社会に出た後もオリジナルを作り続けるには 2009ADAA大賞 | アニメ!アニメ!

社会に出た後もオリジナルを作り続けるには 2009ADAA大賞

2月16日から28日まで、福岡アジア美術館にて2009アジアデジタルアート大賞展が開催された。会期中日の20日は、表彰式とシンポジウムが行われた。「クリエータからのメッセージ -コンテンツ教育へむけて-」と題されたシンポジウ

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adaa092.jpg 2月16日から28日まで、福岡アジア美術館にて2009アジアデジタルアート大賞展が開催された。会期中日の20日は、表彰式とシンポジウムが行われた。
 「クリエータからのメッセージ -コンテンツ教育へむけて-」と題されたシンポジウムは九州大学芸術工学研究院講師の松隈浩之氏が司会を務め、ADAA大賞の柴田大平氏(作品名:『The Light of Life』)、カテゴリーA動画部門優秀賞の白川東一氏(同:『Mr.Shape』)と松下健太郎氏(同:『ZURERUZ』)が登壇した。

 ひと口にアニメーションと言っても、表現手法の側面から俯瞰すると対象が幅広くなる。媒体のポリシーによるところが大きいものの、一般的にはアニメーションと聞いてまず思い出すのは人物などのキャラクターを動かす作品だ。しかしPV、デザインといった広告の分野での需要が圧倒的に多いにも関わらず、そこまで念頭に置かれることが意外と少ないように思われるのは、短編としてひと括りに扱われている場合が多いからでもあるだろう。
 登壇者のなかでも特に柴田氏はWOW、白川氏は空気(KOO-KI)といった会社に在籍している。彼らの会社も広告の分野では広く知られた存在で、就職先を選ぶ際にも学生に人気が高い。
 空気はアニメーション業界の関連ではアニマックスのモーションロゴも制作していたりする。また白川氏は昨年は赤塚不二夫展用に天才バカボンのキャラクターを利用したアニメーションを制作していた。オリジナルでは『ぴったんこ!』がオタワ国際アニメーションフェスティバルにノミネートされた。

adaa093.jpg このアジアデジタルアート大賞に限らず、各種様々なコンテストにおいては、必然的に作品を作らざるを得ない状況に追い込まれるのが学生であるために応募作品の大半が学生作品となってしまっている。このシンポジウムでは社会人の受賞者も登壇していたことから、業務としての制作の合間に、いかに僅かな時間を見つけて自身のオリジナル作品を制作するかが焦点となったのは、ある意味貴重である。
 「社会に入ってからは当然好きなことなんか出来ないですよ。好きなことは出来ないんですけど、年を重ねるに従って、その隙(好きなことをする隙)はちょっと出来てくる。その時に社会に出てから培ったスキルと、学生の時に自分が追い求めていたものがクロスしてるというか、そんな感覚を今持っているので、10年後、15年後にちょっとステキな瞬間が来るんじゃないかな」(白川氏)。ちなみに白川氏は学生時代に制作した『ロボットニュース』が、1998年の第10回CGアニメコンテストで佳作だった。
 このほか「(自主的に制作する場合は)締切があるわけじゃないのでずっとやってると永遠に終わらない」(柴田氏)、「年を取ってくると残り時間を計算して生きてしまう。あと何作品作れるんだろうという危機感」(白川氏)、
 「目標があるとしてそこに近づくにはどうすればいいかとかを常に考えて、仕事もなるべく早く終わらせる」(松下氏)といった意見が交わされた。

 またYouTubeやニコニコ動画などのサイトの登場にも話題が及んだ。これには「色んな人に見てもらう機会が本当に多いので、凄く良いことだと思う。むしろ利用すべきだ」(柴田氏)といった意見のみでなく、「ただそれで終わりでないので、その先を考えてるのかなと。そこで満足してることに意味を感じない。映像は結果から作るものではあるんですけど、ずっと点を作る作業が線になって面になることを将来的に見据えて」(白川氏)、「個人投稿出来ることによってパブリックなものから趣味趣向が凄く細分化されている。そのジャンルが好きな人だけで満足してしまう。それではいけないなと。パブリックなものを意識して作る」(松下氏)といった建設的な意見も出た。

 クリエイターの活動領域としては、映画祭・コンテストと同人誌即売会で大別されてしまいがちではあるが、こうした意見からすると、作品制作の心構えの根本は全く同じであることに改めて気付かされるに違いない。
【真狩祐志】

アジアデジタルアート大賞 /http://adaa.jp/

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