検索

clear.gif

120_600_2.jpg



120_600_2.jpg
カレンダー
カテゴリ
バックナンバー

2009.09.30
0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 映画館側から見たアニメ映画戦略 ]
clear.gif

斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第12回 映画館の側から見た、アニメ映画戦略(1)
    -東京テアトル・太田取締役&沢村番組編成担当に聞く-

斉藤守彦

 従来リクープの軸足をパッケージ・メディアに置いていたアニメ作品だが、昨今ではDVDマーケットの縮小もあり、映画館での上映が見直されていると聞く。「これまでは、パッケージ・メディアのプロモーションのために、地上波の深夜ワクを買い取ってオンエアしてたんですが、この、いわゆる“ナミ代”が、いつまで経っても下がらない。ならば映画館で興行を行おうという声が多くなってきたようです」とは、さる事情通の弁。
 また「自分たちの作ったアニメ映画を映画館で上映し、お客さんが見ている光景をぜひとも見たい!!」という、スタジオ側の声も反映されることとなったようだ。
 そのきっかけとなったのが、アニプレックス「劇場版空の境界」全七章の東京・テアトル新宿における興行的成功であり、8月8日から公開された第七章も予想通りのヒットを記録した。
 その「空の境界」や「時をかける少女」などで、アニメ・ファンの認知度も高いテアトル新宿に加え、この8月22日から従来の1スクリーンから2スクリーン体制となり、「ホッタラケの島」「センコロール」、そして「空の境界・第七章」と、旬のアニメ映画をズラリならべた番組編成で話題を呼んでいる池袋テアトルダイヤ。両劇場をはじめ、都内で複数の映画館を経営する、東京テアトルの太田和宏取締役映像事業部長と、番組編成実務を手がける映像企画部マネージャー・番組編成担当の沢村敏さんに、これからの同社におけるアニメ映画戦略を聞いてみた。アニメ映画を上映する、映画館の立場からの見解や戦略を、ぜひお読みいただきたい。

【「アニメ色を、あまりつけるな」と、指示を出した。】

−テアトルダイヤの新しいスクリーンって、キャパ何席でしたっけ?
沢村
71席と143席です。

−かつてのテアトル池袋アニメシアターみたいに、1年中アニメを上映するのではないと思いますが、都内に複数の映画館を持っている御社が、アニメ映画を今後どう扱っていくのか、今日はそれをうかがいたいんですよ。
沢村 
つくづく思うのは、1本当たった映画があると、それによってつくイメージって大きいですねえ、映画館の。2006年に「時をかける少女」と「パプリカ」を上映して「アニメ、やってるんだねえ」というイメージがあり、2007年から「空の境界」上映し続けているんで、そのイメージが強いんでしょうね。

−テアトルダイヤは「センコロール」が入っているらしいですね。
沢村 
71席のほうに振り分けたら、全回満席です。
太田 
テアトルダイヤは2スクリーンにして良かったですよ。

−これから色んなアニメが出てきますけど、テアトルさんの映画館としては、それほど本数はやってないんですねえ。
太田 
数はやってないですよ。むしろ「アニメ色を、あまりつけるな」と沢村に言ったぐらいです。逆にそこが良いのかもしれない。確率が高いんですよ。

−当たったものしかやってない。
太田 
そうなんですよ。感じから言うとある程度矛盾しているんですが、数字の底上げは、今邦画が弱いからアニメに頼らざるを得ないけど、アニメ色をつけていくと、やっぱり本興行にも影響が出てくる。
確実に当たるものを選別していくほうが、何というか、映画ファンには「アニメ色がなんとなくあるなあ」程度でありながら、アニメ・ファンには「あそこがやってるのは、確実に特色がある」というバランスが出せるかな。だから、数は多くないですよ。

