| 1. 『グイン・サーガ』制作のはじまり |
|
アニメアニメ
(以下AA)
|
最初に、作品の監督をお引き受けされた経緯をお伺いしてもよいですか。
|
|
若林監督
(以下若林)
|
当初は、劇場作品としてどうですかということでした。それが5巻までだったんです。その時原作を初めて読んだのですが、あ、これだったら自分にできるかなと思いました。
5巻までは活劇だったし、入っていきやすい世界だったので。その後で、同じ作品でテレビシリーズの話になったんです。
|
|
AA
|
『グイン・サーガ』は、5巻ぐらいまではアクションが多いのですが、監督はアクション表現に定評があります。そうしたことは関係があるのですか。
|
|
若林
|
むしろそういう括りはされたくないというのがあります。決してそれだけではないと思っています。目立った仕事をすると、それが一番得意分野と思われてしまうじゃないですか。そうした思われ方をちょっと変えていきたいなと。今までの得意分野から離れたところで経験を積みたいというのもあったんです。
『グイン・サーガ』は、かなりハードなテーマなんです。なので、自分の経験値を上げるには一番いいかなというのはありましたね。
|
|
AA
|
確かに非常にいろいろな要素が盛りだくさんの作品ですね。
|
|
若林
|
ええ、何でもかんでもしなければいけない。
スキルアップもできるし、華やかに映画を作るにはどうやったらいいのか、そういう意味で一番いい作品だったのかなと、今は思いますね。
|
| . |
|
AA
|
今回は初監督なのですが、監督になると作品を全部自分で統率できる魅力があると思います。逆に、細かいところまで自分で出来ないのですが、そうした不満を感じることはあるのですか。
|
|
若林
|
自分は任せられるなら人に任せちゃうタイプですね。1話だけでない作り方を実践してみたかったというのもあります。トータルとしての完成度を作って、どうですかと提示してみたい。
確かに自分の手が届かないところでの不満は出ると思うんですけど、それはどんな現場でも当たり前のことです。 例えば10個の項目があったとして、上の2つぐらいしかチョイス出来なかったとしても、それを自分で操作出来るのなら、絶対に自分のカラーは出るはずです。
|
|
AA
|
監督は作品を作るときに、絵コンテの段階とか、脚本の段階ではかなり指示とかはされるのですか。
|
|
若林
|
わりとアバウトというか、そんなに細かいタイプではないと思いますね。基本型さえ合っていれば、どちらに流れてもいい。
つまり、基本が合っていればいいわけです。ここで誰かが刺されて死ぬとなれば、どういう死に方をしてもいいわけです。絵コンテ段階で決まっていれば、骨組みがしっかりしていれば、あとはどういうふうに流れても絶対にその絵コンテから離れることはない。
26本作るには、ほかのスタッフに委ねられるところは委ねていかないと、1人で出来る量なんていうのは限られていると思っています。
|
|
AA
|
今回は制作がかなり早く始まっています。最初に全部きちっと決めることが出来ると思うのですが、これはどうだったのでしょうか。
|
|
若林
|
最低限これだけの期間だけはくださいと、かなり自分の意思を通して貰ったところもあるんです。この作品は通常のテレビシリーズでいったら3倍ぐらいの大変さがあると思います。
現在はシナリオも実際に全部上がっていますし、ほかのテレビシリーズと較べて格段に条件がいいわけです。ちゃんとした良いものを作るには、こういう作り方が望ましいといった、スタンダードみたいなものも作りたいですね。
|
(c)栗本薫/天狼プロダクション/Project Guin
|
| . 2. 原作『グイン・サーガ』について |
|
AA
|
原作についてですが、『グイン・サーガ』はもうすでに30年ぐらいになります。
原作の重みというのは感じるのですか。思い入れの大きなファンも多いと思います。
|
|
若林
|
自分はそういうのが気にならないタイプみたいですね。だけどきちんと原作というのは理解しています。
あれだけの原作があったら、そんなにぶれるはずないんですよ。 10人が10人認めるなんていうことは、どんな作品でもあり得ない事です。
