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今夏のアニメ界、そして映画界の一番の話題が宮崎駿監督の『崖の上のポニョ』であることは間違いないだろう。そうした関心のなかには作品の内容と同時に、ビジネス面、興行的な関心も少なからずある。映画が当たったかどうかは、作品を判断する指標として最も分かりやすいもののひとつだからだ。
また数字の大きさ自体が、映画のヒットを増幅させる。映画のビジネス関係者にとっては、興行成績は最も重要な指標でもある。実際に配給会社からは『崖の上のポニョ』の興行収入100億円突破、動員数1000万人突破などが既に発表されている。
ジブリ映画はその記録破りの興行から、劇場公開されるたびに大きな注目を浴びる。しかし、これほど大きな映画興行にも関わらず、その興行の仕組み、いかにしてヒットが作り出されるのかについて本格的に語られることはなかった。
この7月に朝日新書から発売された斉藤守彦氏による「宮崎アニメは、なぜ当たる スピルバークを超えた理由」は、まさにこの空白を埋めるものと言える。1988年から現在まで、過去20年にわたるジブリ映画の興行成績とその成功を生みだした宣伝・広報の様子を伝えるものである。
本書の中では、都市での興行よりもむしろ地方ローカルに強いことや、短期型でなくロングランで売上を稼ぎ出す、ジブリ映画の様々な特徴が語られる。また、全体の構成が、それぞれの作品の同時期に公開されたスピルバーク作品と対比して進められるのもこの本の特徴である。
洋画の巨大ブランドでありハリウッドビジネスを体現するスピルバーグ、ジブリ映画をこれと並べることで、日本最大の映画ブランドであるジブリ映画がいかにそのブランド価値を成長させていったかを描き出す。
また、本書は宮崎アニメ、ジブリ作品、スピルバーク作品を軸に語りながら、一方であまり知られることのない配給会社の映画宣伝、広報の有り様も描き出している。映画を売り出す際に製作側が何を考えているのか、過去にあった映画宣伝の裏にあったものは何だったのかだ。
さらに、シネコンの普及やそれに伴う映画興行ビジネスの近年の変化も伺える。『宮崎アニメはなぜ当たる』は、映画興行の宣伝と広報の裏側を語る本でもある。新書のため文章は読み易いように配慮されており、ジブリ作品のビジネス的側面に映画ビジネスの専門家でなくても、手軽に触れることの出来る良書となっている。
宮崎アニメは、なぜ当たる
スピルバーグを超えた理由
(朝日新書 121)
斉藤守彦 著
価格: 735円(税込)
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