日本のアニメ制作会社は600社以上 東京西部に集中 | アニメ!アニメ!

日本のアニメ制作会社は600社以上 東京西部に集中

 中小企業基盤整備機構のナレッジリサーチ事業行った「コンテンツ産業の方向性に関する調査研究」 (アニメ制作会社の現状と課題)が、同団体のサイトで公開されている。  この調査は、今後コンテンツ産業の経営支援を目指す中小企業基盤整備機構のアニメ制作産業の

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 中小企業基盤整備機構のナレッジリサーチ事業行った「コンテンツ産業の方向性に関する調査研究」 (アニメ制作会社の現状と課題)が、同団体のサイトで公開されている。
 この調査は、今後コンテンツ産業の経営支援を目指す中小企業基盤整備機構のアニメ制作産業の実態調査である。これまで行われたアニメ制作企業への調査のなかでは、これまでにない大掛かりなものとなっており、その調査結果には今回あらたに明らかになったことも多く注目に値するものである。

日本のアニメ制作会社は600社から700社
 まず今回の調査の成果は、日本のアニメ制作会社の数である。これまで日本のアニメ制作会社は450社前後というのが、一般的な認識であった。しかし、調査では日本動画協会の協力で718社を確認し、626社から回答を得たとしている。
 718社が現存しアニメ制作業務を行っている保障はないが、少なくとも回答をした626社はなんらかのかたちでアニメ制作に携わっていると考えられる。こうしたことから日本のアニメ制作会社は少なくとも626社以上、700社前後に達することになる。これはこれまでの常識を大きく覆すものといっていいだろう。
 さらにこうした企業は東京に8割が集中しているほか、これまでアニメ制作企業の集積地と知られてきた練馬区、杉並区に次いで、新宿区、渋谷区が続いている。東京都の区部の北西部全体が産業集積と考えてよさそうだ。

 調査はこれらの企業を大企業と中小企業といった会社の規模別で切り分けるほか、製作・企画会社、元請制作、下請制作、ポストプロダクションに切り分けて調査を行っている。
 そのうえで、経営環境を様々に分析するが、その結果は、制作会社の数と同様にあらたな発見が多い。詳細は直接レポートを見るとわかるので、ここではポイントになる部分のみ取り上げる。

元請制作は企業グループ化
 調査では、企業経営で重要な資金調達やキャッシュフローについても大きく取り扱っている。この資金調達で興味深いのはグループファイナンス(企業グループ内からの資金調達)を行っている企業に、元請制作会社が圧倒的に多いことである。
 調査では資金回収に時間がかかる制作投資は元請制作の大きな悩みであり、これが近年、元請制作会社がM&Aで買収される理由となっていると指摘する。元請制作は企業グループに組み込まれ、グループ企業内で安定した資金調達を確保することが会社を売却する理由になっているようだ。

オリジナルや著作権の保有
 また、オリジナル作品や著作権の有無については、これまでの常識と異なる結果となっている。今回の調査を見る限りでは、オリジナル作品や著作権の有無が企業業績と結びついていないためである。
 実際にオリジナルや著作権を持たずに黒字や大幅な黒字となっている企業は多く、逆に所有していても赤字や大幅な赤字としている企業も多い。
 制作会社が利益を確保するには、作品への出資を通じて権利を獲得することが必要との主張は多い。しかし、経営の安定化には、様々な方法があることを調査は示していそうだ。

経営の改善が見られるポストプロダクション 
 企業経営の動向についても興味深い結果が現われている。今回の調査では、製作・企画会社、元請制作、下請制作、ポストプロダクション別に、1990年、95年、2000年と較べて売上高と利益がどう変化しているかを追っている。
 特に大きな特徴は全てのポストプロダクション企業が売上げを増やし、大半が利益も着実に増加させていることである。デジタル化の進展でポストプロダクション企業の経営は、近年大きく改善したとされているが、数字の面からもこれが裏付けるかたちである。

 さらに元請制作会社、下請制作会社、企画・製作会社の順番で売上高を増やしている。売上高だけで見ると、近年のアニメ製作ブームで大きな恩恵を受けたのは、元請制作、下請制作、企画・製作会社の順番となりそうである。
 しかし実際には黒字を出している企業比率は、企画・製作、元請制作、下請制作の順番となる。売上高の増加が、必ずしも利益の増加と結びついていない様子が見て取れる。

 このほか調査は「スケジュールの遅れの発生する理由」や「デジタル化の影響」など多様な項目に亘っている。さらに、大手制作会社から下請制作まで数多くのインタビュー調査も行っている。
 全体で200ページを超える調査報告書となっているが、アニメ制作と制作会社の実態を知る必須の資料になるだろう。

中小企業基盤整備機構  /http://www.smrj.go.jp/
   /「コンテンツ産業の方向性に関する調査研究」 (アニメ制作会社の現状と課題)
   /前半(PDF)、/後半(PDF)
《animeanime》
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