ミュージカル『薄桜鬼』、鬼・風間千景vs新選組、それぞれの正義が火花を散らす。 | アニメ!アニメ!

ミュージカル『薄桜鬼』、鬼・風間千景vs新選組、それぞれの正義が火花を散らす。

高浩美のアニメ×ステージ&ミュージカル談義:ミュージカル『薄桜鬼』、鬼・風間千景vs新選組、それぞれの正義が火花を散らす。

連載
注目記事
ミュージカル『薄桜鬼』(C)アイディアファクトリー・デザインファクトリー/ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会
  • ミュージカル『薄桜鬼』(C)アイディアファクトリー・デザインファクトリー/ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会
  • ミュージカル『薄桜鬼』(C)アイディアファクトリー・デザインファクトリー/ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会
  • ミュージカル『薄桜鬼』(C)アイディアファクトリー・デザインファクトリー/ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会
  • ミュージカル『薄桜鬼』(C)アイディアファクトリー・デザインファクトリー/ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会
  • ミュージカル『薄桜鬼』(C)アイディアファクトリー・デザインファクトリー/ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会
高浩美のアニメ×ステージ&ミュージカル談義
[取材・構成: 高浩美]


■ めっぽう強い西の鬼・風間千景、自信家で義理堅いキャラクター

今年も劇場版アニメ『薄桜鬼』第二章 士魂蒼穹が公開された。いろいろな小説やテレビドラマで新選組が描かれているが、その悲劇的な末路に涙する。それに日本古来の鬼と吸血鬼を思わせる“羅刹”を絡ませることによっていままでにない“悲劇性”が創造され、より一層の哀しみと一瞬を生きる登場人物たちに共感できるのではないだろうか。そこに『薄桜鬼』のエッセンスがある。

今回のミュージカル『薄桜鬼』は風間千景がメイン。薩摩藩に所属している剣士で、西の鬼の頭首。天霧や不知火と行動を共にする。金髪赤眼、鬼になると白髪金眼、剣は鬼故にめっぽう強く、自信家で義理堅い。『薄桜鬼』ならではのキャラクターである。物語はどんな展開になるのか、気になるところ。
西の鬼を束ねる純血の鬼・風間千景は、行方不明の父親を捜しに京へやってきた少女・雪村千鶴と出会う。ある秘密を持つ千鶴を手中に収めようとする風間だが、千鶴は 京の街でその名を知らぬ者のない新選組と行動を共にすることに。鬼としての誇りを持ち戦う風間、己の信念を胸に進む新選組、そして千鶴...それぞれの想いと運命が動き出す。

■ 音楽、振り付け、殺陣がさらに進化、和物ミュージカルの決定版

オープニングはまず、風の音から始まる。傘をかぶった侍が舞台上に登場する。そこに通路から今回の主人公・風間千景の登場。「何者だ!」「風間千景!」ここから殺陣、おなじみの曲でキャスト全員が歌い、踊る。ここはほぼ“恒例”、ファンのテンションが一気に上がるところ。  
音楽は曲が変化しながら絶え間なく続く。20分弱、一気に楽曲で紡いでいく。王道ミュージカルの手法で観客の心を掴んでおき、物語を進行させる。新選組と行動を共にする千鶴。風間は新選組を「野蛮な集団」と断罪する。そんな折、千鶴は千景に出会う。
土方は千鶴が何者か薄々気づいていた。鬼である風間の正義、そして土方ら新選組の正義、それぞれが信じる道を突き進む。が、決して相容れない。千鶴は心揺れながらも“人”として生きたいという。そんな千鶴に千景は「人間に絶望したら迎えに行く」と言う。一見冷徹に見える千景の優しさが垣間見える。しかし、時代は大きくうねり、大政奉還、武士の世は終焉を迎える。新選組の末路は……。

二重唱を多用し、物語を重層化させて一度に提示し、作品世界に厚みを持たせたり、また芝居の部分もきっちりと見せて緩急つけて飽きさせない。ひとつの時代が終わる切なさと儚さ、脆さ、夢も希望もあった新選組の面々は時代の狭間で一瞬の煌めきを見せる。そしてあっけなく桜のように散っていく。それは歴史で、数々のドラマで周知のことではあるが、そこに『薄桜鬼』ならではのフィクションが加わることによってより悲劇的に味付けされる。見所は随所にあり、キャラクター全てに見せ場がある。ラスト近く、風間vs土方の一騎打ちは泣かせる。

楽曲も変化に富んでおり、和風のものだけでなく、ラテン系の曲調のものもあって楽しい。おなじみのアクションシーンは殺陣、ダンス、歌、で多彩に魅せるが、ダンスはハウス等の流行りのステップを取り込みつつ、ジャズダンスのテイストもところどころに盛り込んで、より変化に富んだものになっている。しかもターンやジャンプも多く、動きをさらにダイナミックに見せているが、こういった工夫は和物ミュージカルの決定版『薄桜鬼』ならでは。
難易度の高い振付は稽古も大変だったと思うが、チームワークも良く、小気味よい。今回の主役・風間千景演じる鈴木勝吾始め、初演から参加している廣瀬大介(沖田総司)、松田凌(斎藤一)、矢崎広(土方歳三)らは役になじんでおり、作品にかける意気込みが伝わる。富田麻帆は初役ではあるが、ミュージカル出演歴が多く、しっかりとした歌唱力と確かな芝居で安定感がある。不知火匡役の柏木佑介はアクロバティックな動きにキレがあって“人間じゃない”感満載。カンパニー全体としては歌唱力もアップ、とりわけ山南敬助役の味方良介、歌に表情があって、聴かせる。

2幕ものであるが、疾走感もあり、物語は一気に駆け抜ける。神戸公演から一部演出を変えているそうだが、最後まで細かく工夫を重ねる演出陣の頑張りは見逃せない。
また、絆、友情といった普遍的なテーマもあり、キャラクターもかなり個性的。次回は誰が主軸になるのか、予想してみるのも楽しいだろう。

ミュージカル『薄桜鬼』
(C)アイディアファクトリー・デザインファクトリー/ミュージカル『薄桜鬼』製作委員会
《animeanime》
【注目の記事】[PR]

編集部おすすめのニュース

特集