コミックマーケット72 レポート テキスト系同人誌あれこれ | アニメ!アニメ!

コミックマーケット72 レポート テキスト系同人誌あれこれ

イベント・レポート

 8月17日から19日まで世界でも有数の規模となるポップカルチャーのイベントであるコミックマーケットが開催された。72回目を迎えるコミケだが、イベントの盛況は衰える気配は見られず、3日間の人出は40万人から50万人と見られる。
 このコミケのなかの中心は、同人コミックの頒布や華やかなコスプレイヤーの活躍するコスプレ広場、近年ではイベントや新商品の販売もある企業ブースも中核である。

 こうしたなかでやや存在が隠れがちなテキスト系の同人誌も忘れてはならない存在である。コミケの参加者のなかでも意外に知られていない、知っていてもあまりいったことがない人も多い分野である。
 ここではアニメやマンガ、特撮、SF、軍事、コレクション、旅行、政治、美術、電子機器、不動産まで、ありとあらゆるものが調査され研究され、評論され、さらにネタとして取り上げられている。人気コミックのパロディーというマスの市場に対して、サブカルチャーのさらなるサブカテゴリーの需要を満たしている。

 少し前に流行ったロングテールという言葉を借りれば、書籍のテーマとしてのロングテールが実現しているわけだ。どんなニーズでも満たし、異端や少数派を満足させるテキストコンテンツの集合体、それがコミケのテキスト系の同人誌である。
 この何でもありの状況が、しばしば突飛とされる日本のサブカルチャー文化の一翼を担っているとも思えるのだ。

 またコミック同人誌がそうであるように、テキスト系の同人誌でもプロとアマチャアのクロスオーバーが盛んだ。この分野では商業誌や出版でも目にするアニメやコミック・オタク関連のライターや評論家、研究家などの活躍が目立つ。
 ここでは商業ベースでの発表に向かない文章が発表され、そうした文書が第3者に伝わることで価値観の伝播が行われる。ここでもコミケの果たす役割は大きい。

 今回会場で面白かった本に、アニメ評論の第一人者である氷川竜介氏による『30年目の氷川竜介』がある。内容はタイトル通り同氏の評論活動30周年を記念するものだが、ものを書く姿勢やもの書くことの考え方に大きく触れている。
 「評論のニーズはあまりない」、「評論は点数をつける仕事でない」といった氷川氏の文章には頷くことが多い。

 特に今回は評論を中心に同人誌を探したのだが、アニメやマンガを評論として取り上げた本の少なさに驚いていただけになおさらである。
 それはそれぞれの同人誌のテーマや切り口があまりにも細分化していることも理由にある。それが先の多様な価値観を支えているわけでもありやや複雑である。

 こうしたなかで東京大学漫画調査班の『コミック誌123選』改訂版は面白かった。そのタイトルの通り123のコミック誌を読破し、雑誌の傾向と特徴とさらに連載作品の評価を下している。  
 資料的な価値があるのと同時に読み物として面白かった。こうした本に求められているのが、客観的な判断でなく、独断的な思いであることを感じさせる。

 また細分化してしまった後に行き着いた本のひとつが、「アキバ暮らしを楽しむ本」(くぬぎやま通信社)だろう。この本は秋葉原で生活する方法から、家賃相場から、見取り図入りの不動産情報まで、実践的にアキバ生活を紹介している。
 しかし、本の購入者の多くが実際にアキバに住んでいるわけでも、住むわけでないのは言うまでもない。虚と現実、そしてスーパーニッチを大まじめ取り上げる馬鹿馬鹿しさがこの本の魅力である。

 こうした独特の発達を遂げたテキスト系の同人誌の現状と未来はどうなのだろうか。いつもアニメ!アニメ!に様々なレポートを寄稿してくれるミルミルさんに聞いてみた。
 ミルミルさんは長年「あやしい地球の歩き方」や「萌える株式投資」といったテキスト系の同人誌を発行している。
 今回のコミケでも最新作の「あやしい地球の歩き方’07」を準備していた。立ち話をしている間にも、この本を求める人は途絶えることがなく、かなりの人気に見える。

 それでも彼女によれば、今の発行部数は最盛期の1/3ぐらいなのだ。それはインターネットの影響だという。
 こうした薀蓄ものや旅行記は今ではネットで無料で手に入る情報となり、求める人の数が減っているのだという。それがネットにはアップロードされる量が少ないコミック同人誌との違いである。

ミルミルのOTAKUな株式投資blog
/http://blog.livedoor.jp/mujinakko_2009/

写真は「あやしい地球の歩き方’07」
の表紙と裏表紙 

「あやしい地球の歩き方」では、世界各地へのオタクな旅行と各地で見つけたオタグッズをピックアップする。
《animeanime》
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