広島国際アニメーションフェスティバルは国際的にも重要な映画祭の1つでありながら、非常にコンパクトな映画祭としても知られている。他の映画祭は複数の会場に分かれていることが多い。しかし、ここでは、主に作品を上映する大・中・小ホールのほかフレームイン、ネクサスポイント、エデュケーショナル・フィルム・マーケットなどといったプレゼンテーションや展示を兼ねたスペースに至るまで、全てアステールプラザの1会場のみで収まっている。そんな会場は、国内外の監督や作家やプロデューサーなど関係者が集っているので密度が濃い。今回注目されたひとつは、最終日27日の「現代日本のアニメーション」である。大友克洋監督の『火要慎』が上映された。こちらでは来場していた森田修平監督の『九十九』がジャパンプレミアとなった。森田監督の『九十九』は、大友監督の『火要慎』と共に今年のアヌシーでコンペティションにノミネートされており、サンライズの短編オムニバス企画「ショートピース」として制作された作品だ。この「ショートピース」は全5作品で、未発表の3作品も期待されている。教育関係では、エデュケーショナル・フィルム・マーケットの出展が目を惹いた。東京藝術大学大学院、アート・アニメーションのちいさな学校、広島市立大学、九州大学など11校である。このほかホール前などを含めると文化庁メディア芸術祭や日本アニメーション文化財団などが軒を連ねていた。最終日の晩は閉会式と受賞作品の発表が行われた。受賞作品は既報の通りで、グランプリはドミトリー・ゲラーさんが監督して中国で制作の『ネコを埋葬するネズミを見た』となった。日本人の作品では水尻自子さんの『布団』が木下蓮三賞、山村浩二さんの『マイブリッジの糸』と和田淳さんの『グレートラビット』が優秀賞5作品のなかの2作品に選ばれた。このほか海外の受賞作品では国際審査員特別賞の1作品として、フランスのミカエラ・パヴラトヴァさんによる『トラム』、優秀賞の1作品としてイスラエルのナタリー・ベッテルハイムさんとシャロン・ミハエリさんによる『ハウル』などがある。『トラム』は今年のアヌシーでグランプリを受賞した作品だ。また『ハウル』は、現在公開中の映画『おおかみこどもの雨と雪』に似ていると話題になった。閉会式では、コンペティションに入選の66作品を審査した国際審査委員から代表として小野耕世さんが講評した。小野さんは「(審査に参加した)誰もがグランプリであるとか、パッと見て分かるような作品を見つけるのが難しかった」と述べた一方で「学生でなくても若い方や女性などの新しい感覚の作品がありました」と傾向にも触れた。また厳しいながらも議論を楽しめたのはユーモアがあったからで、「審査をしながら大笑いしました。そういう人達が情熱や意欲が豊かなものにしていると感じました」と話した。「このようなアニメーション作家たちと一緒に審査出来たことを誇りに思います」。例えばコンペティション作品の上映前にも、国際審査委員のイゴール・コヴァリョフさんとマーヴ・ニューランドさんがコッソリ入れ替わって挨拶するなどのトリックを仕込んでいたりした。フェスティバルディレクターの木下小夜子さんも「大変な審査を助けたのはユーモアだった」と壇上で語ったように、国際審査委員の仲の良さが伝わってくる大会でもあった。[真狩祐志]広島国際アニメーションフェスティバル/http://hiroanim.org/
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