作画とCGの境目はどこ? 神風動画がレクチャー あにつく2015レポート | アニメ!アニメ!

作画とCGの境目はどこ? 神風動画がレクチャー あにつく2015レポート

9月19日開催の「あにつく2015」業界向けセッション3本目、神風動画による「どこまでが作画でどこまでをCGで分けてるのかサミット2015」のレポート。

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昨今のアニメでは2D作画(以下、作画)と3DCG(以下、CG)がひとつの作品のなかで共存することが当たり前になって久しい。では、作画とCGはひとつの作品のなかで、どのような基準で使い分けられているのだろうか。
そんな現場の知られざる感覚に迫るのが、9月19日3本目の業界向けセッション「どこまでが作画でどこまでをCGで分けてるのかサミット2015」だ。

講師を担当するのは、妥協なきCG表現でアニメ業界に刺激を与えつづけてきたスタジオ・神風動画に所属するふたりのディレクター、水野貴信氏と吉邊尚希氏。
水野氏は『The Last Piece』シリーズをはじめ、理化学研究所のX線レーザー施設「SACLA」PRアニメ『未来光子 播磨サクラ』や、最近ではドワンゴとスタジオカラーの共同プロジェクト『日本アニメ(ーター)見本市』の第16話『月影のトキオ』を手がけた気鋭の監督、吉邊氏はTVアニメ『ジョジョの奇妙な冒険』第2部・第3部・第3部エジプト編のOPや、直近では『ガッチャマン クラウズ インサイト』のOP監督として知られる若手作家だ。

今回は水野氏による『月影のトキオ』『未来光子 播磨サクラ』、吉邊氏による『ジョジョ』シリーズOPを素材に、2D作画と3DCGの使い分けの法則に迫った。

まずはじめに行われたのが『月影のトキオ』の分析だ。
短編アニメプロジェクト『アニメ(ーター)見本市』は見本市というコンセプトから、多様な表現を盛り込むことが求められる。そのため主人公のトキオの造形には普段着、戦闘スーツ、タキシードなどいくつかのパターンが用意された。そのうち、普段着姿の17カットはすべてCG、戦闘スーツ姿の14カットも同じくCG、対してタキシード姿の3カットはすべて作画で描いたという。
また、主人公以外ではヒロインの世津子でCGと作画を混在させていたが、登場回数の少ないキャラクターはほぼ作画によるものだった。ほかにも、アクションの大きさや、造形の複雑さなども含めてリスト化してみたが、最もCGと相関関係が高いのは登場頻度であった。

その一方で、吉邊氏からは水野氏とは異なる採用基準が語られた。
『ジョジョの奇妙な冒険』第3部のOPは、当初からエジプト編まで含めた2本を制作することが決まっていたため、メインキャラクターはいずれもCG、エジプト編から登場するイギーとそのスタンドのみ作画のみで描かれている。この点では水野氏と近い発想からの選択だ。
しかし、『ジョジョの奇妙な冒険』第2部のOPでは、メインキャラクターがカットごとに作画とCGが使い分けられ、そのうえ1カットしか出てこないキャラクターも作画である場合とCGである場合が混在していた。

この理由に関して吉邊氏は、登場回数ではなく、求める表現やルックを優先して選んでいると語る。たとえば花京院のスタンド「ハイエロファントグリーン」のような、体に筋状の光る模様が走るようなデザインは、作画で表現することがむずかしいCGならではのものだ。また承太郎などのキャラクターも、アニメよりもイラストレーションに寄せた情報量の多いルックにしたかったため、作画ではなくCGで制作したという。
逆に第2部の柱の男のカットのような線のタッチを活かした表現は、CGではむずかしい作画ならではのもの。同じく第2部のキャラクターも、シルエットで動いている箇所は作画で制作したという。シルエットは情報量が少ないため作画でも描きやすく、むしろフォルムだけで雰囲気を出すには作画のほうがコントロールしやすいからだ。
そのためイギーやそのスタンドも、作画でありながら平面的なセル調ではなく、CGに負けない情報量が出せるよう工夫したという。
このようにシーンごとに求めるルックを優先して、作画かCGかを選んでいるということであった。

つづけて『ガッチャマン クラウズ インサイト』OPで、舞台となった立川にキャラクターの等身大パネルを置いて「全天球カメラ」で撮影したメイキングを紹介し、吉邊氏の発表は締めくくられた。

次に再び水野氏の発表に戻り、今度は『未来光子 播磨サクラ』をもとに解説が行われた。
この作品に関しても、キャラクターごとに登場カット数と、描かれたのが作画かCGかといった情報をリスト化。それによると、メインキャラのサクラはすべてCG、1カットのみのキャラクターは作画と、『月影のトキオ』と同じ基準で使い分けられていることがわかった。
なお本作品に関しては、コンセプトが80年代アニメのテイストを再現するというものだったため、CG技術を使い当時のセルアニメの質感をどのように作り出したか、手描き風のキャラクターやその表情はモデリングによってどのように表現可能なのかといった問題も、豊富な具体例をもとに解説された。

最後のまとめではお二人それぞれの結論を発表。
水野氏の場合は「登場カット率12%以上はCG」と具体的な数字を提示された。対して吉邊氏は「比率ではよくわからない・・・?」と、比率ではなく質感やルックによって選択していると説明した。そのうえで、水野氏はCGで作画に寄せる工夫を凝らし、吉邊氏はCGによって作画では描けないルックを目指しているとまとめられた。
ピクサー流のデフォルメされたキャラクターCGをはじめ、セルルックCGやフォトリアルCGと、CGによる表現方法は昨今、多様な方向へ広がりを見せている。その最前線でどのような挑戦がなされ、どのような可能性が開かれつつあるかが垣間見られるセッションであった。

[アニメ!アニメ!ビズ/www.animeanime.bizより転載記事]
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