いま語る「コクリコ坂から」 宮崎吾朗監督インタビュー PART1  | アニメ!アニメ!

いま語る「コクリコ坂から」 宮崎吾朗監督インタビュー PART1 

2011年に公開された『コクリコ坂から』は、どんな作品だったのか?作品の魅力は何なのか?公開からおよそ1年、宮崎吾朗監督に作品について伺った。

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宮崎吾朗監督
  • 宮崎吾朗監督
2011年に劇場公開された『コクリコ坂から』は、1960年代の横浜・山手を舞台に主人公の海を中心に爽やかな青春を描き出した。企画・脚本を宮崎駿さん、監督を宮崎吾朗さんが、務めたことも大きな話題となった作品だ。
スタジオジブリ作品らしい美しい映像と、心に伝わるストーリーから2011年の邦画ナンバー1のヒットにもなっている。6月20日には、本作がいよいよDVD/ブルーレイディスクとなり発売される。あらたなかたちで、物語が観客に届けられる。

そんななかで、『コクリコ坂から』は一体どのような作品だったのか?作品の魅力は何なのか?を振りかえる。映画公開からおよそ1年、宮崎吾朗監督に作品について伺った。
[インタビュー取材・構成:数土直志]

『コクリコ坂から』 公式サイト / http://kokurikozaka.jp/index.html


■ 「コクリコ坂から」が長く観て貰えるのであれば、そこには普遍性が

―― アニメ!アニメ!(以下AA)
「コクリコ坂から」の公開から1年経ちますが、監督のなかで作品の見方が変わったところはあるのでしょうか?

―― 宮崎吾朗監督(以下宮崎)
終わった直後は、もっと出来たはずじゃないかとやり残した感が大きかったですね。

―― AA
それは演出なのですか、画的なものなのですか?

―― 宮崎
時間の問題もありますので、画的なものが大きかったかもしれません。演出でもいろいろ出来たのでないかというのはありました。
むしろ、その後、少し時間を置いてから映画を観る機会がありまして、これは面白いんじゃないかと安心しました。

―― AA
今回、DVDやブルーレイが発売されます。映画とはまた違ったかたちの鑑賞になります。

―― 宮崎
映画公開の時には観なかった人が、この機会に新たに作品に出会ってくれるのがうれしいです。「DVDが発売されたから観たけれど面白いじゃん」、そういう人がいるといいですね。
こうした次の機会を作ってもらえることはありがたいです。

―― AA
「コクリコ坂から」は、10年先、20年先、残っていく作品になると思います。その中で作品は普遍性を獲得していきますが、その見方も変わって来るのでしょうか?

―― 宮崎
ピンポイントの時にはまるものと、その後に残っていくものとやはり違いがあると思います。
もし、「コクリコ坂から」が長く観て貰えるのであれば、そこには普遍性があると思います。
人間を描いているということです。作品のキャラクターがきちんと描けているなら、その後も観てもらえると思うし、そこがうまく描けてなければ、「あの年、あの映画がありましたね」で終わってしまいます。

―― AA
「コクリコ坂から」は、時代も含めて、原作からドラステックに変えています。原作をかなりそぎ落とす一方で、舞台に横浜・港を残したこと、ひょっとしたら兄妹かもしれないというシリアスなテーマを残していること、そこがこの作品の普遍性にも見えます。

―― 宮崎
今回の脚本は宮崎駿なのですが、そうしたふるいのかけ方はうまいと思いました。原作の芯になる部分を見つけて、それ以外をいらないものとするわけです。
それを盛り付け直したときに、もとの素材の味わいを残している。きちんと料理になっている。そのやりかたが、優れていると思いました。


■ 「コクリコ坂から」で試みた実写のようなかたち

―― AA
その脚本を渡された時に、最初に監督はどうされようと考えましたか?

―― 宮崎
どうしたらいいんだろうです。
異世界だったり、特殊な能力を持っているというのであればかたちにしやすい。ところが、現実にあった世界で、現実にいそうな女の子、そういったものをどう扱えばいいのかです。
なおかつシナリオを読むと会話劇みたいです。座敷で二人がしゃべっている。その時、ふたりは正座していると思うのですが、動きのつけようがない。
でも雰囲気で会話をさせなければいけない。そういうシーンが一杯あるわけです。
実写だったら俳優さんの佇まいで表現できますが、これをアニメでやらなければいけない。

実写的に俯瞰ばかりで長まわしにしたほうがいいのかなとも思いました。気分が出るかもしれないけれど、それで面白くなるという保証があるわけでないです。アニメーターの腕次第ですし、負担も大きいです。
最終的には逆をやるということを選びました。

―― AA
逆というのは?

―― 宮崎
カットを短くしました。大体ジブリだと1カット平均5秒ぐらいなんです。けれども、それを出来るだけ短くしました。
例えば冒頭では2秒とか、3秒、アクション映画みたいにカットを短くしてつないでいます。実写のような気分は、やりようはいろいろあるんだなと思いました。

/□PART2に続く

『コクリコ坂から』DVD/ブルーレイディスク
6月20日(水)『コクリコ坂から』発売

■ 横浜特別版 ※宮崎吾朗監督による描き下ろしキーアートを使用
DVD 価格:5250円(税込)
ブルーレイ 価格:7350円(税込) 
■ 通常版
DVD 価格:4935円(税込)
ブルーレイ 価格:7140円(税込)

発売元:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン


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