「いばらの王 -King of Thorn-」 片山一良監督インタビュー(3)
     
監督が映画から送るメッセージ 
  
■ 監督が映画から送るメッセージとは?

アニメ!アニメ!
(以下AA)


ストーリーはかなり複雑な話になっていますが、これは相当練られたのですか。

片山一良監督
(以下片山)

大きな紙に、登場キャラクターの行動表、例えるなら列車のダイヤみたいなもので、この時間にこいつは何をやっていた、こいつの役割は何で、このタイミングでこいつはなぜこう言ったかと、実はこういうことがこうあって、などなど、全て書いて作りました。ストーリー作り、脚本が終わるまで丸1年でしたね。

AA
脚本は何稿も重ねられたのですか。

片山
プロットは3稿ぐらいです。シナリオ合宿をして脚本を6稿までお願いしていて、決定稿の7稿は僕が書きました。

AA
監督自身が書くと決めたのはなぜですか。

片山
6稿までやってあんまり変わらなかったことですね。作品の中のブレークスルーを考えてくれと言ったけれど、やっぱり考えつかなかった。
6稿目が終わった時に少し見えて、これだと思って、そう書いてくれと話したら、時間がない、これ以上書けないと言われ、じゃあ、それは僕がやるということです。

AA
ブレークスルーは、何がきっかけだったんですか。

片山
それまでのシナリオは物語の進行がどうしても段取りになっていたんです。物語の結末に、事件の顛末の全ての説明を持ってきたんです。キャラクターは結局立ち止まって、みんなで会話するだけなんです。それでは絵が止まってしまう。
謎解きを分散させ、中盤で原作では既に死んでいる事件の張本人が現れて、実はこうだったんだということを、語らせればいいんだと考えました。冥府の案内人の様に城の地下を観客に見せながら、移動しつつ解説をすればダレない。

AA
監督はこの映画から何かメッセージを送っているというのはありますか。

片山
映画の中でマルコが、「自分の状況を物語に当てはめたときに、結局、人間はそれに向かって突き進んでいくものだ」と言っているんです。それが僕は一番言いたかったことなんです。
僕ら、今を生きている人間って、結局、何も行動原理を生み出していない。僕らが行動原理としているものはほとんどがフィクションなんですよね。

片山
例えば、バレンタインでチョコをあげて告白して、あげく結婚したとするじゃないですか。でも、それは親から教わらないですよね。ほとんどそれをフィクションから知って行動をしています。
もし、バレンタインがらみのフィクションを知らなかったら、その人は一生結婚できなかったかもしれない。僕らこの時代の人間はフィクションとは無縁で生きてないんです。

いまはメタフィクションの世界。メタのメタのまたメタの世界に生きている状況だと僕は思っているんです。だから小さい時にどういうフィクションに出合うかによって、その人の人生は決まるんじゃないかというのが僕の頭の中にあって、これが映画の中に当てはめられている。
結局、シズクがキャサリンの『いばら姫』の話を聞かなかったら、こういうことは起こらなかったし。逆に解決もしなかった。



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■ カスミは成長していく過程で思入れが出来る

AA

主人公のカスミの話もいいですか。カスミは傍から見るといじいじしている女の子なのですけど、最終的には成長したと考えていいんですか。

片山

うん。成長しましたね。

AA
監督には、カスミという女の子はどうなんですか。世間的に見れば、シズクの方が魅力的な女の子だと思いますが。

片山

もちろん、そうだといます。難しいな。主人公だから、好きになって、思い入れないといけないのだけど、カスミは何も特技がなくて、おろおろしているだけじゃないですか。
最終的にはこの子が成長していく過程を見ることで、初めて思い入れができた。実は途中でいろいろ成長ポイントがあるんですよ。だから、確実に彼女は成長しているなと見終わった時に感じられると思うんです。

AA
カスミとシズクは一卵性双生児なのに、なぜあんなに性格が違うんですか?

片山

これはカスミ役の花澤(香菜)さんとシズク役の仙台(エリ)さんにも話したのだけど、もともとは典型的な一卵性双生児だったんです。
だけれど、回想シーンの中で、足に消えない傷をつくっちゃったカスミがこれからは私が勉強を教えてあげると言うじゃないですか。
カスミはシズクよりも目立っちゃいけないんだ、自分はシズクの影になって、シズクを支える人間になっていこう、そのためには表に出ちゃいけないとずっと思い込んでいて、ああいう方向に行っちゃった。
逆にシズクのほうはカスミにこれ以上、心配をかけちゃいけないから、自分は表に出て、明るく振る舞おうと意図的に性格が改造されていったんです。結果、ああいうふうになっちゃっている。

AA

するとあれは同じキャラクターの2つの側面を表しているということですか?

片山
それが悲劇的なのは、お互いを思いやっているからこそ、そうなっちゃったわけです。
そういう2人の今までの人生の行動規範が結局、今回の事件にも当てはめられて、ああいう悲劇になってしまった。

AA
そう考えると、壮大な悲劇ですね。

片山

ええ。そうなんです。悲劇なんです。

■その1に戻る 原作者岩原先生は「この映画は3度見なければ」と  



『いばらの王 -King of Thorn-』
2010年5月1日全国公開

公式サイト http://www.kingofthorn.net/

【メインスタッフ】
原作: 岩原裕二(エンターブレイン刊)

監督: 片山一良
脚本: 山口宏/片山一良
主題歌: MISIA「EDGE OF THIS WORLD」(アリオラジャパン)
アニメーション制作: サンライズ
製作: バンダイビジュアル、サンライズ、エンターブレイン、角川映画、テレビ東京、電通、ソニーPCL
配給: 角川映画
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