映画評 『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』

レビュー 実写

文;氷川竜介(アニメ評論家)

 奇跡のパワーを秘めたアイテムで美少女が変身! ステッキを武器にバトル! 「魔法少女もの」は女玩(女児向け玩具)の販促企画の作品群からスタートし、いつの間にか「大きなお友だち」向けにひとつのジャンルを形成するようになった。本作『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』(原作・脚本:都築真紀/監督:草川啓造)も、そんなジャンル作品がファンに支えられて成長し、ついに劇場版にまで登りつめた映画だ。合計3シリーズが制作されたTVアニメ版「なのは」を表紙にするとアニメ雑誌の部数が確実に伸びるという定説があるほど、堅実で熱い層をつかんでいる。
 そんな人気シリーズを改めて新シナリオ・新作画で映画としてリメイクする試みという点では、ファンムービーの典型とも言える。だが、それを突きつめたところにある種の迫力、高みのようなものが感じられた。

 『なのは』を愛するファンのために、作り手が「良かったところ」を抽出し、新たな見せ場として再構築する。それは当たり前のことだ。そして、一般にクリエイターたちはやや冷静で客観的な立場になって、観客をさらなる高みへとリードしようと試みるはずだ。ところが、この劇場版では映画が進行するにつれ、明らかに作り手の側も『なのは』を溺愛していることが伝わってきて、それに圧倒されてしまうのである。
 「これが、なのはだ!」「これが見たいだろう? そうだ、自分も見たい!」とでも言わんばかりの、輝かしき情熱の発露。それはもはや「愛」としか表現できない。その波動や輝きが映像に転化し、カットごと、シークエンスごと、セリフごとに燃えあがって、スクリーンから放散されて観客の全身を震わせる。『なのは』に強い興味のなかった筆者でさえ、評価検分という職業病を封じられて「これはすごい」と感じたのだから、ファンを満載した映画館ではどんな熱気が生まれるのか、かなり興味がある。
 鑑賞前は「えっ、130分?」と尺の長さにも思わずたじろいだが、実は映画の中身は濃厚だから心配はない。主人公である9歳の少女なのはが初めて魔導端末レイジングハートを手にして魔法少女に変身するきっかけ、最初の戦い、さらにそのミッションを妨害しようとするライバル魔法少女フェイト・テストロッサとの出逢いなどなど、舞台を変え、手を変え品を変えて、バトルを中心にアクセル全開のスピードで物語が進行する。

 劇場版として特筆すべきは「音響」だ。なのは役の田村ゆかり、フェイト役の水樹奈々とダブルヒロインの声の明瞭度が増し、戦闘シーンにおけるギミックの作動音、爆発や着弾などの迫力向上は言うまでもない。一番の注目ポイントは、バトルを支える魔導端末レイジングハートのクールビューティなボイスだ。設定的には小道具の無機質な応答音声なのだが、なのはにネイティブな英語でチュートリアルを指示し、ともに戦って苦難を乗りこえていく、そのパートナーシップのけなげさには、思わず涙なのである。
 劇場版「1st」では人気に火をつけたTVアニメ第1期全13話(2004年)の「ジュエルシード」編をまとめた。この映画の凝縮度は、『なのは』をまだよく知らない観客に魅力のエッセンスを訴求するエントリーフィルムの役割もはたすはずだ。「ビジュアルは知ってるけど、どんな作品?」と知りたい方にはオススメの130分である。

『魔法少女リリカルなのは The MOVIE 1st』
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