『グイン・サーガ』 若林厚史監督インタビュー(2)
                    日本のファンタジー小説の金字塔のアニメ化に挑む 
  
3. 『グイン・サーガ』のキャラクターたち

アニメアニメ
(以下AA)

今、キャラクターの話が出たのですが、やはり相当悩みましたか。美女とか美男ばっかりで、それも難しいだろうと思えますが。


若林監督
(以下若林)

いや、これは悩まなかったですね。原案を頼んだ皇(なつき)さんが素晴らしい絵を描く方なんです。決まった瞬間に絶対オーケーと思ってましたから。
皇さんがやったら何を描いても絶世の美女だし美男だし。それだけの凄い描き手をこちらが得たので、キャラクターに関しては何の不安もなかったですね。

AA

キャラクターのお話をさせていたんですけど、キャストのかたはどうでしょうか。どういうイメージで選ばれているのでしょうか。

若林

グインというとシュワルツェネッガーみたいな捉え方をする人もいるし、孤高の王様みたいな気品のあるイメージと両極端に分かれるような気がするんです。

『コナン・ザ・グレート』みたいなイメージの人がいるかもしれないですけど、そうじゃないんですよね。すごく理知的だし、王様の気品がある。あまり野太くてプロレスラーみたいな声を当てるとミスマッチだなと思いました。
最初からいい声の人の方が絶対に合うはずだと思っていました。だからあの体形に惑わされることなく、いい声、王族の声、そういう声を出せる人というイメージです。

AA

女性陣、リンダとかアムネリスはどうですか。

若林

リンダは王女の教育を受けているわけです。品の良さが声に感じられないといけない。そういう声質の人を基本的に選ぼうと思っていました。声だけ聞いても育ちの良さそうなイメージがかき立てられるような人です。
アムネリスにしてもそうだと思うんです。声に品の良さというのが出ると思いますよ。

AA
イシュトヴァーンはどうでしょうか。

若林
これは逆に盗賊なので、ちょっと悪ぶった、だけどあんまり不良というよりも、盗賊だけれども、後の王様になったりもするので、通る声というのは意識しました。

AA
やはり最後に聞かなければいけないのは、アルド・ナリスですね。

若林

見る人は中性的なイメージが大きいと思うんです。けれども、すごく自己の考えを持って主張もはっきりしている。中性的な声だけで決めてしまうと押しが弱くなる。男っぽくある必要はないんですけども、ストレートでインパクトのある声は出るべきだと思う。
あとは発声だけでなく、何か引っ掛かりがナリスには欲しかったですね。

実は今「あ、こんな人がいたんだ」という人が見つかったんです。自分が求めていたイメージに近いし、本人にしか出来ない語り口を持っている人、そして、聞いていて気持ちいい声なんです。

AA
今の話を聞いたら、キャストの発表がすごく楽しみになりましたね。

若林
多分すごく合っている人ばかりだと思いますよ。

.
AA

こうした魅力的キャラクターが多い中、監督自身が一番気になるキャラクターは誰なんでしょうか。

若林

グインですね。グインが一番好きですから。やっぱりグインがどうなっていくのか、どう描けるのかという、それ次第です。
それに合わせてのイシュトヴァーンとのコンビ、リンダやレムスとかの掛け合いがすごく面白い。グインを軸にしてみんな動いている話なので、グインを一番魅力的に描けなければ仕方がないですよね。

AA

グインはいい人過ぎて、描くのは意外と難しいのかなとも思うのですが。

若林

いい人過ぎるとも見えますが、モンゴール兵を斬り倒したり、結構えげつないこともしています。
グインはいい人過ぎるのではなくて、どんなキャラクターのわがままも受け入れてくれるんですよね。取りあえず言ってくれた言葉をすべて受け止めてくれる、特にレムスなんかの、どうせ僕なんか、というやつを全部飲み込んでくれる人なんですよね。どんな人がグインと出会っても、グインには心を開くことが出来る。

