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2009.08.05
海外事情 ]
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躍進する北欧アニメーション デンマーク・アニメーションの力(2)
世界で注目されるデンマーク 

オフィスH 伊藤裕美

■アニメーション・ワークショップ(TAW)

 毎年6月に開催される、世界最大規模のアニメーション映画祭、アヌシー国際アニメーション・フェスティバル(http://www.annecy.org/)の学生部門コンペティションで、数年前から気になる存在があった。それが、The Animation Workshop(アニメーション・ワークショップ、以下TAW、http://www.animwork.dk/)だ。ヨーロッパの知人たちに尋ねると、「TAWは、ユニークな所」だと言う。「でも、単なる学校ではない」とも。ますます気になり、今年6月に訪問した。
 TAWは、コペンハーゲンから飛行機で45分ほど、ユトランド半島中部にあるヴィボールにある。20年前、モルテン・トルニング校長らが、ヴィボールにアニメーションのワークショップと指導者向けコースを始めたのが起源だ。

 コペンハーゲンにあるデンマーク国立映画学校は作家・監督養成をおこない、TAWは伝統的なドローイングアニメーターと3DCGアニメーターを養成する。TAWに、常勤専属の教授や講師はおらず、外部から招く。3年半のバチェラーコース(学部レベル)のうち前半2年間をいくつかのモジュールに分け、トレーニング内容にふさわしい講師を招く。残りの期間は卒業制作に充てられ、最終盤に数ヶ月間のインターン研修がある。
 インターン生の受け入れ先は150以上になる。デンマーク国内はもとよりヨーロッパの企業と広く関係を持つ。インターン助成はデンマーク国内そしてEUに制度がある。バチェラーコースを統括するミチェル・ナーダン氏によると、世界中に250名ほどの実務者や専門家とコンタクトを持ち、客員教授や非常勤講師として招く。
 TAWの運営を支えるのは、優秀な教務スタッフだ。しかも外国人が多い。ナーダン氏はアメリカ出身、コーディネーターのアーニャ・パール氏はドイツ出身、ヨアキム・ペデルセン氏はノルウェー出身という具合だ。学内では自然と英語が飛び交う。学内の雰囲気に、フランス人らがユニークな機関と言う理由の一端が分かった。


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TAW モーテン・トーニング校長(中央)、オープンワークショップと国際交流 の責任者ティム・ルボーニュ氏(右)。

■明確なマネージメントヴィジョンと民間活力をバックアップする公的支援

 1989年に設立されたTAWは、実務者の再トレーニングや独立系作家の支援を担い、92年には、地元ヴィボール市の協力を得て、TVアニメの制作をはじめた。若者に人気のアニメを失業対策に活用したいという自治体の期待と合致したもので、産業振興に適う学校運営という、トルニング校長らのヴィジョンの下での拡張だった。
 93年頃からEUとのパイプが強まり、実務者向けのキャラクターアニメーションのトレーニングコースを立ち上げた。またオランダやポーランドの教育機関との共同プロジェクトに参加するようになる。96年には、アメリカからリチャード・ウィリアムス氏を客員教授として招き、短期のマスタークラスをおこなう。ウィリアムス氏は98年、2001年そして02年にもマスタークラスで指導し、ヨーロッパ各国から460名もがそのコースに参加した。この間に、TAWはマスターレベルのトレーニング方法の基礎を固めた。
 そして、ウィリアムス氏の名著「The Animator's Survival Kit (Applied Arts)」が、このマスタークラスから誕生した。トルニング校長は「ディズニーとは違うアニメーションスタイルを、ウィリアムスに求めた」と言う。

 03年に、民間組織から教育省のCVU Midt-Vest(デンマーク中西部の統合大学)傘下の国立機関となり、バチェラーコース(学部レベル)を開設した。
 一方、The Travelling WorkshopやKids in Motionといった、子ども向けのアニメーション指導にも手を広げ、実務者向けの短期訓練コースも併行しておこなっている。このような国内向けコースの拡大は、ヴィボール市や中央政府・文化省の理解と助成を受けておこなわれてきた。

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■TAWの原動力は、国際的なネットワーク

 TAWが創立時から続け、TAWを特徴づけるのが“オープンワークショップ”、いわゆるアーティストインレジデンスだ。中央政府からの予算で、独立系作家に創作環境を提供する。撮影からTAWでおこなう作家もいれば、ポストプロダクションの過程だけTAWでおこなうこともできる。作家・監督の参加の仕方はフレキシブルだ。責任者のティム・ルボーニュ氏によると、対象者の国籍を問わず、半数は外国人だ。
 また、EU内の大学や専門校との交流が活発だ。昨年、EUの支援で実施された「Animation Sans Frontiere(アニメーション・サンフロンティエール)」は、TAW、フランスのゴブラン校、ドイツのバーデンバーデンヴュルテンベルク州立フィルムアカデミー、ハンガリーのMOME校が持ち回りで、学生を移動させながらおこなうプロデューサー養成ワークショップで、今後も参加校を増やしながら継続する。ヨーロッパの若手は早い時期から国境を越えた活動に慣れる。これが、国際合作のハードルを低くするのであろう。TAWキャンパス近くには、講師やスタッフの宿泊棟があり、オープンワークショップの作家らも寝食を共にすることがある。

 客員教授や非常勤講師のネットワーク、オープンワークショップや国際的な交流事業でTAWを訪れる、第一線のプロフェッショナルや若手がTAWの財産だ。トルニング校長を筆頭に教務スタッフのホスピタリティが「再びTAWを訪れたい」と思わせる。TAWで学ぶ学生にとっても、日常的に国際的なプロと接するのは有意義だ。
 2000年頃を境に、ヨーロッパではアニメーションが活況だ。テレビや劇場用、あるいはゲーム用の需要がさまざまな国にある。その制作を支えるのは、比較的若い人たちだ。拡大EUにあって、彼らの国境意識はますます低くなる。国際合作を促すような助成制度の効果もあろうが、国際市場へのベクトルがなければ、これほど国際共同制作がEUで賑わうこともないだろう。

■アニメーション文化センターへ向かって・・・

 TAWは、在校生・卒業生の起業支援をおこなうインキュベーションハウスのMiJAV(ミャオ)、アニメーションの活用分野を広げるための研究支援機構The Animation Hubをスタートさせた。MiJAVには、テレビアニメやビデオクリップのアニメーションを得意とするHappy Flyfish、企業のブランディングイメージ映像やEラーニングのアニメーションを制作するMarkfilmなど、ベンチャー37社が入居している。MiJAVのディレクター リッケ・マイ・クリストルソン氏はジャーナリスト出身で、今年からディレクターとして基礎作りと内外のネットワーク作りに励む。
 MiJAVでは、ベンチャー入居支援だけでなく、起業やビジネス開拓に関する情報提供、あるいはフォーラムなどの参加、「アーティストがマーケットとコネクションを持つこと」を促す。ヨーロッパの就職難は深刻だ。専門教育を受けても、就職機会は限られる。ヴィボールあるいはユトランド半島での就職となれば、なお難しい。そこで、TAWは在校生や卒業生の起業を支援するためにMiJAVをはじめたわけだ。これにより、地元にハイスキルな若者が残り、コペンハーゲンや外国とのビジネスを広げ、ゆくゆくは企業誘致など、アニメ関連の産業振興を目指している。

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      ヴィボールの中心街。午後8時ともなると、人通りがなくなる。

 実務者トレーニングとワークショップから始まったTAWは、トルニング校長らの明確なマネージメントヴィジョンの下、確実に成長してきた。今後は、通年のマスターコース(大学院レベル)を創設し、2011年にはマンガ、脚本、サイエンス・アニメーションの新コースを立ち上げるという。そして隣接する軍施設を買収し、キャンパスを拡張する。
 トルニング校長は「ヴィボールのこの地域を、TAWを中心とする、アニメーション文化センターにしたい」と語る。民間が立ち上げた組織を国営にし、運営は民間の創意工夫と活力に任せる、デンマークの公的支援ポリシーの一例としてTAWを捉え、日本の公的資金の投入のやり方と比較するのも興味深い。

■ノルディックの独立系監督による、配給支援のオンラインカタログ

 TAWのインキュベーションハウスでHappy Flyfishという制作スタジオを経営する、ソーレン・フレング氏は外向的だ。受注仕事を取るのも積極的だが、アニメーターの交流にも汗を流す。フリーランスや少人数のスタジオが多いデンマークで、Animationsdag 2009 (Danish Animation Day)というイベントを始めた。
 参加者は150名ほどだが、今年は、『Ryan』でオスカーを受賞したクリス・ランドレス監督がカナダから来て、新作『The Spine』を題材に、人々の内面心理や神経学に基づくランドレス作品の表現法の講演をおこなった。デンマーク人の人なつっこさは、ランドレス監督にも心地よい思い出を残したようだ(ランドレス監督のブログ http://www3.nfb.ca/webextension/the-spine/blog/?p=41)。

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 インキュベーションハウスMiAVに入るHappy Flyfishのソーレン・フレング氏(左)。

 デンマーク、スウェーデン、ノルウェーのスカンジナビア諸国に、フィンランドとアイスランドが加わった北欧5ヵ国は“ノルディック”と呼ばれる。各国は、それぞれに映画、アニメーション、ゲームなどによる産業振興をおこなうが、この地域で連携する国際合作も増えている。各国のフィルム・インスティチュート(映画協会)が、制作の助成や支援、国際配給の窓口、あるいは国際展開の司令塔の役目を担う。
 コペンハーゲン中心地に、1991年にドキュメンタリー映画と短編映画の監督らが立ち上げた、Filmkontakt Nord(フィルムコンタクト・ノルド、以下FkN、http://www.filmkontakt.com/)という民間組織がある。自主映画の販売チャネルを開拓する目的で、オンラインカタログを中心に、配給事業者や映画祭関係者にノルディックのドキュメンタリー映画と短編映画、特に近作の情報を提供する。その数は4,500本を超す。
 登録は制作者自らがおこなう。事業者登録をすれば、オンライン視聴やコンタクト情報が得られる。4,5名のスタッフが常駐するFkNは仲介業務をおこなわず、利用環境の整備、カタログ管理と情報の中継点に徹する。域内の交流を図るイベントも運営する。この組織も民間が立ち上げ、現在はノルディック各国の助成金で運営される。「運営はボードメンバーが主導し、自主独立である」と、7年間プロジェクト・マネージャーを務めるハイディ・クリスチャンセン氏は語る。
 ドキュメンタリー映画と短編映画の流通チャネルは限られる。オンラインを活用するサービスは、運営次第で有効なツールになる。ここにも、民間活力をバックアップするノルディック版支援があった。

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[筆者の紹介]
伊藤裕美 (いとう ひろみ)
外資系ソフトウェア会社等の広報宣伝コーディネータや、旧エイリアス・ウェーブフロントのアジアパシフィック・フィールド・オペレーションズ地区マーケティングコミュニケーションズ・マネージャを経て1999年独立。海外スタジオ等のビジネスコーディネーション、メディア事情の紹介をおこなう。EU圏のフィルムスクールや独立系スタジオ等と独自の人脈を持ち、ヨーロッパやカナダのショートフィルム/アニメーションの配給・権利管理をおこなう。
自主企画として、短編映画館・下北沢トリウッドでアニメーション特集上映を毎年主催。また、海外ショートアニメーションのコンピレーションDVDのピクチャーブック「プチシアター」シリーズを企画発売。
2007~08年は、カナダ国立映画制作庁とBravo!FACTが主催する、CJax~日加ショートアニメーション・エクスチェンジ(若手アニメーション作家の国際デビュー支援プロジェクト)の日本事務局を務める。
1999年より毎年、世界最大規模のアヌシー国際アニメーション・フェスティバルに参加し、プチ・セレブ気分でアニメーション三昧の1週間を過ごすのが趣味。
日本茶専門店「茶処いとう」の経営など、さまざまな活動が同時進行中
現職 オフィスH(あっしゅ)代表。
http://blogs.yahoo.co.jp/hiromi_ito2002jp

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2009.07.30
海外事情 ]
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躍進する北欧アニメーション デンマーク・アニメーションの力(1)
世界で注目されるデンマーク 

オフィスH 伊藤裕美

デンマーク コペンハーゲン国際空港は、北欧諸国のみならずヨーロッパ各国への空の玄関として、ヨーロッパ有数のハブ空港の一つだ。北欧デザインのモダンな空港ターミナルは、訪れた者に、デンマーク人の文化センスの良さを感じさせる。
モダンデザインや充実した社会制度で、日本で注目を浴びるデンマークは、アニメーションの制作でもめざましい成長を遂げている。今年6月にデンマークの視察から、最新の制作事情や人材育成、そして民間活力をバックアップする公的支援を報告する。

■実は強い、デンマークのアニメーション

 デンマークは、アニメ映画の制作本数でヨーロッパ5位にある。ヨーロッパのプロデューサーらが運営する、民間のアニメーション振興組織CARTOON(http://www.cartoon-media.be/index.php)は1999年から長編アニメの国際共同制作のフォーラム「Cartoon Movie」を主催する。
 そのCartoon Movieの統計によると、99年~2008年の間にヨーロッパでは長編アニメ99本が完成し、24本が制作中(08年時点)で、その数123本にのぼる。そのうちの17本にデンマークが参加している。また表から、制作が欧州に拡散していることが分かる。

国別制作本数(含む国際共同制作)
[1999年~2008年 長編アニメ]
 フランス      41
 ドイツ       26
 スペイン      25
 デンマーク    17
 イタリア      9
 イギリス      8
 ベルギー      7
 アイルランド    5
 ルクセンブルグ  5
 スウェーデン    4
出典:Cartoon Movie

 デンマークは人口550万人ながら、A.Film(エーフィルム、http://www.afilm.com/)やCopenhagen Bombay(コペンハーゲン・ボンベイ、http://copenhagenbombay.com/)といった国際競争力あるアニメ制作会社が数社ある。得意とするのは、ティーンエージャーやヤングアダルト向きのコメディ。少人数のチームで、5億円未満の低予算のCGアニメの制作もできる。
 デンマークは狭い国土ゆえに昔から国外へ活路を求めてきた。バイキングが良い例だ。アニメ産業が元からあったわけではなく、ディズニーアニメを見て育った世代が立ち上げたのだ。創立者たちは国外でアニメの制作やビジネスを学び、コペンハーゲンに戻り、自らのスタジオを立ち上げた。そして国外にも市場やパートナーを求めた。

■長編アニメ制作のハブとなる、A.Film

 1988年にディレクターのヨルゲン・レルダム氏ら4名の若者が創立したA.Filmは、コペンハーゲンの本社だけでなく、ドイツ、エストニアなどにスタジオを持つ。2000年の初長編『Hjælp! jeg er en fisk/Help! I'm a Fish』で国際合作をおこない、04年の『Terkel i knibe/Terkel in Trouble』は興行的に成功した。
 今年のアヌシー国際アニメーション・フェスティバルにも、『Rejsen til Saturn/Journey to Saturn』をアウトオブコンペに出品した。今では、フランスやドイツの合作パートナーとなり、北欧の中心的なスタジオだ。まさに、国際共同制作のハブだ。

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       デンマークのA.Film制作『Journey to Saturn』
       (c) A. FILM A/S

 デンマーク人は、人なつっこいと言われる。そして英語が達者だ。テレビや映画に吹き替えはなく、日常的に英語を耳にする。小国であることをハンディとせず、世界市場に出るアドバンテージにしている。 
 映画やアニメでは、Danish Film Institute(デンマーク映画協会)などを通じた制作助成金など支援制度を整え、行政も国際進出をバックアップする。ヒトの移動が自由化するEU(ヨーロッパ共同体)内にあって、デンマークには優秀な人材を、外国から呼び寄せる仕掛けがある。

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       A.Film創立メンバーのヨルゲン・レルダム(右)

 アニメーションのみならず、映画やCMに用いられるVFXを専門とするCGスタジオもコペンハーゲンに数社ある。その1社Ghost(ゴースト、http://www.ghost.dk/)は、1999年に国外でクリエイティブ産業に携わった、ジェネラルマネージャーのアクセル・スドスガルト氏ら4人の若者が設立した。CGソフトやコンピュータの価格が手ごろになった時期だ。
 現在は、外国人を含む40名近いスタッフを抱え、ドイツ、サウジアラビア、ロサンゼルスにセールスエージェントを持つ。イギリスとはビジネス上の関係が強い。スタジオのデモリール(http://www.ghost.dk/#reel)には「ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団」「007/ダイ・アナザー・デイ」「スターダスト」など馴染みのVFXシーンが並ぶ。レゴ、ソニー・エリクソンなど世界企業のCM制作にも参加するが、今年3月頃からCMは減少している。一方、映画が堅調で、経済危機の影響はさほど受けていない。VFXには公的助成がなく、スドスガルト氏は「自己資金でやってきた」と胸を張る。VFXに特化することで、中堅規模のスタジオを安定させている。
 A.Film、Ghostはコペンハーゲンの北部地区にある。比較的室料が安いこともあり、このようなコンテンツ企業が集まるエリアだとか。コペンハーゲンでは、若者のギャング団による事件が増えているそうで、わたしたちが訪問した前週にも、A.Filmらがある一角の近くで発砲事件が起こった。都市の治安悪化は、一見安全そうなコペンハーゲンでも深刻化しているようだ。

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       Ghost創立メンバーのAksel Studsgarth氏

■世界のフェスティバルで注目される、デンマークの学生作品

 毎年6月に開催される、世界最大規模のアニメーション・フェスティバル「アヌシー」(http://www.annecy.org/)のコンペティション学生部門で、数年前から気になる国が出てきた。
 それがデンマークだ。商業制作が活発な場所は、人材の養成が順調で、優れた人材が定着するのだろう。

 まず、デンマーク国立映画学校(Den Danske Filmskole、http://www.filmskolen.dk/)。学生作品のアニメーション技法は最先端CGというより、伝統的なものだが、ストーリーや演出に趣向がある。
 今年のアヌシーに出品された『For Stor/Big Man』(制作:Cav Bøgelund 、http://www.filmskolen.dk/index.php?id=211)は、体だけは人並み外れて大きい男が、精神的にはとても幼く、母の死を受け入れられず村人と起こす諍いが不幸を招くというもので、見応えがあった。関係者に聞くと、1966年創立のこの映画学校は、実写ドラマ、ドキュメンタリー、アニメーションを教える専門大学として、作家・監督の養成に力を入れている。

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       TAWバチェラーコースの実習室

 そしてもう1校が、The Animation Workshop(アニメーション・ワークショップ、以下TAW、http://www.animwork.dk/)だ。数年前から気になる存在になってきた。昨年の出品作『Office Noise』(制作:Mads Johansen、Torben Søttrup、Karsten Madsen、Lærke Enemark)は世界各地の映画祭で評判が良く、今年は『Sheep!』『Katrine』『Leitmotif』の3本が学生部門に登場した。

第2回に続く

[筆者の紹介]
伊藤裕美 (いとう ひろみ)
外資系ソフトウェア会社等の広報宣伝コーディネータや、旧エイリアス・ウェーブフロントのアジアパシフィック・フィールド・オペレーションズ地区マーケティングコミュニケーションズ・マネージャを経て1999年独立。海外スタジオ等のビジネスコーディネーション、メディア事情の紹介をおこなう。EU圏のフィルムスクールや独立系スタジオ等と独自の人脈を持ち、ヨーロッパやカナダのショートフィルム/アニメーションの配給・権利管理をおこなう。
自主企画として、短編映画館・下北沢トリウッドでアニメーション特集上映を毎年主催。また、海外ショートアニメーションのコンピレーションDVDのピクチャーブック「プチシアター」シリーズを企画発売。
2007~08年は、カナダ国立映画制作庁とBravo!FACTが主催する、CJax~日加ショートアニメーション・エクスチェンジ(若手アニメーション作家の国際デビュー支援プロジェクト)の日本事務局を務める。
1999年より毎年、世界最大規模のアヌシー国際アニメーション・フェスティバルに参加し、プチ・セレブ気分でアニメーション三昧の1週間を過ごすのが趣味。
日本茶専門店「茶処いとう」の経営など、さまざまな活動が同時進行中
現職 オフィスH(あっしゅ)代表。
http://blogs.yahoo.co.jp/hiromi_ito2002jp

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2009.07.22
海外事情 ]
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中国アニメ産業の現状
〜杭州アニメフェア、大連・北京石景山の動漫基地を訪れて〜 (4)

日中間の可能性を探って

増田弘道

中国アニメ製作事情

中国製アニメの制作費

今回の中国訪問のまとめの意味も込めて中国アニメ製作の実情について思うところ述べてみたい。
まず、製作事情を手っ取り早く知るために中国のアニメが一体幾らくらいでつくられているのか考えてみたい。実はこれに関し今回の訪問で中国のアニメ制作費は30分番組で最高200万円程度の補助金が出ているのではないかという推測がなされた。そして、遠藤誉氏の『中国動漫新人類』や中国のアニメ関係者と交流のある知人から聞いた話から推測すると中国ではどうやらその予算レベルでアニメを制作できるらしい(但し、この予算で収まらないという話も聞いた。標準化されていないと思われるのでバラツキが大きいかも知れない)。
しかしながら、幾ら物価が安いとはいえインフレ基調にある中国で果たして制作できるのか(日本の5〜7分の1の予算)。多分その答えは以下の理由に収斂されるかも知れない。

 ①子ども向けアニメが主流(日本でも子ども向けの方が制作費が安い)
 ②熟練者が少ない(賃金が低い)
 ③3Dアニメが多い(2Dアニメに比べ生産性が高い)
 ④販管費が安い(と思われる)

以上の要素を考えると何とか制作可能な予算設定であると思われるが、これは今後の日本のアニメ産業にも関係してくることなので調査を続けていきたいと考えている。

製作費回収のビジネスモデルと問題点

さて、次に肝心の回収におけるビジネスモデルであるが中国では一体どうなっているのであろうか。中国の新聞に「アニメ作品の85%は資金を回収出来ていない」と書かれたそうだが、実際関係者から回収方法を聞く限り余程大当たりしない限り回収は難しそうである。
中国における主な収益源を上げてみると、
国内放送局の放映権料(映画の場合は興行収入)
MD、特に出版(本)
が中心のようである。