−常々言われているように、「作家と対話が出来る映画館」というポリシーの中に、たまたまアニメがあったということですね。
太田 
おっしゃるように、そうです。

−でも、ヒットしたアニメ映画が多いから、アニメをやってくれというオファーも多いんじゃないですか?
太田 
多いよねえ。
沢村 
「空の境界」みたいな成功例が出てきて、それはひとつのビジネスモデルとして今までなかったし、DVDも含めて成功している。だからこのパターンで、というオファーは多くなりましたね。同時に情報も集まりやすくなりました。

−編成される立場として、何を基準に上映するかしないか決定されていますか?
沢村 
僕自身の中では、特にアニメも邦画も分けていません。基本的に作家の作品であるかということが大きいと思いますね。
当然、作家の持ち味や特徴が反映されているものには惹かれます。あとは座組のところで、コアなところの指数を計ってみたり。そういうことは当然やっています。

【アニメ・ファンの「3C」攻略が、コンセプト。】

 映画館の上映番組の編成という仕事は、早い時は1年先の作品を、どの映画館で、いつから上映するのかを決めなくてはならない。
 いわば1年先に何が流行り、それが興行にどのような影響を与えるかまでを読まなくてはならない、大変な仕事だ。そこには戦略的な思考も、大胆な行動力も必要とされてくる。

−これだけ当たってる作品があると、勝ちパターンが出来ちゃうじゃないですか。そのパターンにハマるものを選んでいるのか、そうではないけど、うまく行きそうだという作品を選んでるのか?
太田 
今度テアトルダイヤを2スクリーンにしましたので、新宿とダイヤをグルーピングすることによって、そのパターンが出てくるのかな。というのは、今までダイヤは番組が縛られてましたから。空いた時にしか出来ない。新宿もアニメはレイトで空いた時があればやってた。もともとアニメは、番組が空いたとこでやる新人作家的のものが良いんじゃないかと言っていた。
そういう隙間を埋めてたのが、ダイヤが2スクリーンになることで、展開がようやく出来るようになったということですね。実際ダイヤを2スクリーンにする時、何回も経営会議やったんですが、その時ダイヤの71席のほうを年間何本展開するかっていうのを、4本って言ったんだっけ?
沢村 
そうですね。4本。
太田 
まず4本、新宿と合わせてやっていこうと。で、キーワードは「3C」。よく言われるように、クリエイティビティ、コミュニティ、コレクションという、アニメ・ファンの生態で言われる3Cでやっていこうというのが、コンセプトです。

−やっぱりねらい撃ちしてるわけですね。
太田 
そうです。ダイヤもアニメ専門にはしないって形にしたんです。だけど、軸はアニメで作ろう。それが今後新宿と合わせてやってくことで、軸が出来てくるのかな。

−それって微妙なバランスですよね。
太田 
微妙です。新宿が2スクリーンとかあれば。まあ老朽化しているので、再開発の際には2スクリーンにしますけど。

【テアトルダイヤ2スクリーン化は、大成功。】

−池袋の地域性を加味して、テアトルダイヤを2スクリーンにしたんですか?
太田 
加味しました。1年ぐらいかけて、レイト上映とかを見ていると、かなり動きがあったんです。これはポテンシャルが高い。その上で2スクリーンにできないか?と聞いたら技術的には可能だと。

−池袋というマーケットは、アニメだけではなくて、他の作品もやりようによってはもっと伸びる、その可能性を見出したんですか?
太田 
そうです。それはお前のほうが、あったんじゃないの?池袋ってポテンシャルあるの?
沢村 
あると思いますね。特にサンシャイン通りに関連したショップも多いですし、目的が映画館だけじゃないので、他の地域より強いと思います。そのへんの回遊性とかも、優れてるんじゃないかな?

