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「劇場版 弱虫ペダル」原作者・渡辺航インタビュー 新キャラ・吉本進はロードレースの真実を伝える人物

『劇場版 弱虫ペダル』が8月28日に公開を迎える。原作者である渡辺航さんがストーリーを書き下ろし、ファンから注目が集めている。渡辺さんへ本作への想いを伺った。

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――お話を聞いていると、普段とはかなり違う作り方になっていたのですね。

渡辺
ネーム式のやり方と違うとはいえ、物語の軸にあるのはやはりレースです。会話の内容と会話をするシチュエーション、そしてどのチームが勝つかをはっきりしておけば、スタッフの皆さんが面白いものを作ってくれると確信していました。

――反面、絵に描いてしっかり伝えようという気持ちはなかったのですか?

渡辺
それ をやってしまうと僕としてもスケジュールが厳しくなるので、考えませんでしたね。加えて、しっかり伝えてしまうとアニメの作り方に制限を付けてしまうと思いましたし、なにより僕自身が踏み込みすぎるのもよくないと思っていましたから。

――では、そうやって作られたシナリオの中でも注目してもらいたいポイントはありますか?

渡辺
やはり熊本台一の新キャラ、吉本進ですね。怪我でインターハイは出られなかったバックグラウンドの中でいよいよ登場する実力者であり、ホスト校としての意地も見せてくれます。あとはシンプルに、坂道君の頑張りも見てほしいですね。

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――その吉本進ですが、どういった発想で生まれてきたのでしょうか?

渡辺
熊本台一はネタキャラが多いポジションなんですよね(笑)。とはいっても、彼らの中には目標があり、歴史があり、そして積んできた練習があると思います。それを描くためのキャラクターですね。

実際のロードレースでは、怪我や病気でレースに出られない選手は数多くいます。しかし漫画やアニメの場合は、やはり全員がフルコンディションでなければ面白くありません。それでも、怪我を持つキャラクターがいてもリアリティがあっていいとはずっと思っていたのです。そう考えていたときに映画の話が来て、怪我をした過去を持つ人物を入れてみようとなりました。ロードレースの真実を伝える人物と言ってもいいかもしれません。

――怪我持ちというバッググラウンドは今回が初めてですが、これまでのキャラクターでも、ロードレースの真実を入れ込むことはあったのですか?

渡辺
もちろん考えて作ることもあります。例えば原作の15巻で新開隼人が出てきますが、それまでレース中に補給食を食べる場面は描いていませんでしたが、実際は食べながらレースに臨む人は多いのです。なので新開には、ロードレースの中で食べる表現をしてもらう人という位置づけになってもらいました。

あとは金城も、ロードレースでサングラスを掛けることを表現したキャラクターです。実際はかなりの人数がサングラスを掛けてレースをしますが、漫画で全員がサングラスを掛けてしまったら個性が出せないじゃないですか。だからサングラスという表現は、金城に特化させたのです。

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――吉本進の話題に戻りますが、彼はどのような形でストーリーに入ってくるのですか?

渡辺
別冊チャンピオンの『弱虫ペダル SPARE BIKE』でも少し描いていますが、熊本台一は吉本と田浦の2人で育ててきたチームなんです。2人はいつもインターハイでリザルトゼッケンの獲得、さらには優勝を目標に頑張っていたのですが、吉本の怪我で夢は絶たれてしまいます。今回のレースはインターハイ後のレースであり、2人にとっても最後のレースになります。最後だけに、期するものを持って臨む2人の姿が描かれるのです。

――では、『弱虫ペダル SPARE BIKE』を読んでいればさらに楽しめそうですね。

渡辺
そうですね。熊本編だけでも読んでおいたほうがいいんですけど…まだコミックスになっていないんですよね(笑)。将来的には、熊本だけでなく、さまざまなキャラクターのスピンオフを描いていきたいと思っています。

――『弱虫ペダル』は近年女性ファンも非常に増えた印象がありますが、連載開始当初から女性層は意識していたのですか?

渡辺
いや、あくまでも少年漫画雑誌ですし、『弱虫ペダル』も若い男性に向けて描いているつもりです。でも、ファン層の広がりは肌で感じています。女性ファンの方はスピード感がありますよね。
しかしアンケート調査によると、コミックスの購入層は男女で50%ずつだそうです。女性の目に見えるアクションの活発さが目立つということなんでしょうね。
漫画の作り方としては、女の子のキャラクターをもっと出す方法もあったと思います。しかしそれをやると、レースに出場している男子たちが、女の子のために頑張っている描写になってしまう危険性もあります。彼らはやはり、同じチームのメンバーのために走っているんです。

――最近は漫画本編やスピンオフさらにはアニメと、かなりご多忙そうですよね。

渡辺
ツール・ド・フランスの中継にも出演させてもらいましたしね(笑)。ですが、今は疲労感というより、映画がどうなるかという期待感でいっぱいです。

――なるほど。本日はありがとうございました!

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《ユマ》
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