日本では重きを占めるDVD販売は承知の通り海賊版のためマネタイズは不可能、海外販売は作品力がないため望めず、配信、音楽商品・出版といった収益手段も中国では難しい。
ということで、一番確実な収益源は放送権収入ということになるのであるが、実はこれがかなり厳しい状況にある。放映権料が一番高いCCTVでも1分間6,000元(9,000 円)、これが地方のテレビ局となると1分間8元から10元のところもあるという。
幾ら制作費が安いといっても主力収益源がこれでは回収は厳しい。もちろん②のMDという手段もあるが比較的流通がしっかりしている出版はともかくとして余程の大ヒットでなければ収益につながらないようである。

一方映画では、「制作費600万元で作られた国産アニメ映画『喜羊羊与灰太狼(メエメエちゃんとオオカミ君)』は先月(09年1月)16日に封切りされ、現時点で全国興行収入は約8,000万元」(中国国際放送HPより)になった例もある(『喜羊羊』以前の劇場アニメは3,000万元が最高)が、このような大ヒットは希であり、この作品がTVアニメであったことを考えると映画における回収もなかなか厳しいように思われる。

中国アニメビジネスの問題点

ストーリーを中心としたプリプロの問題

中国アニメビジネスの問題点は一言で言うとヒット作が少ないということであろう。日本のアニメの歴史を見てもわかるように、『鉄腕アトム』『宇宙戦艦ヤマト』『エヴァンゲリオン』『ポケモン』『千と千尋の神隠し』といったメガヒット作品がアニメブームの起爆剤として常に存在した。その意味でアニメ産業の発展は、まずヒットありきと言えると思う。
ところが残念ながら中国には時代を画すようなヒット作品がまだ現れていない。要するにメチャクチャに面白い作品がまだないということであろうが、その原因はおそらくはストーリーを中心とするプリプロ部分(ストーリー、キャラクター、絵コンテ)、もうひとつは多様性の限定にあるのではないかと思われる。

まずストーリーを中心とするプリプロ部分に潜む問題であるが、中国は原作の宝庫であるマンガ文化を持っていないこともあり面白いストーリーが不足している。ストーリーのみならずキャラクターやコマ割まで揃ったマンガという強力な原作装置を持たない限り面白いアニメをつくり出すのは難しい。
多様性の限定については、要するに中国には大人向けのアニメがないということである。中国も世界の国々がそうであるようにアニメとは基本的に子ども向けのCartoon=漫画映画なのである。子ども向けのアニメをつくり続ける限りは自ら市場的限界が生じるのは当然である。アメリカの様なファミリーターゲットでもいいだろうが、それはそれでマーケティングが難しい。

だが、例え大人向けのアニメが実現したとしても表現規制の問題がある。例えば日本の近未来ファンタジーアニメなどにはしばしば日本が占領される、あるいは国家そのものが消滅しているなどという設定があるが、この想像力が中国で許されるとはとても思えない。
近未来において中国共産党が世界を統一するストーリーなら可能かもしれないが、それを見て喜ぶ人間がいるとは思えない。ある種ハチャメチャな想像力が保証されない限り多様性に富んだ面白いアニメを生み出すのは難しいであろう。以上の問題を解決しない限り中国アニメのエンタティンメント性は向上しないであろう。

ソフトパワーとしてのアニメ

覇権大国化しつつある中国

実はアニメ経済面ではなく政治面でも日本に取って大きな利益をもたらす可能性があるのではないかと考えている。具体的に言えばアニメの持つソフトパワーが安全保障問題とは言わないが、日中の平和に大いに寄与できる可能性があるからだ。
最近の中国は経済発展と共に阿片戦争以来失われていた清朝時代の威光を取り戻すかのような振る舞いが見られるが、それが如実に表れているのが軍備拡張であろう。既に08年には米国に次ぐ軍事費予算となり周辺国に対する重大な驚異となっている。
中国が「平和を愛する諸国民」でありその「公正」と「信義」が「信頼」できるものであれば何の憂いもないが、少なくともその行動を見ている限りは疑問である。特に最近驚異となりつつあるのが台湾問題で、台湾を自国領と考える中国はチベット同様いつ軍事的なアクションを起こしてもおかしくない状況にある。もし台湾侵攻が実現しその付近のシーレーンを支配するとなると日本の生命線であるエネルギー輸送が途絶える可能性が一挙に高まるが、そうなれば日本の実質的な属国化がはじまる。また、親中国のオバマが大統領になったことで中国の台湾侵攻時にアメリカ第七艦隊が出動するかについて疑問符が付くようになり台湾侵攻の可能性はかなり現実的になったと思われる。

動漫新人類に対する期待

こうした状況の中、日本が執るべき手段は幾つかあるが、そのひとつとしてマンガ・アニメのソフトパワーを利用してはどうだろう。これは決して故無きことではなく実際マンガ、アニメ、ゲームといった日本のポップカルチャーが日本の理解に非常に役に立っているのである。

筑波大学名誉教授である遠藤誉氏が著した『動漫新人類』よると、90年代半ばから中国の若者の変化を肌で感じたそうである。彼ら80年代以降に生まれた若者は「新人類」であり、上の世代と違い中国という国や政治体制への思い入れが非常に淡泊で、時に『中国』という国を突き放して考えるような傾向を持っている。
遠藤氏はその原因をあれこれ考えた、そのひとつにその世代の若者の多くが日本の動漫を見て育ったことにあると思い至りそこから動漫に対する調査がはじまる。

その過程で訪れた中国トップの精華大学では日本の動漫を愛する学生による「次世代文化と娯楽協会」というサークルがあり、その人数は何と600人にものぼるとのこと。このサークル、最初はプレステやドリキャスといった次世代ゲーム機(だから次世代文化)愛好会としてスタートしたが、現在では「漫画本の貸し出し、アニメ鑑賞会、ゲーム大会、創作を通した同人誌の発行」などを活動主旨としている。なにやら中国版「げんしけん」である。
驚くべきは、そのサークルメンバーが揃って「ッつうか・・・」という日本の若者言葉もつかえるほど日本語が流暢とのこと。オタクの域に入っていると思われるが、日本に取っては非常に有り難い話である。こういう世代が中国社会の主流となれば日本と事を構えるような野望は薄まるのではないか。従って、日本の動漫を普及させる(勝手に普及してはいるが)手段をあらゆる方面から検討すべきではないかと考えるのである。

以上、中国についてアニメ産業の視点から述べてきたが、経済面においても政治面においても日本のアニメが有益であるのは間違いないので今後も日本と中国のアニメ産業の関係性を追求して行こうと考えている。

第1回第2回第3回

[筆者の紹介]
増田弘道
1979年 キティレコード入社後、レコード販売促進、ビデオ企画、キャラクターライセンス、アニメ製作担当などを歴任。 1988年 郵政省管轄財団法人放送音楽文化振興会出向、ハイビジョン番組などを制作。 1992年 キティフィルム退社、同年 ドドプレス(現「ソトコト」)入社。 1997年カイ・コーポレーション(プランニング会社)及びブロンズ新社(出版社)とプロデュース契約。各種プランニング、単行本編集を多数手がける。 1999年(株)パオハウス代表取締役就任、2000年(株)マッドハウス代表取締役就任、2005年退社。 2007年には、アニメビジネス産業の現状と市場を解説した「アニメビジネスがわかる」(NTT出版)を執筆。現在フロントメディア取締役、シンプル・デッセ取締役プロデューサー、武蔵大学社会学部講師などを務める。
アニメビジネスがわかる: http://anime.typepad.jp/

続きを読む "中国アニメ産業の現状 アニメフェア、動漫基地を訪れて(4)" »
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2009.07.15
海外事情 ]
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中国アニメ産業の現状
〜杭州アニメフェア、大連・北京石景山の動漫基地を訪れて〜 (3)

日中間の可能性を探って

増田弘道

大連・北京の動漫基地を訪ねて

大連動漫回廊

杭州のアニメフェアから戻って一週間後に再度中国を訪れる機会を得た。今回は大連で行われる「日中 桜・アニメ フェスティバル」という文化交流会に手塚プロの松谷理事長(6月よりスタジオぴえろ代表の布川氏が理事長となった)以下総勢8名が招かれたのであるが、同時に経済産業省の助力によって大連市と北京市にある動漫基地の視察や中国政府関係者との懇談も重要な目的のひとつであった。
大連の動漫基地を訪れたのは出発当日5月8日の午後、大連市長への表敬訪問のあとであった。この動漫基地は大連市の中心から南西部に車で30分ほど行った広大な大連ハイテクパークの一角にある。
このハイテクパークにはマイクロソフト、インテル、IBM、ノキア、トヨタ、ソニー、パナソニックといった世界的企業を含む3,000もの企業が集積した一大産業地帯である。

大連で今回訪れたのは3社、何れも3DアニメのTVシリーズ、ゲーム映像、CFなどの制作会社ということもあり、2Dアニメ主流の動画協会としては評価しがたい面もあったが、おそらくここ数年のアニメブームによって誕生した企業にはこのような3D志向の会社が多いのではないかと思う。
その理由として考えられるのは2Dアニメ制作の難しさである。2Dアニメ制作一朝一夕には習得できない。彼らはそれをハナから諦めて、デジタル技術で補完可能な3Dアニメに向かったのではないか。3Dアニメは中国(あるいは韓国)の方が上という声も聞かれるがそれにはこういった事情があると思われる。

翌日、東北済経大学で「桜・アニメフェスティバル」が開催され、動画協会から松谷理事長、泊顧問をはじめとするメンバーが参加しアニメを通じての日中友好親善を深めた。
中でも好評だったのは親善講演会で行われた泊顧問のセミナーで、市内の学校からも聴講者が駆け付けここでも日本のアニメに対する関心の高さが伺えた。

北京石景山動漫基地

大連に続き向かったのは北京。目的は日中間におけるアニメビジネスの可能性を探るためである。
移動日の翌日にまず訪れたのは北京の中心地から地下鉄で30分ほどの石景山区にある科学技園区(ハイテクパーク)である(少し前に有名になった何でもありのキャラクターランドの近く)。その一画の「北京デジタル娯楽産業モデル地区」の中に動漫基地はあるのだが、印象的だったのが案内をしてくれた張氏が代表を務めるdigilandという会社の有り様(よう)であった。

アニメ、実写のCG制作だけではなく、編集やミックスダウンなどのポスポロもこなすこの会社、驚いたことに所在地が北方工業大学のしゃれた校舎内にあり、学生と思しき人間が作業しているのである。さらに、人材育成センターも大学内にあり、恥ずかしい限りであるが中国ではこのような産学一体型の取組が当たり前であるとそこで初めて知った。
学生たちも商業作品の制作に参加しており、アカデミックライセンス(あるいは無許諾ソフト?)の上に人件費がタダ(推測ではあるが)とあっては、生産性は低いと思われるものの恐るべき価格競争力と言えるであろう。

そして、石景山で最後に訪れたのが日系アニメ企業との合弁会社を誘致したいという領秀大廈(ビル)であった。先方の説明によるとこの6階立てワンフロアー1,400平米のビルを1平米1月1.5元(約225円)で借りられるとのこと。また、各々政府、北京市、石景山区での税制優遇、また資本金に応じた投資、さらには作品に対する出資、ファンド活用などの制度が利用可能で魅力的な話であるのは間違いない。
合弁として割り切ってやる覚悟があればそれなりのメリットを享受できるだろうが、外貨持ち出しが困難、さらによく制度が変わるなどのリスクは依然として残る。

政府関係面談

石景山の視察後、私は所用のため帰国してしまったが残ったメンバーは経産省と共に中華文化促進会、国際版権交易中心、広電総局ラテ局、文化部といったキーとなる政府関係部署とのミーティングに臨んだ。
そして、それら一連の話し合いの中で感じられたのは、重工業やIT産業、新技術産業から環境エネルギー産業、文化産業へのシフトが大局的なレベルではじまりつつあるということ。そういった状況の中、今まで広電総局主導で進んできたアニメ産業育成に対し文化部も手を上げ、担当者曰く日本円にして総額2,000億円にのぼる投資を考えているとのことであった。

真偽のほどはわからないが、もし直接作品に投資してもつかい切れる金額ではない。中国には「党管幹部」(共産党が幹部を管理する)といった制度があり国有企業のトップには各省庁のトップクラスが任命される。おそらくこの資金もそれらの企業に流れハコモノなどにつかわれるのであろう。
ちなみに、政府としての著作権制度に対する取組も佳境を迎えているようで制度的な不備はほとんど解消されたとのこと。その結果、侵害案件についても訴訟でそれなりの成果を得られるようになり、侵犯者に対しても相応の処罰が科せられるようになったとのことである。

協業の可能性

今回、アニメ業界としては初の公式訪問であったこともあり、体面を重んじる国としては情報交換以上の対応をしてくれたように思える。
そのひとつとしてあったのが、文化部からの制作協定の打診である。実現性はともかくとしてこのレベルの話が出たこと自体今回の訪中の大きな成果であったと思うが、実は昨年12月に中国文化部と韓国文化体育観光部で「ゲーム産業及び文化合作についての協定」が結ばれた前例があってのことであろう。
中国としては初の海外との協調体制として注目されたが、本年6月11日正式に「中国・韓国ゲーム産業合作協定」を締結、同時に中韓ゲーム産業連盟を発足し、江蘇省の「国家デジタル娯楽産業模範基地」である常州創意基地で中韓両国のネットゲームの合作事業を行うこととなった。
今後の経済動向を考えると中国を無視できないのは明らかであるが、ハリウッドのメジャーならいざ知らず、アニメ企業が単独で進出するのは難しいと思っていた日本のアニメ事業者にとって、この制作協定は果たして朗報となるのであろうか。

この他に、一番手っ取り早い協業形態としては「枠の交換」が効果的であると思われる。
例えばアニメ専門チャンネルのニコロデオン(Nickelodeon)は、この7月からアジア13カ国・地域で中国製TVアニメの放映枠「China Toon」をスタートさせた。元々ニコロデオンは自局の人気番組『スポンジ・ボブ』をCCTVで放映させ高い人気を得ているが、おそらくそこには中国製のアニメをニコロデオンで放映するといった駆け引きがあったのではないだろうか。
中国としては喉から手が出るほど欲している海外進出である。従って、中国進出を狙うならこの作戦が一番手っ取り早く現実的な作戦であるように思える。

第1回第2回
第4回に続く

[筆者の紹介]
増田弘道

1979年 キティレコード入社後、レコード販売促進、ビデオ企画、キャラクターライセンス、アニメ製作担当などを歴任。 1988年 郵政省管轄財団法人放送音楽文化振興会出向、ハイビジョン番組などを制作。 1992年 キティフィルム退社、同年 ドドプレス(現「ソトコト」)入社。 1997年カイ・コーポレーション(プランニング会社)及びブロンズ新社(出版社)とプロデュース契約。各種プランニング、単行本編集を多数手がける。 1999年(株)パオハウス代表取締役就任、2000年(株)マッドハウス代表取締役就任、2005年退社。 2007年には、アニメビジネス産業の現状と市場を解説した「アニメビジネスがわかる」(NTT出版)を執筆。現在フロントメディア取締役、シンプル・デッセ取締役プロデューサー、武蔵大学社会学部講師などを務める。
アニメビジネスがわかる: http://anime.typepad.jp/

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2009.07.08
海外事情 ]
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中国アニメ産業の現状
〜杭州アニメフェア、大連・北京石景山の動漫基地を訪れて〜 (2)

日中間の可能性を探って

増田弘道

杭州アニメフェアの概要とコンテンツ

第5回杭州アニメフェア

中国初のアニメフェアとして注目された杭州アニメフェアも今年で5回を数えることとなった。中国アニメの躍進と共にあったこのアニメフェアは唯一の国家公認(広電総局)イベントとあって規模もずば抜けている。
杭州アニメフェアの正式呼称は中国国際動漫市(China International Cartoon Industrial Exposition 2009=CICAF2009)で開催期間は年4月28日〜5月3日の7日間。会場は杭州の中心地から10キロほど離れた蕭山(しょうざん)区にある杭州休博園(Hang Zhou Leisure Expo Park)。ここはホテルや遊園地、ショッピングモール、そしてリゾート風高級住宅街までを含む広大なエンタティンメント・パークでアニメフェアはその中にある三つの展示場を中心にホテルや劇場をつかって行われた。

主催者(Sponsors)は広電総局(総務省)と浙江省人民政府。共催者(Organizers)は浙江市民政府、浙江省広電総局、浙江広電視集団=浙江広電メディアグループとなるが、実際にアニメフェアの資金を提供しているのは杭州市とのことであった(実行部隊はCICAFC(China International Cartoon & Animation Festival Committee)である)。

杭州アニメフェアの歴史

杭州アニメフェアは政府が積極的に動漫政策を推し進め、アニメ制作が一挙に伸びはじめた04年からスタートした。知材立国宣言直後にはじまったTAFとそのあたり経緯は似ているかも知れない。
まず、展示場のスペース規模の推移。初年度が2万平米、2回目4.6万平米、3回目は変わらず、昨年4回目には6万平米で今年も昨年と同じ規模であるがこれはTAF(約2.6万平米)の2倍強である。そして、コマ数は123、出展事業者数286(東京は695コマ、199事業者)であった。

実はというか、この出展者にはいわゆる海賊版関連の事業者もかなり含まれているのであり。日本では問題外のことであろうが堂々とコピー商品を売る彼らを見ると違法という概念そのものが存在しないのではないかと思ってしまう程であるが、この問題が解決しない限りこのアニメフェアに対する国際的関心は高まらないであろう。

        china2-1.jpg

急増する動員数

アニメフェアの動員数も年々急上昇している。第1回目の総入場者数12万人、2回目は倍以上の28万人、3回目43万人、4回目67万人、そして今年5回目は78万人となったという。TAF 13万人(09年)のちょうど6倍である。
ところが、この数字多少疑問が残る。開催期間中、実際一般客が入場するのは5月1日のメーデーからの3連休である。そうすると1日ほぼ20万人動員の計算となるがTAFにおける経験則上、この会場にこれほどの人間が入場するのは不可能である。

成約取引額においても主催者発表によるとアニメフェアにおけるビジネス上の成約取引額は、第1回目30億元、2回目37.6億元、3回目46.8億元、昨年が50.5億元、そして今年は65.3億元(979.5億円)までなったとある。
しかし、「公式発表」であるのはわかるが中国のアニメビジネス状況を考えると如何に不自然である。白髪三千丈のお国柄とは言わないが詳細な内訳があるとリアリティが増すのだが・・・

アニメフェアのコンテンツ

09杭州アニメフェアのコンテンツは以下の通りであった。

 1) 開幕式(Opening Ceremony)
 2) 動漫産業博覧会
    (China International Cartoon & Animation Industrial Expo)
 3) 商業活動(Professional Business Activities)
 4) セミナー&サミット(Summit Forum)
 5) コンペテション(Monkey-King Award Competition)
 6) 関連企画(Interactive Activities)

以下概要をざっと説明する。
まず1)の初日の夜開催の開会式であるが、これは私たちが思う以上にアニメフェアで相当重要な位置を占めた一大セレモニーであった(ディナー付きで8,000円。かなり高い)。一応コンペテションの表彰式と銘打っているが内実は完全なエンタティンメントショーであり、司会はCCTVの著名アナウンサー、時々アニメにからめた演出はあるもののほとんど紅白歌合戦という趣であった。
来賓も豪華で広電総局や浙江省、杭州市のトップ人材が列席していたが、その秘密はCCTVでこのオープニングセレモニーを放映している点にあるのかも知れないが、突出した豪華イベントであった。

次の動漫産業博覧会はいわゆるブース出展である。全中国の放送局、製作・制作企業(ゲームやモバイル向けの映像、Webも制作する digital系の会社が多い)、動漫基地、教育機関、出版社、玩具・衣類メーカー、物販・流通などが出展している。海外からの出展もあるが映画祭などへの出展招致などが多く企業出展はさほど見受けられなかった。

3番目の商業活動は国際動画交易会=企業プレゼンテーションと産業投資懇談会=文字通りアニメに対する投資懇談会などである。中国では業界外部からの投資が多いと聞くが、そのへんの事情を北京のコンテンツ投資会社の社長に聞いたところ、主な出資者は不動産業者であるという。
同時にそれに匹敵する(あるいはそれを上回る)投資者は国や地方政府などであるということも多くの人から聞いた。

4番目の活動がセミナーやサミット、フォーラム。主なものは基調講演である「アニメサミットフォーラム」、「実例分析」(Case Study1〜3=『カンフーパンダ』、大ヒット中国アニメ『喜羊羊与灰太狼』『天眼』などの監督を招きその成功を分析する)、「中日動漫合作フォーラム」(日本サイドはフジテレビ執行役員の前田和也氏、デジタルハリウッドの学長杉山知之氏、シンク代表森祐治氏、コスパ代表橋本敬史氏、ゴールデンブリッジ代表森田栄光氏)などである。
このフォーラムで印象的だったのはフジテレビ執行役員の前田和也氏の発表であった。昨年夏よりコンテンツ提携・販売プロジェクトを組み、今後海外、特に中国を最重要課題国として取り組むと語っておられたが、今までどちらかというと内向きであった日本のテレビ産業がようやく海外展開に向かうという印象を強くした。

5番目はアニメフェアの目玉のひとつであるコンペテション「“Monkey-King Award”Competition」。テーマは「平和、調和、進歩、そして振興」。審査員に中国アニメ界の重鎮が名を連ねる中、木下小夜子氏の名前があった。

最後の関連企画であるが、動漫熱狂パレード、コスプレショー、 “天眼杯”中国国際少年児童漫画大賞といったものであった。

        china2-2.jpg

杭州アニメフェアについて思ったこと

それでは杭州アニメフェアについての感想を述べてみたい。

① 立地条件
杭州の中心地から10キロ余りの地点(蕭山区)での開催は悪い立地条件ではないが問題はアクセスであろう。移動手段は車やバスだけになるので一般デーは大渋滞となる。とにかく足の便が悪いという印象が強く残った。人口666万人を擁する杭州市の早期の地下鉄建設が望まれるところであろう。

② マーケット会場
肝心のマーケット会場は不思議な造りの建物であった。フロアーがABCに分かれているのはいいのだが、Aフロアーの地下にBフロアーがあり、さらにその先にCフロアーがあるという構造なのである。それのせいか延べ面積では東京より広いはずなのに狭く感じてしまう。地下フロアーの天井が低いせいもあるだろうが(普通のビルとほぼ同じ高さ)照明が暗いことも相まって窮屈な感じがしたのは確かである。

③ インターナショナル対応
インターナショナルと打ち出してはいるが会場を見る限り英語対応も含めそうした配慮は余りなされていないのは(TAFにも言えるが)、基本的に視線が内向きだからであろう。立地のいいAフロアーをCCTVなどの国内主要企業が占めるのはいいとしても、今回出展した日本企業はBブースの隅っこにあり歓迎されているようには見えなかった。

