2005.02.04
書評:『リトル・ニモの野望』
この本は、大塚康生氏が1970年代の終わりから1980年代にかけて関わったテレコムが製作した日米合作の大作アニメ『リトル・ニモ』を巡る物語である。大塚氏はプロデューサー藤岡豊氏を物語の中心に据え、その立ち上がりから顛末までを淡々と語っている。その当方もない製作費や宮崎駿氏、高畑勲氏、メビウス氏、レイ・ブラッドベリ氏...、今では考えられないようなスパースターが次々にこの作品に関わって去っていくのは、何か現実離れしたドラマのようにも写る。そして、それだけの予算と才能にも関わらず実質的に『リトル・ニモ』は商業上の失敗作だった。
このリトル・ニモを巡る話は、様々なことを考えさせる。それは、この本の主題である日本アニメの海外進出や日米合作映画の難しさ、さらに劇場アニメとテレビアニメの違い、フルアニメーションとリミテッドアニメーションの違いまでも含めてだ。リトル・ニモの経験は、現在増えつつある日本のアニメ製作会社の海外志向にも多くの示唆を与えるだろう。しかし、この本の一番のテーマは、夢ではないだろうか。それは、この本で大塚康生氏が生き生きと描いたプロデューサー藤岡豊氏の成功への夢であり、著者を初めとする日本のアニメーターのフルアニメーションや米国アニメーションへの夢でないだろうか。
そして、1980年代当時で55億円という莫大な製作予算が、製作の途中で尽きてしまった時に、それぞれの人が見た夢は弾けてしまったのだろう。日本アニメーションが米国市場で、世界市場で大成功出来るかもしれないという夢がである。それは、あたかも夢の世界を冒険したリトル・ニモが最後に目を覚まし現実に戻るがごとくのようだ。
このリトル・ニモのあとにも、幾つかの日本アニメーションが米国上陸を図ったがいまだに本当に成功した作品は『ポケットモンスター』だけである。『ポケットモンスター』が、極めて日本的な低予算のリミテッドアニメの作品であることは、皮肉な話である。
『リトル・ニモの野望』を読んでいると、日本側の関係者が米国市場で売るという夢を追うあまり、多くのことで妥協し過ぎてしまったようにみえる。それが、一番の失敗の原因でなかったのでないかと。それが、今だから言えること、当事者でないから言えることであるかもしれない。当時の日米の状況がそれを許さなかったかもしれない。しかし、米国と同じやりかたなら、米国人がやったほうがうまく出来るのが当たり前である。結局、日本が勝負するのは、日本アニメの表現の仕方しかないと思える。これは、生まれてからずっと長い間リミテッドアニメを観ながら育った僕の感想である。
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リトル・ニモの野望
大塚康生
徳間書店 1470円
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2004.12.08
紹介本『萌える株式投資』

世の中に株式投資本は数あるが、巨乳のお姉ちゃんと猫耳withしっぽ少女が株式投資の極意を教えてくれる本はほかにないだろう。なぜ株式を指南するこのイラストのお姉ちゃんの胸は不必要までに大きいのか?なぜこの少女キャラは何度も下着を見せるのか?理由は簡単だ。この本が、オタクのための株式投資入門書だからだ。冗談!俺の知っているオタクはみんな生活するのに精一杯でライブドアの1株だって買う余裕もないよ!など言うなかれ。大まじだ。
著者のミルミルは、オタクこそが株式投資に合った感性を一番持っているとの強い信念と巨大な胸とミニスカートで実にマニア向けの株式投資を指南しているのだ。というか、解説のネタが強烈過ぎて普通の人が読んだらかえって判らない。何しろ、本の中で引き合いに出されるのはガシャポンやワンフェスだったりで、めちゃオタクフレンドリー!しかし、一般の人にはよく判らない。(笑)
当然、取引の実例に出て来る株はバンダイだったりスクウェア・エニックス。創通エージェンシーもブロッコリーもほとんど解説なしで、そういう会社だよね~で話が進んで行く。実に判りやすい。(^^)
著者のミルミルに指摘されるまで気がつかなかったが、確かにオタクと投資家は似ている。似ているというか、本質的なところは全く一緒だ。単に、向けられている方向性が違うだけで全く同じ人種でないかとさえ思える。つまり、先読みをする感性、相場観、特定の分野の傾斜、さらに常軌を逸しているとしか思えない情報収集への情熱だ。
だから、オタク的なエネルギーのベクトルを少し変えるだけで一流の投資家になれるというミルミルの主張は大賛成!世間一般のオタクと呼ばれる人達が、お金を儲けたいと思っているかどうかは判らない。でも、フィギアを買うお金やコスプレ喫茶に行くお金が増えればきっとうれしいだろう。オタクと呼ばれている人達、特にコレクターさんなんかには絶対株式投資が楽しいと思う。でも、何から手をつけていいか判らない、そんな時にお薦めの一冊だ。
最近は、アニメやコミック、ゲームとオタクテイストな産業が日本を支えるそうだが、オタクな投資家が日本の金融界を救う日も近い。
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萌える株式投資.
