高瀬司(Merca)のアニメ時評宣言 第10回 新海誠「君の名は。」の句点はモンスターボールである―シン・ゴジラ、Ingress、電脳コイル 3ページ目 | アニメ!アニメ!

高瀬司(Merca)のアニメ時評宣言 第10回 新海誠「君の名は。」の句点はモンスターボールである―シン・ゴジラ、Ingress、電脳コイル

高瀬司の月一連載です。様々なアニメを取り上げて、バッサバッサ論評します。今回は新海誠監督の最新作『君の名は。』を、『シン・ゴジラ』や『ポケモンGO』などと関連づけて論じています。

連載
注目記事
■ 『ポケモンGO』と『Ingress』

少々長くなるが、前提となる知識をおさらいする。
『ポケモンGO』は任天堂の世界的人気ゲーム『ポケットモンスター』のIPを活用し、Googleの社内ベンチャーであったナイアンティックと、任天堂が出資する株式会社ポケモンとが共同開発した位置情報ゲームである。2016年7月6日にアメリカなどで先行配信され熱狂とともに受け入れられたのち、7月22日に日本でもサービスが開始された。プレイヤーは現実世界を歩きまわりながら、スマートフォン越しに、特定の場所と紐づいた情報空間上の「ポケストップ」と呼ばれる拠点でアイテムを補充しつつ、遭遇したポケモンをモンスターボールを投げ捕獲し、育成・バトルしていく。

位置情報ゲームと言えば、2000年はガラケー時代の『クリックトリップ』や『誰でもスパイ気分』にはじまり、2003年の『コロニーな生活』を経て、ことにGPSやジャイロセンサー、Google Mapを搭載したスマートフォン時代に入り、2009年のARアプリ「セカイカメラ」やSNS「Foursquare」、そしてナイアンティックが開発し2013年にサービス開始したSF仕立ての位置情報ゲーム『Ingress』と急速な成熟を見せたジャンルの一つである。このとき、全世界に点在するポケストップについての膨大な位置情報というのが、その『Ingress』における「ポータル」に由来していることは無視できない。このポータルは、現実世界における歴史的・文化的な場所やモニュメントが主な対象とされているが、これらはゲームプレイを楽しむなかで自然と動機づけされる、ユーザーによる自発的な申請情報をもとに運営側が承認・登録したもので、こうしたヒューマンコンピュテーション的手法によってはじめて、開発サイドだけでは到底不可能な世界規模での情報収集が実現されている。『ポケモンGO』のポケストップは、『Ingress』ユーザーによって培われたその膨大なデータベースを再利用したものとなる。

プレイ経験のない方には、両者の関係性にわかりづらい面があるかもしれないが、さしあたっては最低限、『ポケモンGO』が『Ingress』のポータルを土台に成立しており、また現実世界のうえにポケモンを重ね見るというAR要素を含んでいるという点さえ押さえてもらえれば十分だ。ここでアニメ論の文脈から参照したくなるのが『電脳コイル』である。
《高瀬司》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめの記事

特集