『RIDEBACK』高橋敦史監督インタビュー (2)
                 ライドバックの手は何のために付いているのか?
  
■ レースシーン演出のテクニックとは?
アニメアニメ
(以下AA)

メカが非常に魅力的なんですけれども、こちらもあまり全面に出すことなく、物語とうまくバランスを取っているなと思いました。

高橋監督
(以下高橋)

原作ありきです(笑)。ただ原作はあくまでもただの乗り物になっているのですが、アニメではFUEGOだけは少し特殊なものというアニメっぽい位置づけ(?)を足しています。
あとはいかにもお約束っぽい決めの絵はできるだけ外しています。できるだけ見慣れないものを見せていこうというコンセプトからですが、そこがそういうふうに見えるのかもしれません。
最近アメリカのテレビドラマとか、絵コンテ期間中『バトルスターギャラクティカ』とか、好きで見てたので、その辺の影響も大きいと思います。

AA

それはレースシーンにも反映されていますか? 相当力を入れているように見えました。

高橋

アニメはどうしてもカットとかシーンをきれいにつなげちゃうんですね。そういうのをわざと外して、コース上のあちこちに複数のカメラが置いてあって、それをどんどん切り替えて見せていくという構成にしました。
そのほうがレースらしくなる。コース上にいっぱいあるカメラがどんどん切り替わって、スイッチングしていくんです。作り手としてはちゃんとつながるのか不安になりますが、見てる人は意外と気にせず見てしまう。

例えばF1のレース中継なんかを見ていると、平気でイマジナリーラインなんて無視でカメラが切り替わっていくけど平気で見てしまう。右に向かって走ってたバイクが、全然違う場所のとんでもないところからフレームインしてきたりする。
特に2話はその辺を意識的にやってます。 。

AA

もうひとつ気になったのは、1話の最後などに見られる、要所、要所で動きをぱっと止める印象的なシーンです。

高橋

作品の企画段階から、普通のアニメーションよりは3Dを中心に使った新しい作品をというオーダーがありました。
そこで何か新しさというか、見慣れないものを作っていくにはどういうアプローチをしていけばいいのかを考えなくてはいけませんでした。

ただ具体的に真新しいCG技術があって、それを導入できるというわけではなかった。今ある技術の寄せ集めの中で何かできないか、というテーマでいくつか具体的な手法を考えました。この手法もそのひとつですね。
実際にはアニメの今までのお約束的文法をCGに置き換えただけだったりもしますが(笑)。途中で止めるというのはアニメの常とう手段ですから。

AA

そうですね。

高橋

そこをうまく3Dとの組み合わせられないかなと考えました。
『マトリックス』は、昔アニメでよくやっていた技術を実写で置き換えた。その凄さみたいなものがあった。じゃあ、そこでみんなが見慣れた『マトリックス』のタイムスライス的な表現を、もう1回3Dを使ってアニメに置き換えていったらどうなるだろう?というところからの発想です。
1話はいろいろと今までやってないことをやってみようと、試行錯誤とテスト的なところで進めました。うまくいかなかったものは削り落として、うまくいったのはできるだけ使っています。

AA

4話のヘリコプターの爆発シーンも、同じ感じですね。

高橋

そうですね。基本的にはアニメでよくやる止めのマルチスライド、3回パンや、ハーモニー処理、『ガンバの冒険』でお話の最後にノロイが立ち上がるところとか、『あしたのジョー』の時代から変わらないんですね。アニメの王道だとは思っています。
ただ逆に、その決めのカット以外はできるだけそういった手法を使わずにはずしておいて、見せ場にそこだけぽんと使うことで決められればいいかな、と。

AA

動き回っていたのに急にぱっと止まると、止まった場所も印象だし、逆に振り返ると、動いていた場所の動きもすごく頭に残るのかなと思いました。

高橋

1話は他にもいろいろと試しているんですけど、うまくいってないものはどんどん消えています。
例えば背景動画の回り込みでは、なじみがどうしても難しいところが出てしまいました。アニメの背景が立体的にじわっと動くというのは、どうにもセルアニメの中になじませるのは難しくて、そこは外しました。


