| ■ ワンシチュエーションドラマを想定していた『イヴの時間』 |
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アニメアニメ
(以下AA)
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『イヴの時間』の制作のきっかけから話していただいて宜しいですか?
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吉浦康裕監督
(以下敬略)
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前作『ペイル・コクーン』を作ったのが2005年ぐらいでした。個人制作だったのですが、それが終わった時に長江努プロデューサー(ディレクションズ)から次の短編シリーズを作ってみないかと言われたのがきっかけです。
最初はいきなり連作というのはきついかなと思ったのですが、学生時代に作った『水のコトバ』のようなひとつの店だけで完結するようなワンシチュエーションドラマだったらシリーズものでもいけると思ったんです。
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AA
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実際の舞台は喫茶店「イヴの時間」からかなり広がりましたが。
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吉浦
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初期プロットではお店だけだったんです。でも、お店の中でロボットが人間らしくなるという驚きを描くためには、ロボットがロボットらしく存在する外の世界をキチンと描いておかないとだめだと思い、結局は外も描くことになりました。
最初はもうちょっと簡単に、不思議なお店があって、主人公たちがいて、毎回不思議な体験をするぐらいの話のつもりだったんです。あとは演劇が昔から好きで、三谷幸喜さんとかも大好きだったので、その影響もありますね。
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AA
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確かに『イヴの時間』とつながるところがありますね。『イヴの時間』もあのまま演劇に出来るのでないでしょうか。
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吉浦
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実はそれが夢なんです。
あとはワンシチュエーションだからこそ、一話ごとに出来るだけ違うことをした方が面白いじゃないですか。ミステリーの要素も出てきますし、恋愛的なドキドキな要素もあったり、もしくは、逆に最初からロボットと分かっている人がやってきてドタバタコメディーも作れる。出来る限りバラエティーに富んだ話を作ろうと、6パターンになりました。
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AA
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6パターンの話が出たのですけど、それを映画に仕立て直した時に、これまでのショートストーリーの『イヴの時間』とどういう違いがあるのですか?
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吉浦
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単純に6話を繋ぐだけでは劇場化する意味がないと思ったので、全体的に一つの物語として作り直した感じです。必要な情報を選択して、ある部分は切って、またつなぎの部分をシームレスになるように、新しいシーンを追加したり、場合によっては本編の中でも科白を少し変えたりとかです。
あとは全面的に撮影・編集・デジタルエフェクトをブラシアップしたりと、配信版のスケジュールではやり切れなかったことをこの機会にやるという…いわば決定版みたいな感じです。
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(c) 2009/2010 Yasuhiro YOSHIURA / DIRECTIONS, Inc.
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■ ドリ系は“オタク叩き”も少し意識
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AA
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作品は古典的なSFであり、同時にミステリーでもあります。物語の王道だと思います。古典的なスタイルを取りつつ新しさを盛り込んでいく発想はどこから来ていますか。
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吉浦
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仰るとおり僕は、ロボット三原則が出てきたり、巨大建造物の世界だったりと、いわゆる古典SFが昔から好きだったんです。そして古典SF的な要素を正面から描くアニメは、実は思ったほど存在しないのかもしれない、常々そう思っていたんですね。それで昔からやりたいなと思っていたんです。
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AA
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ロボットについていえば、作品の中でナギさんたちは、アンドロイドも人間らしくあるように考えているのかと思えましたが。
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吉浦
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必ずしも「人間らしく」というわけでないんですが…。あの社会は、ロボットを少しでも擬人化してしまうのは恥ずかしいことだという極端な価値観が蔓延している世界です。ロボットはステレオタイプなロボットらしくあらねばならない、ということですね。
でもロボットは別に人間になりたいわけでも人間の権利を奪おうとしているわけでもなくて、ただ人間のために尽くしたいだけなんです。人間と同一視する必要はない、ただ違う存在として当たり前に認める、このスタンスが最も自然だと思います。
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AA
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あれを見ながらあまりロボットと人間が仲良くし過ぎると、ロボットは結局年を取らないし、やはりそこで混乱が起きるんじゃないかと思いました。倫理委員会には正しい側面もあるかなと感じました。
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吉浦
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もちろん、倫理委員会については、「これはこれで一理あるよな」と常に書いていました。ただ主張内容はどうあれ、倫理委会はロボットと過度に接するのはかっこ悪いという風潮をあおって、あのような状況を情報操作で作り出している一面があります。そのやり方は不健全だと思いますね。
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AA
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ロボットに入れ込んでいるドリ系と言われている人と、現代のオタクというのは重なるものなのかなとも思いました。
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吉浦
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それは少し意識しました。でも「ロボットに人間らしさを見出す」というのは、それだけで多種多様な状況があるはずなんですよね。
例えば着せ替え人形にして、かわいい服を着せて一緒に腕を組んで歩く人もいれば、一方で独居老人が話す相手がいなくて、それで心の支えにする場合もあるんです。けれども、ドリ系という言葉は、そういった様々な状況をひとくくりにまとめちゃう言葉なんだと思います。画一的なネガティブイメージを押し付けて。
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(c) 2009/2010 Yasuhiro YOSHIURA / DIRECTIONS, Inc.
