米国のアニメバブル以後 | アニメ!アニメ!

米国のアニメバブル以後

レビュー 書評

 国内外のアニメーション産業の現状がいまだきちんと把握されていないなか、米国のアニメ市場の動向について統計・数字によって分析出来る数少ない専門家に米国WOWMAXメディアの海部正樹代表がいる。海部氏はこれまでも「米国アニメ市場の実態と展望」など、幾つもの調査をまとめている。

 この海部氏が今月25日発売の雑誌「NewWORDS」に、米国のアニメ・マンガ市場について興味深いレポートを寄稿している。レポートは『“アニメバブル”崩壊!?-北米アニメ、マンガビジネスの最新レポート-』とかなり刺激的なタイトルになっている。
 内容は2004年より縮小し始めた米国の日本アニメビジネスの状況を取り上げて、こうした状況を「バブルの崩壊」とするべきなのか、「ビジネスの進化」とすべきなのかの問いかけである。
 海部氏は、近年囁かれていた米国市場での日本アニメビジネスの縮小をDVD販売の縮小とライセンス収入の減少、日本アニメの地上波放送枠の減少によって証明する。また、こうした背景には、DVDの販売タイトル数の増加や男児・女児がおもちゃよりもゲームに興味を持つようになったことにも原因があるのではないかと考えている。

 しかし、こうした状況にもかかわらず、海部氏は米国で成長し続けるアニメコンベンションや好調なマンガ出版などにも触れ、アニメマニアの数自体は減っていないという。海部氏は、日米の企業によって増えている新しいタイプの共同制作の中に「一段と進化したクリエイティブとビジネスのスキーム」があるとレポートをまとめ終えている。

 海部氏のレポートは、米国における日本アニメ・マンガ市場の現況を的確に捉えているといえる。ここ数年、日本の行政やメディアが喧伝してきた日本のアニメはすごい、世界中で圧倒的に強いといったイメージは、少なくとも米国ではだいぶ前に終わっている。
 しかし、それを理由に日本アニメが米国市場で全く問題にならないかというとそれも間違いである。少なくとも、日本アニメはブームと言われた1990年代以降に着実な足場を築いており、10年前には全く存在しなかった新しいマーケットを維持し続けているからだ。
 そして、海部氏の指摘のとおり、日本アニメマニアは減っているというよりも、むしろ増えている可能性のほうが強い。

 問題なのは、1990年代後半以降、日本が米国で作り上げたアニメビジネスの王道である地上波放送とキャラクター商品販売を組み合わせるキッズ向け市場モデル、マニア向けのDVD販売ビジネスモデルがいずれも通用しなくなって来ていることである。その理由には、子供の視聴者自体を切り捨てようとしている米国の地上波放送局の存在や、ますます盛んになるインターネット上のP2Pを使った動画交換などの動きもある。
 重要なのは、こうしたメディアの変化やテクノロジーの発展に対して適応する能力である。少なくとも、日本のアニメは米国で既に終わったと喧伝することではない。そして、そうした解決策のひとつに、日米共同製作があるのは間違いない。

 日米共同製作の動きは日本側からみれば、当初から日本の市場でなく米国市場に向けて作品を作ることで、日米の文化の違いといったビジネスのリスクを軽減出来る。また、製作資金の一部が米国企業から出ることで資金負担の軽減が可能になる。制作当初より、作品の放送媒体が確保されている点も重要だ。
 現在、国内アニメ市場が飽和し、米国市場では日本アニメの供給過剰に陥っている。日米共同製作は、市場拡大のために残された数少ない未開拓領域である。
 一方、米国企業にとってもメリットが大きい。最初から米国市場を意識することによって、日本の人気作品が持つ暴力シーンなどによる放映不可能リスクを避けることが出来る。さらに、これまで日本企業が保有していたライセンス、2次利用権の一部が直接手に入ることも重要である。今では米国企業も、日本アニメのビジネスの本質が2次利用権にあること、一旦ヒットするとそれが巨大ビジネスに変わることを理解している。
 こうしたアニメ作品と関連商品の販売、2次利用権と結びつけたビジネスは依然日本アニメに大きな強みがあり、日本企業と組みながらライセンスを手に入れられる共同製作は米国企業にとって魅力が大きいと言っていいだろう。

 しかし、日米共同製作は変化している市場に対応する方法のひとつに過ぎない。今後は日米共同制作だけでない全く新たな「進化したクリエイティブとビジネススキーム」も現れて来るに違いない。そして、それが出来る企業だけが米国市場で生き残ることが出来るのだろう。

/NewWORDS 
/米国アニメ市場の実態と展望 
《animeanime》
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