中国アニメ業界の真の問題点を探る 「コンテンツビジネスin中国」 | アニメ!アニメ!

中国アニメ業界の真の問題点を探る 「コンテンツビジネスin中国」

レビュー 書評

 アニメや映画、マンガから音楽、テレビ番組まで、中国のエンタテイメント市場に対する日本の関心は依然高い。しかし、その高い関心にもかかわらず、そうした市場を総合的にまとめた情報はこれまでなかった。
 5月に発売された「コンテンツビジネスin中国」(青崎智行/デジタルコンテンツ協会編著、翔泳社刊)は、そうした中国における日本のエンタテイメントコンテンツをまとめた初めての本である。内容はアニメ、映画、テレビ、ゲーム、マンガ、音楽、商標権、著作権と分類したうえで現状を解説する。さらにデータ編により数字や統計などで現実を再確認するかたちになっている。

 これまでこうした本が出なかったのは不思議である。たぶんそれは、中国におけるコンテンツの領域が多岐に亘っていることに加えて、法律から文化、経済、政治まで考えるべきことがあまりにも大きいためであろう。
 今回は分野をエンタテイメントのコンテンツに絞ったうえで、各分野をそれぞれの専門家が執筆している。その結果、網羅性と内容の深さを両立させることに成功している。

 内容の深さは例えば濱田功氏による「アニメーション」の項を読んだだけでも明白である。濱田氏は現在の中国のアニメーション産業の状況を、戦後のアニメ-ション産業の立ち上がりから現在に至る文化背景、政治的思惑、既存の企業のビジネス構造、ファン動向まで含めて、複雑に思われる産業構造を見事に説明する。
 そのうえで、なぜ現在の中国のアニメーション産業がうまくまわらないかを合理的に解き明かす。濱田氏は、中国にマンガ原作がない点や行政の求める曖昧な中国らしさが、制作のクリエイティビティを阻害していることなどを原因と指摘する。

 こうした指摘にはこれまでも言われてきたことも多いが、濱田氏は、ではなぜマンガ原作が育たないのか、行政はそうした方針を出すのかとさらに一歩踏み込んでいる。
 そのうえで、現時点では中国のアニメーション産業が成長して行くのか、失敗するかは判断しがたいとする。

 内容の深さはアニメーションの項に限ったものでなく、「テレビドラマ」では韓流ブームが生まれその勢いが衰えた背景が語られている。「ゲーム」では中国のオンラインゲーム市場が生まれた流れなどそれぞれが興味深い内容である。
 一方で本書は、複数の執筆者が書くことによる編集のばらつきも見られる。各分野の内容が包括的であったり、特定の問題にフォーカスするなどのぶれが見られる。また、中国市場に対する見方もやや楽観的なものから、厳しい見方など幅がある。
 しかし、全体では事実に対する客観的な姿勢が貫かれている。むしろ、こうした見方の違いこそが、現在の混沌とした中国のコンテンツ市場を表しているだろう。
 今後の中国のコンテンツ市場がどの方向に進むのかは誰にも想像がつかない。だからこそ客観的な事実を網羅的に示し、様々な考え方を提示する本書の役割は大きい。

財団法人デジタルコンテンツ協会 /http://www.dcaj.org/

《animeanime》
【注目の記事】[PR]

特集