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2010.01.25
0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ もーろー日記 ]
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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第16回 もーろー日記/2010年正月・特殊映像対決始末記

斉藤 守彦

●2010年正月興行を制した
「アバター」の大ヒットの秘密は?

 
 日本映画、外国映画、3D大作、CGアニメ、実写特撮映画、アニメ映画が入り交じった“特殊映像正月興行”バトル。どうやら勝敗がついてきたようだ。
 2009年12月某日。
 TOHOシネマズ六本木ヒルズにて、「アバター」の試写会。午後9時半スタート。上映時間2時間42分なので、電車での帰宅は諦めていたが、昼間の人身事故の影響か、地下鉄のダイヤぐちゃぐちゃ。遅れてきた終電で帰ることが出来た。
 その「アバター」だが、全米及び海外諸国よりちょっと遅れて、12月23日から日本公開がスタートした。オープニング時点での成績は、入場者数35万8853名、興収5億3322万7400円。1スクリーンあたりの興収は64万898円(前夜祭分を含む)であった。この成績は832スクリーンという超拡大興行のなせる技と言えるが、この数字を見る限り、188スクリーンでスタートした「ONE PIECE STRONG WORLD」のオープニング(81万8738名、興収10億3843万9600円。1スクリーンあたり552万3615円)に、大きく水をあけられている。
 当初「アバター」の興行ポテンシャルは、さほど高くはなかった。正直言って、マスコミ試写を見た筆者も「興収30億円をどう上回るか…」というのが正直な評価であった。あまりにも「ダンス・ウィズ・ウルブズ」な内容と、パッと見不気味な青い人とか、ジェームズ・キャメロン監督12年ぶりの新作という話題性に、3D映画の真打ち登場!!といった煽り文句だけがこの映画のセールスポイントにしか見えない。日本だけ数日遅れたとは言っても、実質的にはほぼ世界同時公開で、それだとプリントはギリギリにならないと入ってこないし、3Dというフォーマット故、試写会を簡単に開けないというデメリットがある。試写会を開くことが出来なければ、マスコミにも一般観客にも、その内容を伝えることが出来ないわけで、宣伝的には大きなリスクを背負うことになる。さて正月にかけての興行では、いかなる推移をするのだろうか。
 
●「カールじいさんの空飛ぶ家」は、
 8か月に渡る宣伝展開が行われた。

  
 「アバター」と対照的だったのが、ディズニー=ピクサーのアニメ映画「カールじいさんの空飛ぶ家」だ。全米公開は2009年のサマーシーズン。夏休みに日米同時公開という手もあったが、この映画にとってそれは得策ではない。公開時期を2010年正月と定め、ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパンは万全の体制でこのアニメ映画のマーケティングを行っていった。宣伝部としても、日本製アニメ映画のように、TVシリーズなどで既に知名度のある作品とは違い、ディズニー・アニメの場合、ゼロから作品の内容やキャラクターを売り込まなくてはならないわけで、これはかなり時間と手間のかかる作業だ。この前年、アメリカでは夏に公開された「ウォーリー」を、同社では正月に公開して興収40億円のヒットに導いている。同じように「カールじいさん…」も、作品内容の浸透を第一に心がけた。オリジナル・タイトル「UP!」も、あえて日本語タイトルにし、「じいさん」という単語を使ったのも、昨今の観客が高齢化していることを考慮したという、徹底した日本マーケット向けのローカライズが行われたのである。
 また「カールじいさんの空飛ぶ家」の場合、3Dバージョンも同時に上映されたが、「アバター」のように3Dのみを連呼するような売り方をしていない。あくまで3D版はプラス・アルファという位置づけで、マスコミ試写も3D版は、東京国際映画祭で上映されたフィルムを使って、わずか4回しか行われなかった。
 宣伝の立ち上がりはゴールデン・ウィーク。実に8か月に渡り、試写会の開催や来日記者会見、野村もと楽天監督をカールじいさんに仕立てたイベント展開など、公開までにおよそ考えられるあらゆる手段を使って、パブリシティ、アドバタイジング、プロモーション展開を行い、万全の姿勢で12月5日の初日を迎えたのであった。
 本稿執筆時点での累計興収は46億円と、「ウォーリー」を上回ったものの、最終的に50億円の大台に届くかは微妙なところだ。タラレバの話になって恐縮だが、もし「カールじいさん…」が「アバター」のように、3D版をメインに据えたマーケティングを行ったならば、いかなる結果が出たかは興味深い。しかしこの映画のように感情に訴えかける作品の場合、昨今のハリウッド映画の大作のように、けたたましい売り方をするのはマイナスになりかねない。扱いが難しい作品なのだ。
 
