ミュージカル「ハートの国のアリス」 ヒロイン・アリスの巻き込まれ型アドベンチャー物語 2ページ目 | アニメ!アニメ!

ミュージカル「ハートの国のアリス」 ヒロイン・アリスの巻き込まれ型アドベンチャー物語

高浩美のアニメ×ステージ&ミュージカル談義 ■ 『不思議の国のアリス』をモチーフにした乙女ゲーム作品『ハートの国のアリス』は本家以上にシュール、かつバイオレンスな世界。

連載
注目記事
ミュージカル『ハートの国のアリス』(C) QuinRose/ミュージカル「ハートの国のアリス」製作委員会
  • ミュージカル『ハートの国のアリス』(C) QuinRose/ミュージカル「ハートの国のアリス」製作委員会
  • ミュージカル『ハートの国のアリス』(C) QuinRose/ミュージカル「ハートの国のアリス」製作委員会
  • ミュージカル『ハートの国のアリス』(C) QuinRose/ミュージカル「ハートの国のアリス」製作委員会
  • ミュージカル『ハートの国のアリス』(C) QuinRose/ミュージカル「ハートの国のアリス」製作委員会
  • ミュージカル『ハートの国のアリス』(C) QuinRose/ミュージカル「ハートの国のアリス」製作委員会
  • ミュージカル『ハートの国のアリス』(C) QuinRose/ミュージカル「ハートの国のアリス」製作委員会
  • ミュージカル『ハートの国のアリス』(C) QuinRose/ミュージカル「ハートの国のアリス」製作委員会
  • ミュージカル『ハートの国のアリス』(C) QuinRose/ミュージカル「ハートの国のアリス」製作委員会
■ 強引な不思議キャラが次々と現れ、困難につぐ困難、意外と打たれ強いアリス、冒険の先に見つけたものは……

舞台セットはシンプルだ。中央には深紅のカーテン。あとはパネルと段差がある台。照明等の変化で見せるやり方である。中央に眠っているアリス、その回りをこれからアリスに絡んでくるキャラクター達が取り囲む。登場人物の関係が一目でわかるように提示する。
客席から白いうさぎ、ペーター=ホワイト (Peter White)が登場する。「君の笑顔が見たいんだ」と言う。それからアリスのお姉さんが中央から登場し「アリス、寝てるの?ゲームをしましょう」「ゲーム?」「トランプはどう?」「トランプ……」そしてアリスはうさぎに連れられてどこかへ……。そして小さい瓶に入った薬を無理矢理飲まされてしまう。その薬は”ハートの薬”といい、飲んだからにはゲームに参加せざるを得ないと言われ、アリスは困惑する……。
このプロローグ、”本家”通りに見えるが、そうではない。原作の『不思議の国のアリス』はアリスがうさぎを追いかけるが、ここでは”連れていかれる”のである。小さい瓶に入った薬は”本家”では自分で飲んでしまう。つまり、”本家”のアリスは自発的に行動し、普通でない様々なトラブルに見舞われるが、なんとか自分で切り抜けている。この『ハートの国のアリス』は他者からのアクションによって様々なトラブルに巻き込まれる。ここがキーポイント。
アリスは”災難巻き込まれ型”ヒロインなのである。自分の意思とは関係なく、ゲームに参加させられる。しかもここでは3つの勢力が領地争い、登場人物は個性的で、しかも武器を所持。しかも「この世界は君を望んでいる」とか「みんな君が好き」と言われてもさっぱり意味がわからず、なアリス。この”困惑状態”のまま強引な登場人物たちによってヒロイン・アリスはこの奇妙な国の冒険の旅に出るのである。

ヒロイン・アリスを演じる松本妃代はキレのよいダンスを見せてくれる。困った状況のまま冒険するが、やがて自分の内なる弱さに気づいていく様子を好演。
アリスを取り巻く男優陣は総じて背が高く、帽子屋、ブラッド=デュプレ (Blood Dupre)を演じる吉岡佑はかぶっている帽子も合わせるとなんと2m近くに。エリオット=マーチ (Elliot March)役の磯貝龍虎も身長186センチ。耳も合わせると、こちらも2m近くなる。ユリウス=モンレー (Julius Monrey)役の成松慶彦も身長186センチ。とにかく”スカイツリー級”が3人、舞台映えはもちろん、アクションシーンになると、迫力満点で舞台が狭く感じる程。

ダンサー陣は皆、激しくも難易度の高い振付をよくこなし、アクションもキレがよく、物語の輪郭を際立たせる。皆、キャラクターをよく考え、原作に沿いつつも、自分たちのオリジナルな部分も発揮し、原作ゲームやアニメとは違う舞台版としての『ハートの国のアリス』を創造する。
ゲームの特性を生かした演出、2幕ものであるが、見せ場はきっちりと見せ、ダンスや歌で凝縮するところは濃密、テンポ良く、かつ疾走する。ゲーム舞台化では定評のある吉谷光太郎、こういったメリハリの効いた見せ方はなかなか。奇妙な国の唯一の女性キャラクター・ビバルディ演じる石井美絵子、舞台映えするルックスと存在感で、ちょっとヒステリックな女王様。アリスには何気に好感を持っている様子を見せつつ(すぐに「死刑」、とか言うわりに意外と優しい)、という役どころを上手く演じており、歌唱力もなかなかのもの。これから様々なミュージカルシーンで活躍してくれそうな予感である。

さて、このアリス、奇妙な国で散々な目に遭う。ダメージどころか、少しずつ、いろいろなことに気づいていく。なかなかに打たれ強い。優しくて美しい姉にどこかコンプレックスがあり、基本的には受け身。自分に自信が持てないアリスに対して「そのままでいい」「アリスが好き」という奇妙な国の住人が言う。誰かを好きになることにどこか臆病なヒロイン、誰しもが持っている不安感や寂しさは共感出来る。殻を破ることへの躊躇、そこから一歩踏み出すことは難しい。
ラスト近く、ここからが分岐点、7つのエンディング、ここは”観てのお楽しみ”。それぞれのキャラクターを生かした構成になっており、お気に入りのキャラクターはもちろん、出来れば、さほどお気に入りでないキャラクターのエンディングも観て欲しい。必ず、新しい発見があるはずである。
《animeanime》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集