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2010.01.02
0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 2009年特殊映像総決算!! ]
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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第15回 2009年特殊映像総決算!! -1-

斉藤 守彦

【特筆すべき「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の大ヒット!!…日本アニメ映画】

 1=「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド・パール/アルセウス 超克の時空へ」(配給:東宝/7月公開)=46.7億円
 2=「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」(カラー=クロックワークス/6月)=40億円
 3=「名探偵コナン/漆黒の追跡者(チェイサー)」(東宝/4月)=35億円
 4=「ドラえもん/新・のび太の宇宙開拓史」(東宝/3月)=24.5億円
 5=「サマーウォーズ」(ワーナー/8月)=16.3億円
 6=「劇場版MAJOR/友情の一球」(東宝/正月)=10.5億円
 7=「劇場版 NARUTO-ナルト- 疾風伝/火の意志を継ぐ者」(東宝/8月)=10.2億円
 8=「映画プリキュアオールスターズDX/みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!」(東映/3月)=10.1億円
 9=「映画クレヨンしんちゃん/オタケベ!カスカベ野生王国」(東宝/4月)=10億円

 2009年に劇場公開された日本製アニメ映画のうち、興行収入10億円を超えたのは、以上の9作品。2008年の「崖の上のポニョ」(興収155億円)に匹敵するビッグヒットこそなかったものの、昨年6本だった10億円以上の作品が、今年は3本増えたのは躍進と言えるだろう。
 9作品のうち大半は毎年公開されているファミリー・ターゲットの作品だが、2009年はこれらに加えて「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」「サマーウォーズ」といったクールアニメがヒットした。特に「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」は、調査時点で「興行収入40億円を突破した」という(前作「序」のジャスト2倍!!)。また米メジャー系配給会社であるワーナーの手で公開された「サマーウォーズ」の16.3億円は、昨年同じワーナーが配給した日本製アニメ映画「スカイ・クロラ」の7億円を2倍以上上回るもので、原作のない、オリジナルのアニメ映画としては特筆すべき成功と言える。
 また東映が毎年公開してきた「プリキュア」シリーズの新作「映画プリキュアオールスターズDX/みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!」は歴代ヒロイン総登場という話題性もあり、興収10.1億円と、シリーズで初めて大台を突破したことも、大きなトピックであった。

 シリーズ作品の推移を検証していくと、様々なシチュエーションが見えてくる。気になるのは「ポケモン」「ドラえもん」「NARUTO 」「クレヨンしんちゃん」「ケロロ軍曹」「それいけ!アンパンマン」ともに、ヒットはしているものの、総じて前年の実績を1〜2億円下回っていることだ。とりわけ「ドラえもん」は、同時期に公開された「ヤッターマン」の煽りを受けて、前作の33.7億円を大きく下回る24.5億円という興収に終始したが、東宝の春休み番組を30年に渡って支えてきた「ドラえもん」シリーズとしては、これまでも同時期公開の強力作品とのバッティングは何度もあった。そうした戦いに勝ち抜いてきた「ドラえもん」が、8億余円もの減収となったのは、果たして「ヤッターマン」だけが理由なのか。それともさらなるリニューアルの必要があるのか。2010年春のドラえもんは、シリーズ開始30周年記念作品であるという。その真価が問われるところだ。
 逆に10周年を迎えた「名探偵コナン」は、シリーズの根源に関わる部分を映画で描くという話題性で多くの観客を獲得。シリーズ新記録となる、興収35億円をものにした。
 このように、長く続いているシリーズ作品は、ちょっとしたテコ入れやリニューアルが、新しい観客や、かつて観客だった層の鑑賞意欲を再び呼び覚ます効果があり、その訴求点と戦略こそ間違わなければ、さらにロングライフなシリーズとなる可能性を秘めている。
 興収10億円以下の作品は、「仏陀再誕」9.7億円、「映画フレッシュプリキュア!/おもちゃの国は秘密がいっぱい!」8億円、「劇場版デュエルマスターズ/黒月の神帝」他約6.6億円、「ケロロ軍曹/撃侵ドラゴンウォリアーズであります!」4.6億円、「ゲゲゲの鬼太郎/日本爆裂!」4.1億円、「ホッタラケの島/遥と魔法の鏡」約3.6億円、「それいけ!アンパンマン/だんだんだんだんとふたごの星」約3.4億円といったところ。