−アニメ映画を都内複数の映画館に編成している時、地域性を考慮して編成していきますか?
沢村 
いや、作品によりますよね。
太田 
基本的にクールアニメでしょ。今、殻にしているのはクールアニメ。「アンパンマン」とかはまた別で。ただクールアニメっぽいものって、渋谷がダメなんですよ(笑)。

−渋谷、ダメなんですか?
太田
「空の境界」をシネセゾン渋谷でやったことがあったんですよ。なぜか分からないけどダメ。1回やってダメなんで、もうやめちゃったんだけど。

−でも、渋谷は「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」が大ヒットしているじゃないですか?
太田 
ヱヴァだと客層が広いんですよ。一般映画として認識される。

−それもまた、微妙なところですよね。
太田 
そうなんですよ。だから「空の境界」みたいな映画って、思想的な部分が強くて、一般の人の映画ではないので、渋谷向きではないのかもしれません。

−シネセゾン渋谷の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」は、ひと興行でいくら行きますか?
沢村 
興収で6500万円です。

−ちょっと近来ない成績ですね。
太田 
いやあ、ないですよ。

(2)  アニメ・ファンと鉄道マニアの生態は、共通している?
(3)  ネット主体の宣伝でヒットした「センコロール」

[筆者の紹介]
斉藤守彦

1961年生れ。静岡県浜松市出身。
映画業界紙記者、編集長の経験の後、映画ジャーナリスト、アナリストとして独立。「INVITATION」誌で「映画経済スタジアム」を連載するほか、多数のメディアで執筆。データを基にした映画業界分析に定評がある。「宇宙船」「スターログ日本版」等の雑誌に寄稿するなど、特撮映画は特に得意な分野としている。

"「特殊映像ラボラトリー」 第12回 映画館の側から見た、アニメ映画戦略(1)" »
clear.gif
animeanime14:01 | (0) | (0)
0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 映画館側から見たアニメ映画戦略 ]
clear.gif

斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第12回 映画館の側から見た、アニメ映画戦略(2)
    -東京テアトル・太田取締役&沢村番組編成担当に聞く-

斉藤守彦

【関連商品のショップでの売上高は、興収対比50%以上!!】

 映画館の経営を支える収入源は、興行収入だけではない。コンセッションでのポップコーンやドリンクの売り上げ、そしてショップにおける関連商品の売り上げも、大きく経営に寄与する。とりわけ熱心なファンを持つアニメ映画は、この関連商品の収入の売上が凄い!!

−アニメを上映する上で、関連商品の売り上げとかも、選択基準に入りますか?
沢村 
もちろん、番組を組んだ時にきっちりとお話させていただいてます。
太田
大事だよね。

−「空の境界」がバカ売れしてますけど、だいたい平均して、アニメ映画の関連商品売り上げって何%ぐらいですか?
沢村 
50%から多い時で70〜80%。場合によっては、興収以上に物販が上がります。

−ええええっっっっ!!!??
太田 
上がりますよ。基準50%ぐらいにおいてます。それが3Cのうちの「コレクション」なんですよ。金に糸目をつけない人が多いので。
ファミリー・アニメの場合は、お金を落とさないですから。ポケモン・グッズがせいぜい購買率20%ぐらい。ところが「空の境界」とかの場合、並んでるもの全部買っていきますから(笑)。

−いわゆる、大人買い。
太田 
1人1万5000円とかね。
沢村 
それを2セットってこともある。
太田 
一度入って来て、並んでるから物販だけ先に買って、映画はまた次の日に見に来るという人もいますから、二重に美味しい。ひとり当たりの単価が、3500円から場合によっては4500円。滅茶苦茶高い。これが初速で行ける。

−初速とは?
太田 
初日から4週間の間ですね。それぐらい最高で狙っていける。それほど単価が高い。しかも宣伝費をほとんどかけずに劇場拡大が出来て、フレキシブルに対応出来るメリットがあります。
沢村 
ネットの住人がお客さんだということもありますが、ネットに自分から情報を拾いに行くお客さんなんですよ。 

−自分から拾いに行くんですか?
沢村 
なかなかそういう能動的に見てくれてる人はいませんよね。公式ホームページのアクセス数が、実写映画とひとケタ違います。普段の公式ホームページが、実写1000件だとしたら、アニメの場合は10000件あります。アクセス数自体、ケタが違う。
物販も、売れるかな?と思ってやたらに並べてもダメで、そこはお客さんとの駆け引きもあります。その作品にあった商品とかを研究したり、メーカーさんとも話しますね。