●大番狂わせ?予想外の大ヒット!!
「STRONG WORLD ONE PIECE FILM」

 2010年1月某日。
 12月12日から東映アルファ・チェーンを中心に、全国188スクリーンでスタートした「STRONG WORLD ONE PIECE FILM」の興行収入が、40億円を突破したとの報道。
 この作品、原作者の尾田栄一郎が、アニメ化10周年を記念して製作総指揮、映画ストーリー、コスチューム&クリーチャー・デザインを務めただけあって、確かに面白い。事前の予測では、前作「エピソード・オブ・チョッパー+冬に咲く、奇跡の桜」の興収が9.2億円だったことから、10億円の大台突破は確実。作品のクォリティから行けば興収20億円は可能と言いたいところだが、全国188スクリーンというマーケット規模では、さすがに無理がある。東映の宣伝マンも「本番線(邦画系)での『仮面ライダー』とはスクリーン数が違うので、かないませんよ」と言っていたが、フタを開けるや当事者の予想を大幅に上回る大ヒット。現在までの累計興収は43.6億円。最終的に45億円を突破することは間違いなしの、超・大ヒット。ここ数年の東映配給作品としては「男たちの大和」(興収50.9億円)、「相棒 -劇場版-」(興収44.4億円)と肩を並べることになろうとは、誰が予想しただろうか。
 今回のこの新作は、東映にしては珍しくTV=出版=映画の連動が実施されたケースだ。まずTVアニメ・シリーズは「映画連動特別編」と題して、11月15日より4週に渡ってエピソードをオンエア。また出版では「週刊少年ジャンプ」での連載に、映画のキャラクターを登場させ、さらに12月4日に刊行した単行本56巻は、初版285万部という、我が国史上最高の発行部数を記録したことが報じられ、世間の注目を集めた。こうした複合的な話題の連鎖が、映画への注目度を集め、それに加えて、原作者自ら描きおろした「エピソード0」を入場者全員にプレゼントするというサービスと話題性が、さらに拍車をかけることになった。初日から上映館では満席はおろか、向こう1週間分のチケットが売り切れたという。これには関係者も業界人もびっくり。中でも驚いたのが、東映の人たちだという(笑)。「アバター」が公開される23日までは、一番大きなスクリーンで上映したシネコンも、かなり多いようだ。そうなると、スクリーン数の多い作品が、必ずしも興行的に優位な地位にあるとは言えない。アンダー200スクリーンで展開した作品としては、昨年の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の興収40億円を上回る作品が、早速登場したことになる。

(2)興収100億円の可能性もある 「アバター」の快進撃ぶり!!

[筆者の紹介]
斉藤守彦
1961年生れ。静岡県浜松市出身。
映画業界紙記者、編集長の経験の後、映画ジャーナリスト、アナリストとして独立。「INVITATION」誌で「映画経済スタジアム」を連載するほか、多数のメディアで執筆。データを基にした映画業界分析に定評がある。「宇宙船」「スターログ日本版」等の雑誌に寄稿するなど、特撮映画は特に得意な分野としている。

"特殊映像ラボラトリー 第16回 もーろー日記/2010年正月・特殊映像対決始末記-1-" »
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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第16回 もーろー日記/2010年正月・特殊映像対決始末記-2-

斉藤 守彦

●健闘「仮面ライダーW・・」
 撃沈「宇宙戦艦ヤマト・復活篇」

 
 「STRONG WORLD ONE PIECE FILM」の陰に隠れてしまったが、東映邦画系で公開された「仮面ライダー×仮面ライダー/ダブル&ディケイド MOVIE大戦2010」も、昨年夏の「劇場版仮面ライダーディケイド/オールライダー対大ショッカー」にはかなわないものの、最終興収15億円を見込む健闘ぶり。ただし「仮面ライダーディケイド」の最終回に「この続きは、映画館で!!」と告知した、あれは明らかにやりすぎ。苦情が殺到し、テレビ朝日の社長が謝罪したのも無理はない。
 TVシリーズがオンエアされてない分、「大怪獣バトル/ウルトラ銀河伝説THE MOVIE」は、分が悪い。現時点での興収は6.08億円といったところで、前作「大決戦!超ウルトラ8兄弟」の8.4億円を下回る結果となりそうだ。作品内容的には悪くないが、ミクラスがベムスターをやっつけるという、あの描写には開いた口が塞がらなかった。
 12月12日は、さながら“昭和ヒーロー映画決戦”。「仮面ライダー」「ウルトラマン」と並んで公開されたのが、「宇宙戦艦ヤマト・復活篇」。まあ内容は昔と同じなんだけどね。これが見事なまでに撃沈。現時点での興収は4.3億円。観客の大半が40代の男性だというから、往年を知っている観客しか来なかったわけだ。来年正月に公開される実写版のためにも、再びヤマト・ブームを巻き起こしてもらいたかったのだが・・。
 もう1本残念な結果に終わったのが、りん・たろう監督の新作「よなよなペンギン」。現時点での興収を書くのは差し控えるが、未だ1億円に到達していないことは明記しておこう。製作費から換算して、さてこの成果は…?
 
●興収100億円の可能性もある
「アバター」の快進撃ぶり!!

 1月某日。
 「アバター」が、日本市場において累計興収60億円を突破したとの報道。アメリカのみならず、海外公開も好調で、もしかすると「タイタニック」を抜くかも?などという声さえ出ている。日本の場合は、「タイタニック」が262.1億円というモンスター・クラスの興収なので、これを「アバター」が抜くことは、まずないとは思うが。
 実は「アバター」が公開されて3日目の時点で、現在発売中の「MOVIEぴあ」掲載用に、20世紀フォックス日本代表であるジェシー・リー氏と対談をした。テーマは「アバター」を中心に、これから映画はどう変わり、観客はどう受け止めるだろうか?といったこと。その時点でリー氏が語った「最初こそSF映画と思った男性客が来ていますが、徐々に女性客が増えてくることでしょう。それ以降は、上下の年齢に広がっていく」という観客層の変化予測は、見事に当たった。それもこれも、3D映画であることを連呼した宣伝につられてきた観客が、作品のクォリティの高さを認め、クチコミで広がったことが要因だ。 
 ゴールデン・グローブ賞2部門で最優秀賞を受賞したことから、アカデミー賞に絡むことも確実。最終的には興収85億円は射程距離内だが、今年上半期は邦画洋画ともに際だった大作がないことから、シネコン各社がその気になれば、「アバター」のさらなるロングラン興行も可能だ。アカデミー賞で主要な賞を受賞すれば、さらに客足に弾みがつき、100億円の大台突破という可能性も、充分に考えられるだろう。
 昨年夏あたりから、メジャー系作品を中心に、断続的に公開された3D映画。その話題の蓄積が、“3D映画の決定打”である「アバター」の注目度につながり、またタイミングよく年末に入って家電メーカー各社が3Dテレビの商品化を大々的に発表した。「3Dであることばかりを連呼し、作品の内容をさっぱり宣伝していない」という、興行サイドのブーイングも理解出来るが、今回はその結果が吉と出た。「この映画の宣伝は、とにかく作品を見てもらうしかない。『アバター』を見た観客が、『アバター』の最高の宣伝マンになるのです」という、リー代表の見解は、見事なまでに的を得ている。

(1)2010年正月興行を制した「アバター」の大ヒットの秘密は?