けれども10人中3人が支持してくれれば成功だと思います。野球だって3割バッターってすごいじゃないですか。
たぶん残りの7人も最初はショックを受けますが、見終わってもう1回、見直してもらえれば、よく出来ていたねと言ってくれるはずです。
|
|
AA
|
確かに原作のイラストレーションも何度も変わっているので、いろいろな『グイン・サーガ』の在り方が受けいれられるのかもしれませんね。
|
|
若林
|
逆にそういう意味では救われますね。例えば天野さんだけなら、見る人からは相当な違和感が出ると思います。だから、全話数を見終わった後でもう一度見ると、その映像のよさが見えてくるような気がするんです。
逆に初見の人の方が、純粋な見方をしてくれると思います。
|
| . |
|
AA
|
原作の栗本薫先生からは、アドバイスはお受けになったのですか。
|
|
若林
|
パイロットを見て頂いた時にお話をしました。その時に、「こういう感じなんですよ」みたいな雰囲気を教えて貰いました。それ以外は、あまり細かくはありません。かなり自由にやらせてもらっています。
|
|
AA
|
今回は原作にかなり忠実なように感じますが。
|
|
若林
|
ライターの米村(正二)さんと「基本的には原作通りにいきましょうよ」とシナリオ会議で話しました。ただ、入れきれないエピソードも当然出て来ます。なので、一番魅力的なエピソードを軸にして進めていければと思います。
つまり、原作を踏まえた上で、映像でこれだけアレンジしましたよと見せるのが、今回の理想型です。その中で「ここは盛り上げたいよね」というエピソードもあると思いますが、基本は原作通りだと思っています。
|
| . |
|
AA
|
『グイン・サーガ』が難しいなと思うのは、アクションがある、SFファンタジーもある、ドラマもある、戦記でもある。そうした時に、どこに焦点をあてていくのかなと。
|
|
若林
|
それは、あまり深く考えると、ノイローゼになっちゃいますよね。だから考えないのが一番いいと思います。
SF、アクション、ラブロマンスとか、カテゴリー分けを変にするからいけないのであって、それが同時進行でいいわけじゃないですか。それは決して不可能な事ではありません。
『スター・ウォーズ』なんかは典型的にそれじゃないですか。メカアクション、ラブロマンスとか、剣劇もあるし、すべて詰まっているけど破綻してないじゃないですか。
|
|
AA
|
一方で『グイン・サーガ』はファンタジーとして、『指輪物語』や『ハリー・ポッター』といった作品とも較べられると思います。
こうしたファンタジー作品と『グイン・サーガ』はどこが違うと考えられますか。
|
|
若林
|
それは出てくる登場人物の厚みが違うんでしょうね。
やっぱり『ロード・オブ・ザ・リング』とか『ハリー・ポッター』は、ビジュアルだと思うんです。人間関係が密な登場人物は、ほんの数人だと思うんですよ。『グイン・サーガ』はみんな強烈な個性の持ち主が出て来ますので。
|
|
AA
|
逆に言えば、人物が非常に描きやすい作品でしょうか?
|
|
若林
|
描きやすいですね。ビジュアル重視じゃない分だけ、逆に映像にしやすい。キャラクターが分かりやすいので、こういう感情を持っているキャラクターなら、こういうシチュエーションを作れるんじゃないかと持っていける。
|
|
AA
|
ただ、小説の場合ですと、絶世の美女というと、一言で分かりやすいですね。あるいは大群が押し寄せてきたと、それも1行で済むのですが、これをアニメですると大変ですね。
|
|
若林
|
ずるいですよね(笑)。
ただ、大群だから、一杯描いたから大群に見えるのか?それは映画的ではないんじゃないか。もしかしたら大群を見せなくても大群っぽく見せることが出来る可能性もあるわけですよね。音だけで見せるとか。
短絡的に考えると、大群を一杯描かなきゃならないだろう、大変そうだねと。じゃあ、大群を見せなくて大群っぽく見せられないのかと、逆の発想をしていく。
『ロード』みたいなのを見ると、ああ、こういう画面を作らなきゃいけないんだと錯覚するけれども、逆にあれを見せずに大群を表現できないのかという発想をすると、アニメーションではオリジナルな映像が作れると思うんです。
|
|
|