スタン・リーと「HEROMAN」の世界 -原作者スタン・リーとは?- | アニメ!アニメ!

スタン・リーと「HEROMAN」の世界 -原作者スタン・リーとは?-

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スタン・リーと「HEROMAN」の世界 -原作者スタン・リーとは?-

文: 椎名ゆかり
[筆者の紹介]

海外マンガを主に扱う出版エージェント。翻訳者。
アメリカの大学院で3年間ポピュラー・カルチャーについて学び、帰国後アニメ、マンガ関連の仕事で翻訳者となる。3年前から個人でマンガを専門とする出版エージェント業を開始。
主なクライアントは講談社『モーニング』で連載を持つフェリーぺ・スミス。翻訳書はアメリカのマンガ『メガトーキョー』他。北米アニメ・マンガ関連の記事も書く。
ブログ:「英語で!アニメ・マンガ」 /http://d.hatena.ne.jp/ceena/

 主人公の少年ジョーイがロボットであるヒーローマンと一緒に地球侵略を狙う宇宙人と戦うアニメ『HEROMAN』。日本のアニメ制作会社「ボンズ」が原作にアメリカのコミックス界の御大スタン・リーを迎えて作ったオリジナル作品だ。
 スタン・リーの名前はアメリカのコミックスに興味が無い人でも聞いたことがあるかもしれないが、その業績については意外に知らない人が多いのではないだろうか。

 スタン・リーは今87歳。現在もバリバリの現役で精力的に新しい作品にチャレンジしている。彼がコミックス業界に入ったのは弱冠17歳で、70年前のことだ。今日マーベルとして知られる出版社で雑用係として働き始め、その後穴埋めの原作仕事で創作に関って以降、膨大な数の作品で原作者や編集者を務めてきた。スタン・リーが作り出したヒーローには「スパイダーマン」「ファンタスティック・フォー」「X-メン」「デアデビル」「ハルク」「アイアンマン」「マイティ・ソー」などがあり、その成功作の多くがハリウッドで映画化、もしくは映画化が予定されている。

 スタン・リーのコミックス業界への貢献は多岐に渡るが、最初にリーの名声を高めたのは、原作者として主に60年代に作り出した新しいスーパーヒーロー像だった。当時特に子供向けに描かれたコミックスにおいてヒーローは自分の倫理観や正義に思い悩むことはなかった。しかしリーのヒーローたちは、一般の人間社会に溶け込めない疎外感を持ち、恋人やお金という現実的な問題に悩んだ。戦うことにも積極的ではなく、特殊な力を持つことの孤独に苦しんでいた。つまり、リーはスーパーヒーローに内面の葛藤を与え、読者の爆発的な共感を呼んだのである。

 リーは原作者としてだけでなく編集者としても優秀で、その手腕は読者と作品、そして読者とクリエーターの間に強く親密な関係を生み出す紙面作りに遺憾なく発揮された。コミックブックの巻末に掲載されたリー自身によるコラムと読者コーナー1 でのファンとリーとの熱いやりとりは、マーベル社とリーの作品の人気を更に盛り上げた。
 結局リーの作ったヒーローたちはその人気で、当時財政的に危機的状況だったマーベル社の経営を救っただけでなく、その後に大量の模倣を生んで、コミックブックにおけるスーパーヒーロー像に大きな変化をもたらし、更には業界全体のあり方を変えてしまったのである。

 しかもリーはコミックスを原作とした映像化に早い時期から積極的に取り組んできたひとりである。新しいメディアに対する感受性も強く、インターネット時代に入ると新会社を設立し、ネットを通して新スーパーヒーローを発表して話題を呼んだこともある。そう考えるとアメリカでの『ポケモン』人気以降、日本アニメ・マンガスタイルの作品にリーが可能性を見出したのも自然な成り行きだったのかもしれない
 『HEROMAN』以外にも漫画家・武井宏之と組み『機巧童子ULTIMO(ウルティモ)』(『ジャンプSQ』で現在連載中)に原作を提供している。

 『HEROMAN』を第4話まで見た限りでは、物語はストレートなヒーローもので、主人公の戦う相手である宇宙人は悪役らしい悪役である。ディテールまできちんと再現されたアメリカ西海岸の風景を舞台に、あのスタン・リーがどういうお話を持ってきてくれるのか、アクションに加えて今後展開される登場人物たちを巡るドラマが益々楽しみだ。
 最後に、リーは自分の関わった映像作品にカメオ出演することでも知られている。『HEROMAN』にも期待を裏切らず時々登場しているので、是非その姿も探してみて欲しい。

参照: Bradford W. Wright 『Comic Book Nation : The Transformation of Youth culture in America』
The Johns Hopkins University Press, 2001
1
この読者コーナーは『少年ジャンプ』のかつての人気コーナー『ジャンプ放送局』のようなものを想像するとわかり易いが、リーが読書コーナーを始めたのは『ジャンプ放送局』の始まる20年弱ほど前の話だ。

『HEROMAN』 公式サイト /http://www.heroman.jp
twitter /http://twitter.com/heroman_jp/

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『HEROMAN』 Blu-ray Disc&DVD Vol.1発売決定
発売日: 2010年8月18日(水)
発売元: ウォルト・ディズニー・ジャパン

BD 価格: 4700円(税抜)/4935円(税込)
DVD 価格: 3800円(税抜)/3990円(税込)
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