"特殊映像ラボラトリー 第16回 もーろー日記/2010年正月・特殊映像対決始末記-2-" »
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2009.08.25
もーろー日記 ]
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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第11回 もーろー日記 3Dで飛び出す!?特殊映像の夏!!(1)

斉藤守彦

【乱立する3Dフォーマット。
 どれが一番飛び出して見える?】

 7月某日。
 TOHOシネマズ川崎にて、「モンスターVSエイリアン」を鑑賞。例の3Dアニメの新作である。飛び出すのが売りの3D映像だが、まあ言ってみれば、アニメの場合はそういう演出を制作レベルで出来るわけだから、「モンスターVSエイリアン」みたいに、思いっきりシナリオを単純化して、とにかく巨大ヒロイン・スーザン(世代のヒトたちは、巨大フジ隊員を思い出すだろうなあ)の活躍というか暴れっぷりを見せた作品。
 昨今3D映画がたくさん公開されているが、同時に上映システムも乱立していので、分かる範囲でちょっと解説。

xpand.jpg 現行の3Dデジタルシステムは、主に3つのフォーマットで上映されている。「RealD」「ドルビー3D」「XpanD」だ。この中で、目下急速な勢いで普及しているのが、XpanDというフォーマット。
 国内シネコン・チェーンで最大のスクリーン数を持つTOHOシネマズが導入したことから国内シェアを伸ばし、筆者がTOHOシネマズ川崎で「モンスターVSエイリアン」を見た時も、このフォーマットであった(川崎地区のシネコンは、TOHOシネマズ、チネチッタ、109シネマズは3サイトともこのフォーマット)。この3Dメガネの写真、はい、出してください(なぜに淀川調?)

 シネコンとしては、このフォーマットだと、既設のスクリーンで運用が可能で、しかも3Dシステムの価格も他のよりリーズナブル。ただしメガネに関しては、基本的に映画館サイドが購入しなくてはならず、これが1個5800円ナリ。しかも内部に乾電池を使用するので、定期的にメンテナンスをして、しかるべきタイミング(250時間持つとか)で交換しなくてはならない。流星人間ゾーンのマーカー・チェンジみたいなもんか。ただしシネコン内のスクリーン移動が可能な上に、大規模な設置工事を必要としないあたりが普及のカギかと。

 新宿バルト9をはじめ、ティ・ジョイ系列のシネコンに、比較的早く導入されたのがドルビー3Dのフォーマットで、これまた既設スクリーンでの運用は可能なれど、他の2フォーマットが20mまでのスクリーン・サイズまで対応出来るのに対して、12mが限界であるあたりが、ちょっと苦しい。なのでバルト9も座席数200席以上には使っていないはず。
 シネコン内のスクリーン移動も困難と、融通が利かないフォーマットだが、同一の作品を複数のフォーマットで見た人によると、クォリティとしては、最もこのドルビー3Dが高いとのこと。過去にティ・ジョイ系列で「ルイスと未来泥棒」「ベオウルフ・呪われし勇者」の3D上映に使用された。

 残るRealDフォーマットも、スクリーン移動が出来ないことから、シネコンには適さないが、国内シェア第2位のワーナー・マイカルがこれを大々的に導入している。アメリカ国内ではシェア95%を持つフォーマット故、本国からの指示だった模様。専用のシルバースクリーンを設置しなくてはならないのと、大規模な工事が必要なあたりも普及の障害になっているが、メガネは安価で、この方式での上映だと、観客が3Dメガネをおみやげに持って帰れるという良さがある。
 デジタル3D創世記に、ディズニーの「チキン・リトル」を舞浜のシネマイクスピアリが上映。また最近ユナイテッド・シネマ豊洲が、このフォーマットを導入した。

 とまあ、この3つのフォーマットは、いずれも一長一短あれど、とりあえず3D効果については、それなりに楽しめる。
 で、なぜに筆者が川崎くんだりまで3D映画を見に行ったかといえば、同じ日に「ハリー・ポッターと謎のプリンス」のIMAX 3Dバージョンの試写会が、同じ川崎の109シネマズであるから。「モンスターVSエイリアン」を見た後は、ハリポタIMAX 3D。立体映画2本立てとシャレこんだわけだ。
 IMAXの3Dは、上記3つのフォーマットどれにも該当しない、IMAXのオリジナルだが、「ハリー・ポッターと謎のプリンス」は、冒頭13分間だけが3Dで、それが終わると画面の四隅にメガネをかけた少年の顔面マークが表示され(心なしか、ハリー君に似ている)、そこからはメガネを外して通常バージョン…とは言ってもIMAXだからそれなりに大きいけど、以前新宿にあった高島屋のIMAXほど大きなスクリーンではないのが残念。3Dシーンは、迫力あったなあ。冒頭の“闇”の襲来シーンとか。

(2)  「劇場版仮面ライダーディケイド」と、 「ボルト」3Dバージョン
(3)  大ヒット!!「劇場版ディケイド」と、3D効果抜群の「シンケンジャー銀幕版」
(4)  この夏休み興行のトピックは、やはり「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」であった。

[筆者の紹介]
斉藤守彦

1961年生れ。静岡県浜松市出身。
映画業界紙記者、編集長の経験の後、映画ジャーナリスト、アナリストとして独立。「INVITATION」誌で「映画経済スタジアム」を連載するほか、多数のメディアで執筆。データを基にした映画業界分析に定評がある。「宇宙船」「スターログ日本版」等の雑誌に寄稿するなど、特撮映画は特に得意な分野としている。

"「特殊映像ラボラトリー」 第11回 3Dで飛び出す!?特殊映像の夏(1)" »
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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第11回 もーろー日記 3Dで飛び出す!?特殊映像の夏!!(2)

