2010年 米国で評価された日本マンガは何? | アニメ!アニメ!

2010年 米国で評価された日本マンガは何?

米国では一体、どんな日本のマンガが人気なのだろうか?セールスと異なる軸で注目作品が分かるのが、毎年発表される賞や年末に発表される年間ベストだ。

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 日本のマンガが海外で人気と言われるようになって久しい。そしてエンタテイメント大国の米国でも、2000年代に入り、日本式の右開きスタイルの単行本導入やアニメの普及にともなった原作への注目からマンガが急激に普及した。近年は売上げ減少が指摘されるものの本屋に並ぶ日本の翻訳マンガは見慣れた風景だ。
 では、米国では一体、どんな日本のマンガが人気なのだろうか?単行本の売上げでは『NARUTO』や『Bleach』、『ONE PIECE』、最近では『ヘタリア』といった作品が好調で幅広い人気を獲得していることが分かる。

 もうひとつセールスと異なる軸で注目作品が分かるのが、毎年発表される賞や年末に発表される年間ベストだ。そこにはベストセラーからは異なった世界が見えて来る。ここでは米国で代表的な賞やベストセレクションに挙げられた日本のマンガを挙げてみた。
 2010年で注目されたのは、コミックス業界で最も知られたアイズナー賞で辰巳ヨシヒロさんの『劇画漂流』がアジア部門とノンフィクション部門(Best Reality-Based Work)に輝いたことだろう。アジア部門はこれまで日本部門とされていた賞なので受賞に驚きは少ないがノンフィクション部門は、米国の作品に交じっての受賞なので快挙だ。ただし、米国での出版は2009年のため夏に受賞が行われたアイズナー賞以外での選出が今年はなかった。

 変わって大きく注目されたのは、青林工芸舎の『AX』の作品をアンソロジーとした『AX: Alternative Manga』である。パブリッシャズーウィークリ―、io9、ダイヤモンド・ブック・ディズトリビューション・アワード、グラフィックノベルレポーターなどに選ばれている。2010年に最も批評家筋に注目されたマンガと言えそうだ。
 『AX』への関心は、過去1、2年、米国の出版界で静かに広がるメインストリーム以外の作品への高まりを反映していそうだ。それは学校図書館ジャーナルとグラフィックノベルレポーターのふたつに選ばれた『ふたつのスピカ』、同じく学校図書館ジャーナル選出の『70億の針』の国内連載誌が「コミックフラッパー」であったり、「IKKI」連載の『土星マンション』、『金魚屋古書店』などのタイトルが挙がっていることからも窺える。あるいはこれまであまり振り向かれることの少なかった過去の名作 萩尾望都さんの短編集『「酔夢」ほか』などにもそうした傾向は表れている。

 こうした作品の発行部数は必ずしも多くはないが、一方でアニメに結びついた少年・少女のためのエンタテイメントという画一的な日本マンガへの見方を崩し始めているのでないだろうか。
 米国における日本マンガの勢いが失速するなか、こうした新たな動きがどのような展開をするのかも注目したいところだ。


2010年に米国のアワードやセレクションに選ばれた日本マンガ

■ アイズナー賞
 アジア部門(Best U.S. Edition of International Material—Asia)
   「劇画漂流」 辰巳ヨシヒロ
 ノンフィクション部門(Best Reality-Based Work)
   「劇画漂流」 辰巳ヨシヒロ

■ パブリッシャーズウィークリ― ベスト・グラフィックノベル 201010作品の内
   「AX: Alternative Manga」

■ ニューヨークタイムズ ホリデー・ギフト向けのグラフィックノベル 
   10作品の内
   「酔夢」ほか(短編集) 萩尾望都

■ io9 10 グラフィックノベル(コミックスを読んだことのない人の贈物に最適な)
   「AX: Alternative Manga」

■ DBD(ダイヤモンド・ブック・ディズトリビューション) アワード 2010 
   8作品の内
   「AX: Alternative Manga」

■ 学校図書館ジャーナル The Best Comics for Kids 2010
 BEST NEW COMICS FOR YOUNG READERS 6作品の内
   「チーズスイートホーム」 こなみかなた
 BEST NEW COMICS FOR TWEENS 9作品の内
   「ふたつのスピカ」 柳沼行
 BEST NEW COMICS FOR TEENS 9作品の内
   「70億の針」 多田乃伸明

■ ヤングアダルト図書館サービス協会(YALSA
 Great Graphic Novels for Teens トップ10
   「土星マンション」 岩岡ヒサエ

■ グラフィックノベルレポーター
 マンガ部門 10作品 
   「AX: Alternative Manga」
   「バクマン。」 作画: 小畑健 原作: 大場つぐみ
   「カードキャプターさくら」 CLAMP
   「デーモン聖典」 樹なつみ
   「酔夢」ほか(短編集) 萩尾望都
   「金魚屋古書店」 芳崎せいむ
   「KIZUNA」 こだか和麻 
   「ピポチュー」 フェリーペ・スミス
   「愛がなくても喰ってゆけます。」 よしながふみ
   「ふたつのスピカ」 柳沼行
《animeanime》
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