④ ブースの状況
各ブースの状況であるが、一言で言うと密度が薄いという感じである。立体的な展示が少なく、モニターによる映像展示、あるいはポスターだけ貼ったブースも数多く見られた。その点、展示物(販売物)が充実し活気があったのが海賊物販業者というのが皮肉であった。一般的に展示照明が暗く、音がバカでかく割れているというケースも多くセンスの欠如が感じられた。

今回アニメフェアを訪れた印象を述べるならば森鴎外の小説ではないが「普請中」であるように思えた。そして、これは中国のアニメビジネス全体にも言えることではないかと思う。
ある中国人から、政府関係の人間がアニメ事業者に対し、「日本のアニメ放映を禁止した上、多額の援助までしているのに少しも海外に売れるアニメをつくれないじゃないか」とクレームをつけたという話を聞いた。真偽のほどは定かではないが、その種の話が漏れ伝えられて来るところに問題の本質が潜んでいるのであろう。

第1回 
第3回に続く

[筆者の紹介]
増田弘道

1979年 キティレコード入社後、レコード販売促進、ビデオ企画、キャラクターライセンス、アニメ製作担当などを歴任。 1988年 郵政省管轄財団法人放送音楽文化振興会出向、ハイビジョン番組などを制作。 1992年 キティフィルム退社、同年 ドドプレス(現「ソトコト」)入社。 1997年カイ・コーポレーション(プランニング会社)及びブロンズ新社(出版社)とプロデュース契約。各種プランニング、単行本編集を多数手がける。 1999年(株)パオハウス代表取締役就任、2000年(株)マッドハウス代表取締役就任、2005年退社。 2007年には、アニメビジネス産業の現状と市場を解説した「アニメビジネスがわかる」(NTT出版)を執筆。現在フロントメディア取締役、シンプル・デッセ取締役プロデューサー、武蔵大学社会学部講師などを務める。
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2009.07.03
海外事情 ]
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 7月2日から北米最大のアニメ・マンガイベントのアニメエキスポ(AX)2009が開幕した。国内では「クール・ジャパン」の言葉と共に大きな期待をされている海外市場だが、過去数年間、DVD販売を中心に北米の日本アニメ業界は厳しい不況に陥っている。今回のAXはそうした影響が、不況の中でも依然好調とされているアニメコンベンションに及ぶかどうか注目されるものであった。
 結論から言えば、現在の不況はAXを直撃したようだ。目玉であるエキビジョンホールの企業出展、トークイベントや講演会からなるパネル、イベントの企業スポンサーなどからの関連企業の相次ぐ撤退、縮小は、誰の目からも明らかとなっている。

 エキビジョンホールでは、大手企業の出展がほとんどなくなった。アニメ企業では、業界第1位のファニメーションが唯一出展したものの事業の大幅縮小を余儀なくされたADヴィジョンなどの出展は引き続きなかった。
 VIZメディアやマンガエンタテインメントも出展はなく、昨年は数少ない大型ブースを持っていたバンダイエンタテインメントも、今年は出展を見送った。一方バンダイエンタテインメントは、大型ゲストを中心にパネルイベントを複数開催する。経営資源の活用に厳しい選別が働いているようだ。また、現地企業以外の日本企業からの出展も目立ったものは見られない。

       ax20092.JPG

 こうした状況はマンガ出版社も同様だ。AX個別の要因もあるかもしれないが、今回、主要なマンガ出版社の出展は全滅状態であった。業界1位のVIZメディア、第2位のTokyopop、第3位のデル・レイは、昨年に引き続きブース出展を行っていない。
 中堅クラスのダークホース、YenPress、バーティカルといった出版社の名前も見られない。わずかにデジタルマンガのみが姿を見せている。大手企業の出展のない会場は、各社間の相乗効果が生まれないと判断された可能性がある。マンガ出版社は今月末に開かれる、ポップカルチャー全体をテーマとするサンディエゴ・コミコンに目が向いているのだろう。

 また今回はこれまでは出展はなくともパネルだけは開催してきた各社が、パネルからも全面撤退モードとなっている。スケジュールで確認するとVIZメディアが1時間、CMXが1時間のパネルを持つが、全体では小規模である。AXの会場全体からマンガの存在感はほとんど消えてしまった。
 来年も同じ状況が続けば、AXはアニメ・マンガのイベントでなく、文字どおりアニメエキスポとなるだろう。マンガ出版社の誘致は、来年以降のAX成功の大きな鍵になる。

 しかし、こうした企業の退潮の一方で、アニメファンの勢い自体は依然堅調なようだ。会場全体を見回したところ来場者数はかなり盛況に見えた。この週末の動員数とその後の公式発表を待つことになるが、来場者数は前年並みを維持しそうだ。
 企業出展から撤退したエキビジョンホールのスペースを代わって埋めたのは、大幅に拡充された個人作家の作品即売会アーティストアレイである。これまでは東京国際アニメフェアと似た雰囲気もあったエキビジョンホールは、むしろコミックマーケットのような雰囲気に近づいた。

 さらに企業パネルが大幅に減った後を埋めたのは、アニメファンが独自のテーマで設けるファンパネルである。2006年、2007年は企業パネルに押されてほとんど姿を消したファンパネルが、劇的に復活した。ここでもファンパワーが拡大している。
 こうした結果AXは、イベントが急成長を遂げる前、10年前の手作りイベント感漂う雰囲気に戻ったかのようである。企業の姿がなくなっても、コスプレなり、カラオケなり、おしゃべりなり、参加者はそれぞれイベントを楽しんでいるようだ。

       ax20091.JPG

 こうした状況を本来のイベントの在り方として、好意的に見ることも出来るだろう。しかし、問題は来場者規模が高止まりしていることだ。それだけのファンを収容し、満足させるコスプレ大会、ゲーム大会、上映会などを維持する資金は必要だ。それは入場収入だけでは賄えない。 
 出展者の減少に加えて企業スポンサー、協賛企業も急減しており、AXの予算が今後かなり厳しい状況に直面する可能性もある。2007年には6つの大型コンサートを行ったが今年はそれが2つになっている。現在の状況が続けば、会場やイベントのさらなる削減も考えられる。2010年に向けてAXは、重たい課題を背負うことになる。

アニメエキスポ(Anime Expo)2009 公式サイト 
http://www.anime-expo.org/jp/

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2009.07.01
海外事情 ]
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中国アニメ産業の現状
〜杭州アニメフェア、大連・北京石景山の動漫基地を訪れて〜

日中間の可能性を探って

増田弘道

3月に開催された東京国際アニメフェア(TAF)で中国文化部が日本のトップ企業並みの展示スペースを確保し、中国中央電視台(CCTV)など大手企業を引き連れ派手にPRする光景が見られた。また、閉塞気味の中国市場を打破すべく、『三国演義』(タカラトミー/北京輝煌動画公司/フューチャー・プラネット)のような日中合作アニメも生まれつつある。
昨今の日本のアニメ市場を考えても隣の芝生が気になるところであるが、果たして今後日中間で今までとは違った局面が生まれる可能性があるのか。実際に現地を訪れてこの目で確かめてみようと思い杭州アニメフェア訪問したが、その直後、幸運にも経産省の計らいで大連と北京を訪れそのアニメ製作事情も伺い知ることも出来た。ということで雑多な内容のレポートになるかも知れないがご容赦願いたい。

中国アニメ事情
数字で見る中国アニメの現状

中国のレポートに入る前にざっと中国のアニメ制作概況について触れてみたい。3月に開催された東京国際アニメフェア動画協会ブースに中国アニメの年間制作分数のデータがあったのに気づかれたであろうか(表1)。これは03年からの中国国家広電総局発表のデータであるが制作分数がかなりの勢いで増えているのがわかる。
一方、それに対し日本のアニメの制作状況はどうか。動画協会発表の数字によると、日本のTVアニメの生産量は06年をピークとして下降傾向にあり、08年は前年比マイナス14,618分の110,180分となっている。ということは既に中国に抜かれているということであるが、これらデータをどのように捉えるべきかも今回の訪中のテーマでもあった。

          〈表1中国アニメ年間制作分数〉
      masudasantyugoku.JPG

中国アニメ発展の経緯

中国アニメの歴史は古く、アジアで初めてつくられた長編劇場アニメ『鉄扇公主』(1941年)が若き日の手塚治虫に影響を与えたことは知られているが、産業として興隆するのは、中国政府が重化学工業やIT産業や新技術産業分野から、環境エネルギー産業や文化産業にシフトした2000年代からであり、最近ではハイテクサービス産業(通信サービス・ネット産業・コンテンツ産業)として電子情報産業、バイオ産業、航空宇宙産業などと並んで「革新想像国家建設の重要任務」を持つものとして位置づけられるようにまでなった。

このような方針に基づき、政府は「アニメチャンネル開設及び国産アニメの放映時間増設、民営参画を奨励し」国産アニメ制作・放映活動を促進、省レベルのテレビ局によるアニメチャンネル開設、CCTV少年チャンネルにおける国産アニメ放映量の増加を計った。誕生以来、政府援助とは縁のなかった日本のアニメ産業界と見事なまでに対照的であるが、これによって中国のアニメ製作が促進されたのは間違いない。 

       masudasankousyuu.jpg

「外国アニメ産業との提携強化」の意味

上記方針では同時に「外国アニメ産業との提携強化」も謳ってあるが、それは飽くまで海外からの技術導入や合作といった意味であって、逆に中国政府は国内アニメ産業保護のために海外アニメの放送規制を行った。
06年9月から「中国の動画作品発展のための具体的措置」を実施(08年から21時まで延長)、これによって夕方17時から20時のプライムタイムで外国アニメの放映は禁止となった(それまでは中央局や地方主要局での国産6:外国産4という総量規制)。フランスや韓国にも海外アニメ(主に日本製の)の進出を食い止めるためのクォーター制があるが、ここまでなり振り構わずやるのはさすが中国と言うべきか。

第2回に続く

[筆者の紹介]
増田弘道

1979年 キティレコード入社後、レコード販売促進、ビデオ企画、キャラクターライセンス、アニメ製作担当などを歴任。 1988年 郵政省管轄財団法人放送音楽文化振興会出向、ハイビジョン番組などを制作。 1992年 キティフィルム退社、同年 ドドプレス(現「ソトコト」)入社。 1997年カイ・コーポレーション(プランニング会社)及びブロンズ新社(出版社)とプロデュース契約。各種プランニング、単行本編集を多数手がける。 1999年(株)パオハウス代表取締役就任、2000年(株)マッドハウス代表取締役就任、2005年退社。 2007年には、アニメビジネス産業の現状と市場を解説した「アニメビジネスがわかる」(NTT出版)を執筆。現在フロントメディア取締役、シンプル・デッセ取締役プロデューサー、武蔵大学社会学部講師などを務める。
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2009.06.18
海外事情 ]
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数土直志

[アニメーション見本市MIFAの機能]
 世界最大のアニメーション映画祭であるアヌシー国際アニメーション映画祭が、6月8日から13日まで開催された。華やかな映画祭とコンペティションが話題になる一方で、併設される9日から12日まで行われたMIFAは日本ではあまり知られていない。
 MIFAは、THE INTERNATIONAL ANIMATION FILM MARKET(国際アニメーション映画マーケット)で、アニメーションに特化した世界で最も大きな見本市である。見本市を運営するCITIAによれば、2009年は350社1900人の業界関係者が自社作品を紹介したという。
 
 こうした言葉が並ぶと凄い会場を想像するが、正直MIFAの会場は大きくない。エンタテイメント関連の大型見本市、例えば東京国際アニメフェア、東京ゲームショウやE3、各国のブックショウに馴染んだ人は拍子抜けするかもしれない。
 湖の畔にある高級ホテルの一部とそれに隣接した場所に張られたテントが、会場のほとんどである。何も用がない人であれば、丹念に回っても1時間もかかるかどうかといった具合だ。
 それでいてMIFAの参加登録料は1人195ユーロ(およそ27000円)とかなり高額になっている。高額な登録料、小規模な企業ブースという点では東京国際映画祭で併催されるコンテンツマーケットTIFFCOMに近い。

       MIFA1.JPG

 ふたつに共通するのは、ビジネスに関係のない一般来場者を排除していることである。つまり、MIFAの機能は作品売買の場の提供である。
 高額の登録料は、むしろビジネス目的でない人を会場から遮断する役割も果たしている。逆に言えば、会場にいるのは、それだけの金額を払うことに意味を持つビジネス関係者となる。これはこちらも高額の出展料を払う企業出展者にとっても効率的なわけだ。

[MIFAの評価]
 そうして築かれたMIFAの見本市としての評価はどうなのだろうか。実際は、会場を見たところ人は多いが、必ずしも活発に話し合いがされているわけではない。挨拶をする人はいるけれど、ビジネスを行っている様子はあまり見られない。
 また、ヨーロッパにはアニメーションも扱う巨大な映画見本市として、MIPTVやカンヌ映画祭やベルリン映画祭、それに子供番組専門のマーケットであるMIP juniorを併設するMIPCOMなど、MIFAにとって強力なライバルが目白押しである。

 これを見てMIFAの見本市での取引規模は大きくないと考える向きもある。しかし、他の多くの国際見本市と同様に、MIFAの取引も実際は会場の外にあるとの指摘は多かった。そうした場で長期的なビジネスが行われているというわけである。
 つまり、MIFAへの出展はプログラムに会社名が載り、会場内に入るもので、いわばビジネスへの参加表明に過ぎない。高額なMIFAへの出展料や登録料は展示会場への入場料ではなく、展示会場を中心としたビジネスへの参加料金なのである。

[ヨーロッパのアニメーション市場は供給過剰?]
 そして、会場の大きさとは別に会場を見渡せば、そこに出展されているアニメーション作品の数の多さに驚かされる。とにかく数が多い。MIFAには北米や日本の企業の出展は少なく、多くはヨーロッパ地域からのものである。そこにある膨大なアニメーションは、ほとんどがヨーロッパの商業アニメーションなのである。
 日本ではその数字の出所が曖昧な、世界でテレビ放映されている商業アニメーションの7割が日本製との説がまかり通っている。しかし、こうした会場の様子を見れば、そうした数字を疑うのに十分であろう。

 また、特徴的なのは、作品の大半が子供向けのアニメーションであることだ。つまり、ヨーロッパのアニメーションビジネスは依然イコール子供番組となっている。
 さらに3Dアニメーションの盛況など、会場を一回りするだけでヨーロッパのアニメーション映画、テレビ番組のトレンドはかなり掴めるだろう。

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 日本ではここ数年、北米市場での日本アニメの放送市場、DVD市場での後退を前に、市場アクセスがより容易ではないかとヨーロッパ市場に注目する動きがある。しかし、少なくともMIFAの会場で見る膨大な商業アニメーションの大群は、ヨーロッパ市場も日本と同様に制作側の供給過多を感じさせた。
 実際に、別に参加したビジネスコンファレンスでは、ヨーロッパでのアニメーショ制作の急増は報告されている。それがMIFAのような見本市への、企業参加を積極化させる理由のひとつでもあろう。
 そして、もし、アニメーション作品が供給過多であれば、その市場に参入しようとする日本企業にとって辛いものとなる。

2に続く

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海外事情 ]
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[韓国企業の積極攻勢]
 そうしたなか、MIFAにも数少ないが日本の企業が参加していた。ひとつは練馬アニメーション協議会の団体出展で、その中にはスタジオ雲雀やミルキーカートゥーンなど企業・作品の紹介が行われていた。もうひとつは東映アニメーションである。
 米国企業の参加も少ない。この理由はよく分からないが、米国のアニメーションの多くが米国系の現地の放送会社で放映されることが多いためかもしれない。もしくは、単純にMIPCOMやカンヌといったより大きな市場を好んでいる可能性もある。

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 一方で、アジアの国では、韓国の積極的な出展が目立った。今年の韓国は映画祭ではやや退潮気味であったが、ビジネスになると驚くほど元気であった。この理由は国や地方自治体による積極的な後押しがある。行政による共同ブースの大きさが目立った。
 韓国の出展が積極的な別の理由は、同国のアニメーションが実は日本アニメのような年齢の高い層に向けた2Dアニメーションでなく、子供向けの3Dアニメーションやカートゥーンスタイルの作品が多いことだろう。韓国のアニメーションはヨーロッパに受け入れられやすいスタイルで、むしろ輸出することを念頭に置いて制作している様子が伺えるからだ。

 しかし、会場を見回すと、こうした韓国の戦略が成功するのかどうかは、やや懐疑的に感じた。先に触れたように、ヨーロッパ産のアニメーションは、おそらく既に供給過剰なほど制作されている。
 たとえクオリティが高い作品でも、放送割当枠(クウォーター制)もあるヨーロッパの放送局が、敢えて国内企業、EU企業に似た作品をEU、ヨーロッパ以外の地域から購入するインセンティブが乏しいように感じるからだ。

[異彩を放つ東映アニメーション]
 そうした中で気になったのは、東映アニメーションのブースである。同社のブースは、今回映画祭のテレビアニメーション部門で公式セレクションされた『うちの3姉妹』を強力に推していた。さらに『ドラゴンボール』、『ONE PIECE』といった、日本で人気のある2Dアニメーションが主力である。
 日本アニメ独特のアニメスタイルは、会場で異彩を放っていた。そして、会場の中で唯一ショーケースを設けて、キャラクター商品を並べていたのも東映アニメーションである。MIFAの中で多くの企業は映像を売るビジネスをしていても、商品ライセンスを売るビシネスを行っていない。

       MIFA4.JPG

 東映アニメーションのブースはかなり異質であったし、その異質さが支持されているか、拒否されているかもなかなか分からない。ただ、ヨーロッパのアニメーションと同じものであれば、そのクオリティにかかわらずヨーロッパの作品でよいのだろう。
 もしビジネスを考えるなら、むしろ代替の利かない独自のスタイルを持つことが重要でないだろうか。それこそが日本アニメがヨーロッパで存在感を持てる理由に違いない。どんな国の放送局でもラインアップの多様性は重視される。日本企業とアニメーションが生き残る道はそこにあるはずだ。 

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アヌシー国際アニメーション映画祭 公式サイト
http://www.annecy.org/home/index.php?Page_ID=2

       MIFA5.JPG

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2009.02.22
海外事情 ]
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【『AKIRA』 売り切れの驚き】
 長期低落傾向が続くDVDやBlu-Ray Disc(BD)などの映像パッケージビジネスを中心に、相変わらず北米の日本アニメの業界には暗いニュースが続く。そうした中で久々に、明るいニュースが伝わってきた。
 2月19日付けのICv2のニュースによれば、2月24日に北米で発売される『AKIRA』のBlu-Ray版が、発売一週間前にして、出荷段階で完売したという。これを受けて発売元のバンダイグループは、セカンドプレスに入っており、3月10日以降入手可能になるとしている。

 ただし、この再プレスされた商品には、初版についていたスリップケースとブックレットはセットされないという。こうしたことからも『AKIRA』BDの出荷数が、事前の予想を大きく上回ったことは間違いないだろう。
 米国では小売店が映像パッケージを仕入れた後、いつでも商品を返品出来る仕組みのため人気のある商品は多めに仕入れる傾向がある。このため出荷数が必ずしも売上に直結するわけではないが、少なくとも小売店の判断では『AKIRA』は売れ筋タイトルというわけだ。

【DVDに続くヒット ファンは何度でも買う?】
 こうした『AKIRA』への注目は、ハリウッドのクリエイターにファンが多いなど、現在のアニメファンを越えた根強い作品の人気によるところが大きい。実際に、2月20日の米国アマゾン・ドットコムのBD総合チャートでは、『AKIRA』は総合ランキングの第10位につけており、その人気の広がりが感じられる。
 今回の北米版『AKIRA』BDの特徴は、2月20日に発売された日本版の『AKIRA』と同じマスターを利用したHDニューテレシネ&192kHz 24bitオーディオであることだ。単なる旧バージョンのBD化でなく、BDならではの商品にしたことが古いファンの心を惹きつけたとみられる。

 実は『AKIRA』は、2001年にパイオニア エンタテインメント(現ジェネオン エンタテインメント)がDVDを発売した際にも、その年の7月第4週のDVDの週間総合チャートにトップとなった記録がある。
 DVD化の際の売りはデジタル修正版だった。作品の初出は1989年だが、SF映画の古典としてクオリティが上がれば何度でも買う熱烈なファンを獲得していることが、成功の理由といえそうだ。

【日米同時発売への影響は?】
 今回の『AKIRA』はビジネス的にも重みがある。この商品が国内の映像パッケージ大手のバンダイビジュアルの世界戦略タイトルだからだ。
 商品は日米同時販売、マスターは日本語版、英語版同一のものを共有している。また、日本語と英語両方の吹き替えのほか、日本語、英語いずれもの字幕がON・OFF選択可能である。映像特典に劇場予告編や大友克洋による静止画の絵コンテ集が入っている。

 通常のアニメの映像パッケージは、各国ごとに異なるマスターを製作する。今回はこれを共用することで製造コストを抑えることが可能になっている。また、発売はバンダイビジュアル、販売は同じバンダイナムコグループのバンダイエンタテインメントだから、通常のライセン契約による販売よりもバンダイナムコグループが得る利益は大きい。
 『AKIRA』が特別なタイトルということもあるが、映像パッケージの世界同時発売に挑戦するバンダイビジュアルにとっては、大きな成果になったことは間違いないだろう。

【苦戦する『らき☆すた』】
 しかし、一方で、残念なニュースも同時に伝わっている。2月20日のアニメニュースネットワーク(ANN)の報道によれば、『らき☆すた』のDVD最終巻第6巻の発売が中止になった。第6巻は通常版のみとなる。ANNは、バンダイエンタテインメントの発言として「非常に残念だが『らき☆すた』の限定版の売上は期待値に届かなかった」と伝えている。
 『らき☆すた』は、北米でも売上が好調だった『涼宮ハルヒの憂鬱』に続く期待作として発売されていた。それだけに今回の限定版途中打ち切りは、現在の北米のアニメ業界におけるアニメ映像パッケージビジネスの厳しさを表している。特に単巻DVDの不振を示していそうだ。

 今回、期間を置いて相次いで報道された対照的なニュースだが、『AKIRA』BDと『らき☆すた』を分けるのは一体何だったのだろうか。それは購買者がアニメファン向けられているか、それ以外に向けられているかでないだろうか。
 『AKIRA』は現在のアニメファンコミニュティに特に人気があるように見えないから、購買層が映画ファンやSFファン、あるいは古いアニメファンなどアニメファンの外にいると考えられる。そして、『らき☆すた』は、おそらく北米では相当コアなアニメファンによってのみ認知されている作品であろう。

【アニメヒットタイトルは「映画」「ファミリー」「ゲーム」】
 こうしたアニメ映像パッケージの思わぬヒットが、近年、アニメファン以外の部分から生まれるケースが多い。大ヒットタイトルの『アフロサムライ』が、黒人やヒップホップのファンをターゲットにしていたのはよく知られた話である。
 また、世界で360万枚を販売した『FF7アドベントチルドレン』は、アニメファンというよりもゲームファンに注目された作品だ。メディアブラスターの作品として過去最高の売上になった『ボルトロン』(『百獣王ゴライオン』)の再販売は往年の子供たちの郷愁をターゲットにしている。
 このほか『パプリカ』は映画ファン向け、ジブリ作品や『ドラゴンボール』、『NARUTO』は、親が子供買ってあたえる傾向が強いファミリータイトルと言えるだろう。

 現在、北米でヒットする作品は、「映画作品」、「ファミリー向け」、「コンピュターゲームと何かのかたちで関連するもの」などである。
 こうした作品は他のアニメ映像パッケージに較べて価格が安いわけでなく、しばしば割高であることもある。日本のアニメは安くなければ売れないという、北米のアニメファンや業者の声とは必ずしも一致しない。むしろ、こうした作品の特長は、アニメファンをメインターゲットにしていないことが共通点である。

 北米のアニメの映像パッケージ市場は、ニッチな市場だからニッチな戦略を取らなければいけないとされることが多い。しかし、実際には、現在の北米のアニメ映像パッケージ市場の不振は、マーケット全体の不振というよりも、日本で言えば深夜アニメに代表されるマニア市場で強く表れている不振なのである。
 これが先週明らかになった、ベストバイのマイナータイトル切捨てにつながっているとも考えられる。米国のアニメ映像パッケージ市場で、唯一、経営が安定しているとされるVIZメディアが、近年、非アニメファン路線を強めていることは偶然でないだろう。
[数土直志]

参考サイト
ICv2  http://www.icv2.com
Akira BD Sells Out
アニメニュースネットワーク(ANN) http://www.animenewsnetwork.com/
Lucky Star 6 LE Cancellation Confirmed

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第5回 クールアニメ・マーケティング・ヒストリー(2)
クールアニメの代表作「アキラ」は、“作家を守る”出版社の姿勢を活かして作られた。

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2009.01.04
海外事情 ]
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2009年スタートの国内海外同時配信は、コピー時代のアニメビジネスの救世主?

