エイベックス映像事業再生プランが明らかにするアニメビジネス | アニメ!アニメ!

エイベックス映像事業再生プランが明らかにするアニメビジネス

レビュー そのほか

 この10月に大規模な映像事業部門の再編を行ったエイベックス・グループ・ホールディングスが、「映像事業再生プラン」と題した映像関連事業の今後の方向性を発表した。
 この発表は同社の中間決算発表に合わせたもので、同社の今後の主要事業でもある映像事業の活性化の方向性を示したものである。再生プランは映像事業全般にふれたものだが、同社の映像事業に占めるアニメの比率は高く、アニメ事業についてふれた部分も多い。
 またアニメ関連企業のなかでは比較的歴史の浅いエイベックスグループの分析と今後の方向性には、アニメビジネスの新規参入企業が共通して直面する課題が含まれている。

【エイベックスのアニメ事業の2年半】
 今回一番興味深いのは、エイベックスが過去2年半のアニメ事業が必ずしも収益化しなかったと自ら明らかにしていることである。同社のアニメ事業は、参入当初とその後のふたつの局面にわかれている。
 エイベックスによればアニメ事業参入当初の問題は、テレビアニメのDVD化権の高騰で収益が悪化したことである。またDVD発売元より作品を仕入れて販売スキームを取ったが、収益性の向上には貢献しなかったともしている。
 その結果、同社は次の段階としてオリジナルアニメの製作に向かった。しかし、こちらも実績に結びつかなかったとしている。ここで興味深いのは、なぜオリジナル作品の製作が収益化に結びつかなかったかである。

【アニメの製作はなぜ増えたのか】
 実際ここに現在のアニメビジネスが抱えている問題の核心のひとつがある。自ら製作を行う、さらに自ら原作を握ることで、利益率を上げビジネス収益の増大を図る、これは一企業としては合理的な選択である。しかし、数多くの企業が同時にこの選択をしたことが、アニメ業界全体では極めて非合理的な結果をもたらした。
 つまり、これまでのシリーズ作品やテレビ放映枠といったアニメビジネスの枠組みは、既存のアニメ関連企業が握っている。当然それはこれまで通りのビジネスとして継続される。
 新規参入企業が自ら製作し原作を握るには、あたらたなビジネスの枠組みを作らなければいけない。それは必然的に、これまでのアニメ製作にプラスオンになる。アニメ作品の数が増えるわけである。
 
 しかし、2000年以降、このプラスオンの数が、アニメ業界の予想を遥かに超える規模で起きた。玩具メーカー、IT企業、商社、新興コンテンツ企業など新規参入企業が思いのほか多方面にわたったためである。
 一方で、アニメへの消費者はそうした供給拡大ほどには広がっていない。結果としてアニメ作品ごとへの出費が減り、採算分岐点を割り込む作品が急増した。

【ポートフォリオ投資は正しいのか?】
 さらに新規参入組みにとって辛いのは、アニメ製作が増えたことで醸し出されたアニメ界隈の賑わいからの利益が、『ガンダム』や『ドラゴンボール』といった既存の人気シリーズに流れたことである。
 作品数が多くなり過ぎたことでアニメファンの記憶に残る作品の印象も希薄化し、昔ながらのブランド力のある作品の印象が逆に強化された。つまり、作品供給の拡大でもたらされた市場の拡大分すら従来の作品が持っていってしまった可能性が強い。
 近年のアニメビジネスの勝ち組企業は、10年以上、時には30年も続く人気ブランドを抱えている企業である。実際に今回のエイベックスの分析でも、勝ち組プレーヤーのポジショニングのひとつとして、定番アニメーションを保有し安定的なキャッシュフローを獲得するアニメ会社を挙げている。

 一般的にアニメの製作のビジネス収益モデルは、ポートフォリオ(分散)投資として考えられることが多い。つまり、アニメ作品は当りはずれが大きいので、複数の作品に出資することでそのなかから大ヒット作が出れば、全体として収益が確保出来るとの考え方である。
 しかし、こうした状況のなかで複数作品への投資でポートフォリオを組んだはずなのに、ポートフォリオに組み込んだ作品が総崩れという状態に陥った企業もあるだろう。

【アニメビジネスは企業体力が勝負に】
 当初の思惑から外れた新規参入組みの結果は、現在次第に明らかになりつつある。そうした企業のなかには、アニメ製作の事業の縮小、撤退に向かうケースもこれから増えるだろう。アニメ作品数は減少する。市場に残ったプレーヤーにとっては、それは今後有利に働く。そうなると現在は、市場に残ることが出来るかどうか企業同士の体力較べになっている。
 だからといって他のプレーヤーの落伍を待つだけでは、前向きなビジネスにならない。今回のエイベックスの再生プランでは、今後はテレビアニメに加えて、アニメ映画も強化するとしている。また、製作委員会の出資比率の抑制、コンテンツを絞り込みなども行う。

【共同製作に向かうアニメビジネス】
 しかし、一番の注目は、オリジナルコンテンツを持つ有力な製作スタジオとアジア市場も視野に入れたアニメ映画の共同製作を挙げていることだ。結局、拡大したアニメ製作の新たな市場は、国内ではなく海外にあるということだ。
 数々の問題を抱えながらも、日本のアニメ企業が海外市場へ進出しなければいけない理由はここにある。そして、海外に進出し効率的なビジネスを行うには、共同製作という選択肢が現実的に映る。ここ1、2年、アニメ業界で話題になることが多い海外市場に向けた共同製作はこうした事情から生まれている。
 
エイベックス・グループ・ホールディングス
/http://www.avex.co.jp/
エイベックスの「映像事業再生プラン」(PDF)
/http://www.avex.co.jp/j_site/ir_news/pdf/071116_3.pdf
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