斉藤守彦 

【「劇場版仮面ライダーディケイド」と、
 「ボルト」3Dバージョン】

 7月某日。
 毎年恒例の「劇場版仮面ライダー」シリーズ。今年はもちろんディケイドの出番で、さらに昭和ライダーと平成ライダーが勢揃い。題して「オールライダー対大ショッカー」ときた。いいなあ、この「大」ショッカーというネーミング・センス。いかにも東映(笑)!!まあ今年の場合は、ロゴともども狙ってるんだろうけど。
 しかも同時上映の「侍戦隊シンケンジャー銀幕版/天下分け目の戦」が、3D上映だという。るんるん気分(死語)で試写室に着いたら、東映宣伝部のヒト曰く「試写は通常バージョンですよ。うちの試写室で、画が飛び出すわけないじゃないですか。そんな設備もないし」と。ひ・・ひどいわっ!!東映!!・・まあよく確認しなかった筆者も悪いんだけど。

 ぶつぶつ言いながら着席。「劇場版仮面ライダーディケイド」は、さすがに賑やかな内容。横一列のライダーたちは、最初のシリーズの1話から見ている身としては、それだけでも感動的!!ただし、アクション派金田治監督作品としては、不満が残る。ストーリーが詰め込みすぎ。
 夕方から、今度はTOHOシネマズ日劇3で開催される、ディズニー・アニメ「ボルト」の3Dバージョンのジャパン・プレミアに参加。フォーマットはXpanD。すっかり3D映画づいているなあ。あんまり技術的なことは、詳しくわかんないんだけど。
 肝心の立体効果はというと…今ひとつ。どうも完成した2Dバージョンを3Dバージョンにしたらしい。最初っから演出が3Dならではの立体効果を意識してないわけだ。ちなみにXpanDのメガネは、真ん中にあるウルトラビームみたいな受光部を塞ぐと、立体効果がなくなるぞ。上映中、時々試した筆者は、なんと意地悪なヤツなのだろう(笑)。
 
【「サマーウォーズ」、快進撃のスタート!!】

 8月某日。
 1日に全国127スクリーンで公開された、細田守監督の「サマーウォーズ」のオープニング成績がまとまる。連絡をくれた営業部のヒトによると、「初日がサービスデーだったにもかかわらず、2日目は初日対比85%の入り。観客層も女性が多く、いい感じです」と。 
 オープニング2日間で、入場者数10万9250名、興行収入1億2753万8200円、1スクリーン当たり興収100万4238円は立派なスタートで、この週末にスタートした新作のうち、1スクリーンあたり100万円を超えたのは「サマーウォーズ」だけだ。
 ちなみに、7月11日からスタートした「モンスターVSエイリアン」のオープニング2日間成績は、396スクリーン計8万5223名、興収1億2481万7130円、1スクリーン当たり興収31万5195円。「サマーウォーズ」は、その3分の1以下のスクリーン数で、ほぼ同格のオープニング興収をあげ、1スクリーン当たりの興収では「モンスターVSエイリアン」の3倍の額をあげたのであった。あっぱれじゃ!!コイコイ!!
 
(1)  乱立する3Dフォーマット。どれが一番飛び出して見える?
(3)  大ヒット!!「劇場版ディケイド」と、3D効果抜群の「シンケンジャー銀幕版」
(4)  この夏休み興行のトピックは、やはり「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」であった。

"「特殊映像ラボラトリー」 第11回 3Dで飛び出す!?特殊映像の夏(2)" »
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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第11回 もーろー日記 3Dで飛び出す!?特殊映像の夏!!(3)

斉藤守彦 

【大ヒット!!「劇場版ディケイド」と、
 3D効果抜群の「シンケンジャー銀幕版」】

 8月某日。
 今度は8日からスタートした「劇場版仮面ライダーディケイド/オールライダー対大ショッカー」「侍戦隊シンケンジャー銀幕版/天下分け目の戦」の2本立てが、各地で大ヒットの報。月曜日に東映宣伝部のヒトに言って、景況を書いたリリースを送ってもらう。
 うおお…こりゃ凄い。確かに大ヒット!!と、強調符を2つもつけるに相応しい成績だ。「歴代ライダー勢揃い・歴代ライダー映画�1 興行収入20億円超確実!!」「8月8日・9日週末2日間では、並み居る洋画大作・邦画を押しのけて 興収4億7700万円(興行ランキング1位) 全国動員数39.9万人達成」。 ううむ、景気の良いリリースは、読み応えがあるなあ。もっとも、当たらなかった作品のプレスリリースを発行する宣伝部はないだろうけど(笑)。去年の「仮面ライダーキバ」「炎神戦隊ゴーオンジャー」(興収9億円)対比256.1%のスタートというのも凄い。

 実は今年のライダー映画、前売り券の売れ行きがすこぶるよろしく、オールライダー勢揃いとあっては、そらもー昭和ライダーで育った世代としては放っておけない。個人的な思いもあって、東映の人と会うたびに「今年は興収20億円行きますよ!!」と、根拠のない断言をしていた筆者であった。良かった。嘘つきにならずにすんだ。
 まあ「根拠がない」とは言っても、そこはアナリストを自称する身なので、それなりに確信はあった。春の「ヤッターマン」大ヒットの原動力が、親子2世代であったという事実。春休みや夏休みのお子ちゃま番組は、作品の選択権をお子ちゃまが、入場料金負担権を親が持っている。そのどちらかが拒否したら、映画鑑賞は未遂に終わってしまう。ところが「ヤッターマン」にしても、「劇場版ディケイド」にしても、親子どちらをも惹きつける要素があったのだ。これは強い。