【「アンダー200スクリーン」作品の、高稼働が光る!!】

 トップこそ例年大ヒットを記録する「ポケットモンスター」にとられたものの、2位の「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の興収40億円は特筆に値する。しかもこの作品、オープニング時のスクリーン数が、わずか120スクリーンだったのである。昨今ではシネコンの増加によってマーケットが拡大。とりわけ米メジャー系配給会社の手がけるハリウッド映画の超大作は、ここぞとばかりに多くのスクリーンを占領。あたかも絨毯爆撃のようにフィルムを全国のシネコンに投下し、シェア獲得と市場の独占を狙っている。ところが「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」は、前作「序」の時と同様、1スクリーン1プリント(1本の上映用プリントを2スクリーンで上映することを禁止)、さらに先行上映の禁止を条件に、6月27日より全国120スクリーンで公開。オープニング2日間で35万4852名、興収5億1218万200円(1スクリーンあたり426万8168円)をあげる大ヒットを記録した。上映するスクリーンの数が少なければ、当然1スクリーンあたりの興収は上昇する。しかも「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の場合は、ショップでの関連商品売り上げもかなりの額に上ることから、映画館としてはハリウッド映画の大作を拡大上映するより、遥かにうまみがあるというわけだ。
 同様に夏休みに公開された「サマーウォーズ」は細田守監督の新作で、米メジャー系配給会社のワーナーが、ローカル・プロダクション作品として配給した。その題材からして夏休み公開は必須といえる作品だが、事前にこの映画の興行価値を評価することは極めて難しく、しかも周囲は大作、話題作がひしめきあう市場環境。全国128スクリーンというマーケット・サイズは、ワーナーとしては同じ8月1日公開のアメリカ映画「そんな彼なら捨てちゃえば?」を優先させた結果だろうか。ともかくもヤング・ターゲットの作品であるにもかかわらず、都内は渋谷地区の上映館がないというスタートであった。オープニング成績は、128スクリーン計10万9250名、興収1億2753万8200円(1スクリーンあたり興収100万4238円)であったが、作品の内容が評判を呼び、長期に渡る興行を行った結果、興収16.3億円をあげるスマッシュヒットとなった。
 もう1本、興収10億円以上を記録した“アンダー200スクリーン”作品が、「映画プリキュアオールスターズDX/みんなともだちっ☆奇跡の全員大集合!」だ。東映では邦画系以外に、中小規模マーケットで展開する「アルファ・チェーン」を子会社ティ・ジョイとワーナー・マイカルを中心に編成しているが、そのアルファ・チェーンで公開された「プリキュアオールスターズDX」は、156スクリーンでオープニング3日間計22万2662名、興収2億4230万900円(1スクリーンあたり興収155万3211円)をあげた。これは同時期東映邦画系で公開された「釣りキチ三平」のそれを大きく上回る成績であるばかりか、毎年公開されている「プリキュア」シリーズ新記録。初の10億円大台突破作品となった。東映は、今後も「プリキュア」シリーズを3月と10月の、年間2作品のペースで公開し、そのうち3月は「プリキュア・オールスターズ」シリーズであることをアナウンスしている(2010年3月20日より「プリキュアオールスターDX2/希望の光☆レインボージュエルを守れ!」を、アルファ・チェーンにて公開)。

