「ジャパナメリカ」日本発のポップカルチャー現象の決定本 | アニメ!アニメ!

「ジャパナメリカ」日本発のポップカルチャー現象の決定本

レビュー 書評

 90年代末の『ポケットモンスター』の世界的なヒット以来、海外での日本のアニメやマンガの広がりを取り上げた書籍は数多く出版されてきた。そのなかには非常に優れた見解も持つ本がある一方、そうでない本もあった。
 今年5月に発刊されたローランド・ケルツ氏の『ジャパナメリカ 日本発のポップカルチャー革命』は、そうした本の最新作であると同時に、最良の本のひとつである。

 本は米国大衆文化における日本のポップカルチャー躍進の描写から始まり、その躍進をもたらした理由、さらにその背景にあるビジネス構造、さらに国外ビジネスに適さない国内のビジネスのドメステックな問題に至る。また、日本の産業の空洞化やポルノグラフィーの問題まで余すところがない。
 非常にバランスの取れた内容で、現在、日本と海外の双方でアニメやマンガが引き起こしている様々な現象を取り上げている。

 この本が取り上げる日本のアニメ・マンガの成功要因がその多様性や内容の自由さにある点や、国内の現場クリエイターの厳しい現実についてはこれまでも多く語られてきた。また、それが何度も語られてきたのはそれが現実であるからだ。
 こうしたなかで他の類似本と『ジャパナメリカ』を明確に隔てているのは、この本がそうした現実を歯切れよく、論理的に解説し、説得力を持って語っているからである。

 そうした説得力はケルツ氏の言葉が他者の借り物でなく、膨大なインタビューのうえに成り立つからだ。この本に登場するのは、現在、アニメスタジオ、マンガ出版社、製作会社などの日本のアニメ、マンガビジネスの最前線で活躍する人ばかりである。
 さらに米国人である筆者は、米国でも同様の豊富なインタビューを行っている。結果として、この本は日米両国からみた日本のポップカルチャー現象が感じ取られるようになっている。
 ケルツ氏はそうした業界関係者の言葉を引用しつつ、それを自らの思考に翻訳して読者に語りかけている。そこから独自の視点と論点へと展開させて行く。それは、日本のコンテンツの海外文化でのさらなる拡大に対する確信である。

 ただ、完璧な本が決して存在しないように、この『ジャパナメリカ』もパーフェクトな本ではない。作者の言う海外、特に米国における日本のアニメやマンガの存在感については、ややポジティブ過ぎると感じた。逆に、現在の日本のアニメやマンガの質や業界の現状についての見解はやや悲観的過ぎると感じた。
 それは単なる見解の相違なのかもしれない。しかし例えば、日本アニメの米国での躍進を解説するのに、既に実現性がほとんどないと見られる作品のハリウッドでの実写化計画をあげることや、米国人であるがゆえに英語を話し海外マーケットにポジティブな人たちの意見がより強調して取り上げられる傾向があるように思う。

 おそらくこうした本での主張は、答えが一直線でメリハリがあったほうが説得力があるという理由もあるのだろう。
 しかし、現在の日本アニメを取り巻く状況はあまりにも複雑かつ不安定で、単純な未来予測は出来ないと思うのだ。

ジャパナメリカ 日本発ポップカルチャー革命
著者 ローランド・ケルツ
翻訳 永田医
価格 1890円 (税込)
ランダムハウス講談社

《animeanime》
【注目の記事】[PR]

特集