8月某日。
 その「ディケイド」「シンケンジャー」の3Dバージョンを、新宿バルト9で鑑賞。某サイトにレビューを書く都合もあるが、どーしても「シンケンジャー」の3Dバージョンが見たかったのだ。レッドワンという、4K対応のデジタル・ビデオカメラを2台投入して、撮影段階から3D映像を構築したという「シンケンジャー銀幕版」。その成果たるや、ちょっとびっくりしてしまった。

 以前のものとは違って、今回にわかブーム化している3D映像は、こけおどし効果よりも、奥行きや立体感の表現に秀でている。例えるならば、レイヤーを何枚か重ねることで、奥行きや背景を表現する方法に似ていると言えるだろうか。
dolby.jpg 「シンケンジャー銀幕版」の場合、冒頭のチャンパラ・アクションシーンは言うに及ばず、なにげないドラマの背景にも立体感を取り入れた演出をしており、通常のTVシリーズにもこのカメラを使っているという、スタッフの習熟度が随所に見られた。
 3D撮影は手間もかかって大変とのことだが、その効果は上映時間30分のこの作品から、存分に感じ取ることが出来る。バルト9での上映フォーマットは、ドルビー3D。はい、これがメガネです→。

 アメリカではジェームズ・キャメロン監督が「アバター」で、本格的な3D撮影を行っているが、さすがにそれほどのスケールではないものの、日本のアニメや特撮映像は、3D化するに相応しいコンテンツだと思う。たとえばの話、ウルトラマンが登場する、あのバースのついたカットを、3Dで見たいとは思わないか?
 結論:3D映像は、日本の特殊映像のためにある。

(1)  乱立する3Dフォーマット。どれが一番飛び出して見える?
(2)  「劇場版仮面ライダーディケイド」と、 「ボルト」3Dバージョン
(4)  この夏休み興行のトピックは、やはり「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」であった。

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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第11回 もーろー日記 3Dで飛び出す!?特殊映像の夏!!(4)

斉藤守彦

【この夏休み興行のトピックは、
  やはり「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」であった。】

 8月某日。
 さる会合の後で、某シネコン・チェーンのヒトとお茶&雑談。
「どーでしたか?この夏休み興行は?」
「いやあ、うちはおかげさまで良かったんですよ。というのも、『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』を上映出来ましたから」
「全国120スクリーンという展開だから、上映出来なかったシネコンも少なくないようですね」
「そう。今年はヱヴァを上映出来たシネコンと、出来なかったシネコンでは、もの凄く成績に差が出たんですよ。『ポケットモンスター』とか『ハリー・ポッターと謎のプリンス』はシリーズものなんで、どの程度の成績か予想がつきます。でも、ヱヴァの場合は予想を上回ってました」
「僕も最初は、前作の『序』の20億円を上回るだろと予想していたけど、まさか30億円の大台を超えるとは」
「8月1日からスタートした『サマーウォーズ』も、大きな展開ではないが故に、うちでは好成績です」
「あ、やっぱり。こちらも全国127スクリーン体制だから、1スクリーンあたりの興収は高くなりますね」
「ヱヴァと観客の流れが、繋がってる感じですね」
「キャラクターデザインが、同じ貞本さんだから、確かにイメージは繋がりますね。ヱヴァほどではありませんが、今のペースだと、興収10億円は行きそうです」「そんなに!! 関連商品も、ヱヴァほどの種類はありませんが、よく売れています」
 本稿執筆時点での報道によれば、「サマーウォーズ」は累計興収9億3364万4650円。お盆興行で客足を伸ばし、特にファミリーと若者層が増えたとのこと。また第2週興収が前週対比107.6%、第3週週末興収も、前週末対比118.5%と、尻上がりに観客数がアップしている。これは特筆すべき現象だ。
 
【2Dでも傑作の「カールじいさんの空飛ぶ家」は、
  興収100億円目標!!】

 8月某日。
 ウォルト・ディズニー・スタジオ試写室にて「カールじいさんの空飛ぶ家」の試写を鑑賞。とはいえ同社試写室には、まだ3Dの設備がないため今回は2D上映となったが、筆者としては待ちに待った試写だった。近来これほど「いいよ!!」「面白いよ!!」と評判の高い作品はなく、宣伝部からの「なるべく早く見てください。とにかく面白いから」とのお誘いはもちろん、今回は、いつもクールな営業部のヒトからも「3D効果も、ドラマとしても素晴らしい出来ですよ!!」と、強いプッシュがあった。アメリカで3Dバージョンを見てきた、「アニメ!アニメ!」編集長も「いやあ、面白かったですう!!」と絶賛。
 期待に胸ときめかせ、開映時刻を待っていると、営業部のえらいヒトが「こんちゃ」とやって来て、「マジで100億円、目指そうと思ってるんですよ」と、耳元でボソッ。
 ほお。

 ディズニー=ピクサーのCGアニメ映画では、「ファインディング・ニモ」が興収110億円、「モンスターズ・インク」が94.95億円を記録しているが、この数年は「カーズ」19.43億円、「レミーのおいしいレストラン」32.73億円、「ウォーリー」40億円と、高アベレージながら、今ひとつ往年の勢いが見られなかったのは事実。かくなる上は「モンスターズ・インク」を超え、あわよくば「ファインディング・ニモ」に追いつき追い越せという意気込みは、頼もしい限り。
 作品自体も、笑わせ、泣かせ、手に汗握らせ、大いに楽しませる作品でありながら、最後には感動で締めくくるという、エンタテインメントのお手本のような出来だった。3Dバージョンを見る日が、今から楽しみだ。

 ジョン・ラセターをはじめとするピクサーのスタッフは、かねてより3D映像に取り組むつもりだった。ところが彼らの納得出来るクォリティに技術が到達していなかったが、ようやくおメガネに叶うレベルになった。
 そこで手がけたのが「カールじいさんの空飛ぶ家」ということだ。今後この作品の動向は、注目必至。12月5日の公開に向けて、大々的なプロモーションが行われるだろうが、そうした派手なプロモーションに負けてしまう作品では決してないことは保証しよう。

 2009年の夏は、まさしく特殊映像の夏であった。日米の特殊映像たちのこれからに、幸多かれ!!