 3つの“アンダー200スクリーン”のヒット作について、さらなる共通項を上げるならば、コンテンツへの忠誠度が高い観客がコアとなっていることだろう。ヱヴァの場合は前作で若返ったファンをさらに拡大することになり、また「サマーウォーズ」はヱヴァと同じ貞本義行がキャラクターデザインを手がけていることから、ある種のイメージ・リンク、相乗効果を果たしたと見て良いだろう。もとより、あの「時をかける少女」の細田守監督の新作とあって、アニメ・ファンの注目度と期待度は当初から高かった。「プリキュア」シリーズも、これまでのTVシリーズと劇場版を積み重ねてきた蓄積あればこそ、大台突破という快挙をなしとげたのである。
 …と、ここまで原稿を書いたら、東映が12月12日からアルファ・チェーンを中心に、全国188スクリーンで公開を開始した「STRONG WORLD/ONE PIECE FILM」が、とんでもないオープニング成績をたたき出した。2日間計81万8738名、興収10億3843万9600円は、あの「崖の上のポニョ」を上回っている。1スクリーンあたりの興収は、実に552万3614円ときた!!
 これについては、機会を改めて検証することにしよう。

(2)「空の境界」と「マクロスF」「エウレカセブン」「東のエデン」の成功要因
(3)アメリカ映画離れの中で、「ハリポタ」80億円と健闘

[筆者の紹介]
斉藤守彦

1961年生れ。静岡県浜松市出身。
映画業界紙記者、編集長の経験の後、映画ジャーナリスト、アナリストとして独立。「INVITATION」誌で「映画経済スタジアム」を連載するほか、多数のメディアで執筆。データを基にした映画業界分析に定評がある。「宇宙船」「スターログ日本版」等の雑誌に寄稿するなど、特撮映画は特に得意な分野としている。

"特殊映像ラボラトリー 第15回 2009年特殊映像総決算!!-1-" »
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2009.12.25
0斉藤守彦の特殊映像ラボラトリー ][ 2009年特殊映像総決算!! ]
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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第15回 2009年特殊映像総決算!! -2-

斉藤 守彦

【「空の境界」と「マクロスF」「エウレカセブン」「東のエデン」の成功要因】

 アンダー200どころか、さらに小規模なマーケット展開を行ったアニメ映画のうち、その小規模さ故に観客の飢餓感を煽り、確実な成績を上げた作品もあった。
 アニプレックスの「空の境界」は、いよいよ完結となった第7章「殺人考察(後)」が8月に公開。これまで通り1日1〜2回の上映ながら、熱心な観客を集めて高稼働。劇場版「空の境界」全7章とREMIX、旧作上映をあわせた累計成績は、11月10日現在26万1145名、興収3億219万6200円となっている。ある種のイベント展開的な上映を行った例としては、前例のない成績であり、この作品の成功に刺激された制作会社やスタジオが、高額な“ナミ代”を支払うことよりも、映画館での興行を選択する例が相次ぎ、こうした小規模展開のアニメ映画のラッシュ現象を招いている。 
 こうした現象を招く背景としてあげられるのは、映画公開の際に必要となるP&Aなる費用の問題だ。P&Aとは「プリント・アンド・アドバタイジング」=つまり上映用プリントと宣伝費のことを意味する。このP&Aが、大手配給会社に配給を委託した場合、製作委員会負担となるケースが多いのだ。現在のところ配給会社が仮払いして、精算時にトップ・オフしているのは東宝だけで、他社はこのP&Aを委員会に負担させ、その範囲内で営業・宣伝活動を行うというやり方をとっている。このため製作サイドとしては、作品の製作費以外に大きな出費を強いられることになり、全国公開を行おうとすれば、このP&Aの額が著しく膨張してしまうのだ。
 上映用プリントの作成には、2時間の映画で1本あたり約30万円かかると言われており、宣伝費もTVスポットなどを打とうとすれば、やはり大きな出費となる。つまり製作サイドとしては、作品を大きなマーケットで公開しようにも、それに伴うリスクが大きすぎる。また全国各地にシネコンが出来たことで、大手配給会社に配給を頼まなくても、ブッキングが可能になったことも、理由としてあげられるだろう。
 クロックワークスが配給した「マクロスF(フロンティア) 虚空歌姫 〜イツワリノウタヒメ〜」は、30プリント体制で11月21日より公開を開始。本稿執筆時点で「動員25万人を突破」し、現在でも続映されていることから、かなりの高稼働になりそうだ。
 同様に東京テアトルがゴールデン・ウィークに公開した「交響詩篇エウレカセブン/ポケットが虹でいっぱい」も、プリント6本がフル回転。26ブックで興収約1億円をものにした。同じくG.W.に公開された「劇場版 天元突破グレンラカン 螺巌篇」も「興収1.5億円を上げた前作『紅蓮篇』以上の成績」という。また10月に入って角川映画が配給した「テイルズ・オブ・ヴェスペリア〜The First Strike〜」は、当初プリント数34本だったが、これを37本に増やし、述べ74ブックで12月16日現在、興収1億8253万6600円を計上。2億円突破は確実だろう。11月28日より公開された「東のエデン劇場版I The King of Eden」も、プリント6本でスタート。今後もブッキングの伸びが期待でき、興収1億円を上回ることは間違いない。
 
