ■ 『火の鳥』(1994年、2008年)、音楽劇『ブッダ』(1998年)と手掛けた演出家、栗山民也が再び、ミュージカル『ブッダ』に挑戦。■ 手堅い演出、実力派の俳優が紡ぐ手塚ワールド

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アニメ×ステージ&ミュージカル談義 第21回


手塚治虫の超大作がミュージカルに!ブッダの世界が蘇る!

[取材・構成: 高浩美]

■ 『火の鳥』(1994年、2008年)、音楽劇『ブッダ』(1998年)と手掛けた演出家、栗山民也が再び、ミュージカル『ブッダ』に挑戦。

手塚治虫の『ブッダ』、仏教の開祖であるゴーダマ・ブッダと呼ばれる釈迦の王子、シッダルタの僧としての一生を描いた作品である。実在の人物と創作した人物が混在し、手塚独特の世界観と哲学が貫かれている。アニメ映画化もされており、日本のみならず、海外でも高い評価を得ている。

舞台化ということでは、実は今回が2度目になる。今回は秋田に本拠地を置くわらび座が手掛ける。
1度目は1998年、新国立劇場にて上演、出演者は高嶋正伸、島田歌穂、土井裕子等。舞台に10メートル以上のガンジス川(しかも本水!)を作ってリアル感を出し、スペクタクルで壮大な“ブッダワールド”を構築、キャスト陣もセットに負けないくらいの熱演で好評だった。今回の演出もこの音楽劇を担当した栗山民也が再び挑戦。実は1994年に岡本健一主演『火の鳥』でも演出を担当、手塚作品には縁の深い演出家である。
また、わらび座は『火の鳥』(2008年)、『アトム』(2010年)と手塚作品を手掛けているが、『火の鳥』は栗山民也が演出をしている。手塚作品を熟知している栗山、今回の公演も期待が高まる。

■ わらび座は実は日本でも有数の劇団、創立60年以上の歴史を誇る

わらび座は、実は劇団四季や宝塚歌劇団に次ぐ大規模劇団で、ファンも多い。養成所で新人の育成も行っており、層も厚い。
日本の伝統芸能を重んじており、民謡や民舞、歌舞等の他にミュージカル制作にも意欲的。劇団創立60年以上、人間の根源に迫り、その多彩な表現を通してより多くの人々の心に感動と幸福を生み出すことを使命としている。この一連の手塚作品シリーズもこのコンセプトに基づいている。

また一方で地域起こしや社会、教育などのさまざまな文化事業に貢献、ワークショップ、振付、ミュージカル指導と多岐に渡っている。1996年より秋田の田沢湖に本拠地を置き「たざわこ芸術村」をスタート“自然と人と文化の交流の場”として多くの人々が訪れている。

■ 手堅い演出、実力派の俳優が紡ぐ手塚ワールド

物語の舞台は古代インド。シャカ族の国に生まれた王子シッダールタ(原作ではシッダルタ)。成人したシッダールタは「何故、世の中には戦いや不幸せに満ちているのだろうか?」と悩み、その答えを探すために国を捨てて修行の旅に出る。
修行の旅は驚きの連続、出会いと別れ、女盗賊のミゲーラ、国を滅ぼされて復讐に燃えるタッタ、王家に生まれたものの、母が奴隷だったことを知って苦悩するルリ王子・・・。なかなか答えが見つからないシッダールタ、そんな時、故郷のシャカ族に危機が迫っていた・・・。

原作では登場人物は多岐にわたり物語も複雑だが、ミュージカル化に際しては登場人物やストーリーをスッキリとシンプルにして物語の本質を提示、原作を知らなくてもすんなり入っていける。
シッダールタ役のわらび座の看板俳優戎本みろは安定した演技でシッダールタから“ブッダ”として生きていく様を体現、客演で参加している今井清隆、歌唱力はさすが。
また、元宝塚歌劇団トップ娘役の遠野あすかは女盗賊のミゲーラを存在感たっぷりに、ルリ王子役の石井一影は苦悩する場面では見せ場を作っていた。タッタ役のわらび座の若手俳優三重野葵は、時には狂気を、時には心の苦しさを滲ませ、陰影を持たせていたのが印象的だった。
ミュージカルならではの手法、群舞、コーラスを効率よく使い、ところどころはオペレッタ形式で物語を進行、世界観を構築させている。『ブッダ』演出2度目の栗山民也、その手腕はさすが、という感がある。ラストは手塚治虫が作品に込めた哲学や思いを一気に、印象的に見せる。一度は見ておきたい作品である。

ミュージカル『ブッダ』
5月7日~12日
シアター1010
5月17日~19日
イオン化粧品 シアターBRAVA!
6月15日~8月15日
たざわこ わらび劇場

/http://www.warabi.jp/buddha/  
《animeanime》
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