(1)  乱立する3Dフォーマット。どれが一番飛び出して見える?
(2)  「劇場版仮面ライダーディケイド」と、 「ボルト」3Dバージョン
(3)  大ヒット!!「劇場版ディケイド」と、3D効果抜群の「シンケンジャー銀幕版」

"「特殊映像ラボラトリー」 第11回 3Dで飛び出す!?特殊映像の夏(4)" »
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2009.04.25
0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ もーろー日記 ]
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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」

第7回 もーろー日記/2009年3月-1-

今日は特撮、明日はアニメ。どこまで続く?特殊映像三昧の日々よ。
流れ流れて行き着く先は…。

斉藤守彦

■ 丁寧なシリーズ構成と、エピソード編が光った「ケータイ捜査官7」

[3月某日。]
 昨年4月からオンエアがスタートした「ケータイ捜査官7」も、いよいよラスト。三池崇史監督による最終回は、1時間枠でのオンエアだ。スタート当初は、携帯電話に手足をつけた、そのレレレなフォルムに違和感を感じたものの、毎週見ていくうちに目が慣れてしまうあたりは怖い。初期の設定解説編からエピソード編、強敵の登場、登場人物たちの葛藤、最近のヒーローものではよくある、味方組織の誕生秘話、そしてラスト・クールに於ける最終決戦。「ケータイ捜査官7」のシリーズ構成は、おおむねこのパターンを踏襲しているのだが、ひとつひとつの要素を見せていく、その流れがスムーズで、妙な言い方だが「視聴者を置いてけぼりにしない」巧みな構成であった。前後のエピソードを無視して、唐突で「おいおい、なんでそーなるの?」とツッコミたくなる展開をしなかったあたりの誠実さは高く評価したい。

 全45話(+スペシャル・エピソード3話)という、3クール以上4クール未満の話数は、当初全51話が予定されていたものが短縮されたせいだそうだが、メインのエピソード以外にも、小中和哉、鶴田法男、渡辺武監督らの手による、エピソード編が丁寧に作られていたことは、シリーズの充実に大きく貢献したと言えるだろう。ただしゲスト監督編である押井守監督の「圏外の女」前後編は、なぜこの時期にこの内容?という疑問大いにアリ。サブタイトルさながら、シリーズとしては圏外に置きたい出来であった。細かい設定と伏線が張られたシリーズだったので、ゲスト監督の入りどころが難しかったのは分かるけど、いくらなんでもこれは…。
 それにしても、その風貌からして女教師っぽい伊藤裕子が、最終回で「いい加減にしなさいっ!!」と、主人公・ケイタを戒めるあたりは、もー完全に女教師炸裂!!!いつアンドロ仮面に変身するかと…違うか(笑)。現在は大根仁監督の「湯けむりスナイパー」で、温泉旅館の女将さんに扮しているのだから、コスプレ系がハマる女優さんなのだろう。

■ クールアニメ・マーケティング・ヒストリー」のココロ
 
[3月某日]
 この「特殊映像ラボラトリー」用に取材・執筆した「クールアニメ・マーケティング・ヒストリー/『時をかける少女』編」が、無事アップデイト。この「クールアニメ・マーケティング・ヒストリー」は、名作アニメ映画の舞台裏というか、メイキングではなくマーケティングのプロセスを取材したもので、最初の「ルパンVS複製人間」「アキラ」こそ、製作年度の古さから、多少のメイキング取材をしたものの、本来はマーケティングについて触れたものなのであーる。
 なぜそうしたかといえば、メイキングなどの情報は、公開時雑誌や各種出版物で公にされることが多く、特にDVDリリース時の映像特典に、オフィシャル・メイキングが収録されたりすると、取材した立場としては、もう立つ瀬がないわけですよ。某社のように、メイキングは自社のオフィシャルのみで、基本的にメディアからの現場取材には応じないというところもあるし。

 まあそんな状況と、「アニメ!アニメ!」は、アニメ・ビジネスサイトであることを考慮した結果、1本のアニメ映画が配給された背景に注目し、なぜそういうマーケティングを行ったのか?またその成果はどうだったのか?を検証したかったのだ。
 今や様々な企業が映画に出資する時代。ところが、映画そのもののメイキング情報はあっても、完成した映画がいかにして公開されたかという、配給・興行関係の資料はほとんどないという現実。実際、当事者の方々は困ってますしね。そういうの、良くないですよ、ビジネスとして。
 で、次回の「クールアニメ・マーケティング・ヒストリー」は、クールアニメという以上、この作品は避けて通れない!!はい。あのアニメ映画についてです。鋭意取材中。

2009年3月-1- 「ケータイ捜査官7」ほか
2009年3月-2- 紀里谷和明監督「GOEMON」 
2009年4月-1- 「ラスト・ブラッド」ほか
2009年4月-1- 「真マジンガー」、「クレヨンしんちゃん」

[筆者の紹介]
斉藤守彦
1961年生れ。静岡県浜松市出身。
映画業界紙記者、編集長の経験の後、映画ジャーナリスト、アナリストとして独立。「INVITATION」誌で「映画経済スタジアム」を連載するほか、多数のメディアで執筆。データを基にした映画業界分析に定評がある。「宇宙船」「スターログ日本版」等の雑誌に寄稿するなど、特撮映画は特に得意な分野としている。

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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」

第7回 もーろー日記/2009年3月-2-

斉藤守彦
 
■ これが紀里谷和明監督の底力と思いたい「GOEMON」 

[3月某日。]
 完成披露試写に行けなかった、紀里谷和明監督の「GOEMON」を、試写室にて拝見。前作「CASSHERN」は、必ずしも高く評価しないし、公開当時宣伝がらみで不快なとばっちりを受けたこともあり、作品だけでなくその周辺に至るまで、ネガティヴな記憶に満ちた作品なのだが、なぜか筆者は「CASSHERN」のDVDを所有しているんだよなあ。それもメーカーからせしめたサンプルではなく、ちゃんと自腹で購入したものだ。
 なんでだろ?

