映画「立喰師列伝」のビジネス戦略とプロデューサーの役割:レポート(3/14) | アニメ!アニメ!

映画「立喰師列伝」のビジネス戦略とプロデューサーの役割:レポート(3/14)

イベント・レポート

 WAO映像・アニメーション研究所の設立記念として開催されたこの講演会は、石川光久プロダクション I.G代表取締役と片岡義朗マーベラスエンターテイメント常勤顧問の巧みな語り口により非常に内容豊富なものとなった。
 講演時間が一時間半と十分あり、話は映画『立喰師列伝』の企画当初の話から、『立喰師列伝』の押井作品の中での位置づけ、そしてプロデューサー論に至るまで多岐に亘った。

wao ig.JPG 映画の企画については、当初はOVA30分×6本の企画がなぜ劇場映画に変わったのかという点が興味深かった。そこには、押井守はパッケージ向きの監督でなく映画監督なのだという考え方がある。
 そして、劇場映画にすることで監督の負荷も増したのだという。企画の変更により『立喰師列伝』の作品クオリティーがかなりあがったのでないかと考えさせる話であった。

 また、石川氏は今回の作品は、出演者が全て押井守監督の友人で固められているように、押井守監督の求心力で作った映画であるとする。そうした求心力が、このあと監督が遠心力で新作を作らなくなった時につながるというのだ。
 作品を単体で考えずに、クリエーターの履歴や会社全体の流れのなかに位置づけを考えるプロデューサーならではこその考え方であろう。

 そして、講演のタイトルにも挙げられた『立喰師列伝』の戦略である。ところが、戦略がないことがこの作品の戦略だと石川氏は説明する。
 では、全く戦略がないとかと言えばそうではない。例えば低予算映画だからこそ贅沢に観て欲しいと設備の良い劇場を用意するなど、映画公開のための環境づくりは抜かりがない。

 ここで言う戦略は、劇場公開の次に何をするのか、どういった人達にどのようにこの作品を送り出すのかといった点に思えた。つまり、それをしないということである。それは『立喰師列伝』が、これまでに全くない新しい映画であることに理由があるのだろう。
 いつ、どこで、誰が面白いと言い出すか判らない作品、どんな展開が起こるか判らない作品、それが『立喰師列伝』ではないだろうか。つまり、この作品に戦略がないのは、逆に何か動きがあった時にすぐに動ける体制を整えていることかもしれない。
 そうした何か起きた時に、余計なことをしていてはいけないわけである。それは、石川氏が講演の中で強調していたプロデューサーに求められるのは、余計な仕事をしないこともひとつの主張にもつながってくる。

 そして、『立喰師伝』の戦略なき戦略に大きな自信を持つのは、また石川氏の『立喰師列伝』の作品に対する大きな自信でもあるだろう。石川氏によれば『立喰師列伝』は、押井守監督が墓場に入ったその後に、人々が押井守の代表作は何だと考えた時に名前を挙げるような作品だという。

映画「立喰師」のビジネス戦略とプロデューサーの役割
3月15日
講師:石川光久氏 プロダクション・アイジー代表取締役
モデレーター:片岡義朗氏 マーベラスエンターテイメント常勤顧問
主催:WAO映像・アニメーション研究所 共催:/WAOクリエイティブカレッジ
協力:日経エンタテインメント

/立喰師列伝公式サイト 
/プロダクション I.G 
/マーベラスエンターテイメント 
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