「ジョジョ」が提起したアニメの宗教と海外ビジネス問題 | アニメ!アニメ!

「ジョジョ」が提起したアニメの宗教と海外ビジネス問題

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 荒木飛呂彦さんの人気マンガ『ジョジョの奇妙な冒険』を原作とするOVAに、イスラム教の聖典・コーランの「雷電章」の一部が描かれていたことが問題となっている。
 この問題について作品の原作発売元の集英社とアニメを制作したA.P.P.Pは、不適切な表現を認め、DVDの出荷停止を発表するとともに謝罪の文章を発表した。

 問題となったのはOVA6巻で描かれた、登場人物の悪役ディオが書物を読んで主人公らを殺害する命令を下すシーンである。この書物に書かれていたものがコーランの一説であった。これについて集英社側は、「舞台がアラビア語圏だったためアラビア語の文章を探していた現場スタッフが『コーラン』の一部だとの認識を欠いたまま転写」したためとウェブサイトに掲載された日本語と英語の文章中で説明している。
 また、これとは別に原作マンガ・アニメ両方で対決シーンにおけるイスラム寺院のモスクの描写に不適切なものがあったとして原作・アニメとも出荷を停止することを発表した。

 この事件は、中東諸国のウェブサイト上にDVDの画像がアップロードされて広がったもので、当該箇所について現地のファンが「コーランを読めば悪者になるというイスラムへの攻撃」と非難の声があがった。
 これに対し、イスラム教スンニ派教学の最高権威機関アズハルの宗教勧告委員長アトラシュ師も、「イスラムに対する侮辱と冒涜」と発言した。

 今回、現地で広まった画像は、2007年ごろからアラビア語の字幕をつけた海賊版(ファンサブ)で広がったものである。イスラム地域へのローカライゼーションを集英社や制作会社が行える状況がないまま現地へ届いてしまったことが理由となる。
 しかし、今回の出来事からイスラム教について過剰な忌避感を持つことは得策ではないだろう。イスラム教と一口にいっても過敏なところから、比較的寛容な地域まで様々である。地域によっては、近代化が進み資本が集まっている地域では文化的な寛容性も高くなっている。

 2007年にアラブ首長国連邦のドバイで開催された第4回ドバイ国際映画祭では原恵一監督の『河童のクゥと夏休み』が上映された。
 また、アラブ首長国連邦のドバイに拠点を持つアル・アハリ・グループ(AAG)は、ドバイで進めている大型テーマパークの計画でアメリカの大手コミック出版社マーベルや子供向けチャンネル・ニコロデオンと提携し、テーマパークでのキャラクタービジネスを展開する。
 このように、一概に日本やアメリカのアニメと、イスラム文化圏は全ての面で折り合いが悪いわけではてない。

 今回の事件は、著作権の問題、表現の自由と宗教の問題を別に考えると、逆に日本のアニメにファンサブを付けてでも見たがる層が存在することが明らかになったともいえる。それは新しいビジネスの発見である。
 ネットワークの発達によって実際の製作や流通に関わらず、作品と名前は世界に広まるのが現状である。今後もこのような事件が起こらないためには、製作側は宗教的に比較的寛容な日本とは意識を異にして世界基準のコンテンツ製作を行う必要があるだろう。
 そして、それが表現の幅を狭めることではないのは、これまで日本で作られたいくつもの名作アニメが証明している。

追記(2008.5.26):
なお、『ジョジョ』について最初にネット上で現地のファンからあがった抗議の声について「コピー&ペースト」を繰り返していた1人の人物によるものであることがで報じられている。これについて、事件の最初の報道を行った共同通信側はこれを認知している。本件の発端については信憑性を考えて読んで頂きたい。
共同通信へのインタビューは下記のサイトで読むことが出来る。
UGS日記のこもれ火 /http://d.hatena.ne.jp/SHIKAIKILYOU/20080525/p1

【日詰明嘉】

集英社 /http://www.shueisha.co.jp

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参考:JAPAN TODAY
/http://www.japantoday.com/category/national/view/publisher-to-suspend-cartoon-sales-after-muslims-say-it-insults-islam
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