【アニメ・ファンと鉄道マニアの生態は、共通している?】

 アニメ映画のヒット作に恵まれているテアトル新宿といえども、作品的な評価は高かったものの、それが興行に反映されなかった、残念な例もあった。

−「ストレンヂア」は、クォリティこそ高いものの、数字の上では今ひとつだったと聞いておりますが?
沢村
「ストレンヂア」に関しては、戦略上の…結果論に近いですけど、やりきれなかったところがあります。それは別の作品で取り返しました。
あの失敗を繰り返さないように、あそこから学んだものは多かったです。
太田 
僕はアニメの作品を見て、きちんと分析出来る人間ではないけど、例えば鉄道マニアって、切符が好きなマニアと、模型が好きなマニアと、列車の写真を撮るのが好きなマニアと、いくつかのマニアのカテゴリーに別れているじゃないですか。場合によってそこが重なり合ったり、そこに間が出来たりしますよね。
アニメもそれに近いものがあるんじゃないかと見ています。コミケのインディーズ系に近い層から、ちょっとエロからファミリーから、それが微妙に重なり合ったりしてるんですが、稀に空白地帯に落ちちゃうと、この瞬間、拒絶が始まると思ってるんですよ。「ストレンヂア」みたいに。
沢村 
そうですよねえ。 
太田
鉄道とアニメって、共通項があるって見てたんです。どっちも僕はそんなに興味があるほうじゃないから(笑)俯瞰して見ていると、その間にハマらないとこに落ちた場合、二極化のさいたるもの。ハマるとうまく行く。
さらに「空の境界」はどうか分からないけど、重なり合ったとこのど真ん中に落ちると、ドカンとうまく行くんじゃないかな?生態として見ています、マーケットを。

−僕達は一言でアニメ・ファンとくくりがちですが、本当はいけないんでしょうね。アニメの何が好きな人って、色々あるんですよね。それぞれの人に価値観があって、いくらまで出してくれるか。それが全部分かれば、そういうマーケティングが可能になりますが。
太田 
だからこのアニメを誰に見せたいのか?というところを、もの凄くがっちりしっかりしていて、そこだけはマーチャンダイジングも絶対に外してなくて、まずそこに届かせることが出来れば堅いんでしょうけど。
ところがそれがブレるとズレてしまって、拒絶が始まるんでしょうね。アニメ・ファンは自分で情報を取りに行きますから。最近の映画ユーザーは、情報が降りてくるのを待つ。だから宣伝されると拒絶が始まる。コア・ファン層を狙う時って、そのターゲットにフィットしてないと、突然それが出てくるんですよ。

(1)  アニメ・ファンの「3C」攻略が、コンセプト。
(3)  ネット主体の宣伝でヒットした「センコロール」

"「特殊映像ラボラトリー」 第12回 映画館の側から見た、アニメ映画戦略(2)" »
clear.gif
animeanime14:00 | (0) | (0)
0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 映画館側から見たアニメ映画戦略 ]
clear.gif

斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第12回 映画館の側から見た、アニメ映画戦略(3)
    -東京テアトル・太田取締役&沢村番組編成担当に聞く-

斉藤守彦

【ネット主体の宣伝でヒットした「センコロール」】

−情報の出し方も、細心の注意を払わないと。
太田 
たぶん。

−「センコロール」なんて本当にそうで、今、情報を出し過ぎないってことが、大切になってきていますね。 
太田 
それでさっき言ったコミュニティを上手に使っている。アニプレックスさんなんて、そういうコミュニティに対する情報を、実にうまく発信している。ファンは必ずコミュニティを形成しますからね。僕はそれが何かはよく分からないけど。
我々からすると「センコロール」っていったい何?ってことだったんだけど、それが初日から長蛇の列でいっぱいになる。たぶんそのコミュニティのところに、すぱーんと行ってることを彼らはやってるんでしょうね。
沢村 
「センコロール」が受けてる要因というのは、もろん画の魅力もありますが、もうひとつは音楽なんですね。これはsupercellのryoさんが手がけていて、この人は「初音ミク」のソフトで話題になった人で、ネットの中ではアクセス数が高い。その人の曲に、PVのようについてるのがアニメだった。なので、普通のアニメよりは、音楽よりのところから来ている人が多い。
いつもより客層がファッショナブルだったり女の子が多かったり。初音ミクの客層に近い。いつものお客さんより、音楽のほうから来ている。その深いところをアニプレックスさんがうまくコラボした。それとネット型の宣伝展開なので、普通の宣伝をしてないんですよ。

