『屍者の帝国』からスタート 山本幸治チーフプロデユーサーが「Project Itoh」のプロジェクトを語る 2ページ目 | アニメ!アニメ!

『屍者の帝国』からスタート 山本幸治チーフプロデユーサーが「Project Itoh」のプロジェクトを語る

夭折のSF作家・伊藤計劃。その作品が相次いでアニメ化された。プロジェクトのチーフプロデユーサーを務めるツインエンジン代表取締役の山本幸治氏に、伊藤計劃の魅力と映像化について伺った。

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■ 3作品同時企画・制作の驚きとその理由

AA
SF小説は読まれるほうなのですか。伊藤計劃を超えても、ハードSFという選択がすごいなと思っています。そこは実は未開拓の原作の宝庫だと思えます。そのなかで「Project Itoh」が出てきた気がしました。

山本
むしろあまり読んでいません。ただSFはSFの論客が納得するような新しさを求める流れがあって、とても奥行のあるジャンルだと思っています。たぶんアニメ業界のプロデューサーは知っている人はよく知っていて、僕なんかより詳しい人はたくさん居ます。
カジュアルな本読みとして、僕が伊藤計劃に出会った最初は『ハーモニー』だったんです。SFを読むつもりで手に取ったわけではなくジャケ買いしました。その時はもう亡くなられているという情報は知っていました。

AA
プロデューサーから見た伊藤計劃の作品の魅力はどこにあります? 

山本
魅力を知ったのは、たぶん僕が最初に『ハーモニー』に引き込まれたことが大きいかもしれません。『ハーモニー』のよさは、キャラの負っている背景となる同調圧力、これに強い反発をして人を巻き込んで死のうとまでするキャラクターと優し過ぎる社会です。その強い構造ですね。テーマは深淵だけれども、手前にある同調圧力はすごくピンと来る話です。優し過ぎる社会、同時に時代がだんだん相互監視社会になってく、SFの先見性がとてもバランスよく入っています。
企画者の目線、監督の目線で企画の構成がバランスよく入っています。そこが作品の魅力です。映像化するのにやりやすいところですね。
もちろん映像をどうするか、SF世界の表現が難しかったり、作画要求度が高かったり、アニメとしての難しさはあるんだけれども、企画としては迷いませんでした。『虐殺器官』『ハーモニー』はとても物語の型とテーマとキャラの話が見えていたので、映画化としてはシンプルな物語が作れると確信はありました。逆に『屍者の帝国』は、2作品に比べ筋が込み入っているので、これを映画として本当にうまくできるかと映像化は迷いました。

AA
ビジネス的なことも伺わせてください。やはり今回の驚きは3作同時映画化です。プロジェクトとしても面白いし、アイキャッチにもなります。それは分かるのですが、通常だったら1年で1本といったかたちを考えると思います。今回の発想はどこから出てきたのですか。

山本
もともと3部作ではありませんし、1本目をやってすごく興業成績がよかったとして、そこから2本目をやろうとしても結局ゼロからの勝負になると思うんです。ですから最初から一本やって、様子を見てみようという発想はなかったんです。
企画として『ハーモニー』は、僕個人としては内心はやるつもりが最初からありました。一方で『ハーモニー』を見て引き込まれた人が『虐殺器官』を見ないというのは、たぶんないなと思っていました。同時に『虐殺器官』を読んで面白いと思った人は、絶対に『ハーモニー』も見ると思うんです。
どちらかで様子見をするような危険性があるのなら、そもそも手は出さないというのが正解だと思うんです。やるのなら両方をやって企画を大きくしたほうがインパクトも話題性も取れると思いました。


『屍者の帝国』 (C)Project Itoh & Toh EnJoe / THE EMPIRE OF CORPSES.

《animeanime》
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