だけど自分が嫌なことは嫌と言う。イシュトヴァーンから俺に付いてきてくれと言われた時は、きっちり自分を探しに行くのでそれは出来ないと、自分の主張もある。
相手のわがままをこれ以上は聞けんぞ、ということもあって、しかも上手い言い回しで、理由を諭してあげる。

。.
AA
逆に言うと、全くの悪人というのもなかなか出てこないのですが、演出的にはどうなのでしょうか。

若林

いや、そうでもないと思うんですよ。だから、そこが曲者だと思っています。
まったくの悪人が出てないんだけれども、出てくる登場人物がコンプレックスの固まりだったり、小さな悪というか、そこの絡みが面白いわけじゃないですか。

アムネリス、ナリスとか大悪人じゃないんだけれども、小さな悪い心を持っている奴らが、己の願望の為に対立し合っている。これをグインがたしなめている。大悪人は出てこないんだけれども、葛藤劇としては面白いところがある。

AA
そういったところは今回のアニメの中でもかなり引き出しているのでしょうか。

若林

相当過剰にやろうと思っています(笑)。
原作がここまでやっているんだったら、もっとその上をいってやるぞという感じです。
アムネリスがナリスに裏切られるあたりは、どこまで落としてやろうかな、と思っています(笑)。

ノスフェラス編が終わっても、アクションシーンがなくなったのではなくて、逆にパロに戻ってからの話の方が楽しみなんです。

4. 『グイン・サーガ』の見所は、グイン自身
AA

音楽についてはどうでしょうか。今回は植松伸夫さんというゲームの世界で実績も人気もあるかたですが。荘厳な曲というか、それは『グイン・サーガ』に合っているのかなと思います。

若林

すでに一部デモを聴かせてもらって、もうこれでバッチリオーケーという素晴らしい曲が上がっています。植松さんの音楽は、『グイン・サーガ』に必須のものになりましたね。

AA
監督から作品の見所を紹介していただいても宜しいでしょうか。

若林
グインの生き様というか、グインがどう行動するのかを楽しんで見て貰いたいです。
誰とどういう関り方をするかというか、グインは自分の主張を言う事が殆ど無いんですね。けれども、自分と対立した人達とのやりとりで、グインがどんな考えを持っているかが見えてくる。

AA
群像劇を真ん中で束ねる人ですね。


若林


ええ、つまり自分の主張というのは一切ないんだけれども、周りとの関わりやアクションによって、こういう人なんだというのが見えてくる。
何かちょっと変わった位置付けのキャラクターだと思います。

寺山修司さんが『あしたのジョー』で、力石とはどういう人間だったのかと、何かで分析していたことがあって、実は力石は、ジョーがやって来ないと現れないという図式になっていたんですと。
力石は、自分から動くことは絶対せずに、ジョーが何かをしだすと力石が現れるという、そんな分析の仕方をしていて、これがグインにちょっとダブるところがあるなと思いました。

この物語の中では、グインは自分が主体で現れることが決してないキャラクターなんだなと思いましたね。
だから、逆に存在感があるんです。じゃあ、一体何者なんだろうという神秘性を持たせるのも今回の作品で必要なのかなと思うんです。


                         (c)栗本薫/天狼プロダクション/Project Guin

AA
そうですね。謎は解けないわけですからね。

若林
そうです。だから、謎みたいなものをグインには持たせるべきです。

AA
確かにグインから『コナン・ザ・グレート』のコナンを思い浮かべる人が多いと思うのですが、今の話を聞くと全然違いますね。

若林
全然違いますね。あれをイメージすると全然外れてしまうと思います。たぶん作品を作る側の人でも、コナンで描いちゃう人はいるでしょうね。でもそれをやると失敗すると思います。

AA
本日はありがとうございました。

■その1に戻る 『グイン・サーガ』制作のはじまり




 page topへ