「デジタルコンテンツ白書 発刊セミナー」レポート | アニメ!アニメ!

「デジタルコンテンツ白書 発刊セミナー」レポート

 財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)が毎年発刊する『デジタルコンテンツ白書2007』が、8月に発刊された。
 9月5日、これを記念したセミナーが、デジタルハリウッド大学秋葉原メインキャンパスで開催された。

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 財団法人デジタルコンテンツ協会(DCAJ)が毎年発刊する『デジタルコンテンツ白書2007』が、8月に発刊された。
 9月5日、これを記念したセミナーが、デジタルハリウッド大学秋葉原メインキャンパスで開催された。

 セミナーは、今年より行われる「CoFesta (JAPAN国際コンテンツフェスティバル)」と「コンテンツ市場規模と収益構造」をメインテーマとした。
 まずDCAJ福島寿恵さんによる白書の概要解説、続いて基調講演として、今回のモデレータを務めた福冨忠和さんによる「コンテンツビジネス及びその収益構造の現状と課題」についての講演が行われた。

海外展開戦略とコンテンツのマルチユースが必要
 コンテンツ産業全体約14兆円の中で、デジタルコンテンツが含まれる割合はおよそ3兆円、そしてブロードバンド環境が新聞や関東圏のテレビ受信世帯を越えるほどネットワークの環境は整っているが、産業規模が9%の伸びしかないことについて、福冨さんはリクープの問題を指摘する。

 情報財の収益モデルはデジタル著作権保護(DRM)、iPodのようなプラットフォームビジネス、そしてサービス帰着型の広告収益があるが、品質や決済方法について国内の問題点があるとする。
 この打開策として、海外展開戦略とコンテンツのマルチユースを提言した。またマルチユースについてはファイナンス法の整備も課題点であることを述べた。

 続いて各専門分野の講演が行われた。マンガ産業アナリストの中野晴行さんは「デジタルマンガの可能性と課題」について、アニメアニメジャパン代表の数土直志さんは「国際展開を期待されるアニメ産業の実態」について、IT・音楽ジャーナリストの津田大介さんは「音楽コンテンツのビジネスモデル置換はどこまで進むのか」をテーマにした。

デジタルマンガには15年の歴史
 中野さんの話は、デジタルマンガ15年の歴史から始まった。近年はネットで見るデジタルマンガや電子ブックがある。しかし、これらが普及しない理由として課金と端末の問題があり、それを解決し急成長しているのが、携帯電話コンテンツとしてのデジタルマンガである。
 ブラウザなどの技術の進化と市場の発展が進み、2006年までこれらの市場が拡大していった。ただし、新規参入による事業プレイヤーが増加し、良いコンテンツの取り合いとなって、2007年春には既に撤退する企業も現われる現象が起きていると指摘する。
 最後に日本の少年ジャンプの売れ方と、アメリカで最も売れているバットマンが16万部であることを比較し、マンガの輸出について、海外でどれだけ日本と似たマーケットを作れるかが鍵になるとの見解を示した。

海外アニメ市場の大きさと収益にギャップ
 数土さんはアニメーション産業の海外ビジネスの概略について述べた。海外展開の必要性は、制作費をリクープと、競争力のある日本のコンテンツとして文化的な価値を高める理由があるという。
 海外のビジネス展開としてはテレビの放映権料、劇場の興行収入があるが、これらの規模は小さく、大きいのはキャラクターライセンス商品とビデオグラム販売である。特にDVDは日本での市場規模が900~1000億円に対し、アメリカの市場規模が400~500億円と半分ほどになっている。
 海外市場では市場規模ほどには各企業は収入を得ていない。このギャップは流通にあり、日本の企業はビデオグラムをライセンス販売している現状では販売本数が利益に結びつかず、直接進出が鍵であると指摘する。

 また、海外市場における課題は、海賊盤、ヒット作品の不在がある。ポジティブ要因は、アニマックスの世界展開による認知度の向上やポケモン・ブランドの復活、アニメファンイベントの成長や世界的な露出の増大がある。
 今後の展開としては、現地進出や共同製作の推進や海賊盤対策、マネジメントの人材育成の必要性を挙げた。

ネット配信が音楽ビジネスを変える
 津田さんはまず、音楽ビジネスの変化について述べた。今までのレコード、CDを販売するビジネスモデルが、配信に変わってきているという。すぐではないが、今後は複合的なものになっていくという。
 CDは日本だけではなく海外でも売れなくなってきている。ただし、着うたや音楽DVDがこれらを補完し音楽市場規模は拡大している。また、ライブ市場の拡大があり、「夏フェス」やライブハウスの増加、富裕層向けの高いチケットのライブも売れている。
 では、なぜCD販売が不振なのかというと、複合的な理由があるという。ミリオンヒットの減少や携帯電話料金もあるが、DVDやネットなど娯楽が多様化したため、音楽だけが娯楽の王様である時代は終わったとする。ただ、売り上の減少も3000億円程度で下げ止まると予想する。また、音楽配信はメインの携帯電話向けとPC向けに徐々に伸びていくという。

 音楽は最も繰り返し楽しまれる娯楽なので、現在の配信事情にはまだ課題も大きいが、熱心な音楽ファンも多いのでパッケージと配信の比率は拮抗していくだろうと予想する。
 今後のビジネス展開としては、利益構造の最適化が鍵であるという。インディーズ流通網の充実やMy Space のようなプロモーション方法の変化もあり、宣伝コストと損益分岐点が今一度考え直す必要があるという。
 現在、メジャーレコード会社は中にいくつも細分化されたレーベルを持っており、事業部制の集合体のようになっているためメジャーレーベルの存在意義とは何かが問われていると締めた。

 最後に四者によるパネルディスカッションが行われ、クリエイティビティの危機について多く時間を割いて行われた。マンガもアニメも音楽も、一度売れたものに多く群がり、結果的に濫造したり安全志向によったカタログになり市場を育てる状況が弱いという問題点が挙げられた。
 また、ネットの発達により海外進出への足がかりは楽になったとされる。一方でそれをビジネス面からだけで捉えてはいけないと言ったことが、それぞれの分野から繰り返し発言された。
【日詰明嘉】

財団法人デジタルコンテンツ協会
/http://www.dcaj.org/
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