(c)カサハラテツロー・小学館/「ライドバック」製作委員会

■ アイディアで3Dを見せるには
AA


非常に手をかけたテレビシリーズですね。

高橋

そうですね。これは美術監督の東地(和生)さんであるとか、総作画監督の田崎(聡)さんの職人さん的な技のおかげです。
基本的にCGには、今までみんなが見なかった、見慣れないものを作っていこうという共通理念があったんです。CGという技術は一般化した途端に、みんな見なくなるんですよ。 セルアニメとは根本的にそこの一線が違っていて……どんなに下手でも、人は絵が動いていると見るんですよね。
ところが3Dにした途端、どんなに頑張っても、コンピューターがうまくやっているんだろうという思考が働いて観なくなる。頑張って観ようという意思が薄らいでしまう、そのバランスをどう取っていくかという部分が難しいですね。

AA

3Dだと、どんどん技術が上がることを期待しているから、見ている方の要求はどんどん高くなっていきますよね

高橋

ピクサーみたいな最先端で「3Dにもまだこんなことが」と常に新しい技術開発を提示している会社でないと、それを売りに最前線を走っていくのはどうしても難しい。
基本テレビシリーズでまだ誰もやったことの無い技術を試すのは不可能に近い。

スピンオフ技術とアイディア勝負で、実は見慣れたCG技術の寄せ集めではあるのだけれど、映像的にみんなが見慣れていないものは何だろうという部分を考えました。1話はかなりそこで時間がかかっちゃったところがあるんです。

AA
一方で、2Dと3Dのなじみはとてもいいですよね。

高橋

技術の進化と撮影監督の斉藤(寛)さんの持っている力で押していってもらってます(笑)。
現場機材の精度の向上もあります。プリンターの精度とかスキャナーの精度が上がっているので、3Dのものをプリントアウトしてその上に絵を描いても、昔ほどはずれない。

とはいってもやっぱりアナログとデジタルのズレはありますからそこは撮影スタッフの手作業に頼ってます。精度的にはちょっとぎりぎりなんです。
今ある技術をみんなで人海戦術的に頑張って駆使しています。それはマッドハウスが撮影から仕上げから全部そろっているからこそできるという特殊な環境によるところが大きいです。

■ ライドバックの手は何のために付いているのか?
AA

ライドバック自体についてもう少し伺っていいですか。

高橋

ライドバックは、原作だと対比的にもっと人が小さいんですよね。でもそれだと、人が動き回ってもあまり判らないですよね。なので、どうせ描くんだったら人をでかく、ライドバックを小さくしようとしました。

AA

そうですね、だいぶ比率が変わっていますよね。

高橋

基本的にはライドバックの足を短くしているんですけど。その辺のバランスは今までやってきた経験的なところが活きているのかなと思います。

AA
最後になりますが作品の見どころはどこですか?

高橋

ライドバックに関して、最初の企画のときに言ったのは「ライドバックの手は何のために付いているんだ」ってことでした。
これこそテーマじゃないかと思ったんですが、その辺はあっさり却下されてしまったのでこっそり入れました。

女の子がモラトリアムの中で、人生に行き詰まってもがいている時に、もがいて何かをつかもうとするんじゃないか? とか、主人公が障害を乗り越えるときはできるだけライドバックの腕を使っているのですが、そこに気づいてもらえたらうれしいです(笑)。うまくいっているのかどうかは賭けですが。
「ライドバックの手は何のために付いているのか」は個人的に大きなテーマでした。

AA

それは楽しみですね。本日はとてもいいお話をありがとうございました。



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『ライドバック』

公式サイト http://www.rideback-anime.jp

【メインスタッフ】

原作: カサハラテツロー(小学館「IKKI COMIX」刊)
監督: 高橋敦史
 シリーズ構成・脚本: 高屋敷英夫/飯塚 健 
キャラクターデザイン・総作画監督: 田? 聡
美術監督: 東地和生
 色彩設計: 橋本 賢
 VFXスーパーバイザー: 加藤道哉
 CGI監督: 設楽友久
撮影監督: 斉藤 寛
 編集: 瀬山武司
 音楽: 和田貴史
 音響監督: 中嶋聡彦
 アニメーション制作: マッドハウス
製作: 「ライドバック」製作委員会

 (c)カサハラテツロー・小学館/「ライドバック」製作委員会

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