【TAF2007】著作権と映像作品: シンポジウムレポート | アニメ!アニメ!

【TAF2007】著作権と映像作品: シンポジウムレポート

イベント・レポート

3月22日(木) 
主催:財団法人 デジタルコンテンツ協会
パネリスト:
林 紘一郎 情報セキュリティ大学院大学 副学長 セキュアシステム研究所長

right1.jpg 3月22日に東京国際アニメフェア2007のシンポジウムのひとつとして「著作権と映像作品」が行なわれた。シンポジウムは「登録制度と著作権保護期間」をテーマにした。著作権の成り立ちからデジタル社会での新たな運用の提言まで、著作権の基礎から発展まで縦断的な講義が行われた。
 パネリストの林教授はNTT入社後、画像電信事業部などを経てNTTアメリカ社長になり、同社退職後は慶應義塾大学教授を経て、2004年から現職にある。シンポジウムは幾つかの論点をもとに構成されており、今回はその論点別に報告をする。

著作物と情報財の特質について
 まず、林教授は著作物の定義として、「言論の自由」の発露であることを前提とする。そしてデジタル時代における著作物は「情報」とみなされ「情報財」として扱う。そして情報財は、以下のような特質を持つという。
 ひとつめは、所有物=所有権とは対照的に「専有が困難」であること。ふたつめは、講義の内容が聴衆に伝わっても、話者にはオリジナルが残るように、「専有の移転が明確でない」こと。みっつめに有体物のような「一物一価」といった取引が妥当しない点である。

知的財産関連の方式主義
 また、著作権とは特許権とは違い無方式主義である。すなわち、作品を作ったときに、誰に断ることもなく自分のものとして付与される。これは「検閲を許さない」という市民革命期における言論の自由が根拠となっている。
 ただし、先ほどの例のように「専有」についての限界が存在し、さらにデジタル時代においては無劣化でコピーが可能となりさらに難しくなっている。一方でタグ付けをすることで個別管理はしやすくなっているため、どのようにして管理していくかが課題であると林教授は述べた。

保護の程度と作品数の関係
 次に、保護の程度と作品数の関係について、説明を行った。仮に著作物に対する保護が全く行われない場合は、コピーが横行し、権利者に利益が上がらず、著作者のインセンティブが下がり、作品数は少なくなるという。
 一方で、保護強化が進み、極大まで達すると、所有権について厳格になりすぎ、創作コストが増大するため作品の数が減少する。このため、作品数の確保には、表現のコストよりも収益増が表れる、ほどよい保護が求められるとする。

著作権と特許権
 林教授によれば、そもそも著作権は、ある表現を創作的、芸術的に実現したものである。特許権についてはこれらとは別の考え方で成り立っている。
 特許権で保護されるのは、アイディアと技術の両方を満たしたものである。一方で、アイディアと芸術要素が融合した場合は、なるべく公共財にすることが理念として存在する。コンピューターソフトは、これらと著作物との間に考えられると説明をする。
 また、著作権は先に挙げたように無法式主義で、ベルヌ条約加盟国であればどの国でも保護されるが、特許権は「出願・審査・登録」が必要で、権利を主張したい国それぞれで出願する必要があるという違いもある。

right2.jpg 著作権と二次創作
 パロディは、コンテンツ業界にとって最も判断に苦慮する例である。そもそも、二次創作・パロディは、元となった創作物の形を鮮明に生かすことで表現が映え、成立するものである。
 パロディ作家として知られるグラフィックデザイナーのマッド・アマノ氏が、写真家の白川義員氏の写真を元に制作したパロディ写真について訴えられた裁判(通称、マッド・アマノ裁判)では、地裁・高裁で判決が異なり、二度最高裁で判決が出された後、第3次裁判の東京高裁で和解が成立したほど難しい判断であった。

 この中で、最高裁の判断は、公正かつ無断でできる条件について以下の3点を示した。
 ひとつめは、パロディ元に何を加えたかが分かる「明瞭性」。ふたつめは、どちらがパロディもとかが明かな「付従性」。みっつめは、「引用される側の著作者人格権を侵害しない」という点である。

著作権保護の法理
 さらに著作権についての法理は、法社会の発展と密接な関係にあることを説明した。著作権は英語でコピーライトと言うように、もともと複製権を表す。これは印刷物が世に現れた時に、印刷業者が独占的な営業権を絶対王政に認めさせたものであった。
 これが近代市民社会になり、これらの権利は言論の自由、すなわち自然権・自由権の一つとして考えられるようになった。さらに産業社会にステージが進むと、文化の発展に寄与するインセンティブへと意味合いが変わってきた。
 今後の情報社会においては、複製と流通がこれまでと質的に変化して行われていくため、安定性と権利処理の円滑化のバランスが求められてくるだろうと語る。

 林教授は、製作者が運用する著作権の考え方について、リアルネットワークス社のRob Glaser氏の話を引用し、「1920年代のアメリカの禁酒法時代のように、社会状況を無視した禁止だけでは、P2Pの不法行為を闇に潜らせることになる」と、法の柔軟な解釈と運用を求め、講演を終えた。
【日詰明嘉】

情報セキュリティ大学院大学公式ページ /http://lab.iisec.ac.jp/
東京国際アニメフェア2007  /http://www.tokyoanime.jp/
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