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「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」の誕生秘話 江崎慎平監督×脚本家・岸本卓が語る

スマホから生まれたひっぱりハンティングRPG『モンスターストライク』。現在は世界累計利用者数3,500万人を突破し、依然ゲーム業界の台風の目となっているが、アニメ化を発表したさいもアニメ業界をにぎわせた。

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「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」の誕生秘話 江崎慎平監督×脚本家・岸本卓が語る
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――本作はレンに焦点が当たっていてそこから「喪失感」や「仲間」というものがあぶり出されますね。特に「仲間」という部分はキャッチコピーにもありますし、かなり大切に描かれたのではないでしょうか。

江崎
仲間を描きたかった、というよりは「結果そうなった」と思っています。何しろ最初はいっぱい要素があって何の映画か見出しにくい状態だった。そこに何かひとつ、感情に筋が通るようなものがあれば成立するだろうと。そこでレンのお父さんがいなくなった出来事をピックアップして、レンの抱えた闇にしたんです。仲間がその闇から救うということで「仲間」が浮かび上がってくるだろうなと。

岸本
ここは紆余曲折ありましたね。一番最初に書いた時は影月明の物語だったんです。明は仲間の中でも後から加わったので、疎外感を感じていた。その明が、過去への冒険を通じて居場所と仲間を再確認する、と。これは完全に「仲間の物語」として成立していたんです。ただ物語の全体像が見えてきた段階で、明ではなく、やっぱり主人公はレンで行くべきなのではないか、という意見が出てきた。確かにそうなんですよね。はじまりの物語として過去は描かないといけない。じゃあ小学生のレンを主人公にしましょう。そこに明もやってくるのはどうかと。

――本作でレンがそこで主人公になった。

岸本
彼はお父さんがいなくて、わがままだったり無鉄砲だったりするんだけど実は……という主人公です。仲間の存在が助けになり、成長していく。その様子を明も見ている、と。ここまでで筋書きは整ったんですけど、ただ、ぼくは最初に明で物語を書いていたのでどうしても明に思い入れがあった。そこに江崎さんが入ってきてくれて「レンの心の葛藤が弱い」とか、まためんどくさいことを言い始めて(笑)。

――あははは(笑)。

岸本
ぼくは本当の意味で「明からレンへの方向転換」をしきれなかった、そこを江崎さんがグーッと強くやってくれた。特に後半のゴルフ場のシーンでそれが結実するんですけど、ここは物語を客観的に見てくれた江崎さんのおかげですね。ぼくも「これでやっと物語に背骨が通った」と実感しました。

江崎
やっぱり脚本打ち合わせって重ねていくと麻痺して来ちゃうんですよね。ぼくも途中から入って客観的に見られましたけど、やっぱり麻痺してるなと感じた時がありました。だから岸本さんに感情ベースでもう一回書き直してもらって。

岸本
そう、準決定稿で(笑)。準決定稿というのは本来「もうだいだいOK。あとは小直し」というものなんですよ。そのつもりで打ち合わせ前に提出して、あとは決定稿になるだけ、さっさと飲みに行こうぜと会議室のドアを開けたら、それぞれのシーンをカードにしたものが壁一面に貼られていたんです。「え、なになに? 何がはじまるの?」と思ってたら、江崎さんが「もう一回考え直したい」と言ってシーン毎の、レンの感情の流れを全部洗い直したんです。「終わらせる気、あるのかな」って思いましたよ(笑)。でもそこで最後にもう一段階上がった、という感じです。今思えばあれがあって本当によかった。

――レンと仲間たちのやりとりは心を揺さぶられました。そんな経緯があったのですね。

岸本
江崎さんのおかげですよ。


――本作は映像的にも非常にリッチで、瑞々しい画面が続きます。

江崎
映像のクオリティーそのものについてはキャラクターデザインの金子志津枝さんや、"ととにゃん"という美術スタジオの美術監督の加藤浩さんと若手の坂上裕文さん、そして美監補佐の船隠雄貴さんたち。また、色彩設計の大西峰代さんや、各パートの演出、作監、作画の方々、3Dスタッフ、撮影さん等々多くの方たちの粘りによって達成できたものだと思っています。
演出上で狙ったのは、光と影をふんだんに取り入れるということです。本編の大部分は子ども時代を描いていますので、その表現として、光と影の設計をキッチリとやりました。簡単に言うとレイアウトの段階でパースがゆるかったりおかしい部分があっても、光と影さえちゃんと設計しておけば画面はリッチになるんです。逆(光と影の設計がユルく、レイアウトがキッチリしている)はありえないんですよ。ここは心がけました。

岸本
子ども時代はキラキラした思い出、ということですか?

江崎
キラキラもしているし、闇もまた深いということですね。単に美しくしたわけではありません。

――他にこだわった部分はありますか?

江崎
そうですね、カメラが演技するんじゃなくて、できるかぎりキャラクターに演技させようと思っていました。つまりカメラワークではなく、人物の動きをより見せようと考えて。


――中盤、『スタンド・バイ・ミー』のように線路を歩いている時に若葉皆実がぴょんっと飛んで体を一回転させるんですよね。あそこや山道を下る時に小さく段差をピョンと飛ぶなどの細かい仕草(作画)が本当にすばらしかったです。

江崎
そのシーンに関しては徳丸昌大くんという若い原画マンの仕事です。ライデンフィルムにいる有望な若手ですね。そういう意味ではぼくも今まで年下のスタッフとやる機会はあまりありませんでしたけど、「ついに年下の子たちを見る立場になったんだ」と実感した現場でした。元気なアニメーターもチラホラと出てきているんだなあとうれしくなりましたね。

――ありがとうございます。最後におふたりから「ここは注目してほしい」というところをうかがって締めくくりたいと思います。

江崎
あるポイントで歌を歌うんですけど、この歌や歌うシーンにはいろいろと思いを込めました。ぜひ注目してもらいたいですね。

岸本
ぼくは北大路欣也さんが演じるおじさんですね。ぼくが体験した自転車旅行で実際にあったことなんです。境内でテントを張ってたら神社の人が来て、家に招き入れてご飯を食べさせてくれました。「だからどうした」という経験なんだけど、すごく心に残っていて。この映画でもそんなに大きな意味を持たせてはいないんですけど、見終わっても心に残っている、という風になってくれたらいいなあと思っています。

――ありがとうございました!

『モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ』
12月10日(土) 新宿ピカデリー他 全国ロードショー
配給:ワーナー・ブラザース映画
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《細川洋平》
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