劇的3時間SHOW 鈴木敏夫プロデューサーが語り尽くす | アニメ!アニメ!

劇的3時間SHOW 鈴木敏夫プロデューサーが語り尽くす

 劇的3時間SHOWは、この秋に開催されているJAPAN国際コンテンツフェスティバル(コ・フェスタ)の公式イベントのひとつとして企画された。
 他のイベントがビジネス向け、専門家のための色彩が濃いなか、日本のコンテンツビジネスの最前線で活躍する人たち10人がそれ

イベント・レポート
注目記事
 劇的3時間SHOWは、この秋に開催されているJAPAN国際コンテンツフェスティバル(コ・フェスタ)の公式イベントのひとつとして企画された。
 他のイベントがビジネス向け、専門家のための色彩が濃いなか、日本のコンテンツビジネスの最前線で活躍する人たち10人がそれぞれ3時間かけて若者に語るという異色の企画である。

 10月6日、今回の企画で唯一、アニメビジンスに関わりのあるアニメプロデューサー、そして人気アニメを次々と生み出すスタジオジブリの社長でもある鈴木敏夫がトークを行った。
 会場で驚いたのが、会場となるスパイラルホールが、ぎっしり満員であったことだ。数百人収容の会場に入りきれない観客もでて、ロビーのモニターで参加するほどである。
 また、観客の年齢が若いのにも驚いた。大体20歳前後から後半ぐらい、しかもアニメファンという雰囲気はあまりなく、少しおしゃれな若者といった感じである。「鈴木敏夫」という人物に対する関心を持つ人の幅広さにまた驚かされた。

        3show.JPG

 このイベントでは、出演するゲストは与えられた時間を自由に使い、また演出してよいことになっている。しかし、鈴木敏夫の場合はいたってシンプルである。現在、一緒に本の編集を進めている岩波書店の井上一夫取締役が、幾つかのキーワードをもとに鈴木敏夫に質問する。
 鈴木敏夫はそれに答える。質問は凝っているが深く追求するものでもない。観客からのQ&Aもない。ほとんど鈴木敏夫が一人でしゃべるだけ。
 ところがこの話が面白い。最初から最後まで飽きさせることがなく、言葉のものを伝える本来的な力にあらためて気づかされる。

 イベントは驚くほど盛り上がり、鈴木の口から次から次へと出てくる鈴木敏夫とスタジオジブリを取り巻く奇妙な人々と事件に聞き入っていた。
 そうした話は、宮崎駿監督や高畑勲監督は勿論、徳間書店の徳間康快元社長やアニメージュの初代編集長、さらに『風の谷のナウシカ』のラストシーンの秘密や『となりのトトロ』が最大のヒットになった理由にまで及ぶ。

 それでも話の中心はやはり、数々の名作アニメを作り出してきたスタジオジブリとその中心にいる宮崎駿と高畑勲である。鈴木敏夫の話を聞くと2人とも世間のスタンダードで言えば、かなり変人で困った人たちなのだが、鈴木が愛情を持って語るとそれも許されるのかなと思えてくる。
 一方で、そうした2人に信頼を勝ち得ることが出来るこうしたパーソナリティこそが、鈴木敏夫のプロデュースの秘密なのだろう。

        3show3.JPG 

 このイベントの目的は第一線のプロデューサーやアーティストが、若いクリエイターに自らの体験やクリエイティブの秘密を語りかけるものである。イベントを振り返ると鈴木敏夫が、直接、プロデューサーとはこうあるべき、成功の秘密はこれだといったことに触れなかったことに気づく。
 鈴木の話は冷静に聞くと映画の完成が間に合わなくなったことや、スタジオ設立の資金がなかった話などシビアなものも多い。ところが鈴木敏夫はそれを苦労と感じさせない。常に前向きでポジティブな姿勢、それがクリエイターの信頼を勝ち得て、さらにビジネスを進める際のリーダーシップになっているのでないだろうか。
 
 おそらく教育というものは、直接語りかける以上に、感じとるものなのでないだろうか。会場にいた多くの若者がどう感じたかはは判らない。一人一人異なるものであっただろうが、それぞれが鈴木敏夫のプロデューサーとしての成功の秘密を知識としてでなく体験として感じとっただろう。
 今回の劇的3時間SHOWは、少なくともこの鈴木敏夫のプログラムを見る限りでは大成功である。優れたプロデューサーは、自らをプロデュースすることに長けており、観客を楽しませることにとても真摯なのだ。
Copyright 2007 Anime Anime Japan.All rights reserved.

劇的3時間SHOW公式サイト /http://www.geki3.jp/top.html
《animeanime》
【注目の記事】[PR]

特集