 キリヤという人が作る映画が気になったからだろうか。どーなんだ?>DVD買った時のオレ。
 その新作「GOEMON」ときたら、「CASSHERN」が嘘だったかのように、面白い。一言で言って、たいそう爽快な物語に仕上がっているのだ。「CASSHERN」のどこがアカンかったのかといえば、見ていて息苦しさを覚えるような映画だったこと。とにかく世界観の作り込みすぎ。これにつきると思う。1カット当たりの情報量が多すぎるのだ。そんな中、異世界に放り込まれた俳優たちは、ストーリーを進行するためのセリフを言うのが精一杯。唐沢寿明あたりは、楽しそうに大芝居をする余裕さえあったのだが。

 特撮映画の現場では、よく画コンテが張り出されて、これから撮るカットの「完成予定図」が示されるわけだが、これが時々逆効果になってしまうことがある。画コンテ通りに撮影するかしないかは、あくまで監督の判断なのだが、どーしても画コンテを再現しなくちゃイヤだ!という監督の場合、時に俳優たちのモチベーションを削ぐことになってしまう。ある映画の現場では、貼られた画コンテを見た俳優が「監督ぅ、オレたちのカラダは、こんな風に動きませんぜ!」と訴えたところ、即座に画コンテが撤去されたという。
 そんな、俳優たちが窮屈そうに演技をしていた「CASSHERN」から一転。「GOEMON」では、どの俳優たちも活き活きと個性を発揮しているのには驚いた。豊臣秀吉役の奥田瑛二、千利休役の平幹二朗など、心から芝居を楽しんでいるようで、主役の五右衛門役・江口洋介も監督が起用を決めた「野獣の匂い」が漂っているかは疑問だが、伸び伸びと、作品世界を自在に疾走する様は、心地よささえ感じてしまう。

 プレスシートに掲載されているコメントによると「僕はデジタルの申し子のように言われますが、CGを使わなくてすむのならば使いません。作りたいものが何なのかがまず大事で、それを決められた予算内で具現化するために、今はまだデジタルが必要。バジェットのことを考えて脚本を書いたり、お金が足りないからシーンを減らすなんて、僕には考えられない」とキリヤ監督は言うが、こと「GOEMON」に関する限り、このコメントは充分な説得力を持つ。「GOEMON」で優先されたのは、膨大な情報量をビジュアルに反映させることではなく、シンプルなストーリーを面白く語りつくす、つまり「お話の面白さ」が最優先されたのである。

 その試みは充分な成果を収めた。再見する機会があったら、画面を彩るCGカットやVFXの類を見ず、俳優たちの芝居だけを見てみようとさえ思う。この作品が紀里谷和明監督が底力を発揮した結果だと思いたいものだ。

2009年3月-1- 「ケータイ捜査官7」ほか
2009年3月-2- 紀里谷和明監督「GOEMON」 
2009年4月-1- 「ラスト・ブラッド」ほか
2009年4月-1- 「真マジンガー」、「クレヨンしんちゃん」

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第7回 もーろー日記/2009年4月-1-

斉藤守彦

■ モスラはなぜ、女子に受けるのか?

[4月某日。]
 こんな本が出ていたのか。知らんかった。小野俊太郎・著「モスラの精神史」。講談社現代新書から、2007年7月に発行されている。「モスラ」とは、あの蛾の怪獣のことだ。我がバースデー・イヤーである1961年に誕生した「モスラ」を起点に、その原作である「発光妖精とモスラ」にシナリオ、完成した映画、そして「モスラ対ゴジラ」などの“出演”作品の数々を通して、モスラというキャラクターに込められた意味合いや、我が国の社会情勢との関係を解いていこうというのが、この「モスラの精神史」だ。
 特撮関係の書籍は数々出ているが、文芸評論家が文化現象として怪獣と特撮映画を取り上げたという試みは面白い。
 とりわけ中村真一郎、福永武彦、堀田善衛の3人がリレー形式で書き下ろした小説「発光妖精とモスラ」に詳しく触れており、映画「モスラ」との比較や、後年宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」に与えた影響などの指摘が特に面白かった。宮崎監督は、堀田善衛の信奉者だしね。その「発光妖精とモスラ」を読みたくなって、アマゾンで検索するも、なぜか現在では「お取り扱い出来ません」ときた。調べ物の途中、図書館で発見したので、さくさく読まねば(筆者は、図書延滞常習犯)。

 モスラ出演作品中最大のヒットとなった「ゴジラVSモスラ」や、平成以降の作品には触れていないあたりは残念。「ゴジラVSモスラ」がヒットした時、「モスラは女性受けする。だから客層が広がるんだ」と、東宝関係者が言ってたけれど、なぜモスラが女性に受けるのか?については、「そりゃまあキレイだし」程度の認識であった。この本を読むことによって、なんとなーく納得出来たところもあり、釈然としないところもあり。うーん。
 著者が特撮プロパーのライターではないことは分かるが、「ゴジラの逆襲」が本多猪四郎監督作品と捉えられているのには、ちとまいったなあ。

■ 「ラスト・ブラッド」
  チョン・ジヒョンの、セーラー服と三つ編み姿に萌えるっ!