−そうですね。僕も知らなかった。
太田 
そういうコミュニティをくすぐる情報戦略が非常に必要になってきますね。情報を出し過ぎない。かといってくすぐる情報を出さないと、見向きもされない。

【「空の境界」大成功の秘訣は、まだ分析に時間が必要。】

 「空の境界」「センコロール」に続いて、この秋から上映する「東のエデン」総集編+劇場版2作。東京テアトルという会社は、これからアニメ映画とその作り手たちに、どのような姿勢で関わろうしているのだろうか。

−今後アニメ番組を編成して行く中で、アニメって制作スタジオのカラーが強く出ますよね。配給会社や宣伝会社以上に出る。そのへんの見極めってどうなんですか?
沢村 
うーん…もう作品本位だと思います。どこのスタジオだから絶対に入るということはありませんし。「ストレンヂア」はああでしたけど、同じボンズの「エウレカセブン」は入っている。全然どこだから安心ってのは、実写もそうですが、ないです。

−さっきのアニプレックスさんのように「こうやったらファンが動くんだよ」というノウハウを掴んでいるほうが安心できるでしょ?
沢村 
それは100%活用させていただきます。ただ、僕らもお客さんのレベルで楽しむのが、「空の境界」を2年間漕いできた秘訣だと思います。そこを持ち続けないと、色んなことを打ち出すのが怖くなっちゃうんですよ。どんどんそういうお客さんと一緒に盛り上がっていきたいなと思っています。

−会社としては、「空の境界」の成功って、何が一番良かったんだと思いますか?
太田
うーん…もうちょっと時間が欲しい(笑)。というのは、私が映像を担当するようになってからヒットした初めてのアニメなんですよ。これと「エウレカセブン」、これから「東のエデン」があって、そこで自分なりに初めて見えてくるのかな、という気がします。
正直、今「空の境界」で何が良かったか、軽はずみに言ったら違ってたということにもなりかねないし(笑)。もう1本何かないと。「東のエデン」は違うんだよね、なにか。これはどちらかというと、一般的な、極端なことを言うと「サマーウォーズ」寄り。そうでしょ?
沢村 
まあいってみれば、思いっきりテレビと絡んでいます。
太田
「空の境界」は全七章終えてみて、どうなんだろう?沢村も劇場のほうも、これだけの成果を残した。次なるポテンシャルがあるものを探してくる力が出来つつあるのかな?ってのは感じます。会社としてどうかは分かりませんが、さっき言った3Cということは検証出来たかな。それがダイヤの戦略に繋がっていくのはあると思います。
沢村にも言ってるんですが、これからダイヤと新宿を接点にしてやっていく時、場合によっては出資ということも考えなさいと。チャンスがあったら、500万円でも1000万円でもいいから。そうすると権利者になった時、マーチャンダイズは何か、配給は何かが、より深く見えてくる。私は市場の細分化の中で、これからアニメは欠かせないものになると思っています。その市場細分化はもう起こっていて、このコアな部分をもう1本見てみたい気がしますね。
ここまでオバケみたいに当たることは、そうないと思いますが、何かクールアニメの中で、一発当たる作品が出てくれば、さっきの3Cの中で、どういう戦略を我々が組み立てるられるかというのが出てくるでしょうね。その第一回作品で、なんとなく我々が見えてきたのが、「空の境界」なのかな?という感じです。