【「20世紀少年」74.1億円、「仮面ライダーディケイド」26.8億円…日本・特撮映画】

 特撮映画、あるいは“特撮シーンが重要な意味を持つ映画”の、2009年における実績は、以下の通り。
 
 1=「20世紀少年最終章・ぼくらの旗」(東宝/8月)44億円
 2=「ヤッターマン」(松竹=日活/3月)31.3億円
 3=「20世紀少年第二章・最後の希望」(東宝/1月)30.1億円
 4=「K-20/怪人二十面相・伝」(東宝/正月)20億円
 5=「感染列島」(東宝/1月)19.1億円
 6=「劇場版仮面ライダーディケイド/オールライダー対大ショッカー」「炎神戦隊シンケンジャー銀幕版/天下分け目の戦」(東映/8月)19億円
 7=「BALLAD 名もなき恋のうた」(東宝/9月)18.1億円
 8=「252/生存者あり」(ワーナー/正月)16.7億円
 9=「GOEMON」(松竹=ワーナー/5月)14.2億円

 なお興収10億円以下の作品は、「劇場版 超・仮面ライダー電王&ディケイド/鬼ヶ島の戦艦」が7.8億円、『新春スーパー戦隊祭』「炎神戦隊ゴーオンジャーVSゲキレンジャー」3.1億円、「トミカヒーロー・レスキューフォース」2.2億円といったところ。
 驚くべきことに、上位4作品が日本テレビ製作作品だが、これは偶然だろう。昨年から続いた「20世紀少年」3部作は、「最終章・ぼくらの旗」を持って完結。2009年に公開された「第二章」と「最終章」で、計74.1億円、08年公開の「第一章」を合わせると実に113.3億円という額になる。日本映画の大作には、もはやCG、VFXを駆使したスケールの大きいビジュアルメイクは欠かせないが、「20世紀少年」3部作の場合、それらを「特殊技術」と呼びたくなるのは、その時代背景と設定故だろう。特に「最終章・ぼくらの旗」における、“特撮映像”の数々は、出演した佐野史郎をして「これは、東宝特撮映画へのオマージュだ!!」と言わしめたほど。そういえば堤幸彦監督、「『海底軍艦』のリメイクをやらせてくれるのならば、いつでもスケジュールを空けます!!」と、以前インタヴューで言っていた。祈願実現。

