日本でアニメ製作のファイナンスについて本格的に取り組みが始まったのは、2000年代に入ってすぐである。2002年に経済産業省で初めてのコンテンツファイナンス研究会が開催されているから、この数年前2000年前後からコンテンツファイナンスへの関心が拡大していたと考えられる。 それから5年以上たった2007年、正直、アニメを始めとするコンテンツファイナンスへの関心は急激に薄れている。コンテンツファイナンスは思ったほど普及しなかったし、それを利用した作品の実績も芳しくないからである。 東京国際アニメフェア2007で開催された森祐治氏(株式会社シンク代表取締役CEO)の講演「資金調達と制作コントロール」は、コンテンツファイナンスとあらためて向き合う点で大きな意味があった。 森氏の講演は、まずメディアコンテンツビジネスを5要素(コンテンツ、チャネル、コマース、コミュニケーション、キャピタル)に分けて考える。また、日本のコンテンツビジネスはキャピタル(資金)の感覚が薄いと主張する。 そして、制作工程管理や新しいファイナンススキームを用いることで、よりうまくビジネスを進めることが出来るのでないかと考える。 そのうえで、やはり興味が向かうのはコンテンツファイナンスの現状である。森氏は、優れたファイナンススキームが数多く生まれているのにそれが活用されないのは、外部から資金を調達すること自体に理由があるという。 製作関係者自らが資金のリスクを負わない作品製作は、どこかビジネス甘くなりがちであるということだ。また、外部からの資金調達は製作委員会の場合に較べて、ビジネスの関係者の関与や動きが鈍くなり事業の展開が小さくなりがちだともする。 それは多くの批判があるにもかかわらず、製作委員会が意外にビジネスの枠組みとして優れていることの裏返しかもしれない。 それでも森氏は、現在のアニメの過剰生産が従来の製作委員会の枠組みを壊しつつあり、今後はうまくいかないケースが増えるだろうと予想する。 だからこそ、あたらしいファイナンスの枠組みが必要であり、同氏の経営するシンクの目指すものも意味があるというわけである。 シンクが行なうのは、中小の制作会社やクリエイターに資金を供給すると同時に、制作工程の管理やマーケティングを支援し、よりスムーズにビジネス化することである。単純に出資するのでなく、あたらしいビジネス生み出すことを目指している。 もともとコンテンツファイナンスの高度化の目的は、力の弱い制作会社やクリエイターのクリエイテビティに対するリターンの増大であった。ここ数年は投資銀行や投資ファンドの登場もあり、こうした本来のコンテンツファイナンスの意義が見失われがちであった。 しかし、シンクの手掛ける動画革命東京のプロジェクトは、規模の小さな制作会社の支援である。5年の時間が流れて、コンテンツファイナンスは、ようやっと本来のスタート地点に戻ってきたといえる。 動画革命東京のプロジェクトが成功出来るかどうかについては、誰も断言することは出来ないだろう。 しかし、コンテンツファイナンスに対する失望が広がっているこの時期に、積極的に事業を進める努力は大きく評価されるべきであろう。/東京国際アニメフェア2007資金調達と制作コントロール日時: 3月23日(金主催: 株式会社シンクパネリスト: 森祐治 株式会社シンク代表取締役CEOシンク /http://www.think.ne.jp/動画革命東京 /http://www.anime-innovation.jp/当サイトのTAF2007特集はこちら/