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ガンダムの受容を拡大させた「宇宙世紀年表」とダイジェストムービー『百年の孤独』:氷川竜介

大ヒットを続ける『機動戦士ガンダムUC』episode 7 「虹の彼方に」。物語の魅力のひとつに“宇宙世紀”がある。アニメ評論家・氷川竜介さんにダイジェストムービー『百年の孤独』を軸に、“宇宙世紀”を読み解いていただいた。

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ガンダムシリーズには『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』(89)『機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY』(91)『機動戦士ガンダム 第08MS小隊』(96)『MS IGLOO』(04)という一連のOVA作品がある。これらは「宇宙世紀年表」をベースに考案された「外伝」である。そこでは年表の史実や正伝に登場するキャラクターの行動に影響が出ないよう配慮する暗黙のルールがあった。
そこが実はネックでもあった。新たな創作と可能性に対し、ブレーキをかけて自由度を奪いかねないからだ。そこでTVシリーズとしては『機動武闘伝Gガンダム』(94)から「独自の時系列によるガンダム」が登場し、「宇宙世紀シリーズ」と多重構造になってガンダムシリーズが拡大した。それぞれ独自年表をもつ場合もあれば西暦を採用した作品もある。そして超遠未来に「すべてのガンダムの歴史を包括する」という「黒歴史」が富野由悠季監督の『∀ガンダム』(99)で設定されているため、かなりの許容度がある。
このような経緯の中、「宇宙世紀を描く」ということはガンダムのセンターに位置するようになっていく。年表については、ゲームやコミックなど2次商品では多少の自由度がある。近年ではコアなファンは「年表のどこに位置づけられるのか」という部分含めて新商品を楽しんでいる。宇宙世紀年表をルールブックとした謎解きゲーム的な側面さえあり、さらなる段階にはいったと言える。

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ここであらためて『機動戦士ガンダムUC』を振り返ると、位置づけ的には「外伝」だが、ミネバなど正伝に登場するキャラクターを描き、ニュータイプを作中で論じるなど、過去にないほど中核にせまったアプローチをとっている。アニメ化に際しては、拡大した宇宙世紀年表の中で登場したさまざまなモビルスーツの亜種や、アニメ用の新モビルスーツが登場。ひとたび映像化されるとオフィシャル性が格段に向上するため、宇宙世紀シリーズのファンにとってはまさに待望の作品となった。
シリーズ自体が四半世紀どころか3分の1世紀も越えれば、こうした前人未踏の事態も起きる。「百年の孤独」は、ガンダム史の蓄積と熟成が生んだ芳醇なる「宇宙世紀年表」の中から転機となったドラマや事件を総合的、有機的につなぎ合わせることで、ある種の発酵をめざしたダイジェストであろう。
「可能性の獣」とされる「ユニコーン」の略称自体が、「UC(ユニバーサルセンチュリー)」とかけてあることも象徴的である(最初は偶然だったようだ)。宇宙世紀百年を生きた者の口から、その歴史観が語られるという希代のダイジェストムービー。その意味づけを『ガンダムUC 最終章』と重ねながら、ぜひ口の中で転がすように味わいつくしてほしい。

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『機動戦士ガンダムUC』
公式サイト /http://www.gundam-unicorn.net/



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『機動戦士ガンダムUC』episode 7 「虹の彼方に」Blu-ray初回限定版には
「百年の孤独」の45分バージョンが「完全版」として収録される
《animeanime》
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