舞台挨拶:作品完成は前日の朝 10月28日の東京国際映画祭 animecs TIFFで『新SOS大東京探検隊』、『FREEDOM』、『あうりん』の一般上映が行われた。 『新SOS』は本邦初公開作品であるだけなく、完成フィルムは関係者を含めてほとんど全ての人にとって初見というものであった。 今回の舞台挨拶に立った音響監督の百瀬慶一氏によれば、録音が終了したのは前日の朝というまさに出来たてのほやほや状態であったからだ。 その舞台挨拶には監督の高木真司氏、作画監督の小原秀一氏、音響監督の百瀬慶一氏、さらに音楽の池頼広氏が並んだ。 高木監督はこの企画は1年半前に新しい作り方で大友作品を作りたいという企画を出したものでそれが運良く実現したと、作品の誕生のいきさつを紹介した。また、小原氏はいい作品になっているので楽しんでください、3Dぽさをなくした3D作品ですと述べた。 百瀬氏は子供時の子供の目線で作られた作品で、最近では珍しいと作品の特徴を話した。また、3DCGは声優の録音が馴染まないことが多いが今回役者さんたちがうまく演じてくれたとした。 また、池氏は当初はパーカッションで音楽を作るはずだったのに、いつの間にかオーケストラに変えてしまった話を紹介した。新SOS大東京探検隊では新しい何かが起こっている アニメに限らず歴史が変わるきっかけには2つのパターンある。ひとつは出た瞬間に明らかにこれまでと違うことが判るものである。アニメで言えば、『新世紀エヴァンゲリオン』や最近なら『涼宮ハルヒの憂鬱』の第1話放映などが挙げられるだろう。 もうひとつは、あまり人に気づかれることなく変化して、あとになってそれが転換点であったと気づく場合だ。 『新SOS大東京探検隊』を観た時に、これは多くの人が気づかいないところで始まったアニメ映像の歴史的な変化でないかと感じた。『新SOS』は、3DCGアニメである。 しかし、従来の3DCGアニメとは全く異なる映像が展開していたからである。 文章だけでは表現し難いが、それは2Dセルタッチの絵がそのまま3Dアニメに置き換わったと言えば良いだろうか。 最も判りやすいのはアニメ絵的なキャラクターが3Dキャラクターになっていることだ。しかし、明度が落とされた色設定やその動きには、ピクサーのキャラクターに見られるような感じはなく、むしろ2D的である。さらに2Dアニメタッチの背景が、相当の立体感を持っている。これは、テキスチャーの切り貼りが利用されているらしい。 つまり、キャラクターと背景の両方が3D化されているにも関わらず、双方がセルアニメタッチのテーストを完全に保っている。 『新SOS』では、これまでアニメ制作でしばしば言われた2Dから3Dに移行すべきなのか、2Dと3Dのハイブリットや2.5Dを目指すべきなのかといった議論が無効になっている。 ここでは日本アニメはセルタッチの映像を捨てることなく、3Dに移行可能であることが示されている。 『新SOS』は良作ではあるが、物語自体はロボットも美少女も出て来ない比較的地味な作品である。必ずしも万人受けとはいえないかもしれない。 しかし、この新しい技術を確認するためだけでも、観る価値のある作品である。 ©2006 大友克洋・講談社/バンダイビジュアル・サンライズ/東京国際映画祭
「東京国際映画祭」“日本のアニメ”の発信から、“世界のアニメ”を知る場所へ【藤津亮太のアニメの門V 第100回】 2023.11.8 Wed 11:30 11月1日、第36回東京国際映画祭が閉幕。昨年まではジャパニーズ…