数土直志

■ テレビ東京とクランチロール提携の衝撃

 2009年1月8日から米国のアニメ動画共有サイトのクランチロール(Crunchyroll)は、日本で放映されたアニメ番組を番組放映終了後1時間で海外英語圏に有料で同時配信する。これはアニメ番組に強みをみせるテレビ東京との協業によるものである。
 同時配信のラインナップには現在『NARUTO 疾風伝』、『銀魂』、『スキッブビート』、『しゅごキャラ』、『続 夏目友人帳』などの人気作品が数多く含まれている。これまでも海外で日本のアニメの配信は行われているが、今回の日本での放映とほぼ同時というのは驚異的な早さである。

 こうした日本と海外での作品の同時リリースは、近年、今後の海外のアニメビジネスに不可欠と主張されてきたものだ。そして、必要だがなかなか難しいとも考えられてきた。それだけにアニメ業界での驚きは大きい。
 しかし、この試みには別の驚きもある。海外同時配信にテレビ東京が選んだパートナーが、クランチロールであることだ。もともと海外の同時配信の必要性は、海外アニメファンのニーズ以外に、正規の放送やDVD発売に先立って需要を先喰いするインターネット海賊版対策とされてきたからである。

 ところが、クランチロールは、テレビ東京との提携を発表するまで、自社動画サイトに権利者未許諾のアニメ番組投稿を容認してきた。権利者からの通報があれば削除するとの方針はとっていたが、実際にサイトのコンテンツの大半が、未許諾の日本アニメという状態が続いていた。
 1月8日からは権利者未許諾の投稿は全面停止すると発表したものの、インターネット海賊行為対策のためにインターネット海賊行為で成長した企業と手を組む奇妙な状況となっている。

 そうした事実が分かっていてさえ、テレビ東京、東映アニメーション、ポニーキャニオンといった日本の権利者の一部はクランチロールとの提携を決めた。
 それはクランチロールが現在、インターネットを通じてアニメ番組の配信を行い、より多くの海外アニメファンにアプローチ出来る数少ない手段を持つ企業だからである。同社が2008年に引き続き、2009年も海外で最も注目される企業のひとつであることは間違いないだろう。

■ ビジネスの鍵は『NARUTO』

 そうした関心もあり、アニメ!アニメ!では、2008年8月中旬と2008年11月の2回にわたり、クレンチロールのCEOであるガオ氏にインタビュー取材を行った。
 1回目の8月はクランチロールがまだ違法動画アップロードの容認を続け、投稿停止を表明していない時期である。また11月のインタビューは同社がテレビ東京との提携と違法動画のアップロードの停止を発表した直後である。

 この一回目のインタビューでは、ガオ氏にはかなり厳しい質問を行っている。アニメ!アニメ!の立場はこの時点で、クランチロールのビジネスモデルには全面反対であったから(*1)、同社の抱える権利問題については、かなり答え難い質問をしている。
 この際に違法動画の配信について、「出来るだけ早く、止めるべきではないか」との質問に、「問題は認識している。もう数ヶ月待って欲しい」とのことだった。そうした回答は得たものの、実際には数ヶ月以内という期間はあまり信じていなかった。

 この時点でクランチロールのビジネスモデルは、違法投稿のアニメ動画でアニメファンからのアクセスを得て、それをクランチロールが合法的にアップロードしたそれより人気のないコンテンツに誘導するものであったからだ。
 もし、違法動画を停止すればサイトのアクセスは激減し、クランチロールのビジネスの基盤となるアニメファンからの高いアクセスは維持できない。違法と分かりつつも、全面削除は出来ないというジレンマをクランチロールは抱えていたはずだ。
 
 結局、予想は良いほうに裏切られた。クランチロールは『NARUTO』という現在海外で最強の人気アニメの同時配信というコンテンツを得ることに成功した。どんな違法コンテンツよりも集客力のある合法コンテンツである。
 クランチロールは、これにより同社が抱えていたグレーな部分を取り除き、合法的なビジネスを行う企業となる。2回目のインタビューでガオ氏は、クランチロールのビジネスモデルは完全に変わったと説明した。動画投稿は最早クランチロールの主要事業ではなく、今後はライセンスを持つ番組の配信と同社が力を入れるネットコミュニティが中心になるという。
 クランチロールの変化は同社のことだけではなく、同社が変わることで海外のアニメビジネスにも変化が起きそうだ。過去数年盛んに主張されてきた海外ビジネスにおける日本と時差のない配信が、失速中とされる海外のアニメビジネスにどういった影響を与えるのかが確認出来るからだ。

■ クランチロールの何が問題だったのか/■ アニメファンに送る誤ったメッセージ
■ ビジネスの矛盾が消えた後に何を目指すか/■ 有料配信の成果に注目

*当サイトでは違法配信を基盤にしたクランチロールのビジネスに全面反対の立場から、11月17日の違法投稿の全面停止の公表まで、同社から発表されたニュースリリースは扱ってこなかった。

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2009年スタートの国内海外同時配信は、コピー時代のアニメビジネスの救世主?

■ クランチロールの何が問題だったのか

 クランチロールは、2008年に海外のアニメ関連でもっとも話題を呼んだ企業であろう。そして、最も批判された企業である。これに対してネット上には違法な日本アニメのアップロードは他にあるとの反論がある。また、クランチロールは「著作者未許諾の動画アップロードはYouTubeやニコニコ動画も同じ、なぜ我々だけが非難されるのか」と反論していた。
 しかし、一番の問題は、クランチロールが違法コンテンツを基に企業化、ビジネス化を目指していたことである。特に同社が、シリコンバレーの名門ベンチャーキャピタル ベンロック(Venrock)(ロックフェラー系として知られる)から出資を受けたことが明らかになったことが大きかった。ベンチャーキャピタルからの出資の受け入れは、通常は株式上場を目指すもので、そうでなくても上場企業や大手企業に会社を売却する可能性が高い。
 つまり、クランチロールの創業者と社員は、違法コンテンツの積み重ねのうえに多額の利益を得る可能性が高くなった

 さらに産業界のそうした行動は、クランチロールが行っている違法な日本アニメのアップロード行為の容認を公に認めることになる。日本のアニメの権利者はあまり文句を言わないから、クレームがない限り何をやっても大丈夫との印象を残す。これは海外のアニメファンに間違ったメッセージを送ることになる。 
 現在多くのアニメビジネスの関係者が、インターネット上に違法にアップロードされるアニメを完全になくすことは出来ないことを理解している。しかし、それはあくまでも認められない行為というのを多くの人が認識していることが前提である。
 だからこそ企業は違法配信を利用しないでください、それは間違っています、正規に番組を視聴して下さいと言える。その前提が崩れれば、ビジネスは立ち行かなくなる。

■ アニメファンに送る誤ったメッセージ

 2000年代に入って英語圏の日本アニメの会社が一番頭を悩ませたのは、アニメファンが持つ違法コンテンツに対する誤った認識である。日本人の多くは驚くかもしれないが、海外のアニメファンの多くは自分たちが行う日本アニメの翻訳(ファンサブと呼ばれる)と違法なアップロードを日本企業が歓迎していると長く信じていた。
 そうした行為は日本のアニメの宣伝に役立つし、プレマーケティングに使える、単純にクリエイター達は作品をより多くの人に観てもらえればうれしいだろうとの主張である。

 こうした認識がファンサブの拡大の基盤となり、時には違法行為を訴える企業やクリエイター、個人に猛烈な批判が寄せられるなども起きた。過去数年で海外のアニメ企業は、自分達がこうしたことを望んでいないことを繰り返し主張することで、ファンの認識を変える努力を行ってきた。
 ところがクランチロールのサイトには、合法コンテンツ(初期にはGDH(GONZO)、2008年秋には東映アニメーションなどが提供)と違法コンテンツが同じサイトで視聴出来た。勿論、合法コンテンツに問題はない。しかし、そうしたコンテンツが違法コンテンツと並ぶことで、違法コンテンツまでもがあたかも正当であるかのように見えるのだ。
 
 そして、違法コンテンツが普通に存在するサイトに合法コンテンツが提供されることで、合法コンテンツを提供する企業が違法行為を容認しているとアニメファンが判断することは避けられない。
 一方で批判をしながら、やはり日本企業は、ファンサブを歓迎している、アニメファンはそう判断する。コンテンツの提供が、誤ったメッセージを発信していることになる。
 クランチロールは、一方で合法配信の新しいビジネスを創造しますと言いながら、違法投稿の容認で既存のアニメビジネスの基盤を破壊する矛盾した行動を取っていたともいえる。

■ テレビ東京とクランチロール提携の衝撃/■ ビジネスの鍵は『NARUTO』
■ ビジネスの矛盾が消えた後に何を目指すか/■ 有料配信の成果に注目

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2009年スタートの国内海外同時配信は、コピー時代のアニメビジネスの救世主?

■ ビジネスの矛盾が消えた後に何を目指すか

 しかし、クランチロールの違法動画投稿停止の決定で、同社のビジネスが抱える多くの矛盾は解消される。過去1年で失ったものは多いが、これまでのビジネス関係者の心配は解消されるだろう。
 勿論、倫理的な問題は残る。明らかにクランチロールは意図的に著作権未許諾のアニメのサイトへのアップロードを煽ることで成長してきており、これまでのビジネスの成功もそれなしにありえない。
 こうした経緯に、違和感を持つ人は多いだろう。過去の権利侵害の責任を問うことも不可能ではない。しかし、日本の権利者の立場からは、これはあまり大きな問題でない。それによって失われた利益が戻ってくるわけでもない。過去より将来の利益が、ビジネス的には正しい選択に違いない。ビジネスライクに考えればクランチロールと手を組むという方法は、決して悪くない。

 もしクランチロールの過去を問うならば、YouTubeやニコニコ動画の過去はどうかという問題もある。クランチロールの違法コンテンツ容認が、より積極的なものであったとしても、違法投稿動画による初期のビジネス拡大は、多かれ少なかれ投稿型の動画配信サイトのビジネスに共通する特徴だ。
 つまり、クランチロールが、しばしば持ち出すレトリック、「我々とYouTube、ニコニコ動画とどこが違うのか」は、現在まさにその通りとなっている。YouTubeやニコニコ動画とクランチロールを区別する理由はなくなっている。

 では、未来志向で新しいビジネスに協力するWin-Winの関係が新たに築け、全ての人がハッピーになるのだろうか。実はクランチロールとの利害対立が一番大きいのは、YouTubeやHulu、Joostと言った動画配信サイト、あるいはAnime News NetworkやMania.comといった情報、コミュニティサイトではない。現在、北米でアニメを放送し、映像パッケージを発売し、ネット配信をする海外の流通会社である。
 実際にクランチロールのガオ社長に、この質問をぶつけてみたところ、クランチロールは配信するだけ、多くの人が作品を見ればパッケージ商品の売上も伸びるし、業界全体の活況にも貢献すると答えた。この発言に、偽りはないだろう。それは十分可能性のあることだ。

 一方で、ライバルとして想定する企業としてガオ社長は真っ先にカートゥーンネットワークを挙げ、続いてDistributors(流通会社)と答えている。つまり、彼らが目指すのは、現在、米国のアニメ業界で放送、DVDが担っている役割の代替である。
 実際に、今後日本政府も含めた、国外への違法配信問題取り組みが活発化するとしても、コピーの容易性、ネットの匿名性、ボーダレス性を考えれば、これらを完全に撲滅することは不可能である。海外の流通会社は、今後のビジネス方向性をパッケージビジネスからオンラインビジネスにフォーカスしつつある。北米の業界最大手のファニメーションは、2007年のアニメエキスポで行われたビジネスパネルで、日本からのアニメの獲得は原則インターネット送信権込みでなければ行わないと発言している。
 また、VIZメディアも、Blu-Ray Discはオンライン時代のつなぎと考えており、映像販売のビジネスの将来はオンラインに定めているようだ。(*2)
 さらにインターネット配信はDVD購買需要を必ずしも喚起していないとの指摘もある。既存の流通企業が、オンライン配信が未来の収益源とそのビジネスに乗り出そうとするなか、両者の利害対立は明らかである。

 日本アニメからは撤退モードとされているカートゥーンネットワークにしても、視聴率が伸び悩むなか、NARUTOやPOKEMON、ドラゴンボールなどの有力コンテンツを輩出する日本アニメは捨て難い。
 しかし、これまで米国で影響力があり、他社製作のアニメを放映する数少ない放送局として、優位にビジネスを進めてきた。しかし、より機動力があり視聴者が多く、合法的なインターネット配信サービスの登場は、これまでのビジネスのパワーバランスを変える。同社はクランチロールの存在が好ましいとは考えないだろう。

■ 有料配信の成果に注目

 クランチロールと既存企業との利害対立が残るとしても、同社が今後日本のコンテンツを海外のファンに伝える手段としてより成長して行く可能性は高い。
 クランチロールは日本企業が欲している国内外同時リリースという手段を現時点で保有している数少ない企業である。またクランチロールとのビジネスには、日本企業に新たな資金負担はほとんど発生しないと見られる。仮にビジネスが当初の想定よりうまく行かなくても、日本側に失うものはほとんどない。リスクと資金負担がないことは、国内の中小規模のアニメ流通企業にとってクランチロールは魅力的に映るに違いない。

 問題があるとすれば、クランチロール自身が負ったリスクである。彼らがベンチャーキャピタルのベンロックや日本のGDH、また初期のエンジェルと呼ばれる個人投資家たちから調達した資金は、10億円規模とみられる。キャッシュは潤沢である。
 それでも同社は膨大な動画を処理するサーバーを持ち、創業当初に較べて日本とサンフランシスコのスタッフの数も増えている。現在のビジネス運営は黒字化してないと見られるから、今後の収益化は不可欠だ。

 この黒字化についてもガオ氏は自信をみせる。ネットの広告モデルはそれほどいいビジネスでないのでないかとの質問には、動画配信を会員制にすることで得られる個別の作品の視聴者の属性に対する膨大なデータの存在を挙げた。顧客属性と広告主との最適化が可能というわけである。さらにサイトでの商品販売も視野に入れている。
 それでもニッチ市場で必ずしも景気がよくないとされる北米のアニメ市場、そして広告の最大の出稿者と期待される流通会社との利害対立から、今後の広告ビジネスが必ずしも順調に行くかと限らない。

 となると現在一番魅力的なビジネスは、安定的に収入となる有料会員によるビジネスだ。それだけに2009年1月8日に始める有料会員制度の行方が重要になる。現在、クランチロールは1ヶ月6.95ドル(事前割引価格)の価格設定を行っている。
 『NARUTO』という強力コンテンツの日本での放映との同時配信が含まれるだけに、価格さえ間違えなければ会員確保は出来るだろう。問題は価格設定とそれによって得られる会員数のバランスだ。それがクランチロールの運営コストと、作品ライセンスの獲得費用を上回ることが出来るのか。もしこのハードルを越えられれば、2009年のアニメビジネスが大きく変わる可能性は高い。
(2009/1/4)

■ テレビ東京とクランチロール提携の衝撃/■ ビジネスの鍵は『NARUTO』
■ クランチロールの何が問題だったのか/■ アニメファンに送る誤ったメセージ

*日本映像ソフト協会報NO.131のVIZメディアの訪問レポート参照

続きを読む "クランチロールは海外アニメビジネスを変えるか(3)有料配信の成果に注目" »
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2008.12.20
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 海外に続いて日本でも映画やアニメなどの権利保有者が、インターネットを通じて番組を配信する例が増えている。番組配信を開始する際に大きな課題になるのが、配信を行うサイトや配信する方法である。
 動画配信サイトが一般化する中で、これまで今後大きな成長をすると思われてきたP2P型の配信ビジネスに異変が起きている。P2P型配信サービスの2大企業であったJoostとBittorrentのサービス運営が困難に直面しているからだ。

 P2P型の動画配信サービスは動画配信の際にかかる負荷を専用サーバーに依存することなく、サービス利用者のPCに分散する。このため接続PCが増えることで、低価格で大容量、そして質の高い画像の配信が可能になる。
 この技術が大きく注目された理由のひとつに、Bittorrent社の開発したソフトがある。Bittorrentはもともと日本でのWinnyのような存在で、ソフトの技術への評価が高い一方で、インターネット上で権利者未許諾コンテンツの違法アップロードに多く利用されていた。日本でも海外アニメファンがアニメの違法なファイル交換に利用するソフトとして知られている。

 しかしBittorrentは2007年にベンチャーキャピタルから資金を調達し、合法的な動画配信サービスを目指した。Bittorrentの強みはサービス開始時から既に多くのユーザーが同社のソフトを保有し、その扱いに慣れていた点である。(その多くは海賊行為利用のためであったが)
 ところが2008年12月に入り、Bittorrentがベンチャーキャピタルから予定していた第3ラウンド(3回目)の1700万ドルの資金調達が全面キャンセルになったことが明らかになった。さらにこの11月にはCEOが辞任しており、大幅な人員削減も行われている。同社の経営は、重要な局面に立たされているようだ。

 一方のJoostは、同じくこのP2Pの技術を利用した格安インターネット電話サービス スカイプの開発者チームによって設立された会社である。Bittorrentと同様に、安く、高速で動画配信を行えるサービスとして一躍注目を浴びた。
 ところがJoost は12月18日に、突然このP2P型の配信サービスからの撤退を発表した。既に今年9月になって開始していたYouTubeやHuluと同様のフラッシュ型の配信サービスに移行するとしている。

 Joostによれば今回の決定で、ブログへの貼り付けなどのウェブサービスを提供出来ること、iPhone向けのアプリケーションを提供できることなどを挙げている。さらにサイトを観るための専用ソフトのダウンロードがなくなることで、利用者にとってはより扱い易いサイトになることも大きい。
 より扱い易いサイトになることで、ユーザーにとっても魅力は増すとみられる。しかし、一方で、Joostは他の動画配信サイトとの差別化手段がなくなる。そして、まだブロードバンが十分普及していないために、フラッシュ型の配信よりP2P型の配信を利用していたユーザーを切り捨てることになる。既にアクセス数でYouTubeやHuluに遅れを取っているJoostの今後の展開は楽ではない。

 海外でP2P型配信ビジネスが直面する課題は、日本にも少なからぬ影響を与える可能性がある。日本ではP2P型配信ビジネスはまだ十分普及していない。むしろ2007年8月に設立されたP2Pネットワーク実験協議会を通じて普及を目指している段階である。
 実際に昨年から今年にかけて、主にアニメ番組を利用して様々な実験が行われている。『SAMURAI7』や『空の境界』といった人気作品がこうした実験に登場したのを覚えている人もいるだろう。
 しかし、今回のJoostとBittorrentの例で明らかになったのは、配信技術の問題ではなく、ビジネスプレイヤーの規模の大きさやユーザビリティといったP2P配信を行ううえでのビジネスモデルの問題である。 
 日本でも少なくともアニメの配信については、P2P型以外の配信ビジネスが既に成立している。このなかでP2P型配信を普及させるには、技術的な問題と同様にビジネスモデルの検討が重要になってくるだろう。

Bittorrent  http://www.bittorrent.com/
Joost  http://www.joost.com/

P2Pネットワーク実験協議会 http://www.fmmc.or.jp/p2p_web/

続きを読む "課題を抱えるJoost、Bittorrent 転換点のP2P配信ビジネス" »
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2008.07.30
海外事情 ]
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 パリにもアニメ・マンガファン向けのマニア向けのショップがあるらしいと聞いて、ジャパンエキスポで訪れたパリの地で早速出かけてみた。
 こうしたショップは市内に幾つかあるようだが、今回行ったのはパリ中心部の北東に位置する「Manga Distribution」と「KONCI」の2件である。ともにファン向けだが、それぞれの様子はかなり違っていて興味深いものだった。

 最初に訪れたのは「KONCI」。地下鉄の駅にも近いかなり便利な場所にある。駅周辺の佇まいは小奇麗な下町といった感じだ。
 ショップの正面に等身大のグレンダイザーのフィギュアをはじめ、様々なグッズが飾ってあるので見つけるのも簡単である。

