TVアニメ「HEROMAN」の見どころ | アニメ!アニメ!

TVアニメ「HEROMAN」の見どころ

文: 藤津亮太(アニメ評論家)『ヒーローマン』。タイトルの通り、今時珍しい直球勝負の作品の登場だ。
 原作は『スパイダーマン』や『X-MEN』を生み出したアメコミ界の巨匠スタン・リー。

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文: 藤津亮太(アニメ評論家)

 『ヒーローマン』。タイトルの通り、今時珍しい直球勝負の作品の登場だ。
 原作は『スパイダーマン』や『X-MEN』を生み出したアメコミ界の巨匠スタン・リー。制作は『交響詩篇エウレカセブン』『鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHEMIST』のボンズ。スタン・リーと日本アニメの制作会社というのは思わぬ取り合わせだが、第1話、第2話を見たところ、この組み合わせは予想以上にいい化学反応を起こしている。
 ボンズのオリジナル作品というと、個性的な雰囲気――人によってはクセがあると感じるかもしれない――が持ち味の部分があるが、『ヒーローマン』はそうしたクセとは無縁だ。『ヒーローマン』に登場するヒーローはヒーローらしく、そして悪役は悪役らしい。舞台となっているアメリカ西海岸の青空のようにはっきりくっきりしているのが『ヒーローマン』の最大の特徴だ。

 主人公のジョーイは、両親をなくし祖母と二人暮らし。チアリーダーのリナから好意を寄せられているおかげで、リナの兄のウィルからは目の敵にされることも多いが、へこたれることなく毎日を過ごしている。このあたりはアメリカ映画の学園描写でもお馴染みジョックとナード(ギーク)の対立構図がそのまま使われている。
 ある日ジョーイは、捨てられたおもちゃのロボットを拾う。ジョーイが修理したそのロボットに、雷が落ちて生まれたのがヒーローマンだ。ジョーイは、左腕を覆ったリモコンに浮かぶアイコンに触れることで、ヒーローマンを操ることができる。
 おそらく、この冴えない少年が大きな力を手に入れるという基本のアイデアは『スパイダーマン』の生みの親であるスタン・リーのアイデアであろう。
 そしてヒーローマン誕生の直後に地球に来訪したのが宇宙人スクラッグ。見るからに不快な昆虫型宇宙人たちの地球征服に対抗するのが、ジョーイとヒーローマンなのである。

 注目すべきはスタン・リーとのコラボレーションだけではない。キャラクターデザインは『交響詩篇エウレカセブン』『トップをねらえ2!』などでメカデザインを担当してきたコヤマシゲト。本来の出自であるキャラクター描きとして腕を振るっている。中でも星条旗と日の丸のモチーフを大胆に消化したヒーローマンのデザインは非常に印象的だ。
 シリーズ構成は『武装錬金』『ソウルイーター』などの大和屋暁。ストレートな少年漫画作品を手がけてきた経験が本作に反映されるのが楽しみだ。
 また。ボンズの屋台骨ともいえる川元利浩と『鋼の錬金術師』などのボンズ作品で腕を振るってきた富岡隆司がチーフアニメーターとして参加。アクションシーンが増えそうな本作だが、この2人の参加に加え、制作がかなり先行しておりスケジュールにも余裕があると聞くので、作画は今後も高い水準が保たれそうだ。
そして監督が難波日登志。『グラップラー刃牙』といった作品も手がけているが、むしろ『ヒーローマン』は『ぼのぼの』や『YAT安心!宇宙旅行』に繋がる路線と位置づけることができる。

 弱い少年が強い力を手に入れる。ヒーローものでは定番の構図だが、変身ではないところが本作の特徴だ。ジョーイはそのままの姿でヒーローマンという「力」を操る。過去の作品でいえば『アストロガンガー』や『大鉄人17』(とそのオリジンである『ジャイアントロボ』)に通じる構図である。
 自分の身の丈を越えた力を手に入れて少年ジョーイはどう変わっていくのか。第2話でリナから「あなたたちがヒーローマンなのよ」と声をかけられるジョーイだが、ジョーイはまだ自分がヒーローであるという自覚はまだ薄い。ジョーイが「ヒーロー」という言葉と彼なりにどう向き合っていくか。そこを直球勝負でどのようなドラマとして描き出していくか。『ヒーローマン』の今後の焦点はそこにある。今後に期待したい。

『HEROMAN』 公式サイト/http://www.heroman.jp
twitter /http://twitter.com/heroman_jp/

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