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2004.11.30
『現代日本のアニメ』:書評
![4120033287.09.MZZZZZZZ[1]](http://anime.blogzine.jp/animeanime/images/4120033287.09.MZZZZZZZ[1].jpg)
So it's Begun!
「日本のアニメーションについて真に注目すべきは、単にビジュアル面の表現方法が印象的であるだけでなく、そのストーリー性である。」
本屋に寄ったらなかなか面白い本をみつけた。
『現代日本のアニメ』という米国人によるアニメ論なのだが、なかなかいい線のいっている内容である。著者のm職はテキサス大学の教授で日本文学論らしいのだが、日本人の著作でもないぐらいの本格的なアニメ論になっている。欧米メディアにありがちな、アニメを見下げたとか文化侵略といったものでなく、論点の核心をついた話が多い。2600円はちょっと高いがそのくらいの価値はあるだろう。
しかし、取り上げられた作品が『AKIRA』や『ジブリ』から始まって、『うる星やつら』、『キュティーハニー』、『ガイバー』、『うろつき童子』などなどその量と幅の広さにびっくり!
彼女、確実に僕よりアニメを見ている。内容は、あまりにも盛りだくさんなので詳しくは説明出来ないが、終末論、セクシュアリティーなどなどである。最初に引用した言葉につきる。日本アニメのストーリー性とそのストーリーの意味すること。興味あれば一読をお勧めします。
現代日本のアニメ―『AKIRA』から『千と千尋の神隠し』まで 中公叢書
スーザン・J. ネイピア著, 神山 京子訳 2600円
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2004.09.24
『すべての映画はアニメになる』押井守
『すべての映画はアニメになる』は、過去20年間に渡ってアニメ雑誌『アニメ-ジュ』に掲載された押井守氏の文章、対談、インタビューをまとめたものである。20年に及ぶ期間、様々な作品と対談者ではあるが意外なほどまとまりがあるのは、押井守氏本人が掲載記事をセレクトしたためかもしれない。全体が押井氏の一貫としたアニメとは何か、映像とは何かといった意見表明の場として機能しているからだ。
そして、その中のひとつが表題にもなっている『すべての映画はアニメになる』、2001年に映画『アヴァロン Avalon』を語った押井氏のインタビューである。押井氏はこの中で、アニメーションは根拠のない映像だと思われているが、実写もまた根拠なき映像である、実写もアニメも実は同じでないかと述べている。昔は、アニメーションを映画にしようと思っていたが、映画がアニメなのだという押井氏の考えは、現在のあらゆる映画に使われるCG技法の氾濫を目にすると説得力を持って伝ってくる。
最近、私自身は世界的に強いと言われている日本のアニメの将来について考えることが多い。ジブリ作品や『イノセンス』あるいは『カウボーイビバップ』といった作品は、ある意味アニメの極みに達しているのでないか、少なくともドラマ(物語)を中心としたアニメは他国を寄せつけない位置にいる。しかし、この状態が今後も続くのだろうか。
『マトリクス』や『ハリーポッター』といったSFやファンタジーを超えて映像のCG化は急速に進んでいる。一方で、アニメーションもまた急激に3Dの方向に動き2Dの世界では持つことの出来なかったリアリティーを獲得している。
押井氏は俳優も素材だと思ってきた、映画はあくまでも監督、音楽、編集、美術といったスタッフが作るものであると語る。つまり、これは俳優とは監督の頭にある虚構の存在だということだ。そうであれば、俳優はそもそも虚構の中から生まれて来たアニメのキャラクターと同列上にある。既に、実写とアニメの境界は消え始めている。
日本アニメは世界で唯一アニメーションの中にドラマ(物語)を意識することで成り立った文化である。それゆえに産業として拡大し、世界文化にすら影響を与える力を獲得した。それでは、元来物語である実写とアニメが完全に融合した時に日本アニメの競争優位性は消えるのでないだろうか。
上記インタビュー以外にも、過去20年間を超える押井氏のその時々の言葉は、どれも密度が濃い。そして、色々なことを読み手に感じさせる。押井氏の映像作品が観るものを深い思考の世界に誘うのと同じように、彼の言葉もまた読み手を思考の迷宮に導く強い力を持っている。
『全ての映画はアニメになる』 押井守著 徳間書店 2100円(税込み)
すべての映画はアニメになる[...アニメージュ叢書