 「ヤッターマン・ショック」という言葉が、業界内部でまことしやかに囁かれた・・・かどうかは知らないが、やはりこのヒットには驚いた。「ヤッターマン」。深キョンにドロンジョを演じさせるという飛び道具が、お父さんたちの鑑賞意欲をどこまでそそったかは分からないが、この種の映画の話題の盛り上げ方として、ひとつの成功例を示したことは間違いない。特撮映画に怪獣とミニチュア、エッチなおねいさんは必須なのである。
 第一章よりかなり出来が落ちる「20世紀少年第二章・最後の希望」とは対照的に、見てみたら「意外に面白いじゃん!!」と、試写を見て誉める人が続出した「K−20/怪人二十面相・伝」。後者の発見は、間違いなく高島礼子が、これほど可愛らしい演技をするか!?ということにつきる。今度は佐渡先生に代わって、ヤマトで女医を演じるそうだ。さず可愛らしい、それでいてドスの効いた女医姿を見せてくれることだろう。
 「アニメ!アニメ!」がすっぱ抜いた(笑)、岡田裕介東映社長の「東映が困ると、ライダー、プリキュア、戦隊はいつでも助けに来てくれます」発言。それを実証するかのように、2009年は5月に「劇場版 超・仮面ライダー電王&ディケイド/鬼ヶ島の戦艦」が、8月に「劇場版仮面ライダーディケイド/オールライダー対大ショッカー」、そして12月に「仮面ライダー×仮面ライダーW&ディケイド/MOVIE大戦2010」の、計3作品が製作・公開された。ファンにとっては夢のような、現場にとっては悪夢のごとき年であった。特に「仮面ライダーディケイド/オールライダー対大ショッカー」は、夏休みに東映邦画系にて全国一斉公開され、興収19億円と、劇場版「仮面ライダー」シリーズの最高記録を樹立した。これまた「ヤッターマン」同様、昭和ライダー勢揃いの大サービスに、かつてのファンは感激の涙。歴代ライダーが横一列に並んだポスターの前、熱い目つきで立ち止まったままのスーツ姿の人。映画館付近で、よく目撃した。5月と8月のライダーで、計26.8億円の稼ぎ。そして12月12日からスタートした「−MOVIE大戦2010」が、「ONEPIECE」の影に隠れた格好となってしまったが、これまた好調なスタートを切っている。オープニング2日間の成績は、292スクリーン計39万5984名、興収4億5261万2800円と、「−オールライダー対大ショッカー」の出足対比94.6%であることから、かなりの稼働が見込まれることだろう。「うちの孝行息子ですから…」とは、某東映関係者の弁。どうやら2010年も、孝行息子の出動は少なくなさそうだ。

(1)特筆すべき「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の大ヒット!!
(3)アメリカ映画離れの中で、「ハリポタ」80億円と健闘

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斉藤守彦の「特殊映像ラボラトリー」
第15回 2009年特殊映像総決算!! -3-

斉藤 守彦

【アメリカ映画離れの中で、「ハリポタ」80億円と健闘
…外国・アニメ&特撮映画】

 昨今ではアメリカ映画、とりわけハリウッド映画の大作が、若い観客から敬遠されているそうだ。「CGばっかりで、五月蠅い!!」「無駄に派手な映像ばかりで、単にそれだけ」などと、筆者の周辺でも「見るんだったら日本映画」と、10年前では考えられない声が聞こえてくる。確かにハリウッド映画の、金にあかしたCG大作が、我が国の観客から飽きられて久しい。それでも作られ続けるのは、アメリカでの興行が好調だから。今年のアメリカにおけるナンバーワン・ヒット作が「トランスフォーマー/リベンジ」なのだが、これが日本では前作を大きく下回る23.1億円の興収に終始し、同時期に公開された「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の後塵を拝するといった始末。

 1=「ハリー・ポッターと謎のプリンス」(ワーナー/7月)80億円
 2=「ウォーリー」(WDS/正月)40億円
 3=「ターミネーター4」(ソニー・ピクチャーズ/6月)33.1億円
 4=「地球が静止する日」(フォックス/正月)24.1億円
 5=「トランスフォーマー/リベンジ」(パラマウント/6月)23.1億円
 6=「ナイトミュージアム2」(フォックス/8月)20.4億円
 7=「007/慰めの報酬」(ソニー・ピクチャーズ/1月)20億円
 8=「ボルト」(WDS/8月)16.4億円
 9=「ノウイング」(東宝東和/7月)10.2億円
 10=「マダガスカル2」(パラマウント/3月)10.1億円

