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『ガンダム Gのレコンギスタ』における「線」を巡る冒険:吉田健一氏、脇顯太朗氏が語る 第2回

『ガンダム Gのレコンギスタ』における「線」を巡る冒険:吉田健一氏、脇顯太朗氏が語る 第2回 藤津亮太氏による全4回の連載。

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■ラフな線が生み出す動きの雰囲気

吉田
『キルラキル』のすしお君の線とか、その前の『パンティー&ストッキングwithガーターベルト』の錦織敦史君の線って、カートゥーンぽいところがあるので、それと合っていたのかなと。僕はそっちじゃなくて、『カムイの剣』などをやられた野田卓雄さんみたいな方向だと思っているんですが。

――かなりはっきりした抑揚のニュアンスがあるということですよね。

吉田
あの、線って、ニュアンスが大事なんです。スッと始まって、スッと抜ける時の“入り”と“抜き”で線が細くなるところとか。例えば、肩の前側から背中側に向けて線があるとしますよね、この線が、奥にいくにつれて線が曲がりながらスッと細くなって、肩の稜線につながっていると、それが立体感、体の厚みを感じさせてくれるんです。
ただこの10年ぐらい、そういうことがあまり教えられなくなってきているな……という実感があります。線が細くならないままつながると、「立体感を感じさせる絵」じゃなくて「単なる線の繋がり」止まりなんですよね。なので時々、動画の人にちょっと厳しい言い方することあるんですよ。「僕がこういう線を引いたら、どういうふうに動画の線を引く?」って聞くと、たいがい「キレイに細く整理して引く」ということになるんです。だから「でも動画って、原画の絵のニュアンスも仕事のうちだよね。絵のニュアンスを拾わずに、原画を描き直しているなら、君は作画監督じゃん」って話をすることになる。

――原画のニュアンスのある線を拾わないで清書すると、動画は違う絵になってしまいますよね。

吉田
実際、線のニュアンスを何故拾わなくちゃいけないかといえば、線のニュアンスってさっき話した立体感や、動きにすごく関わっているんですよ。たとえば『G-レコ』第1話でG-セルフがレクテンとやりあうところ。線がピッて引かれてるのと、ワッて引かれているのでは、動きの雰囲気が違う。線がざっくり引かれていると、それが一種のモーションブラーがかかったみたいに、動きが繋がっていくんです。G-セルフがレクテンを手で殴るところは、線のニュアンスがあると、ガンッて殴ったときのブレた感じが出るんですよ。それがピッとした線で引かれた瞬間に……

――絵が変わるだけでなく、動きそのものがかわってしまう。

吉田
揺れる感じがなくなって、プラモデルというか、紙っぺらで叩いてるみたいになって、ゴワ~ン。ゴワーンっていう感じにはならない。今の動画の感じで線を引かれると、逆に枚数をかけて動かすしか、そういうニュアンスを出すしかなくなっていく。このカットは、G-セルフの拳だけニュアンスを比較的拾ってくれて画面に出てますね。それ以外のところは普通ですけれど。







吉田氏による修正原画。G-セルフの手の甲を描いた線のニュアンスや、殴られたレクテンの凹み部分などに注目。ヒットの瞬間を描いたC(3)の原画では、指の部分などに加速を現すタッチが入っている。

■レイアウト修正を動画の上に重ねた第24話

――修正する時には、画面にニュアンスが残るのはどれぐらいと想定していますか?

吉田
そこに関しては、ある意味、うまく残ってくれたらうれしいぐらいで留めています。むしろ第1話でレイアウト修正をがっつり入れてみたんですけど、ラフな修正を入れても、原画になる段階で、フォルムというか形の取り方が違ってしまっているケースも多くて、そこは自分がどうすればもっとよく伝えられるのか、結構、考えてしまいましたね。

――それはなかなか難しい問題ですね。

吉田
一方で、僕のやってることを好きで、興味持って「こういうことをやりたいといってやってきてくれる人はいてくれて。第5話、第13話なんかの作画監督やってくれた田頭(真理恵)さんなんかは、すごく寄ってきてくれて。


田頭さん、よかったですね。

吉田
田頭さんは原画もいろいろやってくれたんですが、田頭さんの絵は、ちょっと違う感じの絵なんです。でも、いくつかのカットでかなり再現性の高い原画を描いてくれて。それがうまい動画さんにまわると、かなりいい感じの仕上がりになったりしましたね。


田頭さんの原画はすぐわかりますよね。「ここ田頭さんですね」っていえる。

吉田
もとの絵そっくりになぞれみたいになってもよくないんですけど、「こういう気分なんです」って言って、その部分を拾ってくれるのはすごく助かる


田頭さんは、それができる方なのだなと思いました。以前、別の作品で田頭さんと一緒だったことがあるんですが、その時は、すごくシャープな線をお描きになっていたので、『G-レコ』ではこんな絵も描ける方なのだなと、びっくりしました。

吉田
むしろこういう絵の方が合ってたのかもしれない。


個人的には、田頭さんと玉川(真吾)さんが印象に残りました。

吉田
そうですね。玉川君もかなり寄ってきてくれて。だから野蛮に見せたいシーンなんかはいい感じで描いてくれました。

――そういうスタッフがいたことが『G-レコ』の雰囲気を保つ一助になっていたのですね。

吉田
そうですね。ちょっと面白かったのが、第24話でドレット将軍が死ぬところ。画面で観てすごくびっくりしたんですけど、僕のレイアウトの修正ラフを乗っけて完成画面にしたでしょう?



ああ、やっぱりわかりましたか? 打ち合わせの時は何も言われてなかったんですけど、カット袋が届いたら、吉田さんの修正も全部スキャンされてたんですよ。「吉田さんの修正ラフがきてるけれど、どうしよう?」っていう話になって。それで「これそのまま乗せてみるか」みたいな話をしてて。

吉田
それで、動画の上に、撮影でこの線をのせてるんだ。

《藤津亮太》
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