富野監督アキバで吼える 「日本のコンテンツの表現力」

イベント・レポート

 10月13日、東京・秋葉原で開催中のASIAGRAPH 2007 in Tokyoで、「日本のコンテンツ表現力」と題するシンポジウムが開催された。
 パネリストにアニメ監督の富野由悠季 氏、評論家の玉木正之氏、モデレーターにNHK「デジタルスタジアム」のナビゲーター中田日出氏が登場した。

 ややチグハグなゲスト陣に当初は多少の不安を感じたが、シンポジウムは予想以上に白熱した。話題はアニメやCG、芸術など個別の内容にとどまらず、技術と感性の関係やコンテンツとは何なのかといった話題に拡大した。
 討論は、怒ってばかりいると早死にするから最近はいいおじさんになる努力をしていると言いながら「ガンダムなんていうものを作ったために、30年たった今も自分の知らないガンダムが次々に出て来て怒っている」といつも通り辛口の富野氏、『あしたのジョー』と『巨人の星』がスポーツを駄目にしたと主張する玉木氏の過激な個性によって盛り上がった。

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途絶えた歴史を学び直す作業をしている
 玉木氏の「最近、これまで連続してきた日本の文化が途切れてしまったように感じる」との発言を皮切りに、シンポジウムは最初からテンションが高く、全速力で突き抜けるような展開となった。
 富野氏は玉木氏の歴史が途絶えてしまったことに同意しつつも、必ずしもそれを全面的に否定しない。一度、途切れてしまったものが取り返すことは出来ない、そしてもう一度学習し直す過程で、ある種の客観性や新たな視点を手に入れることが出来るのだという。
 漫然と続く伝統は危険とし、文化のドーナツ化現象をたとえに出した。文化のドーナツ化現象とは、ある文化はその発祥地では残らず、周辺地域で伝承されていく傾向があるということだ。つまり漫然と文化を継承する中心部より、その文化に対する強い憧れを持つ地域で文化は生き残るのだという。
 これは現在のマンガやアニメの発祥地として大きな力を持つ日本のポップカルチャー文化に対する警告にも聞こえた。

トランスフォーマー以後ハリウッドに勝てるアニメ
 実際に富野氏は、日本のアニメが世界中に広がったことで、アニメ制作は現在、韓国や中国を初め世界中に競争相手が登場していると指摘した。40年前は『鉄腕アトム』で満足していたが、それが『トランスフォーマー』のようなハリウッド映画にまで引き上げられた結果、今は好きなだけで制作すると競争に勝てなくなっている。
 10年後にもアニメで食べて行くにはCGのような技術を使って行くだけでなく、どのように心を表現していくが重要になると言う。さらに世界の文化を取り込んでいくカルチャミックスという考え方が必要なると主張する。
 それがアニメ的な要素を全て取り込んだ『トランスフォーマー』の出現以後の、アニメの方向性だとする。では、具体的にそれが何なのかというと富野氏自身も判らない。

 しかし、重要なのはもう一度ハリウッドが真似するようなものを作らなければいけないこと、それは現在の『エヴァンゲリオン』のようなものでもなければ、宮崎アニメのようなものでもないとする。
 ただしその次を生み出すうえで若いクリエイターは、日本の地理的優位性を自覚すべきであると言う。富野氏によれば、東京ほど東と西の文化遺跡がある地域はほかにない。異文化がミックスし、比較出来るという点で日本のコンテンツの表現力に強みがあると、最後は今回のシンポジウムのテーマ「日本のコンテンツの表現力」にまとめた。
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ASIAGRAPH 2007 in Tokyo  /http://www.asiagraph.jp/
《animeanime》

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