 店内は日本のまんだらけをはじめ中野界隈に多いマニアショップと似た感じだ。店内の壁際にショウケースが置かれ、そのなかにフィギュアを中心とした様々なグッズが並んでいる。
 商品の品揃えから人気作品が伺えるが、『NARUTO』や『ONE PIECE』、それに一際目立つ『ドラゴン ボール』、ジャンプ系の作品は人気が高い。ただし、『グレンダイザー』をはじめとする永井豪作品や『聖闘士星矢』といった往年の作品の人気はフランスの特徴と言えるかもしれない。

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 店の間口は狭いが、奥に深く、全体では、結構な大きさで、商品の種類は豊富、日本の専門店にも負けないほどである。
 このライナップの充実は、地元で発売されている商品というよりも、むしろ日本からの輸入品が多いためである。輸入品だけに商品の価格は、決して安くない。商品の種類の多さと、在庫リスクを考えると止む得ない価格だ。
 むしろ驚くのは、商品として売られている以上、この価格でも需要が存在することである。特にファンの間からは高いと批判されることが多い日本のDVDボックスが輸入版として幾つか売られていたのに驚いた。高いとされる日本の小売価格に、さらに輸入の手数料が上乗せされているのだ。

 結局、どこの国にも、自分の欲しいものに対しては、財布のヒモが限りなく緩む熱心なファンがいるということなのだろう。
 「KONCI」の存在は、国ごとに嗜好が違うとされるアニメ・マンガファンも、ディープなところに行き着くとかなり似た行動を取ることを示しているような気がする。

 そうした意味では、もう一方、「Manga Distribution」は、マニア向けではあるけれど、もっと広く開かれたショップだった。お店の商品は、ショップの名前とは裏腹にマンガが置かれておらず、主力商品はDVDである。3方ある壁のうち2方の壁がほとんどDVDで埋め尽くされている。
 店の面積はかなり広い。店内の空間も余裕が大きく取られている。道に面した側はガラス張りだから、外の光も十分入ってくる。並んでいる品物が違えば、おしゃれなギフトショップか、インテリアショップでも十分通用しそうだ。

 「KONCI」に較べると、店内の入るハードルはかなり低そうだ。実際に、並んでいる商品はマニアックな作品だけでない。『DEATH NOTE』の最新DVDが、大きく展示されている一方で、『キャプテン翼』のDVDも棚に飾られている。世界名作劇場のような子供向けの作品、さらに『ベルサイユのばら』や『聖闘士星矢』といった往年の子供たちが大人になって懐かしむような作品も多い。
 また、『ユリシーズ31』や『太陽の子 エステバン』といった、日本とヨーロッパの古い合作作品も目についた。店のコンセプトは、若者からアニメファン第1世代までを対象に、ややソフトなファンまでを網羅しているような感じだった。

 このほか地元のかたに伺うと、アニメDVDやゲーム関係のマニアショップは、リパブリック広場周辺、マンガ関連のマニアショップはバスチーユ広場周辺に集まっているということである。 
 両広場は道一本でつながっているから、パリ市北部のこの一帯が、パリのオタク文化の拠点と言えないこともない。これらのショップは広い地域に点在しているので、集積という言葉を使うには誤解があるが、ファンが常に足を向ける場所ではある。
 
 パリは、欧米地域ではマニアショップが多い都市だろう。他のヨーロッパ都市では、ファン人口が十分でなく、なかなか存在しにくいからだ。
 また、アメリカは人口が多い割には、こうした日本アニメ・マンガのマニア向けショップはほとんどない。ロサンゼルスでは、リトルトウキョウにある「Anime Jungle」がよく知られているが、逆にそれ以外を僕は知らない。ニューヨークにも1件あると聞いたが、これは見つけることが出来なかった。
 米国にはかつてアニメイトやまんだらけ、ブロッコリーなど日本のマニア向けのショップが出店を行っている。しかし現在は、ブロッコリーが営業拠点を残すのみである。一般的には、アニメ・マンガファンはインターネットの購入が主体となっているからだ。
[数土直志]

KONCI http://www.konci.net/
Manga Distribution http://www.manga-distribution.fr/

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2008.07.25
海外事情 ]
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 いわゆるアニメファンに向けた作品の収益スキームとして最も大きいのがビデオグラム(DVD、Blu-Rayディスク等)販売であることは論を待たない。しかし、世界的に見て巨大な市場の日本と北米において、その売上げは暗いニュースが続いている。
 趣味趣向が細分化しすぎ、あまりに多くの作品が発売されすぎたため、1本当たりの売上げが下がっている。海外に目を向けると、旧作のライセンシングが同時に行われているため、さらに多品種少量販売になってしまっている。そして最も各社が頭を悩ませているのは、ファンサブを付加した違法配信の問題である。
 では、日本アニメの世界第3の市場であるフランスではどのようなDVD販売事情になっているのか、現地で見聞きしたことをレポートしたい。

【フランスのアニメ視聴事情】
 日本でも知られている『UFOロボグレンダイザー』(ゴルドラック)の視聴率が70%以上を示したというのは70年代末のことである。
 国営放送の「フランス2」で放送され、様々な要因から上記の数字をたたき出した。彼らが、フランスのアニメファンの第一世代ということになる。この頃はまだテレビでアニメが放送される状況があったが、ケーブルテレビ化が進んだ現在は、マス向けのごく一部のアニメ以外はテレビ放送されない状況で、「アニメファン」もしくはマンガファン向けの作品は、DVDで見るしかない状況である。

 そのためアニメ雑誌はバイヤーズガイドとしての側面が大きい誌面を構成する。日本の雑誌のように、広く知られるキャラの絵を楽しむと言うよりも、それがどのような作品であるかという文字情報が多くなる。
 そして、クリエイターへのこだわりは比較的大きい。新作の紹介には、その監督なりデザイナーなりが以前何の作品を手がけたかという情報が必ず付加されて掲載されている。現地の人によれば、ヨーロッパの伝統としてクリエイターへのリスペクトの気持ちが大きいという。

 実際の商品は、パリ市内でも店舗で購入できる場所は限られている。リパブリック広場周辺には、ゲームショップが10店舗ほど固まっている。また、バスティーユ広場周辺にもマンガやDVDショップが固まっている。
 このほか、学生街や大手電機ストアfnac、シャンゼリゼ通りのヴァージンメガストアなどである。ここではリパブリック周辺について説明したい。

【古いタイトルも大切にするフランス】
 まず、扱うタイトルであるが、日本のオンエアや販売状況と時間差をできるだけ縮めようとする北米との違いが見られた。もちろん新しい作品も多いのだが、先の『ゴルドラック』や、『キャプテン翼』、『聖闘士聖矢』など、往年の名作とされる作品が、未だに人気で、商棚の中で存在感を放っている。これらの作品はDVDのみならず、超合金(日本からの輸入)や、クロスのフィギュア、Tシャツに至るまで人気が現役であることを示している。
 また、世界名作劇場シリーズもかなり多くの作品がDVD-BOX化されて販売されていた。ヨーロッパを舞台とする作品が多く、彼らにとっては親近感が湧くのだという。聖矢の人気も、ギリシャ神話への根強い憧れが国民性にあるためだと、フランス人の出版関係者は説明してくれた。
 近年のタイトルとしてフランスを舞台にしたものだと『厳窟王』があるが、こちらもきちんとラインナップされていた。また、宮崎駿監督作品はこちらでも格別の扱いで、ヴァージンメガストアの棚は、ディズニー、宮崎、ドラゴンボール・NARUTO、その他アニメという構成だった。

【価格は日本と北米の中間】
 価格は、最も安い部類のものは1クール(13話)、10ユーロ(約1700円)程度になる。現在はユーロ高が進んでいるため、現地の値頃感はさらに大きいと思われる(参考:マンガ1冊7ユーロ程度)。中堅の人気作品は15~20ユーロで、目にした中で最も高い商品は『エヴァンゲリオン』(リニューアル版)のテレビシリーズ全話DVD-BOXで、特典が付いて100ユーロだった。
 参考までに、アメリカの量販店だと、30ドルから70ドルくらい(2クール作品)となる。販社や流通の仕組み、レートの違いなど環境は違うが、アメリカと日本の中間という相場感覚となる。ちなみにDVDはリージョンコードが日本と同じであるため、PCモニターで見る分には、そのまま見ることができる(TV出力は方式が異なる)。
 また、海外のアニメファンにとって、日本語音声・現地字幕というのはもはや常識らしい。いくつかのタイトルは、仏語吹き替えを収録しないバージョンも販売されていた。値段はその分安くなっている。

【二極化する販売会社】
 現地の方によると、フランス人の気質は古いものやオリジナリティを大切にするようで、仮にファンサブで見ても、気に入ったソフトは形のあるディスクとして保有し棚に並べたいという意欲が強いようだ。しかし、一方で黒字を計上している販売会社は一部に過ぎなく、多くの会社は赤字、もしくは営業を止めている状況である。
 黒字の会社は、アニメよりも浸透が進んでいるマンガ原作を同時にライセンス保有していることが多く、マンガで知名度を上げてアニメでさらに上乗せすることで成功を収めているケースが見られる。逆に、赤字の会社はマニア向け過ぎるタイトルを並べており、狭い市場でしか売れていない状況だ。
 マンガとアニメのマーケティングのシナジーを上手く使える作品がヒットし、作品のポテンシャルとしてそれを持ち得ない作品が売れないのは日本の状況と重なって見える。

 最後に余談だが、現地の方の情報ではフィギュアの売れ行きが芳しいようである。ヨーロッパ的伝統で、立体物への関心やリスペクトの気持ちが高いようだ。
 事実、相当にマニアックな作品でもフィギュアだけ購入しているファンや、日本のメーカーが積極的な見本展示を行っているのが、ジャパンエキスポ会場で見られた。文化的なバックボーンにより、マーチャンダイズやライセンス商品の売れ行きに違いができるのが興味深い現象だった。
【日詰明嘉】

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フランスのアニメDVD事情 DVDはどこで売っているのか?

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2008.07.22
海外事情 ]
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 フランスのアニメファンがアニメを楽しむには、ケーブルテレビかDVDを購入することになる。その際、ガイドとなるメディアの位置づけはファンにとって高いものになると考えられる。たしかにネットで情報サイトを開けば、早い情報を手に入れることはできるが、マンガファンと重なる若いアニメファンにとってカジュアルなメディアといえばアニメ雑誌となる。
 日本では長い年月を生き残った老舗アニメ雑誌と、高い年齢層にむけたよりマニアックな雑誌に二極化している。海外地域の中でもアニメの視聴歴が比較的長いフランスではどのようなメディアとなっているのか、実際に購入して状況を調査した。

【フランスの3大アニメ誌】
 フランスのアニメ雑誌は「AnimeLand」、「Japan Vibes」、「Coyote mag」といったタイトルが並ぶ。このほかにもあるが、創刊しては休刊する雑誌が数々あり、これらが3強と言われている。刊行ペースは月刊から隔月刊が多い。
 価格はだいたい6ユーロ(約1000円)程度である。現在ユーロ高のため、円に直すと高く思えるかもしれないが、コーラが2ユーロ程度という物価を考えると、フルカラー100ページの雑誌はそれほど高くは感じられないだろう。定期購読をするとさらに安くなる。これらは、大きな駅の売店か、マンガ/アニメDVDショップで手に入れることができる。

 「AnimeLand」は20年前は同人誌で日本のアニメを紹介していたというフランスにおけるアニメ雑誌の草分け的な存在だ。アニメの比重が最も高く「~X-TRA」という増刊号も出している。
 「Japan Vibes」はマンガの背景を知るための日本文化ジャーナルやニュースに力を入れている。「Coyote mag」は翻訳マンガの連載や、J-POP・ファッションなどの情報も掲載している。人気作品は各誌で表紙を飾るが、基本的にそれぞれ雑誌の個性に合わせた作品をフィーチャーしている。

 それぞれの誌面は方針により個性が表れているが、巻頭の速報ページはどこも日本の最新事情に力を入れている。
 私が7月初頭に入手した号では、3月の東京国際アニメフェアで発表された「4月新番」をキービジュアル込みで紹介している。若年層の読者を考慮すると、手軽に接することができる情報としては、相当に早いスピードで伝わっていると感じられる。

【誌面の中心は作品紹介とレビュー】
 誌面のアニメビジュアルはキービジュアルの他は画面カットが数点で、版権イラストは基本的にない。その替わり、一つの作品に対しての文章量はかなり多くなっている。内容は作品のあらすじや見所の紹介がほとんどである。これは、ファンがDVDを購入する際のガイドとしての役割を果たすためである。
 大きく扱われる作品は2ページ、小さい作品は1/4ページ程度である。また、作品リリース状況が日本の時系列とかなり異なっているため、日本で少し古めの作品と、日本でも1,2年前に発表された作品が続けて誌面を飾るため、ページをめくると絵柄に違和感を覚える読者がいるかもしれない。

 誌面全体の30%程度はマンガの紹介とレビューに当てられている。マンガの場合は表紙と作中の1ページを載せることが多い。現在、フランスのマンガ出版事情は、ひと月に100冊程度とかなり多いペースで刊行されているため、紹介する点数も非常に多い。最大でも誌面1ページ、小さいと表紙と数行程度の紹介というものまである。
 少女マンガの勢いも強く、分量としては青年+少年マンガで、マンガページの2/3程度、少女マンガがそれらとは別に1/3程度の誌面を与えられている。

 このほか、作家へのインタビューやイベントレポートなどが掲載されている。雑誌によってはゲームの情報を扱っているものもあるが、分量としては日本のアニメ雑誌と同様に、2Dアニメと親和性の高い作品に留まる。
 このほか、タイミングによってはハリウッドの3DCG映画も誌面に現れたりもする。フランスといえば伝統的なコマ割りマンガのバンド・デシネがあるが、これらの誌面では全く扱いがない。

 広告は巻頭や裏表紙などの大きい場所は1ページを使って出版社やビデオメーカーが出稿するが、雑誌中ほどにはショップの広告などもある。
 マンガは専門店でしか手に入らず、その店も限られているフランスでは、消費者にとっても販売者にとっても通販の果たす役割は日本のそれよりずっと大きく、価値の高いものとなっているだろう。
【日詰明嘉】

AnimeLand  http://www.animeland.com
Japan Vibes  http://www.japan-vibes.com/
Coyote mag  http://www.coyotemag.fr

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【マンガの3倍 バンド・デシネの存在感】
manga paris.JPG JETRO(日本貿易振興機構)の調査資料によれば、フランスの日本マンガの売上高はおよそ150億円程度とみられている。
 この数字は200億円超とされている米国よりは少ないが、人口比でみるとフランス人は、国民一人当たりで米国人の3倍以上のお金を日本のマンガに注ぎ込んでいることになる。

 今回、ジャパンエキスポでパリを訪れて、こうした日本マンガブームの姿を少なからず期待していた。しかし、実際には期待していたものとだいぶ違うフランスのマンガ事情がそこにあった。
 日本マンガが人気と言うと、書店の棚にマンガが多数並ぶような姿が思いつくが、そもそもパリには書店の数が少ないし、書店で普通にマンガが置かれている状況でもない。

 マンガ販売の中心は量販店のようである。しかも、量販店で驚かされたのは、マンガの存在感というよりも、フランスのバンド・デシネの存在感の大きさである。バンド・デシネは、日本のマンガや米国のアメリカン・コミックスにあたるもので、絵で物語を追う点でこれらと同様の役割を持っている。
 ヴァージンメガストアのシャンゼリゼ店では、日本のマンガだけを扱ったかなり広いコーナーの一角がある。しかし、バンド・デシネのコーナーは、このマンガコーナーの3倍を軽く超える広大な面積である。

【マンガとバンド・デシネの共通点】
 バンド・デシネの大半はハードカーバーで価格も高い。それは手軽な読み物というよりも、一般的な書籍単行本と同列にあるように感じた。
 そして驚くべきは、バンド・デシネの作品数の多さである。恥ずかしながらバンド・デシネにこんな多様な作品があるとは今まで知らなかった。

 米国での日本マンガ成功の理由は、これまでほとんど存在感のなかった書籍形式のマンガであるグラフックノベル市場の開拓と普及によるものとされることが多い。しかし、フランスではむしろ、この巨大なバンド・デシネ市場の存在こそがマンガ成功の理由でないだろうか。
 もともとフランス人がバンド・デシネを通じて持っていた、絵に描かれた物語を読む習慣のなかに、マンガという表現形態が比較的容易に入り込んだというわけだ。
 そう考えれば、日本の水木しげるさんや谷口ジローさん、つげ義春さんなどの作品が認知されているフランスの独特の状況も理解出来る。マンガは書籍であり、文学としても語ることの出来るものなのだ。

 書籍としてのバンド・デシネの影響はマンガの価格や、装丁にも影響を及ぼしている。フランスでは、一般的なマンガ単行本は1冊7ユーロ程度、1000円から1200円程度である。この価格は日本のマンガ単行本や、米国のグラフィクノベルよりも高めである。
 しかし、マンガを書籍と考えられることで、この価格が正当化されているように思える。さらに米国のグラフィックノベルは、ペーバーバック同じ質の悪い紙でペラペラの表紙だが、フランスではマンガ単行本には日本と同様多色刷りの小奇麗な表紙カバーなどがつく。ここでも使い捨てでない、長く保存する書籍としてのマンガ感覚が感じられる。

【日本マンガ人気は続くのか?】
 一方、アメリカン・コミックスとバンド・デシネの関係も興味深い。アメリカン・コミックスは、バンド・デシネのコーナーの一角に一棚が存在するのみであった。その存在感は大きくない。
 米国でブームの様相をみせているアメリカン・コミックスのグラフィックノベルの勢いは、まだフランスには達していないようだ。雑誌感覚のアメリカン・コミックスは、バンド・デシネと相容れにくいものなのかもしれない。

 日本マンガはフランスでブームというよりも、もう少し深いもののように感じる。それは日本で考えられているような寡占的な市場進出でも、一過性のものでない。
 フランスのバンド・デシネ文化のなかに存在する場所をうまく見つけだしたということでないだろうか。そう考えれば、フランスにおける日本マンガの人気はもうしばらく続くと考えてもいいだろう。
[数土直志]

続きを読む "フランス マンガ事情 2008年パリ編" »
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2008.07.18
海外事情 ]
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 「ジャパン・エキスポ」が開催されたヴィルパント国際見本市会場はパリ郊外、シャルル・ド・ゴール空港から1駅の場所にある。
 東京ビッグサイトの東ホール全てと、西ホール1、2、4ホールを足した床面積に加え、ホール2つを3000人規模のライブハウスとして使うという、広々とした会場で行われた。なお、これだけ使ってもまだ見本市会場の半分である。

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 こうした広々とした会場に、4日間でおよそ12万人の人々が訪れたのがジャパン・エキスポである。改めて数字に起こしてみると、日本でもないのにこれほど多くのマンガ・アニメファンが存在することに戦慄を覚える。
 木曜から日曜までの開催だったが、この時期、フランスの学生はすでに夏休みに入っており人出が多く、毎日来場したファンも多くいた模様である。最も人出が多かったのは土曜日で、親子連れが多かった。

 会場近くには数多くのホテルが建っており、そこからすでにコスプレで来場する人もいる。近くといってもバスで10分ほどの場所だ。
 バスの運転手はフランス国内ではまず見られないゴスロリの格好をした女性や、世界中でまず見られない「段ボール製の黄金聖闘士」といった奇異な集団に、「一体今日は何があるんだ?」(意訳)と突っ込みを入れていた。人として自然な行いである。

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 会場は、マンガやアニメの出版社が直販を行う「企業ブース」と、ゲーム会社のデモンストレーションコーナー、同人誌を頒布するコーナー、剣道や少林寺拳法のデモを行うコーナーなどに大別される。
 このほか、ドリンクを頼むとスペース内のマンガを読み放題となる「マンガ喫茶」(禁煙)や、囲碁・将棋・トレカの対戦ブースなどもあった。とくに囲碁・将棋は、『ヒカルの碁』、『しおんの王』に影響されて始める人々が多く、日本文化を間接的に輸出することに貢献している。

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 ゲーム会社のブースは出展社数は少ないながらも盛況で、新作の試遊台やステージなどが置かれていた。出展企業は、任天堂が最も大規模だった。Wii用ソフト『大乱闘スマッシュブラザーズX』が、EUでの発売直後と言うこともあり、大規模なプロモーションを行っていた。任天堂はEU本社とは別に、フランス任天堂本社を設置するほど、フランスを重要な拠点と認識している。
 このほか、バンダイナムコグループがブースを出展しており、新作の『ソウルキャリバー4』や、『テイルズオブヴェスペリア』のほか、『ドラゴンボール』や『NARUTO』のキャラクターゲームが高い人気を誇っていた。
 アニメ分野では『聖闘士聖矢』が未だに高い人気を誇っていて、聖衣のおもちゃが多数展示されていた。このほかSEGAやフランスのUbisoftが展示を行っていた。
【日詰明嘉】

ジャパン・エキスポ(パリ)公式サイト http://www.japan-expo.com/
  日本語情報 http://www.eurojapancomic.com/fr/japanexpo.shtml

続きを読む "「ジャパン・エキスポ」会場内見聞録 【1】" »
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 同人誌ブースは、日本の多くの即売会と同じく、会場共通の長机で頒布を行っていた。バンドデシネの文化を持つ国だからだろうか、昨年ロサンゼルスのコンベンションで見た同人誌ブースよりも、(コマ割り)マンガになっているものが多かった。
 また、1枚絵のカラーイラスト(ファンアート)も多かった。隣のエリアには、タブレットのデモやカラーマーカーのデモも行われており、小さいお友達から大きなお友達までが手にとって描いていた。

 この付近にはファッションや音楽のブースも固まっていた。ファッション分野は原宿ラフォーレのポスターを多数展示するなど、日本初の最新ファッションスタイルを展示・販売している。
 もう一つの大きな潮流は、ゴシックロリータのファッションである。元来、ゴシックというと欧州発のものと考えられるが、それに「カワイイ」文脈を混ぜたものは、日本発のアニメ・マンガ・ヴィジュアル系バンドなどから逆輸入された形で広がっている。
 会場内は、アメリカのコンベンションほどアニメコスプレが多いわけではなかったが、ゴスロリファッションはかなりの数のファンを見ることができた。アニメでも『デスノート』のミサのようなゴスロリを取り入れたキャラクターは人気が高い。

