『アニメビジネスがわかる』著者 増田弘道さんインタビュー その2
                   今アニメビジネスはどうなっているのか?

 2. アニメビジネスは新しいモデルが必要になっている

アニメアニメ
(以下AA)


今のアニメ業界全体についてはどうお考えですか。多くの人は危なっかしいと感じていると思いますが。

増田弘道さん
(以下敬称略)

「やばい」といいながらも、この間(2007年上期)のDVDの売上もそうですけれど、下がっていない。音楽業界みたいにはっきり数字が下がってくればまた違うと思いますけどね。
音楽CDはかつての3割減です。1998年のピーク時に6000億ぐらいあった売上が4000億ぐらいになっちゃって、音楽パッケージビジネスは非常に厳しい状況です。

アニメ界はダメだというけれど、全体的な数字を見ると下がってないじゃないですか。エヴァが大ヒットし、来年夏は宮崎さんの映画があって、押井さんの映画もあったりしますね。
本にも書いたのですがメガヒットの牽引力って大きいですし、そういった作品が出続けている間は大丈夫だと思います。ただ、テレビアニメでずば抜けた作品が少なくて、ちょっと気になりますが。

AA
確かにジブリやガンダム、ポケモンの成功をみると、自分達もあれを取りたいと考えますよね。

増田

90年代はエヴァがあって、その余韻が覚めやらぬうちにポケモンがあって、やはりインパクト大きかったですよね。そして、さらに千と千尋の神隠しがありました。

アニメ業界の動向を探る目安としてパッケージの売上があるんですけれど、たぶん来年も下がらないじゃないかと思うんですよね。タイトルごとの数字は割れていますが、総体としては成長、あるいは現状維持だと思います。

AA

それを言うと、テレビ放映ではこの秋に放映枠が減りましたね。春も減るのでないかと言われていますが。

増田

アニメの放映数は1990年代後半から急激に伸びて、時々ちょっと踊り場みたいな時があるんですが、今でも増え続けています。
たぶん去年が最高だったと思います。今年は確かに減っているので、問題は来年どうなるかですね。

AA
CSや衛星も含めてこれだけ放送局が増えてしまって、インターネットでも配信したい、それを埋めるための引き合いは多いんだろうなという気はするんです。

増田

ビジネスモデルをどう考えるか、結局ウィンドウ論になってくると思うんですよね。
例えば果たして深夜アニメが本当にパッケージ(DVD)ビジネスにとって有効なのかとか。何をメインとしたビジネスモデルを組み立ているかという、ウィンドウ施策を考えなければならない時期なんだと思います。

いままで言えば、ゴールデンタイムの商品化権モデル、それと深夜アニメに見られるパッケージモデルの2つがありました。
けれど、少子化で商品化権ビジネスが厳しくなり、また、深夜アニメの地盤沈下でパッケージ・ビジネスもだんだん厳しくなってくるのであれば、どういうビジネスモデルがあるのか、それをそろそろ考えなければいけない時に入っていると思います。

AA
ウィンドウを考えるときインターネットとモバイルははずせなくなって来ていると思いますが。

増田

角川とGDHがYouTubeとやるじゃないですか、もし本当にYouTubeに出すことでアニメが売れ、かつ広告収入が入って来たら画期的ですよね。

そうすると今の深夜アニメのビジネスモデルと反対ですね。深夜アニメはお金が出て行くだけです。それが逆に広告がついてお金が入ってくる可能性が出て来た。
そんなに簡単ではないでしょうが、もし成功例が出てくるようなことがあれば、みなさん真剣に考えるようになるのでないかと思います。

AA
ただ、いまだと皆さんネットも携帯も興味はあるけれど、それだけでやると利益が回収出来ないですよね。

増田

全然ペイしない。確かにネットはまだ売上は少ないですよね。

ブロードバンドもそうですし、携帯もまだまだ少ない。急激に伸びているとはいえ収益のポートフォリオに入って来るのはもう少し時間がかかるでしょうね。

AA
そうするとほかの方法もありますか?

増田

やっぱり力をいれなければならないのは海外なんじゃないかと思います。国内は少子化どころか人口減です。確実に国内マーケットは頭打ちになります。
人口減はアニメ産業のレベルで何とか出来る問題ではありませんので、自助努力としては海外ビジネスを推し進めるのが不可欠だと思います。

また先程いったようにテレビ放送に対する考え方も見直さなければと思いますが、これだけ収益のウィンドウが増えてきたので、全体的な収益のポートフォリオをどう組み立てていくかという、ウィンドウ論が、これからキーになると思います。

AA

流通の問題もありますか?

増田

アニメ業界の課題としては流通のことも考えていかなければ、いけないと思います。
『アニメビジネスがわかる』のなかで、全体のグロスとネットという考え方を示したのはどういうことかと言うと、アニメのグロス市場(小売市場)は大きいんですけれど、ネット市場(製作・制作市場)は少ない。つまり全体の売上に比べてアニメ業界に入ってくるお金が少ないということです。

要するアニメ産業というのは流通益が大きいわけです。だから製作者としては本当はそこに入って行かないといけない。
自分たちでパッケージを売ったりとか、川下に向かっての方策を考えなければならないと思いまます。ただ、これは流通の力がないとダメですが。

AA
バンダイナムコグループがそうですよね。全部の事業を中に取り込むことで、全部の収益が手元に入る。
そう思うとアニメ業界の企業統合はまだまだ起こるのでないかと思えるのですが。


増田

いや起こるでしょうね。そのうちアメリカみたくアニメも映像コンテンツ企業の一部門という考え方になると思うんです。
すでに系列化がはじまってますが、上位10社は垂直統合されてゆくのではないかと思います。
アニメからメジャースタジオになったディズニーみたいな会社が出て来れば別ですけれど。アメリカでも唯一アニメ製作会社からメジャーになった会社はディズニーだけです。
ディズニーはアニメだけではなく、実写もやり、ディズニーランドもやりました。自社の配給網も持ちました。こういったビジョンを持たない限り、メジャースタジオにはなれません。

日本のアニメスタジオでそういった指向の会社は今のところ見当たらないですね。
まあ、アメリカでも、というか世界でもディズニーだけが為し得たことですからね。したがって、上からの垂直統合にならざるを得ないと思います。

アメリカのアニメ産業は3Dに移行したので実写とアニメの境目がなくなりました。でも日本は2Dが確立されているので、実写とはビジネス的な境目があります。
日本の2Dアニメは残るでしょうが、世界的には3Dが主流になります。日本では3Dの表現がまだ2Dに追いついていませんが、今後3Dが増えることでシームレスになってくると思います。
おそらく日本独自の2・5Dアニメが誕生するのではないでしょうか。3Dの演出は実写に近いので、制作的にはだんだん境目はなくなると思うんですよね。そこでまたアニメビジネスが変わると思います。

結局これから考えなければならないのは、「アニメにとっての最適表現は何か」ということだと思います。また、その先には「物語の最適表現は何か」というテーマがあるのではないかと思います。

              ■ 『アニメビジネスがわかる』の出版のきっかけ

                             
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