原恵一監督が実写映画に挑む 木下惠介生誕100年記念「はじまりのみち」製作決定 | アニメ!アニメ!

原恵一監督が実写映画に挑む 木下惠介生誕100年記念「はじまりのみち」製作決定

日本のアニメ界を揺るがしてきた原恵一監督の待望の新作が明らかにされた。その作品はアニメーションでなく、実写映画である。今は亡き木下惠介監督の生誕100年を記念した『はじまりのみち』を、原恵一監督が指揮を執る。

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『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』、『河童のクゥと夏休み』、そして『カラフル』と、日本のアニメ界を揺るがしてきた原恵一監督の待望の新作が明らかにされた。その作品はアニメーションでなく、実写映画である。
今は亡き木下惠介監督の生誕100年を記念した『はじまりのみち』を、原恵一監督が指揮を執る。2012年11月にクランクイン予定、2013年2月完成予定、劇場公開は2013年初夏を目指している。原恵一監督にとっては、初の実写映画だ。

原恵一監督は1959年生まれ、アニメ製作のシンエイ動画に入社後、『ドラえもん』や『エスパー魔美』などでキャリアを築いた。「クレヨンしんちゃん」シリーズを手がけ、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』で、子どもだけでなく大人の観客もうならせて、一気に評価を高めた。続く、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』、『河童のクゥと夏休み』では、文化庁メディア芸術祭アニメーョン部門大賞、毎日映画コンクール・アニメーション映画賞などに輝いている。
2010年の『カラフル』では、世界最大のアニメーション映画祭、アヌシー国際アニメーション映画祭長編部門で特別賞と観客賞の2冠を獲得した。国際的な評価も高めている。

原監督の近年の作品は実写的とも評されたが、今回はいよいよ実写映画に取り組む。人の心の表現に定評があるだけにどんな演出がされるのか、アニメファン、映画ファンから大きな関心を集めることは間違いない。
一方、原恵一監督は、木下惠介監督を敬愛していることでも知られている。そこで松竹が取り組む木下惠介生誕100年プロジェクトの中核プロジェクトである『はじまりのみち』の監督起用となった。

木下惠介監督は、『二十四の瞳』や『喜びも悲しみも幾歳月』、『楢山節考』など数々の名作を生み出した日本を代表する巨匠だ。木下惠介生誕100年の節目の年となった2012年は、特集上映やイベントなど催しが数々行われた。世界的にも木下惠介作品を再評価する動きとなっている。
『はじまりのみち』では、木下に盲目的な愛情を注いだ母親の たま に焦点をあて、子を想う母と母を想う子の姿を描き出す。さらに軍部に睨まれるきっかけとなった『陸軍』の製作時のエピソードを回想形式で盛り込み木下惠介の姿を明らかにする。


原 恵一監督
木下惠介生誕100年記念映画製作に寄せてのコメント


映画ばかり見ていた若い頃のある時期、もっぱら洋画ばかりを見ていた私が、もっと日本映画も見なければ、と古い日本映画も見るようになりました。
そんな中で出会ったのが木下惠介監督の作品でした。黄金期の傑作群をリアルタイムで見れた世代ではないのですが、それでも私の子供の頃の記憶では、日本映画監督と云えば黒澤、木下の二人の名がまず浮かんだものです。

ある時、木下作品の特集上映を見る機会があって、凄さに打ちのめされました。
作品を見るにつけ、黒澤監督との評価の差が残念だし、不当に思えてなりません。そんな思いから、個人的に木下作品をもっと見てもらえるよう、あちこちで声を上げていたのですが、それが松竹の方にも届いていたのか、この木下監督の生誕100年という年に、作品を作るという企画に声を掛けていただきました。実写の監督経験は無いので、ためらいましたが、こんなメモリアル企画に次は無いと思い、受けさせていただきました。

この作品で描こうとしているエピソードは、実際に木下監督が行ったことを元にしています。時は昭和20年(1945年)の6月末頃、あとひと月半程で日本が無条件降伏をする、全ての日本人が戦争に疲れ、ひもじさに耐え、疲弊していた頃です。その時に、木下監督が病気の母親をリヤカーで運んだ道を地元の方に案内してもらったのですが、山越えの険しい道もあり、さらに当時は未舗装だったことを考えると、男二人で運んだとしても、どれ程大変だったろうかと溜息が出ました。
信じられない、という気持ちでした。重ねてその時の木下監督が一時的にしろ、松竹に辞表を出し、監督を辞めていたという事実が、この行為を特別なものにしていると考えました。
母親を運びながら、木下監督は何を考えていたのだろう。そうまでして運んだ母親を疎開先に残し、終戦前に松竹に戻ったその心況は。何か母親との間で話があったのだろうか。そんなことを想像しながら構成しました。

このリヤカーのエピソードは後年、木下監督が描く作品の登場人物から受ける印象に近いものです。ヒーロー不在、何者でもない市井の人々、運命や時代に翻弄されながらも正しくあろうとする人々、このエピソードが後の木下作品の一端を体現しているようにも思えます。
木下作品を観ないともったいないと心底思います。かといって、この作品を、巨匠の若い頃の美談にもしたくありません。ある若者の挫折と再生の物語として描くことが、この先に作られることになる木下作品への興味となる、そんな風に考えています。
原 恵一
《animeanime》
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