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 企業ブースは、マンガ翻訳出版社と、DVD販売会社の直販、そのほかグッズやプラモデルを扱う店、美少女フィギュアを展示する企業などがある。このうちマンガ出版社が全企業ブースの3~4割を占めるほど、このコンベンションにおけるマンガの影響力は強い。日本の大手である集英社や小学館を多く扱う企業は、こちらでも大規模な企業であることが多い。勢いを強く感じたのはKAZE社、KANA社、Glenat社などである。
 ただ、日本の大手出版社の作品が、フランスでもある一社にまとまっているわけではなく、あくまで作品個別の契約になっている。今ほど、この国で日本マンガの人気が高くはなかった頃から翻訳を手がけていた会社は、今でもその作家の作品を扱っていることが多い。

 フランスのファンは、パリのような都心でもそれほどマンガショップに恵まれているわけではないので、普段は通販を使うことが多いようだ。しかし、実際に手にとって内容を確認できるのはこうした機会に限られるので、注文し手にとってめくる作業をしてから購入をしていた。
 また、ここぞとばかりに大量に購入する姿も見られた。私の目の前である男性は『よつばと!』(仏語版)を全巻一挙購入していた。約7500円のお買い上げである。
 彼のような大人買いでなくとも、購入した『デスノート』の最新刊を帰りの電車で食い入るように読む若い女性も見られた。アルファベットである分、日本語よりも文字が小さく量が多くなっている同作だが、人気は非常に高い部類であるのは、小畑氏の講演が大盛況で終わったことからも明らかだ。また、小畑氏はKana社のブースでもサイン会を行い、ファンが長い行列を作っていた。
(参照:http://animeanime.jp/report/archives/2008/07/post_111.html

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 DVDは発売会社が直販しているブースと、量販の販売会社が各社のものを扱っているケースがあったが、会場での価格差はあまりないようだ。高いものはエヴァンゲリオンのBOXセットで100ユーロ程度、安いものは1クールのBOXが10ユーロ弱で売られていた。
 ユーロ高を考えても、日本のBOXより安く、フランスのファンにとってもマンガとの比較ではかなりの値頃感があるのではないだろうか。
【日詰明嘉】

ジャパン・エキスポ(パリ)公式サイト http://www.japan-expo.com/
  日本語情報 http://www.eurojapancomic.com/fr/japanexpo.shtml

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2008.07.13
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【街中でみかけない日本アニメ】
 7月3日からフランス・パリで開催されたジャパン・エキスポに合わせて、パリ市内のDVDや書籍・マンガの小売店を周ってみた。フランスは、日本や東アジア地域を除けば、世界で最も日本のアニメ・マンガの人気地域とされるだけに、そうした状況を確認したかったからだ。
 ところが実際にパリの市内を歩いてみると、意外なほど日本のアニメ・マンガの人気は感じられない。街角におけるアニメ・マンガの存在感は、地下鉄の売店にもあるアニメ雑誌以外にほとんどないと言っていいだろう。

 では、日本アニメに人気がないのかと言うと必ずしもそうではない。ジャパン・エキスポの会場には10万人を超える人が押し寄せるし、関連商品の売上も確かな存在を残している。
 この存在感の薄さは、どうやらフランスの小売のシステムに理由があるようだ。日本や米国に較べるとDVD・CD、書籍、玩具の大型量販店の数が圧倒的に少なく、そうした関連商品や広告を目にする機会がないからだ。
 例えば書籍であれば書店は専門書店が多く、一般書店は少ない。あっても日本の紀伊國屋書店や米国のバーンズ・アンド・ノーブルのような規模には及ばない。そのため多くの書店の本棚にはマンガは並ばない。これはDVDや玩具にも同様のことが指摘できる。
 
【アニメDVDはフナック、ヴァージン、専門店】
 そうしたなかアニメDVDを販売する数少ない大型ショップにヴァージンメガストアと、今回何人ものかたが推薦をしてくれた地元の家電量販店フナック(FNAC)がある。両店は品揃えが豊富で、アニメファンのニーズに応えている。
 このほか、マニア向けにはManga Distribution(http://www.manga-distribution.fr/md/index.php?script=boutique)といった幾つかの専門店が存在する。こうした店舗に行くと、初めてフランスでの日本のアニメの人気を実感することが出来る。
 
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 実際に、ヴァージンメガストアやフナックのDVD売り場での、日本アニメDVD販売面積はかなり大きい。シャンゼリゼ通りの両店の日本アニメコーナーは棚にして6~9、ディズニーを含む子供向けのアニメーション全体とほぼ同じ面積を取っていた。
 専門店もいずれもこぎれいな店内で、かなり広い店舗を持っているところが多い。他の欧米諸国では、こうした専門店はなかなか成り立たないように思える。

 扱い面積の大きさの理由は、販売される作品のタイトルの幅広さに大きな理由があるようだ。フランスでは最新作加えて、『聖闘士星矢』や『キャプテン翼』、『世界名作劇場』といった昔ながらの作品が根強い人気を誇っている
 日本や米国のアニメDVD市場が最新作を追う刹那的な市場であるとすれば、フランスはひとつの作品に長くこだわる市場のようだ。

【フランスのアニメDVDは時価販売?】
dybex.JPG 小売店の棚を見ていていると、フランスながらの特徴がほかにもあることに気づく。ひとつは、DVDの小売価格の多様性である。
 タイトルごとの価格差が激しく、フランスのアニメDVDは人気に左右される時価主義なのか?と思わせるほどである。これは量販店よりもManga Distributionのような専門店、ジャパン・エキスポでの企業販売で特に顕著である。

 人気のあまりない作品、古くなかった作品のDVDはとことん安く売りたたかれる。シーズンボックスが10ユーロ(1700円)という作品はかなり多くみかけた。
 一方で人気の高い作品の値下げ率は大きくない。結果として本来は同じ様な水準で発売されているDVDにも関わらず、小売単価に大きな違いが生まれている。DVDの売上は人気次第という側面がかなり強い。

【小売店の商品と業績は一致しない?】
kaze.JPG では、アニメDVD全体の売上は好調なのだろうか。これは確かなところは分からなかった。関係者などからは、『涼宮ハルヒの憂鬱』や『時をかける少女』などを発売するKAZE ANIMATIONに勢いがあるとの声が聞かれたが、小売店の店頭に占める割合は小さかった。
 逆に店頭で数多くの商品をみかけたIDPは、今年になってアニメDVD事業から撤退している。大手の一角であるbeezの商品も小売店ではあまりみかけなかった。店頭流通と、企業の業績は一致していないようだ。
 これは最初の小売店の少なさとも関係しているようだ。アニメDVDの消費の多くがインターネット、フランス各地で開催されるアニメイベントで行われているためである。

【ヨーロッパでの違法配信問題は?】
beez.JPG 北米や東南アジアの一部で大きな問題になっている違法配信問題については、どうなのだろうか。実際にある会社で担当者に聞くと、売上高に大きな影響を与えている深刻な問題とのことだった。
 一方でフランス人は物をコレクションすることにこだわる傾向があるため、実際に大きな影響を受けていないのではないかとの見方もあり、その真偽は不明であった。

 しかし、ジャパン・エキスポの会場ではDVD流通会社よりもマンガ出版社に勢いを感じた。先のKAZEやベルギー資本のDybexが存在感を発揮していたが、全体にはマンガやゲーム関連の派手な企業ブースが注目を浴びていた。
 フランスのアニメ流通会社は、KAZE、DybexのほかDECLIC、バンダイナムコ系で唯一日本資本であるbeez、それにMABELLあたりまでが大手企業と言える。しかし、各社の決算は、年ごとの業績が大きく変動する傾向があり、ここ数年は赤字決算の会社も少なくない。
 少なくともアニメDVDが成長分野といった環境ではないように窺える。映像コンテンツビジネスの抱える問題は、フランスでも同様のようだ。
[数土直志]

beez http://www.beez.fr/
Declic Images http://www.declic-images.com/
Dybex http://www.dybex.com/index2.cfm
Kaze Animation http://www.kaze.fr/
Mabell http://www.mabell.fr/

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2008.05.27
海外事情 ]
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「ロボット・チキン」を取り上げるアニメエキスポ
 日本では夏というには少し早いが、5月は米国の夏シーズン始まりである。米国でも夏シーズンは、日本と同様に、学生や子供に向けた様々なイベントが開催される。
 そうしたひとつに全米最大のアニメイベントAnime Expoがある。このAnime Expoの催すメインイベントに奇妙なものがあるのが目を惹いた。アニメーション作品「ロボットチキン」の特集イベントである。

 「ロボットチキン」と言っても、多くの日本人は聞いたことがないに違いない。それもそのはずで、この作品は米国カートゥーンネットワークで放映される米国製の人気テレビアニメーションである。人気作品ではあるが、日本のアニメとマンガ文化の振興をミッションとするAnime Expoの場には本来は不似合いなものだ。
 しかし、Anime Expoが「ロボットチキン」を取り上げることに対する批判はあまり聞こえて来ない。Anime Expoは、昨年も非日本コンテンツである『トランスフォーマー』の先行上映会を行っている。米国コンテンツの導入は現在の新しいトレンドかもしれない。
 この動きは現在米国で人気と報道されることが多いアニメを取り巻く変化を端的に表している気がする。

アニメは米国ポップカルチャーと地続きに
 それは日本独自とされてきたアニメが、米国ポップカルチャー全体に取り込まれる動きである。これまで米国の日本アニメファンは、例えばピクサーのようなハリウッド大作アニメーションやアメリカンコミックスといった従来の米国のエンタテインメントのファンとあまり重ならないとされてきた。実際、私自身がこれまで何度か米国に訪れた現地の感覚もそれに近い。
 しかし、アニメの大衆化が進んでいるいま、そうした状況は変わって来ているようだ。アニメファンにも、「ロボットチキン」はアピールする。アニメと米国のポップカルチャーは地続きになっている。

 アニメは米国ではニッチ(隙間)市場のコンテンツとされる。隙間という状況は今も昔も変わらないのだが、その隙間の位置が微妙にずれ始めている。
 米国のサブカルチャー対日本のサブカルチャーといった図式から、アニメは米国のサブカルチャー全体のなかのカテゴリーのひとつに移ったのではないか。

パシフィックメディア・エキスポはなぜ失敗したのか
 Anime Expoが従来の方針を変える一方で、アメリカンコミックス・SFのイベントとして始まった全米最大のポップカルチャーイベントのコミコンインターナショナル(サンディエゴ・コミコン)では、アニメ・マンガの存在が大きくなりつつある。2006年から開催されているニューヨークコミコンは、さらにアニメ・マンガを強くアピールすることで大きな成功を収めた。
 参加者の関心が、双方に跨っているのか、それぞれ異なったファンから形成されるのかは判り難い。しかし、少なくとも従来のアメリカのポップカルチャーとアニメが共存をすることに多くの米国人は抵抗がない。

 さらに興味深いのは、2005年からロサンゼルスで開催されているパシフィックメディア・エキスポ(PMX)である。PMXはAnime Expoから分離して、アジアンカルチャー、ジャパニーズカルチャーをより広く紹介することを目標として始まった。そのなかには、アニメやマンガのほかに、プロレスやビジュアルバンド、香港や韓国映画などが含まれていた。
 しかし、大きな期待を背負って始まったPMXは十分な参加者を集めることが出来ずに、毎年縮小を続け、2008年は現在のところ開催の予定はない。PMXの売りとした日本文化、東アジア文化というテーマはファンからの賛同を集めなかった。これはアニメやマンガの人気が、日本やアジアという地域文化属性とあまり関係ないことを示している。

 むしろサンディエゴ・コミコンやニューヨーク・コミコンのように、自国の見慣れた文化の中に、アニメやマンガがあるほうが自然なのだ。つまり、アニメのアメリカン・ポップカルチャーのなかでのジャンル化である。
 アニメが区別されるのはそれが日本製であることでなく、文化のスタイルに過ぎない。ファンにしてみれば、それはたまたま日本製であったに過ぎない。こうした現象は日本のアニメがアメリカン・ポップカルチャーと融合する過程の出来事でないだろうか。

日本アニメが今後勝負するには
 こうした現象を取って日本アニメが、米国で受け入れられたと喜ぶ向きもあるかもしれない。しかし、ビジネス面で見れば、日本のアニメ企業にとっては今後より苦しい状況になる可能性が強い。
 日本の文化がクールと主張されることもあるが、それは日本的なものがクールなのであって「日本」そのものがクールなわけではない。つまり、それ風であれば、その作品やデザインが必ずしも日本オリジナルである必要はない。
 現在の日本が陥りがちな過ちは、日本のオリジナリティへの過信、それに対する過度の依存ではないだろうか。アニメスタイル、マンガスタイルは、どこの国の人にも生み出すことが出来る。アニメと米国ポップカルチャーの融合は、そうした事実に基づいている。

 こうした自覚なければ、日本は知らない間にアニメ・マンガ・ゲーム文化の辺境に押しやられることになるだろう。そして、日本だけでしか受け入れられないコンテンツを量産し続けることになる。
 では、日本のクリエイターや製作者はどうすればよいのだろうか。日本向けの作品だけを作り続けるのもひとつの考え方である。しかし、それではあまりにも寂びし過ぎるだろう。

 作品をグローバルに展開するためには、いかにも日本的な作品とは別にグローバルなニーズに対応したクリエイティブが必要になる。しかしそれは、自らのオリジナリティを捨てるわけでなはい。別のユーザーのニーズに応えるだけのことである。
 もともと日本のアニメは、様々な制約のなかでどれだけ自由な表現が出来るかを目指して発展してきた。ここで海外のニーズに応えることは、特段難しいことではないはずだ。そのなかで、今までの日本アニメとも海外作品とも違った魅力ある作品が生まれる可能性があるのでないだろうか。
[数土直志]

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2008.02.02
海外事情 ]
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【日米で大きく違うアニメDVDの価格】
 日本のアニメDVDの販売価格は、しばしばオタクプライスと呼ばれることがあるように、実写映画やテレビドラマなどに較べてかなり高めに設定されることが多い。こうした価格設定はアニメ制作にかかる高い費用とその製作費の回収がほとんどDVDのみに依存しているアニメ作品特有の状況のためである。
 ところが一般的にはあまり知られていないが、同じアニメ作品のDVDがアメリカではかなり安く売られている。割引価格で1クール(13話)セットで4000円程度、2クール(26話)で8000円程度の作品は一般的に存在する。

 アニメの制作は、もともと制作資金がかかるものである。日本のマニア向けのDVDは非常におおまかな数字だが1話1500万円ぐらいの制作費がかかり、さらにテレビ放映をするために数百万円の費用をテレビ局に支払っている。
 この費用をDVDの販売で回収し、さらに利益を得るためには何枚のDVDを売り、いくらの価格設定が必要か考えなえればいけない。そうすると現在の日本のアニメDVD価格は、消費者の感覚では明らかに高いが、それでも製作者にとってはギリギリかそれ以下のことも多い。

 それがなぜアメリカでは低価格が実現出来るかと言えば、アメリカのアニメ流通会社が負担するコストが製作費でなくライセンス料と吹替え費用、パッケージ費用だけだからである。実際にアメリカ版のアニメDVDは、日本のアニメDVDに較べて原価が数分の一になっており、市場規模と市場にリリースされるタイトル数の比率を考えると本来は日本よりも恵まれたビジネス環境にある。
 アメリカのファンにとってありがたい日米のDVDの価格差は、アニメが自国で生産しない輸入品という特殊性に支えられている。
 しかしたとえ小売単価が安くても、日本の製作者にとってアメリカでの売上は追加収入としてありがたいものであった。これまでは、日本の製作者にとってもこれは都合の悪いものではなかった。

【次世代ディスクのリージョンが選択を迫っている】
 しかし、こうした極端に高い日本の価格と極端に安いアメリカとの価格という両国にとって都合のいい状態は現在崩れようとしている。
 理由のひとつは次世代ディスクの登場だ。そして、もうひとつは急激に進んだアニメDVDの価格下落に、一部のアメリカの流通会社が耐えられなくなってきていることである。

 これまで太平洋を挟んだ異なるマーケットの価格差は、DVDが再生出来る地域を制御するリージョンコードで守られてきた。つまり、通常は日本のDVDはアメリカで見れないし、アメリカのDVDも日本で見れない。
 しかし、ブルーレイやHD DVDといった次世代ディスクでは、この地域が統合され相互のディスクが何の細工もなし視聴可能になる。ここでアニメ製作者が心配するのは、アメリカ版の日本への逆輸入だ。
 現在のアメリカ版DVDは、価格が日本に較べて安いだけでなく日本語の収録もあり、その字幕を消すことも出来る。

 だからリージョンが統一されると日本からアメリカ版を買う人が増え、日本の次世代ディスクの売上が大きく減少する可能性が高い。おそらく他のジャンルに較べて、アメリカのアニメで次世代ディスク普及が遅れている理由はここにある。
 しかし、技術の世代交代は確実に進む。先送りは出来ない。そうした時に日米の企業が取れる選択肢は、次の4つのどれかだろう。

(1) 日本の販売価格を下げる
(2) アメリカの販売価格を上げる
(3) アメリカでは吹替え版のみを販売する
(4) アメリカでは販売しない

【値段を上げるのも下げるも難しい?】
 (1)は、事実上不可能である。日本のファンにとってはありがたい選択だが、日本国内のDVDビジネスは現在の価格でも採算性がギリギリなものが多い。もし価格をアメリカ並に下げれば、ほとんどのアニメは採算が取れず製作中止に追い込まれる。
 (2)も厳しい選択である。現在の安いアニメDVDの価格に慣れたアメリカのファンが、日本並みの価格で大量に次世代ディスクを買うと考えるのは現段階では難しい。

 そうすると現実的な選択はアメリカ版には日本語の収録はなく、英語吹替え版のみがあるという(3)である。これも多くのアメリカのファンの反発を買うだろうが、日本の製作側にとってはベストでないがベターである。
 アメリカの流通会社にとっても、大衆的なファンには吹替えはアピールするし、既に字幕のついたものが多数存在するファンサブとの差別化も出来る。

 そして、アメリカのファンにとって最も辛いケースは、多くの作品でアメリカ版が発売されない(4)のケースだ。
 つまり、既に多くのアニメタイトルがアメリカで採算が取れなくなっているのであれば、日本市場への逆流の危険を冒してまでアメリカ版を販売する必要はないとの考えが増える可能性がある。

 それでも、英語圏の巨大な市場を捨てるわけにはいかないので、日本の次世代ディスクに英語版(字幕あるいは吹替えも)を同時に収録する。大容量の次世代ディスクは、それを可能にする。
 それを並行輸出のかたちでアメリカに流通させる。アメリカの流通会社にとってはこれではライセンスを得られず、自分たちで発売出来ないのであまりうれしくないだろう。
 しかし、日本のパッケージ企業にとっては、小売価格の上昇で売上枚数が減っても、数%のライセス収入でなく、利幅の大きい販売収入になるので利益率はあがる。選択肢のなかに入って来る可能性は高い。

【それでも価格の見直しは必要】
 そしてもし、(3)の方式が取られたとしても、現在のアメリカの映像パッケージ価格は今後見直しが必要となってくる可能性が高い。多くのアメリカのアニメファンが当然、あるいは高いとさえ感じているアニメDVDの価格だが、日本の価格の比較から離れても、現在は企業の収益を考えると採算に合わないぐらいのレベルまで安くなっているからだ。
 実際に、北米のなかで『HELLSING』などのキラータイトルを持ち、販売は好調だったGeneon USAの例がある。Geneonの判断にはいろいろな背景があるはずだが、業務の縮小ではなく撤退という選択を取ったのは、売上の少ないタイトルを切り、人気タイトルだけを残しても採算が取れないとの判断もあったはずだ。
 現在の価格で採算が取れるのは、『ドラゴンボール』や『ポケモン』、『NARUTO』などの一部の誰でも知っている人気作品だけと見られる。

 アメリカの流通会社の採算が苦しい理由は原価との価格の差のほかに、ウォルマートやベストバイのような大手小売店が、アニメを扱う中小の流通会社に対して厳しい取引条件を求めて来ることにも理由がある。
 本来はこの流通構造自体が変わり、現在の価格で、流通会社に利益が入るようになれば理想的である。しかしこうした大手小売店のバイイングパワーを、短期間に変えることは難しい。実際には、ここで挙げたアメリカのファンにとってはあまりうれしくない未来のほうが実現の可能性は高い。
[数土直志]

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2007.12.12
海外事情 ]
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 ここ1、2年、米国市場で日本アニメのDVDが売れないことが現地を中心に問題になっている。実際に、今年になって米国の市場シェア第3位のジェネオン エンタテイメントUSAが北米市場からの撤退を決めたのは、こうしたマーケットを覆う不況のためである。また、同社以外の多くのアニメDVD関連企業の経営は厳しい。
 先頃、アニメ製作会社GDHの石川真一郎社長は、政府の審議会で自らの肌感覚として、米国系のアニメディストリビューター(流通会社)は、1社を除き全滅状態と語っている。

 こうしたアニメDVDビジネスの不振の理由のひとつが、違法なファイル交換ファンサブの蔓延であることは現在では多くの人が考えるところだ。それはおそらく正しいだろう。
 しかし、ここではファンサブの是非には触れない。ここで問題にしたいのは、米国市場の現在のアニメDVD市場の大きさである。

950億円対450億円。
 この数字が何かというと、2006年の日本国内のアニメDVD売上高と米国のアニメDVD売上高である。つまり、米国のアニメDVD市場は、日本の半分程度の大きさがある。さらに米国でのアニメDVDの実質小売価格が日本の半分程度という現状を考えると、出荷枚数ベースでは米国は日本とほぼ同じである。
 近年日本のアニメDVDの市場が緩やかに拡大しているのに対して、米国のアニメDVD市場が急速に縮小している。そこで少し過去に戻って、2003年で見るとこの数字は、日本の824億円に対して米国は5億5000万ドル、およそ600億円と日本の市場規模にひけを取らない規模になる。

 日本でも米国でも、米国は日本アニメの市場が小さいからビジネスが違うと論調がまかり通っている。それを前提に議論が始まる。市場が小さいからマニアは少ない、だから高価なDVDは売れないという具合だ。
 しかし、アニメは日本でも米国でもニッチな市場なのだ。日本市場との比較で米国のアニメDVD市場は決して小さくない。そして減少したとはいえ米国内には、依然日本の市場の半分近く、売上高でおよそ400億円のDVD市場がある。
 これだけアニメのDVDを買わない理由が並べられるなか、依然400億円ものアニメDVDが米国で売れている。