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AA
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不思議だなと思ったのですが、あれは日本でいいんですか。
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吉浦
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まあ、だいたい日本ですね。
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AA
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時代はいつですか?
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吉浦
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それに関してはできるだけ設定していないんです。新聞とかテレビはかなり細かく作っているんですけれども、日付だけは絶対に書かないようにしています。遠い未来にし過ぎると日常生活における未来的ガジェットの演出が難しくなるので、日常風景はちょっとした先の未来ぐらいのつもりで描いていますね。
ただ、アンドロイド技術がその“ちょっとした未来”に実用化されるかというと、これはもう無理だなと思うしかないので、具体的な年代は設定しない方が無難だと思いました。
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AA
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まさにそこのところで、非常に科学が進んでいるんですけど、風景は現在の日常から借用されているところがあります。
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吉浦
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未来的な風景をどこまでやるか最初は悩んだんです。いまは2010年ですけど、車や道路といったものは一昔前に予想された未来には程遠いですが、情報技術だけは昔の人の予想の10倍ぐらい先をいっている。それをまとめると「ハードはあまり変わらないけど、ソフトがすごく進歩している」ということが近未来描写の前提なります。その結果、自宅や学校はあのくらいの日常風景になりました。
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AA
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確かにインターネットなんて想像もしなかったけど、ごくごく日常にありますね。
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吉浦
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逆にまだ空飛ぶ車なんてないですからね。だからリアル感は気を使いましたね。学校を描くにしても、例えば黒板が電子モニターになっていて、机に1個ずつ無線LANの中継機がある以外はそこまで変えていません。
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(c) 2009/2010 Yasuhiro YOSHIURA / DIRECTIONS, Inc.
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| ■ 少数精鋭の制作体制 かなり無理をした |
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AA
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話の展開からパート2があるのかなと思っていますが、それは今から織り込んでいると理解してもいいのですか。
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吉浦
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劇場版をやるにあたってセカンドシーズンの余地を残しつつも、劇場版を見た時に一つの物語としての完結感は出したいと考えました。
将来的にはもちろんセカンドシーズンも考えていますが、今回少人数で6本をやってみて、このまま続けるのはもう無理だなと思ったんです。複数のチームでローテーションを組むのではなく、全話数を同一のチームで作っていったのですが、やはりシリーズものをやるには少し無理がありましたね。
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AA
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実際に何人ぐらいで作られているものなのですか。
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吉浦
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作画に関しては、作画監督以外はフリーのアニメーターの方にお願いしています。1話制作時で6人、最終話だと9人に増えました。
動画、仕上げは動画会社や仕上げ会社にお願いしているので、そこは普通のアニメ会社と一緒です。それ以外の固定メンバーは少人数ですね。監督、作画監督兼キャラクターデザイン、各種デザイン兼助監督、美術監督の4人です。一所にコンパクトに集まっているので、作業範囲は実際にはゆるやかに共有しています。
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AA
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それで2カ月で1本できてしまうというのも凄いですね。
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吉浦
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ただ、3話と4話の間で5カ月空いてしまったので、間に合わなかったとも言えます。
いま考えれば2ヶ月に一本は無理で当然なんですが、作り始めた当初は僕もアニメ制作に関する知識が乏しかったので、無謀にも出来るんじゃないかなと思っていました。
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AA
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今回をファーストシーズンとして、今回の話は全体の物語のどのぐらいにあたりますか。
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吉浦
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実際半分ぐらいですね。最初は12、13本で考えていたんです。それが途中で「さすがに1クールは無理だろう」ということになり、まずは最初の6本だけを作ろうとスタートしました。もちろん残りの話の構想もあります。例えば4話で出てきたカヨちゃんの話とか、まあ倫理委員会とも本格的にはまだ絡んでいませんし。
ただ、これもいつ作るのかとよく言われるんですけれども、せめてもう少し制作態勢を整えて、せめて月に1本ぐらいの間隔で配信できるぐらいの体制は整えてからと思っています。
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