 前作「不死鳥の騎士団」が、興収100億円の大台を切ったことで、「ハリー・ポッター」シリーズの興行成績も、一気に下降線をたどるものと思われたが、最終的にこの新作で80億円をたたき出したあたりは、さすがハリポタ・シリーズというべきか。実を言うと、配給会社の見込みは、これより低い額だった。「そんなこたあない!!80億円は行く!!」と断言したのが、他ならぬ筆者だったりする。
 ディズニー=ピクサーの新作アニメ「ウォーリー」の場合は、全米公開から半年後の公開となったが、これには理由がある。「全世界同時公開!!」とばかりに、ろくに試写さえやらず、けたたましく公開するという手もあるのだが、なにせアメリカのアニメ映画は、そのキャラクターが日本で認知されていない。「ウォーリー」の場合、この廃品回収ロボット・ウォーリーのキャラクターを認知させ、彼の動いている姿を見せることで、その魅力を伝えて映画の認知度を上げる、という方法が用いられたのである。ディズニー・ジャパンはこの正月に公開され、目下大ヒット中の「カールじいさんの空飛ぶ家」にも同様に全米公開から半年後、キャラクターと作品内容をじっくりと認知させる方向で、長期宣伝を行っている。「カールじいさん・・」の宣伝期間は、実に8か月に渡ったという。なんでもかんでも「全米大ヒット!!」のコピーさえつければ映画が当たる、そんな時代ではないのだ。
 ただし同様の手法を用いた「ボルト」が、今ひとつの成績に終始したのは、ちとイタかった。この場合は、途中からジョン・ラセターが絡んだストーリーと、肝心のボルトのキャラに魅力がなかったからだろうか。なお興収16.4億円のうち、3D版のシェアは52.5%であった。

 期待はずれといえば、「ターミネーター4」こそ、2009年に公開された外国映画の中で、最も関係者を落胆させた1本であった。作品的には悪い出来ではないのだが、やはり「ターミネーター=シュワルツェネッガー」のイメージが強いのではないか?あまりにもアクション映画すぎて女性客がそっぽを向いたのでは?等々、様々な憶測や推論が流れたが、結局は「ターミネーター」という知名度を過信しすぎたというのが真相ではないだろうか?と思う。あまりにも「ターミネーター」が、世間にはびこりすぎているのだ。個人的な希望を申せば、現在地上波でもオンエアしている「サラ・コナー・クロニクルズ」の第3シリーズこそを制作して欲しいものだ。これは大傑作!
 「地球が静止する日」は、オリジナル版をこよなく愛する筆者としては、一刻も早く忘れたい作品の1本だ。ロバート・ワイズ監督の秀作SF映画を、オバマ大統領へのゴマすり映画にしたのはどいつだ!?(怒)
 その「地球が静止する日」より興収が低かった「トランスフォーマー/リベンジ」だが、そのボリューム感、大味なインパクトは前作以上だと断言出来る。「CGばっかの映画は見飽きただと?ほお、じゃあ俺がいつもより10倍CGだらけの映画を見せてやろう!!」と、マイケル・ベイ監督が言ったかどうかは分からないが、さすがは戦勝国。ここまでやられては、もうぐうの音も出ないというもの。ミーガン・フォックスの色気も大幅にアップ。いやはや、もう満腹。泣く子とマイケル・ベイには勝てないのか。

(興行収入は、いずれも一部推定)

(1)特筆すべき「ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破」の大ヒット!!
(2)「空の境界」と「マクロスF」「エウレカセブン」「東のエデン」の成功要因

"特殊映像ラボラトリー 第15回 2009年特殊映像総決算!!-3-" »
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