そうした中に、日本のボーカロイドのカルチャームーブメントを紹介するユニークな企画がある。2日目(7月2日)21時半から開催される「Mirai no Neiro - VOCALOID: The Sound of the Future -(2010)」である。 「Mirai no Neiro(みらいのねいろ)」は、パネルと呼ばれる講演会・トーク形式の企画のひとつだ。米国のアニメイベントは、通常、主催者自らがマネジメントする主催者企画、企業がセールスプロモーションの一環として行う企業企画、そしてファンなどから申請のあったものを公式企画とする自主企画などから構成される。「みらいのねいろ」は、そうした自主企画のひとつだ。
しかし、他と異なるのは、この企画が日本のファンから提案されたもので、日本からプログラムを持ちこむことである。アニメエキスポは日本のアニメ・マンガをコンセプトにするが、その企画のほとんどは現地の企業、ファンによるものだ。日本からの企画は企業や団体以外にはほとんど見当たらない。ファンが主体に進めるこの企画は、数あるイベントでもほかにないものと言っていいだろう。 しかも、「Mirai no Neiro」は自主企画ではあるものの、その内容の充実ぶりは他の企画を圧倒する。最新曲やPV、トレンドを紹介するほか、人気作者からの海外に向けたメッセージなども現地で披露する。ファンパワーで成長したボーカロイドムーブメンに相応しいものとなっている。
「VOCALOID: The Sound of the Future」は昨年の大きな成功を受け、今年は9月にドイツ・カッセルで開催されるコンニチ(Connichi)にも招かれている。ボーカロイドを通じた草の根交流は、米国からヨーロッパに広がることになる。 こうした自主企画は会場施設、基本的な設備こそ無料で使用出来るが、出演者はボランティア、運営のための人員や渡航費、宿泊費は全て企画側の持ちだしである。企画の立案も含めて、ファン団体やファンの苦労は大きい。それでも会場で得られる作品を通じた交流は、お金だけでは得難い。日本のポップカルチャー文化交流にとっても、企業や行政とは異なる大きな役割を果たす貴重なものだ。
*「Mirai no Neiro - VOCALOID: The Sound of the Future -(2010)」主催者による日米交流イベント「日本語でおK」も注目。 現地のアニメファンとLAに訪れた日本のアニメファンの交流を日本語で行います。(アニメエキスポ(AX)開催中のイベントですが、AXとは関係はありません)