【「人狼」での出会いが、「東のエデン」に結実した。】

−沢村さんはかなり早い段階から、「東のエデン」をマークしていましたよね。でもまだ、海のものとも山のものとも分からない。会社として彼の戦略を受け入れたというのは、いかなる勝算があってのことですか?
太田 
ぶっちゃけた話ですね、これから市場が細分化して我々が参入していくって時、まだどちらかといえば、テスト・マーケティング的な意味が、私の中では強いんですよ。出資も検討しなさい、配給もとれるんだったら取りなさいと言うのも、まだテスト・マーケティングなんですよ。我々の得意なジャンルをどこかに作っていく。
そういう意味では、彼がやりたいというものは、なるべくやらせてるんです。というか、こいつが(笑)「これ、ポテンシャルありますよ」って言ったら(冷たく)「ああそう。じゃあやれば?」って(笑)。その中で見えて来るものがあるんですよ。

−やらないと分からないですもんね。
太田 
それで今回ダイヤを2スクリーンに出来た。池袋と新宿で、我々が展開する土壌がちょっと整った。あと2年から3年の中で、我々のテスト・マーケティングを通じて、どこまで本格的ビジネスモデルが形成できるか。これは戦略論ですね。まだちょっと分からないです。
沢村 
実際コアなものになればなるほど、同じものがないという(笑)。確かに「空の境界」はビジネス的に成功しましたが、このパターンで、他に何か乗るのある?と言われると、思い当たらないんですよ。そうなるとまた、作品に沿った展開を次にやることになるので、いつもテストしてるようなことになるんですよ(笑)。
「空の境界」をやって「東のエデン」をやって、それぞれ興行のテーマも、やり方もまったく違う。コアなものをやっていくやり方だと、毎回がそんな感じになっていくのかな、という気もしています。
パターン化すれば良いんですが、なかなかコアな心も移り気ですし。見えないところに金脈があることも(笑)。それを探していかないといけない。

−結果的に「サマーウォーズ」は、ワーナーが配給しましたが、「うちが持っていれば」と考えましたか?
沢村
(小声で)めちゃめちゃ考えました。
 
−悔しがってましたもんね(笑)。
沢村 
でも、実写映画でもそうなんですが、やっていくと繋がってくることがあるんです、この業界。「東のエデン」を早い段階でお話出来たのも「人狼」をテアトル新宿で上映していたからなんです。「人狼」で神山健治さんが演出をやっていた。で、神山さんと知り合って、その才能には注目していました。だからこれをやるって時は、即決しました。

−やっぱり「人」なんですね。人間関係。
沢村 
何を見ているかといえば、もう作家ですね。

−そのあたりは、実写映画の単館と変わらない。
沢村 
そういう意味では「時をかける少女」の細田監督の時も、そうでした。

【「また違う、深いタイプの作品を見つけてきてあります」】

−では、今後のラインアップを。
沢村 
テアトル新宿と池袋テアトルダイヤですが、9月26日から「東のエデン・総集編」。その後11月28日から「劇場版東のエデンI」で、1月9日から「劇場版東のエデンII」。
その間に、12月19日から3週間、押井守監督の実写映画「アサルトガールズ」が入ります。その後も、色々と仕掛けております。また違うタイプの、深いヤツを見つけてあります(笑)。

−色んなヤツを見つけてきますよねえ(笑)。
太田 
こればっか、やらせてますから(笑)。
沢村 
アニメ作品を、池袋単体でも上映出来るようにしたいと考えてます。

−渋谷でアニメってことは、あまりないんですか?
沢村 
やっぱりヱヴァは特例ですから。

−編成の方針としても、作家主義というものにこだわりますか?
太田 
そうですね。そこが原点だと思うんですよ。テアトルが単館に行くと決めた時点で、それが原点。映画ファンをちゃんと維持して、ファン層を次の世代に引き継いで行きたいですね。

(1)  アニメ・ファンの「3C」攻略が、コンセプト。
(2)  アニメ・ファンと鉄道マニアの生態は、共通している?

"「特殊映像ラボラトリー」 第12回 映画館の側から見た、アニメ映画戦略(3)" »
clear.gif
animeanime14:00 | (0) | (0)