今年の1月より三鷹の森ジブリ美術館は、3つの新作短編アニメをジブリ美術館限定で公開している。現在公開されているのは、『水グモもんもん』、『やどさがし』、『星をかった日』の3作品である。それぞれの作品は、アニメの質感も、物語のテーマも大きく異なっている。 先日、ジブリ美術館に行った際に、これらの作品の中から『星をかった日』を観ることが出来た。美術館では、一回の入場で一作品しか観覧出来ないのだが、3作品の中で一番ジブリらしい作品ということでこの映画を選んだ。 ジブリらしさというのは、少し勝手な言い方かもしれない。なぜなら、ジブリの作品は宮崎駿作品から『火垂るの墓』や『ホーホケキョ となりの山田君』など意外に幅が広いのだ。 それでも、僕にとってのジブリは、少年や少女が主人公のSF・ファンタジー作品である。けれども、物語が中心でSFやファンタジーであることを意識させない、そして心を暖かくする物語である。 そして、今回観た『星をかった日』は、僕のそうした期待に完全に応える映画だった。 話は実は判りにくい。田園風景とSF的世界、ファンタジー的な世界が同居している。しかし、そうした物語の世界観は全く説明されない。主人公の少年ノナがなぜ農園で働いているのか、なぜ主人公は本来の住まいである時間局に帰りたくないのか、彼を保護するニーニャとのノナの関係はといったことは全く語られない。 話は市場に行く途中で買った星の種を少年が育て、宇宙に放つ、それだけのお話である。 物語の背景は説明されない代わりに、水の流れシーンや田園風景が、丁寧に贅沢に描かれている。一言でまとめれば、満足度も質もとっても高い作品であった。 正直、最近のえらくなってしまった宮崎駿監督や権威化してしまったジブリの劇場作品には、ある種の反発も持っている。しかし、悔しいけれどこの作品はうまい。多くのテレビアニメにありがちな刺激的なエンターテイメントでなく、いいアニメを観たと幸福感を感じることの出来る作品。それが『星をかった日』であった。『星をかった日』原作…井上直久「イバラード」より/脚本・監督…宮崎駿音楽…都留教博・中村由利子/三鷹の森ジブリ美術館 /スタジオジブリ
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