 さらに注目したい数字がある。ICv2によれば、2006年にアメリカで発売されたアニメDVDのタイトル数は759タイトルである。一方、同じ年の日本のアニメDVDの発売タイトル数は日本レコード協会の発表で2421タイトルである。(このなかには海外アニメーションも含まれるがその割合は非常に小さい)
 つまり、日本では950億円の市場を2千数百タイトルで分け合っているが、米国では450億円の市場を759タイトルで分け合っている。1タイトル平均の売上高は米国のほうがかなり大きいはずだ。

 また仕入れ価格も考えてみたい。制作費のほとんどをDVDの売上に依存している日本のマニア向けのアニメDVDの制作費は1話少なくとも1000万円、おそらく1500万円程度と考えられる。
 一方、アメリカ国内での日本アニメのライセンス料は、先に話題を呼んだアニメニューズネットワークのジェスティン・セバキス氏の論説によれば、現在は最盛期7万ドルの半分以下であるという。そうすると日本円で350万円程度、ここに吹替えコストなどがプラスされるとしても、作品の調達コストは日本の半分程度だろうか。

 もう一度まとめると、米国市場は、日本の半分弱の売上高規模、日本の1/3の発売タイトル数、日本の半分のコストとなる。日本のアニメDVD市場も苦しいとされるが、この数字をみると米国のアニメDVDの流通業者は日本のアニメの製作委員会やDVDパッケージ会社よりは、比較的恵まれた条件に思える。
 そこで問題なのは、ではなぜ利益が出ないかだ。日本よりも調達コストが低く、日本よりも1タイトル当りの売上高が大きいとすれば、利益率に問題があることになる。おそらく流通コストや小売店のマージン、販売単価(日本よりかなり低い)が問題だと考えられる。
 アニメDVD企業の不振は、ファンサブばかりが問題にされる。勿論ファンサブは、極めて大きな問題である。しかし、ファンサブの問題が注目される陰で、米国マーケットの構造にも少なからぬ問題がある可能性を見落としていないだろうか。

 アニメDVD市場の売上不振を考えるなかで、なぜ本来、日本市場よりもコスト的に有利にあるはずの米国市場で利益があがらないのか、アニメDVDを買っている400億円市場の消費者はなぜ今でもアニメDVDを買うのかの議論はもっとあってもよいはずである。
 そこから現在問題が多いとされる米国のアニメDVD市場の問題の解決の糸口がみつかるはずだ。

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2007.11.20
海外事情 ]
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 11月17日、米国の日本アニメの違法配信ファイルを紹介する大手サイトAnime Sukiのフォーラムに、少し奇妙な投稿が掲載された。この投稿はAnimeSukiのスタッフ自身によるものである。
 投稿によれば米国の大手ISPであるコムキャストが、同社のインターネット接続サービスを利用しているユーザーのうち、アニメ作品の違法なファイルをダウンロードした者に対して違法行為として警告を送っているというものだ。

 もっとも、AnimeSukiのファーラムの投稿記事は、サイトの利用者からの情報に頼っている。またその後のフォロー記事を見ると、その警告がどうしたルートによるのか曖昧で、現在は行っていないなど情報が錯綜している。実際にそうした事実があったのかどうかさえ疑われる状態である。
 投稿によれば今回警告された作品には、現在日本で人気の高い『素敵探偵ラビリンス』、『機動戦士ガンダムOO』、『瀬戸の花嫁』、『ながされて藍蘭島』、『しゅごキャラ!』、『ひぐらしのなく頃に解』が含まれている。

 実際に警告が行われたのかは定かでないないが、今回のニュースはアメリカのファンに衝撃を与えた。それは、これが違法ファイルのアップローダーでなくダウンローダーが対象になっているためである。
 さらにこれらがアメリカでライセンス獲得が発表されていない作品であるため、日本の権利保有者が直接対策を要望したと考えたからでもある。

 実際に作品が人気作品に偏っていること、作品の権利者がばらばらであること、コムキャストがそうした行動を起こす理由が掴めないことから俄かには信じがたい情報である。
 しかし興味深いのは、こうした噂の広がりのほうである。アメリカのファンがそれを信じやすくなる状況が生まれていることだ。これまで当然の権利かのようにファンサブを利用してきたアメリカのアニメファンの心理に少なからぬ変化が起きている。

 それは今年8月以降、アニメ関連で起こった幾つかの事件が理由となっている。ひとつは米国のアニメDVD流通3大企業のひとつであったジェネオンエンタテインメントUSAの市場からの突然の撤退である。
 2番目は、シンガポールのアニメDVD流通・販売会社Odexによる、アニメ作品の違法ダウンロードを行なった一般ユーザーを告訴する動きである。現在Odexは深刻な経営不振に陥っており、この告訴の対象には小学生まで含まれていた。
 そして最後は、日本政府が米国政府に提出した市場改善の要望に、アニメをはじめとする違法配信問題が取り上げられたことである。

 つまり、アメリカのアニメファンは、アニメ作品の違法ファイル交換が、日本、アメリカ、さらにアジアのアニメ関連企業の経営を深刻に脅かしている(少なくとも企業サイドはそう考えている)と感じはじめている。 
 また今後、そうした企業が違法ファイルを本格的に取り締まるかもしれないとも感じているようだ。実際に、そうした取り組みはなかなか難しいのだが、そうした状況をより深刻に受け止める状況になっている。

 これは日本の側から見ると、アニメの違法ファイル交換の問題が多少は良い方向に向かっている表れである。大量に流通するファンサブが直ぐに止められないものだとは判っていても、それが本来は法の外にあることは、アニメファンには理解して欲しいからだ。それを理解してもらうことが出発点となる。
 実際に一昔前であれば、こうしたニュースの後には、アメリカのアニメサイトのフォーラムは企業批判で溢れることが多かった。しかし最近では、冷静に企業の立場や法律的な問題に言及する意見も増えている。

 日本の企業がいまするべきことはこうした状況を逃さずに、ファンサブを生みだしたファンのニーズに対応することである。つまり、時差のない作品のリリースや、テレビ放映の増大や合法的なオンライン配信でアニメを安く観たいというニーズに応えることである。
 現在大きな問題であるアニメDVD市場の現状も、そうした延長線上で解決に向かうのでないだろうか。

当サイトの関連記事
日本政府 米国政府にネット上のアニメ違法配信対策を要望
ファンサブに関するマジメな考察 
ファンサブ論争に思う『アニメ業界の憂鬱』 
シンガポール アニメの違法ファイルの利用者を告発の動き 

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2007.10.19
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 アメリカのポッカルチャー業界情報誌「ICv2」が2007年の第3四半期(7~9月)のアメリカにおけるDVDのトップテンを発表した。
 それによると第1位に輝いたのは『アフロサムライ』である。同作は、元々アメリカ市場向けに作られた作品であるが(当サイトインタビュー記事参照 http://www.animeanime.jp/interview/aflo1.html)、いわゆる「日本アニメファン」だけに向けたものではない。

 メディアで報道されているように、日本のアニメはこの10年間かかって、相当アメリカ人社会に溶け込んでいった。しかし、それに対してキッズやナードの物であるという印象は根強い。
 それゆえ、商品を扱う流通もウォルマート、ベストバイといった量販店かマニアショップというのが日本アニメの販売チャネルである。
 『アフロサムライ』はそうした事態についてブランディングから打開した。彼らは、MTVの子会社である「スパイクTV」を放送枠として選択した。この局で放送するものは、アメリカの都会的な若者にとってファッショナブルでクールな文化として扱われるのである。

 この作品がパイロット版の段階で、サミュエル・L・ジャクソンの目に留まったことも幸いし、彼が自ら声の主演とプロデューサーを買って出た。サミュエルの活躍、とりわけ『スターウォーズ エピソード1、2、3』での好演は人種を問わず多く受け入れられたという。
 これらにより、『アフロサムライ』は、メインカルチャーに割っていくことが可能となったわけである。HMVやヴァージンメガストアなどでも特集を組まれ、店舗で棚を大きく取られ、数多の日本アニメの中に埋没されることなく、販売され評価されたのである。

 同作の木崎監督は、企画自体はサムライとアフロでアメリカ人受けすることは認めつつも、作品内容をローカライズすることはなかったという。彼のチームが制作し、同じくアメリカでヒットした『バジリスク』とはアクションスタイルこそ違うものの、自然体で制作したという。
 このように、、スタッフが本気で取り組んだマニア向けにカテゴライズされうる作品でもブランディングをきちんと行い、人目に届けることができれば、受け入れられると証明した点で、今回のランキング結果は非常に興味深い。
【日詰明嘉】

ICv2 Naruto' Salvo Hits the Mark

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2007.09.08
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 8月24日から26日まで、東京・秋葉原のAKIBA 3Dシアターで第6回東京アニメアワードフィルムフェスティバルが開催された。
 フェスティバルは今年3月に選ばれた東京アニメアワードの受賞作品を紹介するものである。また同時に、韓国文化コンテンツ振興院との提携により、韓国アニメーションの紹介上映も行った。

 華やかな受賞作品に隠れがちであったが、今回、上映のためにセレクトされた韓国アニメーション9作品は、韓国のアニメーション業界の状況を的確に表したラインナップで見所が多かった。ラインナップからは、現在の韓国アニメーションの強みと弱みが浮き上がっている。
 今回の作品は、その傾向から主に3つのグループに分けられることが出来る。

1. オンラインゲームやオンラインゲーム的な世界と結びついた作品。
   『グリーンナイツ』、『クンヤ クンヤ』、『ミックスマスター』
2. 人気ドラマのアニメ化作品。
   『少女チャングムの夢』、『アニ・フランチェスカ』
3. 幼児・児童向けの3Dアニメーション作品。
   『イソップシアター』、『Z-Squad』、『ポンポンポロロ』

 この中には、日本アニメ最大の特徴であるマンガ原作の作品がかけている。また、大人向け、マニア向けの作品も存在しない。
 これは韓国の国内コンテンツ市場が小さく、マンガ家が経済的に自立出来ない事情が関係している。マンガ文化が育たないことが、マンガから発する日本アニメのような複雑な物語、大人向けのアニメが育たない背景にある。

 しかし、短所と長所は裏表である。日本アニメがリミテッドアニメという不自由さから大きく飛躍したように、国内市場の小ささが韓国アニメーション産業の長所ともなっている。
 つまり、国内市場をかなり無視出来る結果として、韓国アニメーションは作品を徹底的に欧米仕様に製作出来る。その結果、韓国アニメーションは、現在では欧米のテレビ放映市場でかなりのシェアを獲得しつつある。
 この成功は日本アニメが、暴力や性的な表現などの問題で、なかなか成果をあげることの出来ない幼児・児童市場に集中している。
 成果をあげている作品には、ヨーロッパで大きな成功をおさめ、今回も上映された児童向けの3Dアニメーション『ポンポンポロロ』や、今回は上映されなかったが『Pucca』などがある。これらの作品は3Dアニメーションという特徴もあるが、映像表現方法でなく、むしろ作品の内容こそが重要である。

 現在、日本アニメは動画を中心とした制作業務の多くが海外委託で制作されている。こうしたことから産業空洞化懸念があり、日本アニメの制作能力の低下議論が行われる。さらにこの制作受託の多くを引き受ける韓国や中国がやがて、日本アニメ産業は追い抜くとの指摘もある。
 産業空洞化自体も重要な論題である。しかし日本アニメの制作の基礎はクリエイティビティにこそ支えられており、少なくとも企画やプロット、キャラクターデザインなどのその根幹を支える部分では日本の優位性は、現在時点では両国より遥かに高い。

 実際には韓国アニメーションのグローバル化は、日本との競争とは全く別の部分で始まっている。韓国アニメーションが取引相手のニーズに柔軟に対応できることである。それは韓国アニメーションの制作が海外との共同製作になることが多いことからも理解できる。
 日本アニメの発展は、米国アニメーションの模倣や延長を超えたところでの成功にある。同様に、韓国アニメーションのグローバル化は、日本アニメや米国アニメーションの延長線上には存在しない。韓国アニメーションは、日本アニメと競争するのでなく、日本と市場を住み分けることでグローバルに広がりつつある。

韓国文化コンテンツ振興院 http://www.koreanculture.jp/

第6回東京アニメアワードフィルムフェスティバル上映 韓国作品
8月24日
『グリーンナイツ』、『クンヤ クンヤ』、『ミックスマスター』
8月25日
『少女チャングムの夢』、『漢字王朱豪』、『アニ・フランチェスカ』
8月26日
『イソップシアター』、『Z-Squad』、『ポンポンポロロ』

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2007.07.16
海外事情 ]
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 日本でもアメリカにアニメファンが多いということは、見聞きすることができるし、人気タイトルが何かも分かる。ただ、彼らがどう楽しんでいるのかや、何を面白がっているのかは、日本にいるだけでは、本当のところ、息吹までは分からない。
 だから、アニメエキスポを体験して、最も意義深かったのはアメリカのアニメファンと実際に交流ができたことである。

 アニメエキスポ参加者のコスプレ率は、コミケやゲームショウとは比べ物にならない。コスプレ文化が根付いているお国柄というものは大きい。会場は広く、陽気はからっとして過ごしやすい空気だ。写真撮影にも規制はないし、アピールを上手に育てる文化もあってか表情も豊かだ。衣装もよくできている。
 プラモ作りが苦手な彼らを、不器用と言う人もいるが、このサイズになれば実に凝った物を作ってくる。日本のように既製の衣装が多く流通しているわけでもないのに、何をベースに、どんな資料をもとに作るのかわからないが、キャラクターを見事に再現するのである(もちろん彼らの多くは、平均的に日本人よりも足が長く、スタイル面でかなり得をしているのもあるが、それは作品情報の少なさとバーターということで)。

      ax200710.jpg

 日本で人気の作品は、概ねアメリカでも人気である。「涼宮ハルヒ」は、DVD発売直後だというのに人気だった。多いときは1分間に3人ものハルヒを見たときには驚かされた。それもグループではなくそれぞれが個々人である。
 日本以上に人気を博す作品もある。少年ジャンプ原作の『BLEACH』は、いわゆるサムライ物という扱いで、作中の重要団体「護廷十三隊」は全員分を見つけられるほど、多くの人がコスプレをしていた。
 一方で、放送の状況によって人気が出なかった作品もある。「テニスの王子様」はスポーツものがアメリカでヒットしない法則の通り、コスプレイヤーも皆無であった。
 また、“ゴシックもの”は人気が高い。『ヘルシング』『デビルメイクライ』、そして『デスノート』は、ヴィジュアルイメージから作品のファンになったのかと思われるほど、衣装の細かい部分や化粧が馴染んでいる。

 これらの趣味を持つことは、個性を尊重するアメリカ社会でもマイノリティだろう。だから、お互いの交流がとても大きい。同じ作品のコスプレをやっていっしょに店を回っているから、友人同士かと思ったら、全く別の街から来た人たちで現場で意気投合した人たちもいた。
 彼らには秋葉原や原宿のように、「いつでも帰れる場所」を持たない。だから、日本ほどオタク文化が広まっていない分、逆説的にこの空間と友人を大事にしている面がある。豊かになった分、失ったものがあるなどと、高度経済成長期の文化人ようなことは言いたくはないが、人と人が作り上げていく文化産業において、現場でのちょっとしたファン同士の交流が少なくなっているのには(一部の同人誌即売会では、まだ残っていると思えるが)、淋しさを禁じえない。

      AXARTIST.jpg

 サブカルチャーとして入ってきたファン、子ども心のままに大きくなってきたアニメファン、ゲームなどのメディアミックスをきっかけにしたファン、せっかくフラットな世界を作り出したのだから、対作品に対してだけではなく、もっとファン活動同士をリスペクトできるような関係を考えさせられた。
【日詰明嘉】

アニメエキスポ2007公式サイト http://www.anime-expo.org

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animeanime19:00 | (0) | (0)
2007.07.13
海外事情 ]
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 アニメエキスポにおいて一般参加者側の主役といえばやはりコスプレということになる。新旧とりまぜて、そしてアメリカ独特の人気キャラが勢揃いしている様は圧巻だ。
 このような大規模イベントというと、日本ではコミケが連想されるが、コスプレイヤーと同人作家の比率で言うと、ちょうど日本と逆転している感覚だ。

 同人誌と言っても、日本でよく目にするポルノグラフィというものは(会場のゾーニングもあってか)少ない。冊子の形態もオフセットのものは少なく、コピー誌が多い。これは少部数で印刷をしてくれる、日本のような小さな印刷所がないことや、同人誌専門ショップなどの販路がほとんどないというインフラ的な問題を考えておく必要がある。
 また、会場がアニメファン向けで、日本ほどマンガファンとアニメファンが融合していないという状況は割り引いて考える必要もあるだろう。

      artist alley.jpg

 だからといって、絵を描くファン活動というものが無いと考えるのは早計だ。彼ら彼女らの多くはファンアートという形で表現をする。いわゆる、版権キャラの一枚絵だ。
 絵柄は日本のアニメキャラを真似ているため、描線のテイストは似通っているのだが、色付けしたり、オリジナルの装飾をするとそれぞれのお国柄が出て面白い。特に、韓国系の作家は、自国で親しんでいるCGキャラの装飾と色遣いがイラストに現れている。
 中には、日本の同人作家のように色紙に描いたり、その場でリクエストに応じてイラストを仕上げる光景も見られる。スケッチブックを描いている作家もいた。

 エキシビジョンブースの中には、これらカラーイラストを描く際には、皆が必ず持っているコピックのブースが大きく構えていた。
      copic.jpg

 コピックは全部で750色以上と様々なペン先を持つカラーマーカーのシリーズで、利便性が高いことから、CGがこれだけ流行している現在でも、同人誌の表紙やカラーイラストはコピックを使って彩色する作家も多い。
 コピックのブースで取りそろえていたマーカーの数は、日本のコミケで出展しているものと、ほぼ大差ない。つまり、それだけファンアートを含めたカラーイラストの規模の拡大を予測しているのだろう。事実、ワークショップのブースでは2時間にわたって彩色の講座を開催し、多くの人を集めていた。

 アニメファン的な文化同様に、同人誌文化がそのままアメリカで展開するかは、インフラ的な課題もあり見通すのは難しいが、カラーイラストについては、一定の歴史を持つファンアートの文脈からも技法的な流入があるかもしれない。

 日本の同人文化の発展を担ってきたものの一つは、『ふぁんろ~ど』などの投稿雑誌である。これらへの投稿とスカウティングは、日本の中でも都会でない地域の人でも大きくチャンスを掴んだ。広いアメリカだから、頻繁に即売会が開けるとも限らない。
 作家へのインセンティブとしては、アナログの道具にはアナログメディアの活用ということで、投稿雑誌という土台作りも面白いかもしれない。Newtype英語版は、今年で5周年を迎え、現在も好調である。アメリカにおける手描きのファン活動はまだまだ大きく発展が見込めるだろう。
【日詰明嘉】

アニメエキスポ公式サイト  http://www.anime-expo.org/
コピックホームページ(日本語)  http://www.too.com/copic/

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2007.05.27
海外事情 ]
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2006年も好調だった JETIXヨーロッパ
 ヨーロッパの4大子供向けチャンネルのひとつJETIXヨーロッパの業績好調が続いている。ウォルト・ディズニーの傘下に入った2004年以来、同社の業績成長は続いており、2006年の売上高は1億6280万ユーロ(約265億3000万円)と前年の1億4530万ユーロから12%成長した。
 同社は、前年も売上高で14%成長だから順調に事業を拡大している。また純利益も前年の610万ユーロから2340万ユーロとおよそ4倍増となった。事業の拡張と収益化が同時に進んでいるわけである。

 JETIXヨーロッパのビジネスの特徴は、テレビ放映の視聴料と広告からなる放送事業、番組販売事業、そしてコンシュマープロダクツ事業と呼んでいるライセンス部門の3つから事業が構成されることだ。
 このうち成長性が高いのはライセンス事業で、ヨーロッパ・中東での『パワーレンジャー』の権利や『ソニックX』、『アルファ・ティーン・オン・マシン』などが含まれている。

独自のアニメーション製作を強化
 また全体売上高の12%ながら、番組製作・販売事業も見落とせない。JETIXヨーロッパは親会社ディズニーとは別に、自社独自の番組製作の強化を目指しているからだ。これはJETIXヨーロッパのディズニーグループにおける微妙な立場を反映している。同社はディズニー系列であるが、ヨーロッパには既にディズニーチャンネルが存在するからである。
 このためJETIXヨーロッパは、ディズニーから十分な作品供給を受けられない。JETIXヨーロッパの放映番組は、ディズニー作品に加えて、他社から放映権を購入した番組、それと独自製作した番組となる。

 しかし、実際には独自製作番組は、足りないものを自社調達というより同社の戦略部門となっている。それは番組販売とライセンス販売で、放送事業と違う利益を生み出している。
 現在同社は既に、これらの番組を逆にアメリカのディズニーに輸出している。そこからさらに日本を含むヨーロッパ以外に再輸出されている。

 これは実はディズニーにとっても都合がいい。二重投資に見えるヨーロッパのディズニーチャンネルとJETIXヨーロッパの存在は、異なる視聴者層を捉えることで相互補完されている。
 さらに、ディズニーはもともとキッズやファミリー向けのアニメーションを得意とするが、ティーンより上の世代を向けた番組やボーイズアクションと呼ばれる番組は苦手である。その部分をJETIXが独自のノウハウで開発している。つまり、異なる2社の存在によって番組のラインナップが広がっている。

得意とするのは日本アニメスタイル
 これは日本のアニメにとっても無関係でない。JETIXヨーロッパの製作番組には、忍者が主人公の『シュリケンスクール』(制作フランス)、忍者に恋する中華料理店の娘を主人公とする『PUCCA』(韓国との合作)、それに制作に日本のハルフィルムメーカーも参加した『オーバンスターレーサーズ』などが含まれている。
 これらは世界のテレビアニメーション市場でディズニーが競合する日本アニメの日本的な要素を取り入れた作品で、ディズニーアニメーションのビジネス面での保険となっているわけである。

 実際にJETIXの作品にはこのほかにも『トータリー・スパイズ!』など日本アニメスタイルを取り入れたとされる作品も多い。
 JETIXヨーロッパは、世界の子供向け番組市場で拡大しつつある日本以外の国が制作する日本アニメスタイルのアニメーション製作の核になっている。

