STUDIO4℃「Genius Party<ジーニアス・パーティ>」 | アニメ!アニメ!

STUDIO4℃「Genius Party<ジーニアス・パーティ>」

レビュー 実写

STUDIO4の魅力とは?
 『Genius Party<ジーニアス・パーティ>』はSTUDIO4の作品である。昨年の劇場作品『鉄コン筋クリート』がおそらく最も世に知られるSTUDIO 4の作品となったが、過去の作品はどれも玄人好みの、カッティングエッジな作品である。その特徴は同社の作品にオムニバス作品が多いことからも窺える。

 スタジオの最初の作品『MEMORIES』から大ヒット作『アニマトリックス』、2006年にはavexのミュージシャンとのコラボレーション作品『Amazing Nuts!』などがある。
 また、ミュージックビデオも多く、ケン・イシイの『EXTRA』やGLAYの『サバイバル』などが知られている。

 オムニバス作品はシリーズ作品に比べ、小規模であるが作家の個性を出しやすい。このような「多品種・少量生産」的な制作方法は、他のスタジオではあまり見られない。
 アニメーターや監督には、原作つきのストーリーや固定されたキャラクターの中で、作品を作っていくことに意欲を見せる人もいる。
 また、プリプロダクションの手間を考えると、たとえ10分の作品でも2本作ることになると、30分番組1本分の作業量を上回る。効率性の差はシリーズが数を重ねるに連れてさらに大きくなっていく。
 
 だが、STUDIO4はそういった事情を踏まえても、作家性を出すことを特に意識した作品を目指す特別な存在である。

Genius Party<ジーニアス・パーティ>の目指すもの
 『Genius Party<ジーニアス・パーティ>』は14人and moreのクリエイターの作品が、第一弾では7作品、第二弾では7作品and moreとふたつの劇場作品として発表される。STUDIO4の個性が非常に光る企画である。
 田中栄子プロデューサーは「もともとSTUDIO 4は、自分たちの作りたいアニメを作ろうとしてできたスタジオで、ようやくここまで辿り着いた」と語る。

 『Genius Party<ジーニアス・パーティ>』は、まさにパーティーのジュークボックスのようにそれぞれ雑多な性格を持った作品群である。STUDIO4への最大公約数的なイメージから、今まで見たことがないような現代劇、観念的な色合いの作品まで、観る人たちの予想を超える。

GENIUS PARTY  by 福島敦子
 オープニングを飾る福島敦子監督の『GENIUS PARTY』は近作の延長上にある世界観をもった作品である。このプロジェクトの始まりを新たな生命の始まりと重ね合わせるイマジネーションや、過度ともいえるアナログ風味な画面作りは彼女ならではの作品である。

上海大竜 by 河森正治
 『上海大竜』は、過去の河森監督のイメージからは大きく離れた、エンタテイメント作品である。変身ヒーローに憧れる幼稚園児が「想念実体化システム」スティックを手に入れたらどうなるか? 子どもらしい欲望と地球を狙う怪獣に翻弄される宇宙パトロール隊が笑いと涙をそそるSFアクションである。
 もちろんアニメならではの表現で見せるアクションシーンも満載だが、STUDIO4だと意識してみると、むしろ例外的にも思えてくるのが不思議だ。

デスティック・フォー by 木村真二
 『デスティック・フォー』を監督するのは、美術スタッフとして『スペースコブラ』や『ビューティフルドリーマー』、美術監督として『スチームボーイ』、そして『鉄コン筋クリート』を手がけた木村真二監督である。
 美術スタッフ出身の監督というのはあまり例が多くないが、木村監督作品のビジュアルはそうと知らなくても、美術志向を刺激する。ストーリー自体はスラップスティックなのではあるが、ちょっとおどろおどろしいキャラクターは「キモグロかわいい」という表現のとおり、物語の別の見え方を示す。

ドアチャイム by 福山庸治
 『ドアチャイム』は漫画家福山庸治さんが監督・キャラクターデザインを務めた。福山庸治さんは、『マドモアゼル・モーツァルト』や『臥夢螺館』などの代表作を持つ。作画のセンスと熱狂的なファンの多さは、STUDIO4ならではの人選である。
漫画とアニメは似ているようで、画面作りの文法も違うし、スタッフワークも全く違う別のプロダクトである。まず、短編としてそれを完遂することがアーティストとして大きなチャレンジになる。そして彼のように個性が強い作家が描く不条理を見せるのに、写実的な画面のアニメという媒体を選んだことは必然である。

LIMIT CYCLE by 二村秀樹
 『LIMIT CYCLE』はアニメーター二村秀樹さんの監督作品。今回はむしろビジュアルクリエイターという肩書きのほうがより似つかわしい仕事ぶりである。
 登場人物と同化しそうな不安感の繰り返しは、劇場で見るのに適したプログラムである。表現に合わせた2Dと3Dの融合は、もはや珍しい表現方法ではないが、ここまで一体化を前提とした作品は彼のビジュアルセンスあってのものである。

夢みるキカイ by 湯浅政明
 『夢みるキカイ』は、今回の「Genius」という名前が最も相応しいと思われる湯浅政明監督である。アニメーター・演出家、それぞれの仕事に熱狂的なファンを持つ監督。どちらの要望にも応えるのに適した今回の小作品は、それぞれの予想を遥かに上回る幻想的な作品に仕上がった。
 彼らしいアニメートもあれば、実写融合に近い画面作り。赤ん坊から始まるストーリーと、本作のタイトルは過分に示唆的である。

BABY BLUE by 渡辺信一郎
 『BABY BLUE』は渡辺信一郎監督のビターな恋愛物語。監督デビュー作の『マクロスプラス』や『カウボーイビバップ』にもその面影はあるが、真正面からこうした物語に取り組んだのは本作が初めてとなる。
 過去の作品がいずれもヒットしたことで、同様のジャンルばかりオファーされる渡辺監督が、自分の経験まで取り入れて、ある意味で意地を見せた内容だ。もちろん、彼が得意とする実写的なレイアウトと青春映画の風景は愛称が良く、途中のバカバカしくもあるコメディシーンまでは、いい意味でアニメを忘れてしまう。
 また、声優を担当した柳楽優弥&菊地凛子の芝居はロードムービーらしさを引き立てる大事な要素となっている。雄弁に心情を語る作品ではない。もし作中と似通った二人で見に行くのなら、男の方はよほど心情表現に注意しておかないと、同じように見抜かれてしまうかもしれない。

海外からの高い関心も
 『Genius Party<ジーニアス・パーティ>』はアメリカ・ワシントンで行われる「ジャパンフェスティバル」での上映が決定している。これは作品のクオリティや、制作者たちのネームバリューもあってのことだが、STUDIO4が持っている工房らしさが価値を認められたのだろう。
 これらの作品は子ども向けからアニメファン、アートアニメ、サブカルチャー好きまで、多様な視聴者層を飲み込む。無論、集まったのは天才作家ばかりである。が、今回の「Genius」の意味合いはメインカルチャーにおける悩みをもった「孤高」とは異なる。
 これほどのものを制作し、受け入れるアニメの懐の深さが、すなわち「日本らしさ」である。そこにこの天才たちによるオムニバス映画を海外で見せる意味がある。
【日詰明嘉】

Genius Party<ジーニアス・パーティ>
    公式サイト /http://www.genius-party.jp/

7月7日(土)よりシネ・リーブル池袋、渋谷シネ・アミューズほか全国順次ロードショー
配給:日活
©Genius Party
《animeanime》
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