ロシアの心を日本で再現 映画『チェブラーシカ』
            中村誠監督インタビュー その1


■ 中村 誠(なかむら まこと) 

■ 『チェブラーシカ』 

「チェブラーシカ」は、絶大な人気を誇るロシアの国民的映画だ。ロシアで有名な児童文学作家 エドゥアルド・ウスペンスキーの原作を、人形アニメーションの巨匠ロマン・カチャーノフ監督が映像化したパペットアニメーションである。
その魅力に惚れ込んだ日本人スタッフ、中村誠監督らの手で、27年ぶり再びパペットアニメーションとして3話の新作(1話目は旧作のリメイク)を生み出された。
オレンジの木箱に入って送られてきた茶色くて、耳は大きいのに尻尾は短い不思議ないきものチェブラーシカは、ひとりぼっちのワニのゲーナと友達になる。
映画は心優しい二人とたくさんの仲間との出会いの中で繰り広げれられる心温まる物語である。ロシアの心を現代の日本にて再現したのが見どころだ。12月18日からの日本公開は大人気絵本シリーズ「くまのがっこう」との2本立てとなった。


   映画「チェブラーシカ」「くまのがっこう 〜ジャッキーとケイティ〜」 公式サイト 
    http://www.cheb-kuma.com/
   2010年12月18日(土)全国東宝系ロードショー


 ■ 作品との距離感がうまくいきました

アニメアニメ
(以下AA)

『チェブラーシカ』の監督を引き受けたきっかけから教えていただけますか。

中村 誠監督
(以下敬略)

今回のエグゼクティブプロデューサーが、2001年にオリジナルの映画が日本で公開された時に、長いこと新作が作られていないことを知って、それで新作を作ろうと思ったんです。そこから今回の映画はスタートしています。僕が参加したのは2004年からです。

AA

監督の話が持ち込まれたときは、どう思われましたか。

中村

話すのが少し難しいのですが、だいぶフラットだったんです。2004年に監督をと言われた段階では、その時にはまだ、すごく好き、本当に大好きという熱量は持っていませんでした。
勿論2001年に日本で公開された時には観ました。かわいいなと思っていましたし、面白いなと思っていた。けれども逆に大きな熱量を持ってなかったからよかったという気がします。近づき過ぎてもいないし、完全に離れ切れてもいない、ニュートラルな状態でした。

AA

『チェブラーシカ』はまず原作があります。原作がある時に全く離れて違うものを作るのもありますし、あるいはとても忠実に作るのもあります。
今回は非常に忠実でありつつ新しい、ある意味離れ業なのですが、これはどうやって実現したのですか。

中村

客観的な距離があったので、最初の段階で冷静にどうしようかなと、かなり考えました。ロシアでは40年間ずっとみんなが好きで、昔作られた4作品を繰り返し観ているわけです。だからそこから離れることは出来ません。全く新しい方法論で、全部フルCGにすることはあり得ない。
そう考えると、オリジナルを忠実にやることは、まず1つの柱でありますよね。ただし技術的な制約で1969年には出来なかったこともやはりあります。

昔のものを忠実にやり、観た人には昔のまんまだねと思えるように作りつつ、でも気が付くと「あれ? いろいろ新しい」という、そこが狙い所だと考えました。

 ■ パペットアニメーションの魅力

AA


いまCGの話が出たのですが、あえてまたかなり難しい技術であるストップモーションアニメーション(パペットアニメーション)を選んだ理由は何ですか。
たぶん今の技術から考えるといかにもパペットで作ったかのように見えるCGも可能だと思います。

中村

難しいですね。言葉を選びますけど、CGでパペットっぽくすることは出来ると思うんです。でも、パペットアニメーションの魅力が何かを考えると、それは本当にそこにパペットがあることだと思います。
いまはセルを使ってないですが、あえてセルアニメという言い方しますが、手描きのセルアニメ、そしてCG、いずれも何もない空間に仮想のものを描いているわけです。そうではなくてパペットは本当にあるものに命を吹き込むというところで圧倒的に違うと思います。これはどちらがいい、悪いでなくてですね。

僕は小さい子供のころに人形アニメを観た時にすごく不安感とか、怖いという印象を覚えたんです。

AA

動かないはずのものが、動きますね。

中村

手描きのアニメやCGには動かないはずのものが動くみたいな恐怖感はないわけですよね。それは前提としてみんな画面の向こうのものだと思っている。だけどパペットアニメはそうではなくて、本当にあるものが、まるで生きているかのように動きます。それはCGではあり得ないです。

AA

先程、30年たったら出来ることも言われました。逆に変わったのはどういう部分ですか。

中村

技術力が圧倒的に変わっています。カメラで言えばいまのものは映り過ぎます。昔だったらたぶん映らないもの、曖昧になる部分がデジタルカメラのスペックでは何でも映ります。それを昔ながらの雰囲気にするのは大変ですよね。


(C)2010 Cheburashka Movie Partners /Cheburashka Project

■ 言語が違うから出来ることも


AA


チェブラーシカの人形を見ても、昔の部分と今の人形、ほとんど一緒に見えます。時代を感じさせません。これはどのように発掘されたんですか。

中村

韓国のスタッフが頑張りました。昔のチェブラーシカは素材からして、1話、2話、3話、4話と全部違うんです。造形も変わっているし、素材もたぶん変わっています。新しく作るに当たっては、最大公約数的にみんながチェブラーシカってこうだよねと思っているラインをまず見つけて、韓国のスタジオでオリジナルを見ながら考えました。
チェブラーシカの毛並みを出すのにも、既成のものを買ってきて、それに色を染めて、けば立たせるために専用のブラシを作ってと、ゲーナだったらワニだから怖い存在だけど、あんまり怖くならないように素材はこういうのを使おうとしました。

AA

韓国のスタジオの話が出たのですが、今回は原点がロシアにあり、日本で企画をして、撮影は韓国、この協業体制は大変だと思います。コミュニケーションは難しくなかったですか。

中村

みんな言葉が違うから大変ですよね。ロシアは時差もあるし、民族性もやっぱり基本は違います。だけれど逆に言葉が通じないからこそ言えることもあるんですよ。通訳というクッションが入りますから。

AA

嫌われずに(笑)。

中村

悪口とかじゃなくて、例えば日本人の役者に言葉であんまり恥ずかしくて言えないことでも、通訳が入ると言えたりするんですよ。「ゲーナはもっとチェブラーシカに対して愛情を持って接しなきゃいけないんだよ」みたいなことですね。
言語の違いがクッションになってくれているので、それはやりやすい。だから一概に大変だったとばかりは言えない面はあります。まあ、大変だったんですけど(笑)。


(C)2010 Cheburashka Movie Partners /Cheburashka Project

■ チャップリンと『チェブラーシカ』の関係に続く

 
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