[4月某日。]
 プロダクションI.G.のアニメを、香港=フランス合作という形で実写映画化した「ラスト・ブラッド」の完成披露試写会に行く。プロデューサーのビル・コン、出演者のチョン・ジヒョン、小雪の舞台挨拶付という豪華版だ。「この映画で死ぬほど苦労した。もうアクション映画はこりごり、と思ったけど、出来が良いので、またやってもいいかな、とオモイマシタ」と、ジヒョン嬢。意外に身長が高いことに驚く。隣にいる小雪は、確か身長170cm以上なのに。ジヒョン嬢はそれよりも高い。
 映画の内容は、解説不要でしょう。昨今のハリウッド映画的な、過剰でハッタリ満開なVFXもなく、でもやっぱりCG比率は高くて、ダークトーンな画面は、ちょっと前の我が国の“食玩映画”と揶揄された、コミック原作実写映画と似てるかも。

 「死ぬほど苦労した」というアクションもさることながら、チョン・ジヒョンがこれほどセーラー服が似合うとは思わなかった。もともと童顔だしね。今回はスマイル・ショットを封印。三つ編みヘアーも凛々しく、年齢のギャップなど乗り越えて、16歳の少女・サヤになりきったあたりはグッド。「空の境界」の両儀式なんかも、彼女だったら似合うかも知れない(反論は、受け付けません)。対する小雪は、オリジナル版にはないオニゲンなる悪役。つくづくVFX映えする女優さんなんだなあ。純白の和服とロングヘアーをなびかせて、大自然の中にちょばっと立つその姿は、まさしく巨悪の雰囲気を漂わせた、毅然たる美しさ。「怪奇大作戦」の「ゆきおんな」を実写版リメイクする時こそ、小雪の出番だ。

2009年3月-1- 「ケータイ捜査官7」ほか
2009年3月-2- 紀里谷和明監督「GOEMON」 
2009年4月-1- 「ラスト・ブラッド」ほか
2009年4月-1- 「真マジンガー」、「クレヨンしんちゃん」

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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」

第7回 もーろー日記/2009年4月-2-

斉藤守彦

■ 「真マジンガー」を見て、今川泰宏熱がぶり返す!

[4月某日。]
 朝は「トミカヒーロー・レスキューファイアー」(タイマー録画で、午後見たんだけど)、夜は今川泰宏監督の「真マジンガー 衝撃!Z編」と、4月新番組スタート。「レスキューファイアー」は、前作「レスキューフォース」と、キャラ以外は変わらない感じ。制作が松竹から日活になったのに。で、「真マジンガー 衝撃!Z編」は・・・狂ってる。第1話からクライマックスとおぼしき、このやけくそなハイテンション(ほめてんのよ)。さすがは今川監督。強敵と強力な味方が交互に登場し、名乗り合うだけで終了とは。まったくもって狂ってる(ほめてるんだってば)。

 久々にぶり返した今川熱が、翌日になっても収まらず、「ジャイアントロボ/地球が静止する日」の、十傑集総登場のエピソードが見たくて見たくて、しんぼーたまらなくなる。どれ。棚からごそごそとDVDを引っ張り出し、プレイヤーにセット。「EPISODE:6 罪と罰 〜全てはビッグ・ファイアのために〜」。梁山泊にマスク・ザ・レッドが下半身をビッグ・ゴールドに埋め込ませて侵入し、素晴らしきヒィツカラルドがフィンガースナップを連打して大殺戮。そして直系の土鬼と血風連の登場。「我らその名を血風連!!」。この合唱台詞こそ今川作品だ!!そういえば血風連、「衝撃!Z編」にも出てなかったか?
 
■ 「クレヨンしんちゃん」シリーズの興行の安定ぶりに、
  見識を改める。 

[4月某日。]
 「クレヨンしんちゃん/オタケベ!カスカベ野生王国」の試写を見る。
 原恵一監督を引き継いだ、水島努監督の「栄光のヤキニクロード」「夕陽のカスカベボーイズ」までは好調だったが、ムトウユージ監督にタッチしてから、今ひとつピリっとしない作品が続き、去年は大御所・本郷みつる監督が久々の登板なれど、「ちょー嵐を呼ぶ 金矛の勇者」の出来は…。今度の「オタケベ!カスカベ野生王国」も、往年の勢いが感じられず、やたらに上映時間が長く感じられた作品となったのでありました。思うに、このシリーズって、作品を成立させるためのお約束がいくつかあり、それを手際よく整理しないと、お話そのものがスムーズに流れなくなってしまうんだなあ…。

 年末の「特殊映像決算2008」にも書いたけど、このシリーズ、スタート以来16年。ここらで見直しをはかるべきでは…興行収入もまた、往年の勢いが見られないし…と、興行成績をよーく見ると、あら、そーでもないかなあ?去年は12.3億円だったけど、2007年の「歌う! ケツだけ爆弾!」は15.5億円も上げてるぞ。みんな大好きな(わしゃそーでもないが)「モーレツ!オトナ帝国の逆襲」でさえ、興収14.5億円。ほほお…これってけっこう、凄いことかもしれない。というのは、「クレヨンしんちゃん」シリーズの場合、1999年の「爆発!温泉わくわく大決戦」が興収9.4億円と10億円の大台を切ったことで、製作・配給サイドがテコ入れを検討。その結果、従来5〜6週間だった興行期間を、2000年の「嵐を呼ぶジャングル」から3週間に短縮。それもゴールデン・ウィーク中の、休日の多いあたりに集中して上映するという方法を。今日までとっているのである。
 わずか3週間の興行で、興収15.5億円。1週間あたり5億円以上稼いでいる計算になる。もちろん実際には、3週間のファーストランが終了しても、小さなスクリーンに映して続映するケースも少なくないが。去年の興収12.3億円だって、1週間あたり4億円の上がり。去年「クレヨンしんちゃん」に続いて上映された「隠し砦の三悪人」は、7週間上映して興収9.3億円。1週間当たり約1.33億円のアベレージだ。そう考えていくと、「クレヨンしんちゃん」シリーズの安定度って凄いんだなあ。見識を改めよう。

2009年3月-1- 「ケータイ捜査官7」ほか
2009年3月-2- 紀里谷和明監督「GOEMON」 
2009年4月-1- 「ラスト・ブラッド」ほか
2009年4月-1- 「真マジンガー」、「クレヨンしんちゃん」

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