 現在、ヨーロッパでは、ディズニーチャンネル、ニコロデオン、カートゥーンネットワーク、JETIXヨーロッパの4大チャンネルに対して、日本アニメ専門チャンネルのアニマックスが割って入ろうとしている。
 このなかで一番のライバルになるのは、ディズニーアニメーションでも日本のアニメを放映するカートゥーンネットワークでもなく、実はJETIXヨーロッパかもしれない。またそれはヨーロッパだけでなく、今後世界各国のアニメーション市場でも起こる可能があることだ。

当サイトの関連記事
欧州Jetix本決算 戦隊シリーズなどで躍進

JETIXヨーロッパ http://www.jetixeurope.com/

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2007.01.08
海外事情 ]
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 アニメの最新情報は、日本人であれば日本の情報サイトで得られる。しかし、日本語の出来ない海外のファンはどうやってアニメの情報を得ているのだろうか?
 当然ながら各国ごとに、それぞれの国のアニメ情報サイトがある。各国ごとの有力アニメ情報サイトを紹介してみたい。まずは日本以外では、世界最大の日本アニメの市場である北米からである。

ファン向けはANNが圧倒的
 北米のアニメ情報サイトの最高峰は、アニメニューズネットワーク:Anime News Network(ANN http://animenewsnetwork.com/)である。ANNの強みはとにかくアクセス数が多く、フォーラムが活発なところだ。
 英語サイトの強みもあり、世界中のアニメファンからアクセスを集めている。その数は日本の大手アニメ情報サイトよりゼロがひとつ違うはずである。
 最近は他のアニメ情報サイトもニュースの質を上げているが、歴史の古さと過去の記事、作品・クリエーターなどのデーターベースの充実で人気が高い。

 さらに、雑誌記事やアニメエキスポ2006で特別番組の制作に協力するなど、多方面にビジネスを展開している。先行者利益を、十分にビジネスに生かしている。
 また、あまり知られていないがANNは米国の会社でなく、カナダの会社である。インターネットの情報企業が、必ずしもニューヨークやロサンゼルスに本拠を構えなくても成り立つ面白い例とも言える。

業界からの信頼が厚いICv2
 ANNがファン向けの情報サイトの雄とすれば、ビジネス情報のトップはICv2(http://www.icv2.com/index.html)である。アクセス数はANNに較べると少ないが、業界関係者からの信頼度は随一である。
 もともとはアメリカンコミックのビジネス情報の会社だったが、日本のポップカルチャーを取り上げることで急成長した。DVDやマンガを販売するリテール情報に強く、確かな数字を基にした情報は他社を寄せつけない。
 これ以外にも、アクティブアニメ:Active anime(http://activeanime.com/html/)やアニメ・ネイション・ニューズ:Anime Nation News(http://www.animenation.net/news/)といった情報サイトは幾つかあるが、ANNとICv2が頭ひとつ抜けて出ている。

成長する専門サイト
 こんなわけで米国のアニメ情報サイトは、ANNとICv2の2強体制で落ち着くかと思われていた。ところが、現在、一部の専門情報サイトがニュース部門に力を入れ人気を高めている。
 その代表はアニメDVDのリリース情報とレビューサイトのアニメon DVD:Anime on DVD(http://www.animeondvd.com/)である。その社長はICv2が選ぶ北米アニメビジネスに影響力のある15人の1人に選ばれているほどだ。(*)
 さらにアニメコンベンション情報のアニメコン・ドットコム:AnimeCons.com(http://www.anime-cons.com/)もニュースを充実させて、人気が高まっている。
 変わったところでは、コスプレ情報専門のコスプレ・ドットコム:Cocplay.com(http://www.cosplay.com/)も、海外のレイヤーから厚い支持を受けている。

 作品やクリエーターの個別情報サイトは、日本の個人サイトに軍配が上がる。米国のファンサイトも数は多いが、日本の有名サイト並というのはなかなか少ない。
 そのなかではスタジオジブリの情報に圧倒的な強みをみせるナウシカ・ネット:Nausicaa.net(http://www.nausicaa.net/)は押さえておきたい。世界中のジブリファンから情報を集めており、情報のスピードの速さは特筆すべきものがある。

見落とせないアニメ専門サイト以外の情報
 アニメ文化の広がりで、伝統的なアニメーション総合情報サイトもアニメのニュースや情報、レビューを取り上げるケースが増えている。なかでもAWN:Animation World Network(http://news.awn.com/)の存在が大きい。
 AWNはオタワ国際アニメーション映画祭など数々のアニメーションイベントの公式サイト運営なども行なう世界的なアニメーションメディアである。また、一般向けより業界向けに近く、豊富な企業ディレクトリーや求人情報などを売りにしている。
 このAWNは、最近、アニメ情報を強化している。情報の量や質はICv2より弱いが、ハリウッドやVFX関連の情報も充実している。北米のアニメーション業界全体の流れを追うには適している。

 同様にアニメーション分野から日本アニメへ関心を広げているのは、アニメーション・インサイダー:Animation insider(http://www.animationinsider.net/)である。こちらもここ1、2年でアニメ関連の記事を増やしている。
 アニメーション・インサイダーはAWNよりファン向けだが、AWNやANNに較べて更新頻度が少ない。しかし、長文のレポートにはかなり優れたものがあり目が離せない。
 アニメーション分野からアニメにウィングを広げるのは、ユーザーからのニーズが拡大していることと、ICv2やANNの成功もある程度刺激を与えているに違いない。

 アニメ文化と他のポップカルチャーとの重なりも重要で、関連分野のサイトにも見逃せない情報やインタビューが掲載されていることも多い。
 なかでもゲーム情報の総合サイトとして有名なIGN(http://www.ign.com/)ははずせない。アニメキャラクターゲームのレビューなども充実している。アジア映画の専門サイトTwich(http://www.twitchfilm.net/)も、アニメ以外に米国での邦画情報を追うためにチェックしておくと面白い。
 さらにアニメやマンガの実写化情報やディズニーやワーナーブラザーズなどのハリウッドのメジャースタジオが関わるビッグビジネスの情報はやはりハリウッド発の情報が強い。
 ハリウッド情報は世界的に知られているヴァラエティ:Variety(http://www.variety.com/)とハリウッドレポーター:Hollywood Reporter(http://www.hollywoodreporter.com/)で、9割以上の情報が押さえられる。

(*)他にメディアからは、ANNの代表が入っている。メディアで一番アニメ産業に影響力があるのはICv2自身なのだが、ICv2が選んでいるのでベスト15に入っていない。

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animeanime19:00 | (0) | (0)
2006.02.27
海外事情 ]
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 アメリカのサブカルチャー分野のコンンベン・ニューヨークコミコン(NYコン)に行って来た。NYコミコンのアニメ・マンガが他のサブカルチャーと同等の存在として取り上げるこれまでにないコンセプトに興味を惹かれたからである。
 これまで、マンガ・アニメという限られた世界でなく、アメコミや特撮、映画など他のアメリカカルチャーと並べた時に、日本のコンテンツがどう映るのかアメリカ人がどう受け取っているか知りたいと考えていた。

 結論から言ってしまえば、今回のNYコミコンのアニメ・マンガとアメコミの並列にはかなり違和感があった。それはどちらがより人気があったかという話でなく、明らかに異質なものが並列されているからだ。
 絵のついた物語という体裁は非常によく似ているが、両者は根本的に違うものだということがかえって明らかになった。

 違和感の一番は、両者のファン層の違いである。コンベンションで明らかなのは、アメコミを目的に来ているファンはマンガ・アニメにほとんど興味がない。逆に、マンガ・アニメのファンは、アメコミにはほとんど関心を示しているように見えない。両者はほとんど交わることがないのだ。
 だから、今回のニューヨークコミコンが成功したかと言うには躊躇する。参加者の数だけを考えればかなり多いが、イベントの統一感を作り出せなかったからだ。
 
 アメリカ文化を代表するように言われるアメコミもまた一般的な文化でない。実際は、そのファンの中心は、ハイティーンよりうえのヨーロッパ系のおたくな男性が多いというかなり限定された集団である。
 一方、ニッチ市場(隙間市場)といわれるアニメ・マンガのファンは、子供から30歳ぐらいまでの男女と年齢、性別とも意外に幅が広い。また、これまでアジア系のファンが多いとされてきたが、近年、ヨーロッパ系、ヒスパニック系にも確実に広がりをみせている。
 市場の大きさを考えなければ、実はアニメ・マンガのほうが、アメリカンコミックより広い層に到達しているといえる。そして、その多くはこれまでアメコミが市場として考えてこなかった人達である。

 実際に、マンガ・アニメがアメコミより大衆的な層に到達しているのは、マンガの販売がコミック専門店でなく、一般人がアクセスしやすい一般書店で売上げを伸ばしていることからも判るだろう。

 アニメ・マンガはアメリカの中ではマイナーな文化と言われている。事実そうであろう。また、アメリカ市場でのアニメの成長は止まった、マンガにもその傾向が既に見えているとも言われる。
 しかし、この文化を支える層の広さを考えた時に、この先10年、20年、アニメ・マンガ文化はまだまだ可能性がありそうだ。
 
 ただし、10年、20年後にアニメ・マンガがよりメジャーになった時に、それが日本人の手によるものかどうかは判らない。昨今注目されている日本人以外によるアニメ・マンガ制作は大きな鍵である。
 実際に、現在、アニメ・マンガを観ている子供達が大人になった時には、彼らはアニメ・マンガスタイルで今の日本と同じように優れた作品を作ることが出来るだろう。
 将来、マンガ・アニメが世界的な文化として認知された時が来ても、そこには日本人のクリエーターも日本のビジネスも存在しない可能性もある。

ニューヨークコミコン

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animeanime18:00 | (0) | (1)
2005.11.27
海外事情 ]
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 日本アニメーションの持つ独特の表現スタイルを『ANIME』と海外で呼ぶことは珍しくなくなった。それは、マニアの間だけでなくアメリカ、アジアやヨーロッパの新聞雑誌からビジネスの現場、アカデミックな研究分野まで普通に使われている。
 しかし、日本のアニメーションをカートゥーンから切り分けて『ANIME』とする定義は、今また揺らぎだしている。それは、『ANIME』が日本アニメ独特のスタイルさえ持っていれば日本で制作されたものに限定しなくても良いという考え方だ。

 そうした問題をカナダのアニメーション情報サイトのフレーム・パー・セカンドマガジン(fps)が、フランスとカナダの共同制作アニメーション『スカイランド』を取り上げる中で問いかけている。記事のタイトルは「More anime coming from France and Canada」である。
 『スカイランド』は、先にフランス・ニースで開催されたフィルムショーでも高い人気を得た作品である。ftpはこの作品のアニメーションのテクニックを取り上げ、技術的な境界線をいかに引くべきかについて悩み、この作品をグレーエリアにある作品だとしている。つまり、カートゥーンと『ANIME』の間にあるものだと言うわけだ。
 
 記事の中では、ほかに現在北米で大ヒットしている『アビエイター:Avatar』、や『ティーンタイタンズ: Teen Titans』なども取り上げて、これらの作品を東洋と西洋の融合した作品としている。fps によればこれらの作品は、背景美術の豊かさ、力強いポーズ、フレームの使い方、デザインといった面でアニメの表現を取り入れている。一方で、キャラクターの在り方、物語の構成においてはアニメと異なるものと考えている。
 しかしここで注目すべきは、fpsが『ANIME』の定義を制作であれ、キャラクターであれ、物語であれ、技術的な側面のみから考えていることだ。つまりアニメ=日本という図式は存在していないのだ。彼らにとって『ANIME』は日本で生まれたアニメーションのジャンルのひとつに過ぎない。アニメ=日本の2Dアニメーションという考え方は、今やしだいに薄れつつあるかもしれない。

 さらに重要なのは、ここで取り上げられた『スカイランド』が海外のテレビ放送で大人気という現実である。『スカイランド』はすでに、北米とラテンアメリカのニッケルオデオン、テレトゥーン、フランスのアンテヌドゥー、イギリス・ITV、オーストラリア・ABCで放映される予定である。
 日本発の寿司や柔道といった文化が、海外で受入られる中でそのかたちを大きく変えたように、アニメもまた海外で受入れられる中でその定義を変えようとしている。そして、その国の文化の中で変容したものがオリジナルより受入れられる現実もある。他国の文化を自分達のビジネスに変える欧米資本のしたたかさに驚かされる一方で、『ANIME』の定義の変化によって今後の日本アニメのビジネスも変わって来るに違いない。

Fpsマガジン 
スカイランド公式サイト 

続きを読む "(11/27)アニメとアニメーションの狭間で" »
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animeanime23:59 | (0) | (1)
2005.11.03
海外事情 ]
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 アメリカのアニメ、マンガビジネスの間で『鋼の錬金術師』と『NARUTO』に対する注目が高まっている。両作品が注目されるのは、単純に人気がありビジネス的にも成功しているだけでなく、その人気がアニメファンに留まらない幅広いファンを開拓しつつあるからである。
 アメリカにおける日本アニメのブームは1998年の『ポケットモンスター』の大ブームに始まり、その後を『ドラゴンボール』や『遊戯王』が引き継いだ。これらの作品の特徴は、それまでマニア世界にあったアニメを、大衆レベルに引き上げて人気を切り開いたことである。2000年代に入りアニメブームが去った後も、アメリカでの日本アニメ人気は一定のレベルで定着している。しかし、実際はその人気の多くの部分は『ポケモン』や『ドラゴンボール』の時代に開拓したファン層を維持し続けていると言えなくもない。
 こうした状況から『ハガレン』と『NARUTO』に、これらの作品に次ぐ大衆市場への切り込み役を期待する声は大きい。実際にアメリカのマンガ・コミック・アニメ情報に詳しいICV2は、人気ケーブルテレビで放映中の『ハガレン』の高い人気をこれまでのアニメファンだけでなく、一般的な視聴者の取り込みに成功した結果だとしている。また、『NARUTO』についても秋にスタートしたテレビ放映の好調な出足から、同様に一般層の取り込みに成功する可能性が高いとしている。
 また、ICV2は季刊情報誌の「ICV2 マンガ小売りガイド:Retailers Guide to MANGA」において、「悟空の次を待っている。『NARUTO』と『鋼の錬金術師』は『ドラゴンボール』に匹敵するか?」とした特集を組み、やはり両作品の大衆層キラーの作品になれる可能性を探っている。

 両作品が『ドラゴンボール』や『遊戯王』並のスーパーヒットになるかは判らないが、少なくとも他の作品と較べて飛び抜けた人気を誇っていることは間違いない。例えば、年初から販売が好調であった『鋼の錬金術師』1巻のグラフィックノベルは、ロングセラーを続けており、遂には人気アメリカンコミックの『シンシティー』と『スターウォーズ エピソード3』を越えて現時点で年間第1位になっている。
 『NARUTO』と『鋼の錬金術師』の特徴は、日本のアニメ関連企業が得意とするメディアミクスの歯車が極めてうまく回っていることである。テレビ放映で両作品を観た一般の視聴者が、グラフィックノベル(マンガ単行本)を買いに行く流れが定着しつつある。それは両作品が、マニア色の強いコミック専門店でなく、一般書店で売れていることからも理解出来るだろう。  
 さらに『NARUTO』については、テレビ放映開始直後に既存7巻までのグラフィックノベル全てがベストセラー入りしたことが事件として語られている。テレビ放映は、作品の人気をマニア層からさらに拡大する役割を間違いなく担っている。

 アメリカのアニメ市場では、アメリカの制作会社やヨーロッパ、韓国のアニメーション制作会社が日本のアニメスタイルを取り入れ始めている。これまで日本の得意としていた分野での競争の激しさが増している。こうした中で、アニメ関係者の間では両作品にかける期待が一層高まるのだろう。

鋼の錬金術師公式サイト(米国)
NARUTO公式サイト(米国)
ICV2 

続きを読む "(11/3)NARUTOとハガレン 米国での人気" »
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animeanime23:59 | (0) | (1)
2005.06.18
海外事情 ]
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 6月18日の日本経済新聞の夕刊が『日本アニメ、米で人気減速』と題した特集記事を組んでいる。記事の論調はかつて米国を席巻した日本アニメは既に人気がなくなってきており、日米合作に活路を見いだしつつあるというものだ。
 日本アニメがより広いマーケットを目指し、日米合作を展開する流れという結論には同意出来る。しかし、記事の全体を流れる米国で日本アニメはもう駄目だというトーンには違和感を持った。個別の事例を無理に日本アニメの人気減退に結びつけようとする意図が感じられるためだ。 

 とりわけ『ハウルの動く城』を取り上げて米国の劇場用アニメーションの市場で日本アニメが凋落しているとしている展開に無理がある。記事によれば、『ハウル』は米国でヒットしていない、マイナー扱い、その理由は日本アニメの人気がなくなっているからだという。
記事からの幾つか内容を引用してみたい。
先週、封切られた映画『ハウルの動く城』はほとんど話題にならず、日本での人気がうそのよう。」
「公開2日目にハリウッド市内の映画館をのぞくと、土曜日にもかかわらず館内は空席が目立った。」

 記者が現地で体験した感覚は嘘ではないと思うが、こうした感覚は実際に数字として上がって来ているデータとはかなり異なる。例えば、米国版グーグルニュースで“howl”で検索してみれば、いかに多くのメディアが『ハウル』を取り上げているか判るだろう。勿論、こうした扱いは今週公開された新作『バットマン』のような大衆作品とは較べようもないが、限定公開の作品にここまで多くのメディアが批評するのはかなり注目度が高いと言っていいだろう。
 後半部の引用からは『ハウルの動く城』に全く観客が入っていないような印象を受けるが、先週末の1館あたりの売上高11,888㌦は興行収入として決して低い数字でなく、むしろ一般的には好調とされる数字である。この数字は先週末の主要な公開映画で2位であったし、その後も同じ程度のランクを維持している。
また、ハウルが限定公開であることを
「こんな扱いを受けるのは、日本製アニメも集客力が落ちているからだ」
と評してしている。
 これは明らかな間違いである。これまでに較べて日本アニメの集客力が落ちることありえないからだ。なぜなら、過去においても米国で日本アニメの集客力が強かったことはないからである。劇場アニメは今も昔も日本アニメが弱い分野である。日本の劇場アニメの唯一の成功例である『ポケットモンスター』の成功を引き合いに出し、いかに観客が減ったかを説明しているが、もともと集客力がない中で『ポケットモンスター』のみが例外的に大ヒット作品なのである。過去の特異なケースを一般化して、それに較べて全体が変わってきているという論旨には問題があるだろう。

 また、キャラクター商品などについても、米国の4キッズ・エンターテイメントの売上高の落込みなどをあげて日本キャラクターの力の落込みとしている。しかし、『遊戯王』といった個別の作品の人気の落込みを日本アニメ全体の人気の離散としている面が強い。
 勿論、『ポケットモンスター』や『遊戯王』といった大ヒット作品に続くキャラクターが育っていないという問題はある。しかし、それはまたマーケティグなどの問題もあり、日本のキャラクターの訴求力が落ちているという結論には直ちには結びつかない。
 少なくともカートゥーンネットワークやアダルトスイムの高い視聴率やマンガ出版の好調ぶりなどからみれば、マーケットが頭打ちということはあっても日本のキャラクターやコンテンツ受けなくなっていると単純な結論には無理があるといえる。
 それでも、これまで多くの日本のメディアが日本アニメは凄いという幻想を振りまいて来た中で、日本アニメビジネスの海外における負の部分に光を当てるといった点では評価の出来るレポートである。

日本経済新聞 

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animeanime00:00 | (0) | (0)
2005.02.18
海外事情 ]
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 韓国アニメーションが伸びている。韓国アニメーションは潜在的な日本アニメの脅威かもしれない。最近、そんなことを考えていた。そう思っていた時に、米国の映画興行成績の情報サイトBox Office MOJOで面白いものを見つけた。このサイトは、週別、年度別のほか、監督別や俳優別、ジャンル別など様々な分類によってランキングをつけている。その中に『ANIME』と名付けられたランキングカテゴリーが存在する。そのランキング表の24位に韓国アニメーションの『Sky Blue(邦題:ワンダフルデイズ)』が掲載されている。『ANIME』のジャンルの残り全ての作品は日本アニメである。

 よく知られているように、米国には元々『アニメ』という語句は存在しない。また、『アニメーション』と言った時は、ジャンルというよりアニメーションの制作技術の側面を主に語っている時が多い。米国では日本の『アニメ』にあたる語句は、90年代頃までは『カートゥーン(Cartoon)』と考えられてきた。しかし、米国のディズニー映画以来の伝統で、『カートゥーン』には、子供向けのアニメーションという意味が含まれている。このため、日本の大人向けのアニメ作品が米国に導入された際、日本の『ANIME』の語句が、大人向けのアニメーションの語句として使用される様になった。
 その後、この『ANIME』の語句は急速な勢いで広がり、今やマスメディアやビジネス、アカデミックな場でさえ一般的に利用されている。さらに、大人向けのアニメでなく『ポケットモンスター』といった子供向けの日本アニメにも『ANIME』の語句が使われる様になって来ている。

 この場合『ANIME』の定義とは、一体何なのだろうか。大人向けのアニメーションのことではないようだ。一番ありそうな答えは、日本で作られたアニメこそが『ANIME』だとするものだ。しかし、『ワンダフルデイズ』が米国人から見て『ANIME』の範疇に入るのなら、この考えは訂正が必要だ。作品を分類する人が、この作品が韓国作品であることを知らないはずはないからだ。
 では、何を持って『ANIME』とすべきか。それは、アニメーションのスタイルのなのかもしれない。リミテッドアニメーションなのか、2Dアニメーションなのか、キャラクター造形なのか、それとも物語の在り方なのかは判らない。ただ、確実なのは米国人の頭の中には、国籍を超えた『ANIME』というスタイルが存在する可能性だ。そうであれば、近い将来に米国製の『ANIME』や中国製の『ANIME』が出現するかもしれない。米国市場で、『ANIME』が大成功!でも、日本製の作品はひとつもないという日が来ても不思議はないかもしれない。

 といったことを考えながら、もう一度Box Office MOJOを眺めていたら、さらに面白いことを発見した。日本製の大作アニメ『ファイナル・ファンタジー』が、『ANIME』のカテゴリーに入っていないのだ。『ファイナル・ファンタジー』は、3Dアニメーションのカテゴリーに分類されている。この分野の他の作品は、米国製の3Dアニメーションばかりである。韓国アニメーションの『ワンダフルデイズ』は『ANIME』であり、日本アニメの『ファイナル・ファンタジー』は、『ANIME』ではない。これが、米国人の見方のひとつらしい。

Box Office MOJO 
ワンダフルデイズ公式サイト(日本) 

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